呪術廻戦・辻   作:ドラゴン竜

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両腕宿儺・3

 呪霊を払い、より濃い気配がする方へと歩を進める司。階段を駆け上がると踊り場に人影。

 

 

「やぁ、初めまして。春夏秋冬司くん」

 

 

 踊り場を見上げる形で止まり、姿を見る。額には縫ったような後に寺の人が来ていそうな服装。どうにも怪しそうな雰囲気を纏っていた。

 

 

「あなた⋯⋯誰です?ここは危ないですから、早く学校の外に」

 

 

「今日は別の目的で来たんだけど、君にも会えて良かった。また会おう、司くん」

 

 

 そう言い残すと、男は踊り場を離れ上の階へと消える。急いでその後を追いかける司だが、踊り場に着く頃には姿形どころか気配さえ感じられない。あれは一体なんだったのだろうか、不安を感じずにはいられなかった。

 

 

 先程の男の事は一旦置いておいて、階段を掛け上る。するとガラスか割れる音と伏黒の声。すぐ上の階に伏黒がいる事が分かった。急いで現場に急ぐ。階に着くと何かが崩落する音と虎杖の叫び声。続いて、耳に響く衝撃と轟音。廊下に飛び出て目視すると壁に大穴が空いて、その穴から虎杖が飛び出して行くのが見えた。

 

 

「あ、ちょっと!」

 

 

 声を出すが間に合わず、虎杖は下へと降りた。頭がこんがらがってきた。さっきの男に続き、何故校舎の外にいた虎杖がここに?とにかく彼の後を追わなくては。走り出すと、目の前に天井から溶けだすように呪霊が2匹こぼれ落ちる。

 

 

「ち、急いでんのに!!」

 

 

 全身に呪力を滾らせ、臨戦態勢へと入る。幻雷呪法『纏』を使い、スピードを超強化する。足へと力を込めて一気に駆け抜ける。一瞬で2匹の呪霊の間を通り抜け、その過ぎさる瞬間に『繋』を撃ち込む。内側から2匹が弾け飛ぶ。同時に2つの術式までなら使える。確認も済んだ。

 

 

 全身を貫く嫌悪感、圧迫されそうな程の存在感が急に世界を支配する。唐突な事態に混乱するよりも先に下にいるであろう2人の事が気になり、穴から下を覗く。すると、そこにはボロボロになった伏黒と高笑いをあげる虎杖が居た。

 

 

 虎杖が自らの服を破き、高らかに叫ぶ。

 

 

「ああ、やはり!!光は生で感じるに限るな!!人は!女はどこだ!!」

 

 

 何かに気付いたのか邪悪な笑みを零す。

 

 

「子供も女も蛆のように湧いている。素晴らしい、鏖殺だ」

 

 

 明らかに今の虎杖は正気では無かった。司は止める為に全身に呪力を漲らせる。が、一瞥。それだけで実力の、いや格の違いを教えられた。腰が完全に抜けた。

 

 

 虎杖が跳躍しようと腰を少し落とした瞬間、()()()()()()()()

 

 

「あ?」

 

 

「人の体で何してんだよ、返せ」

 

 

「オマエなんで動ける?」

 

 

「?いや、俺の体だし」

 

 

 2つの声がひとつの体で会話する。奇妙な光景だった。みるみる空間を圧迫していた感覚が収まっていく。

 

 

(収まったのか⋯⋯?)

 

 

 司は全身から冷や汗を流しながら何とか立ち上がる。虎杖の近くに居た伏黒と目が合う。伏黒の目はそこに居ろと示していた。伏黒が虎杖対して構え、呪力を練っていく。

 

 

「動くな、お前はもう人間じゃない」

 

 

「は?」

 

 

「呪術規定に基づき、虎杖悠仁。オマエを───」

 

 

「『呪い』として祓う(ころす)

 

 

 虎杖が両腕を上げて抵抗の意思が無いことを表す。

 

 

「いや、なんともねーって。それより俺も伏黒もボロボロじゃん。早く病院行こうぜ。なぁ春夏秋冬?」

 

 

 声をかけられた司は思わず震えてしまった。虎杖に対していつでも『繋』を撃てるように構える。

 

 

(今喋ってんのが呪物が虎杖かも、こっちは分かんねーんだよ⋯⋯!!どうしたらいい!?)

 

 

 伏黒は脳みそをフル回転させてこの状況を打開する為に考える。しかし、何も浮かばない。

 

 

「今は、普通、だよな、虎杖」

 

 

 司は恐る恐る声を掛ける。直感で今は虎杖であると分かっていたが聞かずにはいられなかった。

 

 

「おう、しっかり俺だけど。こっちにきて伏黒担ぐの手伝ってくれ」

 

 

 虎杖に呼ばれた通りに連絡橋の上に降りて、伏黒の傍に行く。

 

 

「虎杖、またお前がいつ正気を失うかも分からない。少しだけ離れてくれるか?」

 

 

「あぁ、いいよ。こんなもんでいいか?」

 

 

「⋯⋯ありがとう」

 

 

「どうしてこっちに来たんだ!!春夏秋冬!!」

 

 

「だって、そんなボロボロでどうやって虎杖を止めるっていうんだよ!!」

 

 

「あのー、ほんとに大丈夫なんですけど⋯⋯」

 

 

 3人はそれぞれの思いを持って場は混乱を極めていた。そんな時転機は訪れる。

 

 

「今、どういう状況?」

 

 

「なっ」

 

 

「「五条先生!」」

 

 

