呪術廻戦・辻   作:ドラゴン竜

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プロローグ・春夏秋冬 司

 人が、怖い。

 

 

 『 』が、怖い。

 

 

 怖いものへと立ち向かった結果がこれだと言うのなら、俺は、諦める。

 

 

******

 

 広島県広島市の某所。住宅街の薄暗い細道。そこには、異常が渦巻いていた。

 

 

「た、助け⋯⋯痛い⋯⋯」

 

 

 宙に浮かぶ女性。足を伝い、流れる血。まさに、普通ではない景色だった。そして、それを眺める者がいた。

 

 

「なんで、()()がいるんだ」

 

 

 家の中から眺めていた少年は、そう小さな声で呟く。己は、家から出てないのに。何故、と。あれは、きっと俺のせいだ。少年は、今までの経験からそう結論づけた。ならば、何とかしなければ。あの女性を助けなければ。少年は、外へ出る。

 

 

「あ、ああ。た、助けて」

 

 

 血を流した女性は懇願する。目に入った少年に対して。そして、少年は。

 

 

「今、降ろしてあげます。ただ、それが貴方にとって救いとなるかは、運次第だ」

 

 

 少年は手を天に掲げ、体内で燻るおどろおどろしい何かを呼び起こす。その何かが昂り、溢れ出す瞬間に合わせ、手を振り下ろす。直後、轟!!!と凄まじい音と共に辺り一面が白に塗り潰される。

 

 

()()は、運が良かったですね」

 

 

 少年はそれだけ言い残してその場を去り、家へと帰る。後に残ったのは、地に伏せた女性と、砕けて大穴を空けたアスファルト道路のみだった。

 

 

******

 

「成程ねぇ、こりはほぼ呪術師の仕業だねぇ」

 

 

「分からんですよ、呪詛師かも」

 

 

「アホか、呪詛師が人助けなんかするかよぉ。これをやったやつを見つけてさっさとお仕事終わりにしよぉ」

 

 

「ですね」

 

 

 男女が仲良さげに話している。それは普通だろう。格好に関しても、何も可笑しくはない。ただの人。ただ、少年の目にはそうは映らなかった。

 

 

「どういう事だ。アイツら、間違い無い。同族だ」

 

 

 少年はカーテンを閉めてベッドに身を投げる。そして、考える。今の今まで、自分と同じ存在になど会った事が無い。それが、今となって現れた。しかも、封じていた()()を使った次の日に。考えうるは結論は。

 

 

「俺の事を探しに来たのか」

 

 

 少年は、昨日女性に向かって言った言葉を思い出す。

 

 

『貴方は、運が良かったですね』

 

 

「俺はついてなかったみたいだ」

 

 

 ピンポーン、と自分の家の呼び鈴がなる。バレてる、逃げようが無い事を察した少年は下へと降りていき、覚悟する。

 

 

「どうなるかな」

 

 

 少年はドアを開けた。

 

 

「どうもぉ、えっとですねぇ。警察なんですけどぉ、向こうの道路がめちゃくちゃになっててぇ、何か知りませんかぁ?」

 

 

 喋り方に癖がある女性が話しかけてきた。少年は一旦、白を切ってみる事にした。

 

 

「いえ、ずっと家にいるので。確かに昨晩、大きな音がした気はしますけど、ヘッドホンしてたもんで」

 

 

 女性は柔和な表情をしているが、目には鋭い光が宿っていた。そして、唐突に少年に対して手のひらを向ける。その瞬間、衝撃が少年を襲った。顔を何かで殴られた様に後ろへと吹き飛ぶ。

 

 

「嘘ついちゃダメですよぉ、現場の残穢がここに続きているのは分かってますしぃ。それにぃ、あなたについての調査も済んでいるのでぇ。着いてきてくれますねぇ、春夏秋冬(ひととせ)(つかさ)君?」

 

 

「ちょ、如月先輩!何してんすか!!急に一般人に呪力飛ばすなんて!!」

 

 

 男は女性の肩へと掴みかかり、怒声を飛ばす。

 

 

「ちゃんと加減しましたよぉ。それにぃ、彼はちゃんと受けてますよぉ?自分の呪力でぇ」

 

 

 先輩と呼ばれた女性は指さす。男は目線をそちらに向けると、鼻を抑えながら立ち上がる司がいた。

 

 

「あんた、きっといい人じゃないな。その力は危険なんだ」

 

 

 司は女性に視線を飛ばす。それを受けた方は何食わぬ顔で言葉を紡ぐ。

 

 

「その言い方ぁ、てっきり呪力制御出来てるもんだと思ってましたけど、そうでもなさそうですねぇ」

 

 

 如月は顎に手を当てて考え込む。数瞬の間。そして、あっ!と声を出す。

 

 

「春夏秋冬君、その力の使い方知りたくないですぁ?」

 

 

「なんだって?」

 

 

「如月先輩、まさか⋯⋯」

 

 

 男は何かを察したようでハッとしていた。

 

 

「面倒なことは全部、五条さんにぶん投げればいいんですよぉ。という訳でぇ、呪術高専に来るといいですよぉ」

 

 

 司は何が起ころうとしているか理解出来なかった。しかし、今日が間違い無く、大きなターニングポイントになる事は何となく分かった。

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