奏でることを忘れた少年   作:TAKACHANKUN

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HAPPY BIRTHDAY 有咲!(3日遅れ)


誓いと出会い

「おれがずっと守ってやるよ。」

 

そうだ。

俺はあの時、子供ながらに気恥ずかしい

誓いを立てたんだ。

 

「…ホント?」

 

「あぁ!約束だ!やぶったら針千本でもなんでも飲んでやる!」

 

「…うん!」

 

 

 

 

「ずっと一緒だ。おれがありさを守ってやるよ。」

 

 

…結局その誓いは破られることになるわけ

だけど。なにはともあれ、それが俺達二人の

出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

「うっわ…恥ずかしい。」

 

「は?いきなり何だよ?」

 

隣を歩く幼馴染(市ヶ谷有咲)が怪訝な顔をして俺に問いかける。言外に頭大丈夫か?って顔をしていた。

 

「いや、俺らが出会った頃の過去を回想してたんですけど…超絶恥ずかしい台詞を吐いていたうえに約束まで破っちゃってるっていう余計なことまで思い出しちゃったっていうか…」

 

「約束?」

 

「覚えてませんか?」

 

そうだよ。

何かの間違いだよ。

俺の記憶違いか何かなんだ…きっと。

 

「…あぁー…」

 

…何故顔を赤らめる?

その反応はもう間違いないやつですやん。

確定しちゃったじゃん。

 

それが事実なら針千本飲むの俺?

いや、守る云々は俺が言い出したことなんだけど…

 

吐いた唾は飲めぬが針千本は飲めと?

 

「…確か公園だったよな?お前と初めて会ったのは。」

 

「えぇ、そうです。」

 

そう、あれはいつだったか──幼少の頃。

偶々公園を通りかかった時のことだ。

 

 

 

 

 

何気なく見た先には泣きじゃくる女の子の姿。

そして、それを取り囲む自らとそう歳の変わらないであろう男の子三人組。何が行われているかは明白だった。

 

「おい。」

 

考える間もなく体は動き出していた。

正義感からとかそんな高尚なものじゃない。

ただ単純に同じ男としてそいつらが気に入らなかっただけだ。

 

「女の子一人によってたかってダセーまねしてん

じゃねーよ。」

 

「なんだよ、お前?」

 

三人組のリーダー格であろう奴がこちらを睨みながら言う。

 

「おれか?おれは……」

 

「…………」

 

「…なんだろ?」

 

「なんだ、こいつ!バカにしてるのか!?」

 

気の効いた台詞が思い浮かばなかったんだった。

なんともしまらない男である。

 

「その子、泣いてるだろ?やめてやれよ。」

 

「やだね!」

 

「そうか…じゃあしょうがないな。」

 

「やるのか?こっちは三人いるんだぞ!」

 

確かに数的不利でこちらの勝ち目は薄い。

…正面からやればの話だが。

 

「…げっ!母ちゃん!」

 

「えっ?」

 

間抜けが俺から目を逸らす。

ウソだと言うのに。

 

「んなわけねーだろ!バーカ!」

 

隙だらけのリーダー格をここぞとばかりにボコボコにしてやった。

 

「うわーん!」

 

「た、たけし君がやられた!」

 

「…どこぞのガキ大将かよ。」

 

「ひ、ひきょうだぞ!」

 

「は?三人で女の子一人いじめてるお前らに言われたくねーよ。」

 

正義の味方のつもりもないし。

当時は捻くれた子供だったから、悪役の怪獣とか怪人のほうが好きだったし。

 

「で?手下その1、その2はどうすんの?やるの?やらないの?」

 

「うっ…くそー!おぼえてろよ!」

 

完全に去り際が三下。

 

「おとといきやがれ…だっけ?」

 

今思えば結構危なっかしいことしてたんだなぁ…俺って。

 

「っと、そんなこと言ってる場合じゃないか。」

 

すすり泣く女の子のほうへと近づく。

 

「もう大丈夫だぞ。あいつらこらしめてやったから。」

 

「…あ、ありがと…」

 

「おれ、ゆうって言うんだけど…名前はなんていうの?」

 

「…ありさ。」

 

「ありさって言うのか。」

 

「…うん。」

 

「なぁ、ありさ。今度からいっしょに遊ばないか?」

 

「え?」

 

