奏でることを忘れた少年   作:TAKACHANKUN

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大魔姫の姉

 

「あのさ、ちょっといいか?」

 

始まりはその一言であった。

 

 

 

えっと…どなたですか?

こちらのイケメンは。

 

一瞬、男子生徒かと思ったわ。

 

背丈も俺とそんな変わらんし…

 

深紅色の髪を腰まで伸ばした

長髪の女子生徒。

 

まず、間違いなく上級生であろう。

 

そんな人が俺に何の用なのであろう。

 

いつかの湊さんだっけ?彼女のように

迷子ったわけでもなさそうだし…

 

 

 

 

『今からアタシと決闘しようぜ!』とでも言われるのだろうか。

 

 

ありえなくはない。

 

うん、他をあたってくれ。

 

リアルファイトはまじ無理。

 

勘弁してちょ。

 

ぼく痛いのキライ。

 

勝てないケンカはしない主義。

 

 

「そんなに固くなるなよ。ちょっと相談があってさ…」

 

相談?初対面のはずですが…

 

「ここじゃなんだし、ちょっと屋上にでもいかないか?」

 

あっ(察し)

 

これ終わったやつですね。

 

屋上ですか?屋上で何するんですか?

 

決闘ですか?制裁ですか?

 

今度昼飯奢るんで許してください。

 

学食は高いので勘弁してください。

 

そもそも俺何かしましたっけ?

 

授業も真面目に受けてるし、先生の頼み事も快く引き受け、女子にも優しくしている。

 

もうダメだ。思考がまとまらない。

 

 

 

 

お母さん。お父さん。

 

未だ会えずにいる幼馴染。

 

1年A組の皆さん。

 

星川優を知るすべての皆さん。

 

俺は今日プライドというプライドを粉々にされるかもしれません。あしからず。

 

ていうか助けて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな!急に付き合わせて。」

 

「あ、いえ…」

 

そういえば屋上には初めて来たな。

 

絶好の昼寝スポットなので是非とも

入り浸りたいんだけど…さすがに他の

生徒達の邪魔はしたくない。

 

そういうこともあって屋上は利用していなかったのだが…なかなか良い所じゃないか。

 

陽当たりも風当たりもいい。

 

「そ、それで…ご相談というのは…?」

 

「あぁ…っと悪い。まだ自己紹介もしてなかったな!アタシは宇田川巴。」

 

「ほ、星川優です。」

 

「そっか、優っていうのか。よろしくな!」

 

そう言って俺の背中をバンバン叩く。

 

めっちゃ痛い。

 

「あこと同じクラスだったよな?」

 

ん?何故ここであいつの名が…

 

「あこって…宇田川あこですか?」

 

口に出して気づいた。

 

まさか…

 

「あぁ!アタシの妹なんだけどさ」

 

「お、お姉さんですか!?」

 

 

 

 

 

ぜんっぜん似てねぇ!

 

失礼を承知で言うが1ミリも似てねぇ。

 

義理の妹とかいうオチはありませんよね?

 

「最近のあこの様子を知りたくてさ

こうして優に付き合ってもらったわけなんだ。」

 

なるほど…本当に相談だったのか。

 

 

「よかったぁ…」

 

「ん?よかった?」

 

「いえ、なんでも…それで、あこさんの

様子でしたっけ?」

 

「あぁ!」

 

「そういえば最近、一人でぶつぶつ言ってることが増えましたね。」

 

いつもと違うというか。

 

「いつも、我が身に宿りしなんちゃらが

バーン!とか言ったりしてるんですけど…最近は聞かなくなりましたね。」

 

「そっか…」

 

「なんか、悩んでるんでしょうか?」

 

あったほうがいいとはいわないが

あの口上を聞けないとなるとそれはそれでちょっと寂しい気もする。

 

ほんのちょっとだけだけどな!

 

「あこのヤツ、カッコいいものに憧れててな。」

 

「あー…それはなんとなくわかります。」

 

「その…なんていうか…その中にはアタシも含まれてるらしいんだ…」

 

さすがに恥ずかしいのか、少し顔を赤くして巴さんは話す。

 

ちょっとかわいいとか思っちまったよ!

畜生!

 

「それで、そのカッコいいっていうのを

具体的に説明するにはどうしたらいいかってわけで悩んでいるみたいなんだ。」

 

なるほど。

 

…いや、無理じゃね?

 

人間無理に短所を克服しようとせず、長所を伸ばすべきだと思う……あれって長所なのか?

 

「アタシは今回力になれそうになくてさ…アタシの幼馴染が手伝ってくれてはいるんだけど…」

 

手応えはさほどって感じなのかな。

 

「やっぱり、そういうのは男子のほうが

詳しいのかなーと思って優に話しかけたんだ。」

 

そういうことか…だから俺に。

 

はぁ…仕方ない。

 

乗りかかった船ってやつだ。

 

「そういうことなら、俺でよければ力になりますよ。」

 

「ホントか!?」

 

わぁ近い。近いっす。

 

「俺も男ですし、あいつの気持ちはわからんでもないんでね。」

 

俺にもカッコいいものに憧れた時期はある。

 

「悪いな!助かるよ優!あこのヤツ、良い友達持ったな…これからも仲良くしてくれな!」

 

友達か。友達なのかな?

 

まぁそういうことにしとくか。

 

…嫌いではねーし。

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