「じゃあ、ここまで。しっかり復習しといてね」
教壇に立つ五条は手を叩いて授業を締める。それを聞いていた恵と司は、ノートに聞いたことを書き留める。司は窓の方へと視線を向け、数日前のことを反芻する。
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「なんなんですか、あれは」
五条に向かって司は怒気を孕んだ声をぶつける。ぶつけられた方は涼しそうな顔だ。
「試験だよ、君みたいな子はみんな受けてる」
「そんなことが聞きたいんじゃない」
「まぁ、悪かったよ。事前に何も教えないでやった事は。でも、君はいつかアレを乗り越えなきゃならない。逃げ続けても何もかも変わらないし、救えないよ」
「⋯⋯⋯⋯」
司の表情が苦虫を潰したように歪む。
「ここでゆっくり考えて行くと良いよ。時間と環境は僕が用意するからさ」
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結局、ここにいる。逃げ出す度胸も無ければ目の前にぶら下げられた
「あぁ、そうだ。司は後で僕のとこ来てね」
「⋯⋯分かりました」
五条に呼ばれた司は、不機嫌だった。
呼ばれた通りに五条の部屋へとやってきた司。一応、ノックして入る。
「あぁ、来たね。茶菓子あるけどゆっくりしてく?」
「いらないです。それで用事ってなんですか。あの事について教えてくれる気に成りました?」
語気強めに五条へと司は問いかける。顔にも出てるかもしれないなと思っていた。対して、五条は口の端に笑顔を浮かべて余裕といった雰囲気だった。
「その話はまた今度ね。今回は君の呪力コントロールについてだ」
「呪力コントロール⋯⋯?」
「そ、上手く使えるようになった方がいいよ。そうすれば、前みたく
司はその一言ではっきりと顔を歪める。様々な感情が頭の中で暴れ回り、今にも突き破りそうだ。
「⋯⋯なんでも知ってるんですね」
「何でもは知らないよ、知ってる事だけさ⋯⋯ってのは冗談で。これはマジメな話だよ」
「それで、コントロールってどうするんですか?修行でもすればいいんですか?」
それを聞いた五条はニヤリと口を半月にして笑う。
「そのとーおり!司には修行してもらう。呪力の出力は出来てる。なら後は強弱を調節するんだ。簡単な話だろ?」
怪しいセールスマンの様な身振り手振りで説明する五条。
「はぁ⋯⋯えっと、どんな内容の修行か聞きたかったんですけど」
司はため息混じりに質問を投げかける。それに対し、待っていたと言わんばかりは五条は、回転イスをくるっと回転させて司に椅子背を向ける。
「ズバリ、実地訓練、だ!!」
「じ、実地?いきなり?」
「さて、それじゃあ。行ってらっしゃい」
五条は確信していた。これを乗り越えた時、司には大きな変化が訪れる、と。
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千葉県某所、
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「えっと、よろしく。伏黒君」
「伏黒でいい。それから、俺からあまり離れるなよ。お前、現場は初めてだろ?」
恵は司へとそう声を掛ける。学校に入る前から感じていたが、恵は善人だ、と司は心の中で呟いた。
「あぁ、離れないよ。出来ることがあれば言ってくれ」
「まぁ、そうだな。五条先生はお前を鍛える為に、今回は付いてこさせたんだろうからな。じゃあ、この神社の辺りにある残穢、見えるか」
恵にそう聞かれた司は、目をこらす。すると、うっすら足跡の様な物が浮かび上がる。神社の至る所に撒き散らされており、そのどれもが社の隣にある大きな木に続いていた。
「見えた。どれにあの大樹に続いてる」
「そうだ、残穢ってのは呪力を使った際に残る痕の事だ。呪霊でも術師でも残る」
「成程、伏黒は先生に向いてるな。分かりやすいよ」
「よせよ、柄じゃない」
恵は少し照れたように顔を伏せる。クールな雰囲気を纏っていたので意外な一面を見たと司は驚く。彼とはもっと仲良くなりたいものだと胸中で願う。
「さて、それじゃあの木に近付くか。帳、頼めるか?」
「分かった。『闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え』」
司の声に応じて、2人の頭上よりタールの様な黒い物質が現れ、それがドーム状に神社を包み込む。
「おぉ、出来た。出来るもんだな」
五条先生と補助監督?のいち何とかさんの指導のお陰で帳と呼ばれる結界を使えるようになっていた司。最初はそんなもの出来るわけないと思っていたが、2人に(主に五条)言われるがままやり続けていたら出来るようになっていた。五条は当然と言わんばかりの表情だった。
「上出来だ。これならこの中で呪術を使っても一般人の目に触れる事は無い。調査開始だな」
恵に頷きで答える。一抹の不安を感じつつも、何処かで未知の体験に期待している自分が何処かにいた。