「チュチュ様ぁー!」
木霊するのはパレオの絶叫。
終わってみればなんのことはない。
結局はパレオはパレオ。
チュチュ様からは離れられないってことだな。
何はともあれ一件落着である。
本当に良かった。
「なんて言うとでも思ったか!このバカちんが!」
「い、いたた!痛いですぅー!」
痛いですぅー!じゃねぇ!
俺の気持ちも知らんでこの子はもう…
今回はね、わりと怒ってるよ?
心配させやがって。
罰として頭グリグリの刑に処してやるわ。
本人は若干涙目になっているがそんなのは
お構い無しだ。
「…ったく、心配したんだぞ。」
「す、すみません…」
本当だよ。
あー…胃が痛かった。
「ふふ…そのへんにしてあげて?」
「…わかりました。」
…レイヤさんに言われちゃしょうがない。
このあたりで勘弁してあげるか。
しぶしぶパレオの頭から手を離す。
「…そんじゃ、パレオも無事に戻ってきたことですし…帰るとしますか。」
「…ごめんなさい。」
チュチュは あたらしく 謝るを おぼえた!
これはびっくり。
帰りの電車内にてチュチュは自らの思いを
吐露した。
皆の気持ちがRASから離れていってしまうのではないかという焦燥…恐怖。それが表面化してしまったとのこと。
まったく…いらぬ心配を。
そんなわけないのにな。
「こっちこそ、不安にさせてごめんね…」
こういう時にも謝れるレイヤさんは大人である。
「…ありがとう。」
「え、俺?」
本当にどうしたチュチュ?
明日の天気やばくねーかこれ。
一体何が降るんだ?
「あなたの言うとおり…あのままだと後悔する
ところだった…」
「…謝って良かったろ?ま、終わりよければ何とやらってやつだな。」
「…ユウにもそういう経験があったの?」
「…あぁ。俺の場合は謝ることもできなかったけどな。何も告げずに俺の前からいなくなっちまった…」
「…そう。ごめんなさい、聞いちゃいけなかったわね…」
「別にいーよ…謝るなって…らしくねーな。
しんみりするところじゃないだろ?お前はこれからのことを考えてりゃいーの。」
過去は過去。
後悔すれば戻れるのならいくらでもして
やるんだがな。
「これからも喧嘩したりすることもあるかもしれないけど…その度に乗り越えて…強いバンドになっていこうね。」
「はい♪」
「レイヤ…」
うん、やっぱりこの人は言うことが違うね。
言葉の重みが違う。
チュチュのスタジオに到着。
時間も遅いが、とある目的のためにこのまま解散というわけにはいかないのだ。
しばらくしてバイク移動組のますきさん、ロックが戻ってきた。
みんな、揃ったな。
「チュチュ様…誕生日おめでとうございます♪」
パレオを皮切りに各々が祝辞の言葉を述べる。
「……」
当の本人は何のことかわかっていない様子。
「今日は誕生日だろ?みんな、お前のために考えてくれてたんだぞ?」
「…あ!」
忘れてたなこりゃ。
「さ、主役を特等席へとお連れしましょうか。」
「ちょ、ちょっと!」
皆それぞれ配置へとつく。
パレオがこの日のために作った曲。
『 Beautiful Birthday 』
…危うくお蔵入りになるところだったけど。
曲はパレオのキーボードから始まる。
うん…やっぱりこれがないとダメだな。
力強いメンバーの多いRASの中でも異彩を放つ綺麗な旋律を奏でるキーボーディスト。
それでいて、他に一切遅れを取らないという…
曲のほうもパレオ作ということもあり、普段とはまた違った感じだ。
でも…こういうのもアリだな。
また、違ったRASの一面が見れた気がした。
「…ずるいわよ!こんなの…」
曲が終わり、程なくしてチュチュがぐずり出した。
そう言って、泣きそうなんでしょ?
わかってんよ。
とどめさしてやるか。
まだ、お祝いの言葉言ってなかったし。
「12歳の誕生日おめでとう…チュチュ。」
「…14歳よ。」
あれ?
「んじゃ、このノリで深夜の○鉄大会とでも
いきますか?」
「何言ってんだ?帰るに決まってんだろ。」
一番乗ってきそうなますきさんに却下された。
一回やってみたかったんだけどな…ていうかそもそもゲーム機がないか…このスタジオ。
まぁ、時間も遅いしね。
しかたないね。
「しっかし、パレオは大変だな。こっからまた
鴨川か。」
パレオ曰く、慣れてますからとのこと。
慣れるもんなのか?
夜道に女の子一人は危険なので、せめて駅まで
送ることにした。
「すみません、わざわざ。」
「いいんだよ。もっと頼ってくれても構わないんだってのに…一人で抱え込まれるほうが
イヤなことだってあるんだぜ?」
「…本当にご心配おかけしました。」
「これからは何かあったら言うんだぞ?
力になれるかもしれないからさ。」
「はい♪」
「しかし、そっちのパレオもいいな。オフモードっていうの?やっぱり、可愛い子はどんな格好しても可愛いもんなんだな。」
黒髪にメガネに制服。
たぶん、パッと見だとパレオだとわからんわ。
「そんな…恥ずかしいですよ…」
ちょっと赤くなってるし。
もう全部が可愛いな。
「…鳰原 令王那っていうんだな。」
「…はい。」
「いい名前じゃん。なんかカッコ良くね?
令王那って響きがさ。」
「か、カッコ良い…ですか?そ、そんなこと言われたの…初めてです。」
「俺なんかさ、女の子みたい…ってよく
からかわれてたよ。」
全員に制裁加えたけど。
「チュチュは…ちゆっていうんだな。
俺、今の今まで二人の名前も知らなかったんだなーって。」
「………」
急にパレオが押し黙ってしまう。
「…私もです。」
「ん?」
「…言われた方も勿論辛いとは思います…ですが、言ってしまった方も同じくらいに辛いと思うんです。」
…あぁ、そのことか。
「…言葉ってさ、恐ろしいものだよな。
たった一つで何かを壊したりもするんだからさ。」
「…そうですね。ですが、救われたりもするんです…パレオは…チュチュ様のお言葉に救われました。」
「…そっか。」
「…その人とは、親しくされていたんですか?」
「うーん…まぁ、そうかな?付き合いは短かったけど。ろくに友達もいなかったし…大切な繋がりではあったかな…けど、俺が壊しちまった。」
「………」
っと、気を使わせちまったかな?
「ユウさんは…パレオのことを本気で叱ってくれました…本気で心配してくれていました。そんな人が他人の気持ちもわからないなんて…パレオは思いません。」
「そう、かな。」
「その人も…きっとそのことはわかっていると思います…ユウさんは優しい方ですから…少なくとも、パレオはそう思います。」
「は…何だ、励ますつもりが励まされてやんのな。」
「す、すみません…差し出がましかったでしょうか。」
「いや、ありがとな。」
救われたよ。
「きっといつか会えますよ。」
「そうかな?」
「はい…きっといつか届くと思います…ユウさんのお言葉が…お気持ちが。」
「…だといいな。」
「はい♪」
もしも、その時がきたならば…謝ろう。
そう…俺は夜空に誓いを立てた。