「一人ぼっちでつまんないなーって思ってたんだよ。ダメか?」

 

「…ううん。」

 

「そっか、じゃあ決まりだな!またあいつらみたいなのが来てもさ、おれがぶっとばしてやるよ!」

 

 

 

 

 

 

「…お前が助けてくれたんだよな。」

 

「男の風上にも置けない連中でしたね。」

 

「あいつら、全員名門校に通ってるぞ。」

 

「…マジかよ。」

 

何があったんだよ。

何でちょっと浄化されちゃってんだよ。

 

本当に人ってのは変わるものなんだと実感する。

 

「…まぁ、過去の話はこのぐらいにしましょっか。」

 

今はそれよりも未来の話だ。

 

「明日なんですね…いよいよ。」

 

「…あぁ。」

 

「先輩方は夢を現実にしたわけだ。」

 

「や、やべー…お前が急にそんなこと言うから

緊張してきただろ…」

 

「ふっ…みんなで同じもの目指すのいいな…って?」

 

「…なっ!?おまっ…何でそれを!?」

 

「良いこと言っちゃってまぁ。」

 

「う、うるせー!」

 

「うぐっ…!」

 

この子いつから暴力振るうようになったん?

しかも結構いいの入ったんですけど。

 

「ったく、でかくなっても全然変わんねーな…

お前は。」

 

「先輩がちっちゃすぎるんでっ…!!」

 

ちょっ!何で正確に同じ場所に打ち込めるんだ!?

 

…まったく、小さいわりに一撃は重いのな。

どっかの猫耳ヘッドフォンのプロデューサー然り、一体どこにそんなパワーを秘めているんだか。

 

レイヤさんはあんなスラーッとしてるのにな。

背丈でいえば俺とそんな変わらんもん。

 

 

「しかし、すみませんね…明日は武道館だっていうのに…母ちゃんが会いたい会いたいうるさいもんですから…無理言って来てもらっちゃいましたけど。」

 

「気にすんなよ。今日は練習もないし、おばさんには世話になったしな…挨拶ぐらいはしないと

ダメだろ。」

 

「しなくていいと思いますけどね。」

 

 

 

「ただいまー。」

 

「おかえり…ってあらま!」

 

「ご、ご無沙汰してます。」

 

「あーちゃん!久し振り!大きくなったわねぇ!」

 

あーうるさい。

 

「どうぞあがってあがって!」

 

「お、お邪魔します。」

 

「優!ちゃんと隠すものは隠したの!?変な本とかビデオとか置いてないでしょうね!?」

 

「あるわけねーだろ。」

 

余計なお世話だっての。

ビデオとか古いんだよ。

 

「はは…相変わらずだな。」

 

「悪化してますよ。」

 

 

幼馴染との久し振りの語らいは母親が

終始ハッスルしててうざかったが、有意義な時間だった。

 

 

 

「お邪魔しました。」

 

「泊まっていけばいいのに。」

 

「あほか。」

 

どうせ、同じ部屋で寝ろとか言うんだろうが。

見え見えなんだよ。

 

「明日のライブ頑張るんだよ!優、送ってってあげなさい。」

 

「あぁ。」

 

 

 

「ここまででいいぞ?遠くなるだろ。」

 

「いやいや、家まで送りますよ。何があるかわからんですし。」

 

「…何かあったら守ってくれるのか?」

 

「え?」

 

「守ってやるよって言ってくれたよな…あの時。」

 

その話か…こっ恥ずかしいからやめてもらいたいが。

 

「…あの時、すげー嬉しかったんだぜ?」

 

「…どうも。といっても、もう先輩には大切な人達がいるじゃないですか。」

 

「何言ってんだよ…その大切な人達の中には…お前だって入ってるんだからな。」

 

え、何このかわいい生き物。

やばいんだけど。

 

 

 

「…俺が有咲を守る。」

 

「お前…」

 

「それは今も昔も変わらないですよ。」

 

「はっ…途中、いなくなったくせによ。」

 

「う、それは…」

 

「針千本でもなんでも飲んでやるって言ってたよな?」

 

なんてこった。

きっちり覚えてやがった。

 

 

…俺の知らない間にこの人は色んなものを得ていた。そんな幼馴染の側に自分がいられるということが…そんな幼馴染の中に自分も確かにいるということが…何よりも嬉しかった。

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