 伏黒と司が同時に声を上げる。いる訳の無い人物が、当然の様にそこにいる。先程から色んな事が起きすぎて頭が追いついてこない。

 

 

「どうしてここに?!」

 

 

「や、来る気なかったんだけどさ。流石に特級呪物が行方不明となると上が五月蝿くてね。観光がてらはせ参じたってわけ」

 

 

 説明しながら五条はボロボロになった伏黒をスマホで取る。2年のみんなに見せよっとなんて呟いてる。伏黒はイラつきを隠せずに舌打ちした。

 

 

「で、見つかった?」

 

 

 その問いに思わず2人は黙り込んだ。司は現場を見た訳では無いが、何となく目的の物を虎杖が取り込んだのは理解していた。沈黙が少し続くなか、虎杖があのー、と切り出す。

 

 

「ごめん、俺それ食べちゃった」

 

 

 五条、一瞬のフリーズ。

 

 

「マジ?」

 

 

「「マジ」」

 

 

 伏黒と虎杖がコンマ1で返答する。

 

 

「んー?ははっ、ホントだ。混じってるよ」

 

 

 五条は黒い布越しに虎杖を観察して結論付ける。

 

 

「体に異常は?」

 

 

「特に⋯⋯」

 

 

「宿儺と代われるかい?」

 

 

「スクナ?あのさっきの奴?多分できるけど」

 

 

「んじゃ、10秒だ。10秒経ったら戻っておいで」

 

 

 それを聞いた五条は不敵な笑みを浮かべ、準備運動をし始める。

 

 

「でも⋯⋯」

 

 

「大丈夫。僕、最強だから」

 

 

 その言葉には何処か驕りでは無く、確かな確信めいた響きが篭っていた。

 

 

「司、これ持ってて」

 

 

「わっとと、なんですかこれ?」

 

 

「喜久福」

 

 

(お、お土産!?こっちはどんな思いしてると⋯⋯)

 

 

 司は言葉には出さずに心に留めて置いた。

 

 

「土産じゃないぞ。帰りの新幹線で僕が食べるんだ」

 

 

 五条が司にどうでもいい事を指摘する。その瞬間、虎杖が五条へと飛びかかる。

 

 

「先せ───」

 

 

 轟っ!!と音がなり司の前髪を揺らす。目を開けると無傷の五条が虎杖の後ろに立っていた。

 

 

「生徒の前なんでね、格好つけさせて貰うよ」

 

 

 圧巻の一言であった。暴れる宿儺を丸で赤子の手をひねる様に五条は易々といなす。

 

 

「まったくいつの時代でも厄介なものだな、呪術師は」

 

 

 そういうと呪力を手に集中させ、一振。地面がえぐれ、五条の姿が煙の中へと消える。勝利を確信した笑みを浮かべる。

 

 

「7、8、9」

 

 

 煙が晴れた先では無傷の五条と宙に浮かぶ瓦礫。後ろにいた伏黒は見慣れた物を見る目で。司は五条の圧倒的な力に、驚きを隠せない表情をしていた。

 

 

「そろそろかな」

 

 

 ドグンッ!!と虎杖の体が大きく揺れる。

 

 

(クソ!!のっとれない!この小僧、何者だ!?)

 

 

「おっ、大丈夫だった?」

 

 

 虎杖の目付きと声が変わり、禍々しい雰囲気と呪力が消える。

 

 

「驚いた、ホントに制御できてんだ」

 

 

「でもちょっとうるせーんだよな」

 

 

 虎杖が自分の頭をガシガシと殴る。アイツの声がする、とボヤく。

 

 

「それで済んでるのが奇跡だよ」

 

 

 そう言った五条は人差し指で虎杖の額を小突く。すると虎杖が意識を失い、五条へと倒れかかる。

 

 

「殺したんですか⋯⋯?」

 

 

「まさか、気絶させただけだよ」

 

 

 司はそれを聞いてほっと溜息をつく。

 

 

「これで目覚めた時、宿儺に体を奪われていなかったら彼には。器の可能性がある、さて、ここでクエスチョン。彼をどうするべきかな」

 

 

 伏黒が少し黙り込んで、口を開く。

 

 

「仮に器だとしても、呪術規定に乗っ取れば殺すべきです。でも、死なせたくありません」

 

 

 伏黒が力強く答える。司も伏黒と相違ない事を示す。

 

 

「⋯⋯私情?」

 

 

「私情です、なんとかしてください」

 

 

 五条がクックックと堪えきれないといった笑いを零す。

 

 

「かわいい生徒の頼みだ。任せなさい。とりあえず君たちは学校に戻って治療受けてね。僕はやる事があるから」

 

 

 そう言って司から喜久福を受け取り、虎杖を担いで颯爽と五条は消えた。

 

 

「⋯⋯はぁ、疲れた」

 

 

「大丈夫?」

 

 

「大丈夫なもんかよ、でもひとまず何とかなったな」

 

 

 伏黒が司に肩を組む。急だったので司は少し面食らった表情だ。

 

 

「結構足にきててな、肩貸してくれ」

 

 

「先に言ってよ。勿論よろこんで」

 

 

 こうして、一旦杉沢第三高校の任務が済んだ。

 

 

 

 

 

 

 




幻雷呪法『纏』の説明書いときます
体に雷撃を纏う。凄く早く動ける。纏っている雷の熱と破壊力を取り除き、雷が持つ「疾さ」という概念を抽出して使うという縛りで効果を底上げしている。スピードには膂力は乗らない(これも縛り)。
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