「生徒になる気は無いかい?」
五条は司の目を覗き込みながらそう聞いた。目隠しをしているのにも関わらず、何もかも見透かされているような雰囲気だった。
「⋯⋯無いです。今の話が本当ならば僕は尚更こんな所にいるべきじゃ無い。閉じこもってなければ、ならないんです」
司の返答は今までの経験を踏まえた上だった。あの化け物が呪霊であるなど関係ない。人と関わってはならない。それが自分の生き方なのだ。
「ふーん、そっか。でも、やっぱりここに居た方がいいよ。その方が君としては都合がいいと思うよ」
五条はそう諭す様に告げた。
「ッ、ですからここには────」
「君の両親の
瞬間、蘇るあの日の事。
「───────」
******
車で揺られて3時間。司は後部座席で眠りについていた。
「着いたよぉ」
のほほんとした女性の声で目を覚ます。頭を振るい、車を降りる。周りを見回して場所を確認する。目の前に映るのは、森の中に不自然にそびえ立つ豆腐型のコンクリートの建造物。
「ここはどこですか?」
司は結局、分からずに目の前に立っている如月に質問を投げる。如月はスマホを弄って、まるで答える気が無さそうだ。
「あー、恵ぃ。説明して差し上げてぇ?」
「自分ですればいいじゃないですか」
「先輩めーれーだぁ」
「ちっ、分かりました」
恵と呼ばれた男は、車の中に置いてある紙を手に取って説明を始める。
「ここは、まぁお前の事を検査する為の施設みたいなもんだ。入学試験だと思ってくれ」
「な、なるほど?」
「急に色々と言われて混乱するのも分かるが、お前の為だ」
目の前でそう説明する恵は何処か気だるそうで、他人との関わりを拒んでるようにも見えた。しかし、それでも隠しきれない優しさが滲み出ていた。
「とりあえず分かりました。あの建物に入ればいいんですよね?」
そう問いかける司に恵は頷きで答える。
「じゃあ、行ってきます」
そう2人に告げて建物に向かって歩き始めた司。その背中を眺める2人。
「大丈夫かねぇ、彼ぇ」
「それは、相手次第でしょう」
「恵の時はどうだったのぉ?」
如月の問いに少し考え込む恵。
「俺の時は
「彼はどうなるのかねぇ」
既に、司の姿は見えなかった。
******
建物の正面にあった唯一の扉を潜ると、薄暗い一本道が続いていた。道の端に等間隔に置いてある小型の灯篭が道を照らしていた。薄気味悪い場所だ、と司は思った。
道なりに歩いていると、開けた所に出た。上を見上げるとシャンデリアの様な物体がぶら下がっている。それが空間が照らしているようだ。
「ようこそ、試験会場へ〜」
暗闇が溶け出るように人が現れる。黒い装束に身を包み、口元には笑みを浮かべていた。
「えっと、はい」
司はなんと答えていいか分からずに、一先ず相槌をうつ。
「まぁ、緊張しないで。気合い入れてしっかり臨んでくれたまえ」
黒装束が手印を結ぶ。
「じゃあ、始めるよ。コイツをビビらずに倒せれば合格だ」
そう言って後ろを指さす。司はその方向に目を向けると、いた。
「何でッ、それが!」
「それじゃ、試験開始ね」
空間に鐘の音が、鳴り響く。