金髪・ツインテ・ツンデレこと市ヶ谷有咲です。
連休明け。起きて学校まで普通に来た俺を褒めてほしい。
予想通りというべきか校内はRoseliaの主催ライブの話で持ちきりであった。
皆が皆、目を輝かせてベースがキーボードがドラムがギターがボーカルが凄かったなどと熱弁している。
この羽丘にはRoseliaのメンバーが宇田川の他にあと2人もいるそうだ。
リサ先輩にユキナ先輩というらしい。
思いのほか身近にいたものだ。
まぁ、バンド組むなら同じ学校の人と組むのは当然っちゃ当然か。
行きたくねーなー…クラス。
絶対あいつらうるさいもん。
「おはよう、優。」
「おーす、戸山に朝日。」
「おはよう。」
お前らは落ち着くわ。騒がしくなくて。
「朝っぱらからRoselia、Roseliaって騒がしいよなぁまったく…」
「凄かったよね、六花。」
「うん!」
ってお前らもかい。そういやそんなこと言っとったな。
「つーか宇田川がドラムって…ちょっと
びっくりだよな。」
「あこちゃん…凄く楽しそうにドラム叩いとったよ。」
「へぇ…」
緊張ってものには縁がなさそうだからな…あいつは。
「朝日のような田舎っぺには良い刺激に
なったんじゃねーの?」
「うん…私も頑張らんと…」
頑張るって?
っていうか今ちょっとバカにしたんだけど…
「優は何してたの?」
「俺?俺は……世界を救ってた。」
「えぇっ!?」
「六花…たぶんゲームの話だよ…」
「大変だったんだぞ、マジで。」
「はいはい…宿題はちゃんとやったの?」
「もちろん。」
この子、最近は俺の保護者になりつつある。
別にそんな心配せんでもいいのに。
「…其方らの召喚に応じてドーン!」
噂をすれば、時の人となった大魔姫(自称)が現れた。
…お前、そのくだり前もやってなかったか?
「あこ、おはよう。」
「おはよう、あこちゃん。」
「おっすー。」
「おはよー!」
朝から元気いっぱい全速前進全開だな
こやつは。
「ライブ、楽しかったか?」
「うん!あこもだけどね!リサ姉も
りんりんも紗夜さんも友希那さんもみーんなノリに乗っててやっててすっごく楽しかったよ!」
「よかったなぁ。」
「優も今度ライブする時は見に来てよ!」
「あぁ、行けたらな。」
行かんと思うけど。
「星川君、悪いけど帰りに職員室まで来てもらえる?」
だっる…。
どうせまた何か頼み事なんだろう。
あの先生、生徒パシリすぎ問題。
まぁ、大体俺か朝日なんだけど…
俺はもっぱら力仕事担当である。
先生…俺は肉体派じゃあないんすけど…
体力ないし。
「ごめんなさい、ちょっといいかしら?」
「んぁ?」
誰だよ…って…すっげぇ美人…!
声をかけてきたのは腰まで届くであろう
銀髪を垂らした凛とした顔つきの美人さんであった。
「な、なんでしょう?」
こんな人初めて見たけど…上級生…だよな?
何でこんな一年生の階にいるんだ?
「職員室の場所を聞きたいのだけれど…」
「えっ」
職員室…ってうそやん。
この人転入生か何かか?羽丘に来て日が
浅いとか?それを言うなら俺もなんだけど…。
「あ、えっと、俺もちょうど職員室に用があって…一緒に行きます?」
「えぇ、そうさせてもらうわ。」
「…………」
やっべー…物凄く気まずいんですが…
さっきから全然表情変わらんし…
表情筋…鍛えたほうがよろしいのでは?
美人だが落ち着いた佇まいに無表情なのもあってちょっと近寄り難い雰囲気があった。
「着きましたよ、ここです。」
「ありがとう、助かったわ。」
なんだかんだ美人さんにお礼を言われるのは悪い気はしない。案内した甲斐があるというものだ。
「お願いね、星川君。」
「はーい。」
頼まれたのは案の定力仕事であった。
速攻終わらして帰るか。
「湊さん、バンド活動をしているんですってね?」
「えぇ。」
「やるのは構いませんが、こういった
課題もこれからはきちんとこなしてくださいね。」
「えぇ、以後気をつけます。」
あの人…湊さんっていうのか。
どうやら忘れてしまった課題のプリントを出しに来たらしい。
…しかし、どいつもこいつもバンドバンドって…
一体何があるっていうんだよ?
バンド活動のその先に…。
そんなの、ただの自己満足だろ?
頼まれた用事を済ませ帰る頃にはもう
夕暮れ時であった。
「「はぁーっ…」」
誰やねん…俺とため息シンクロしたやつ…
前もあったなこんなこと。
「って朝日かよ。」
「あっ、優君。」
こいつ、こんな遅くまで何やってんだ?
「今、帰り?」
「あぁ、先生にまた頼まれ事してよ…生徒をパシリすぎだよなまったく…」
「大変やったね…」
「一緒に訴えようぜ?ブラック教師って…そんなんだから彼氏の一人もできないんだってな。」
「そ、そんなん言ったらあかんよ…」
「で、朝日はこんな遅くまで何してたん?帰らんの?」
「私は…ちょっと…」
「ふーん…何か知らんけど頑張れな。
んじゃ。」
「う、うん!」
憂鬱になる。
忘れたはずなのに…。
何故音楽に関する話題ばかりが俺の周囲で繰り広げられるのであろうか。
勘弁してほしい。
…昔は好きだった。
子供ながらに文字通り音を楽しんでいた。
楽しいという感情をストレートに弦に乗せて掻き鳴らしていた。
楽しい…か…忘れちまったなぁ…そんな
感情。