絶対に許さない。顔も見たくない。あ、どうも皆さん。絶賛グレている最中のクロです。
「クロ~だましたのは謝るから、下りてきてー」
「まりなさんじゃん。どうしたの?」
「あ、蘭ちゃん」
と、そこに美竹のお嬢がやってきました。美竹のお嬢はあんまり私に構ってくれません。というか、私個人的にはどこぞの組の――おっと、これ以上はいけませんね。そんな訳ある訳ありません。
だって、もし美竹のお嬢が、本当のお嬢だったら、
「クロが下りてこないんだよー」
「……なにあったの?」
と、呆れた口調の美竹のお嬢。事あるごとに友希那のお嬢と口論しているとは思えない口調ですね。いえ、喧嘩するほど仲が良いという言葉もありますから、二人は仲が良いと思うんですよ。猫的に。
まあそれは置いといて……今日、私が不貞腐れている――いえ、グレているのはご主人が私に対して行った行為のせいです。
それは、つい四時間ほど前の事です――
今日も今日とて、ラウンジ内を闊歩しながら、のびのびとした日を過ごせると思っていました。お昼までは。午前中は平日という事もあり、いつものメンバーがラウンジに来ることはありません。
あ、でもスタッフさんも暇なのか、遊んでくださったり、撫でてくださったりするので、猫的には満足です。あと、静かだから寝るのには最適ですよね!と、寝ようかと思っていた矢先でした。
「クロ~散歩行くよ~」
「みゃ?」
ご主人がやってきて、右手にはーネス?とかいうものを持っています。あれ?今日散歩の日でしたっけ?疑問に思いつつも、ご主人にあっさり抱きかかえられた私は、ご主人の持っていた道具を身に纏う事になるのです。散歩の時はいつもこれを着けて、街中や公園など歩くのですが……あれ?車?
「今日はちょっと遠出するからねー」
「にゃー」
そういう事ですか。それなら文句はないですよ。知らない所に行くのは、猫によっては不安になったりしますけれど、私は好奇心の方が勝るので
車に乗る前に、私専用のキャリーケースに入れられます。これ狭いから嫌なんですけれど、散歩の為です。我慢我慢。
しばらく、ケースの中でうつらうつらしていた私。眠ろうとしていた所で、散歩と言われたのですから仕方ないですよね。でも、今日はどこに行くのでしょうか?きっと、楽しい場所に違いないと、その時の私は思っていました。
で、車が止まり、キャリーケースから出された私が最初に目にしたのは「動物病院」という文字。アイエェェェェ!!??ビョウイン!?ビョウインナンデ!?と、困惑する私を抱き上げて病院へと入っていくご主人。嘘つきましたね!?ご主人!!
「にゃー!!にゃにゃっにゃ!!(特別意訳:ご主人!騙しましたね!!)」
「はいはい。大丈夫だからねー」
と、私の抗議の声を華麗にスルーするご主人。その後の事は思い出したくもありません……。注射打たれるわ、口を無理やり開けさせられるわ……しまいにゃ筋肉モリモリマッチョマンが出てくるわ……。なんだったんですか、最後に出てきた緑と黒の服を着た金髪の男は?右の腰に銃ってやつですか?ぶら下げていましたし……。
という事が、お昼過ぎにありまして……。ご主人に騙された私は絶賛籠城中な訳であります。いや、本当に酷い目に合いました。
「うん……まりなさんが悪いと思う」
「そんな!?」
と、美竹のお嬢に説明していたご主人モドキが膝から崩れ落ちていますが、そんなの気にしません。だって、騙した事には変わりない訳ですし。不貞腐れている私に、今度は美竹のお嬢が声をかけてきました。
「クロ。チュールあるよ」
「……みゃ?」
チュールですと!?……いえ、慌ててはいけません、私。これは美竹のお嬢の罠です。これであっさり釣られては、
「今なら、なんと二本だってさ」
「にゃん!!」
二本と聞いた瞬間、私は駆け下りていました。いや、やっぱり食欲には負けます。食事大事。うん。
「あー、ほらほら慌てないでいいから!今あげるから!」
と、私の様子に慌てた様子の美竹のお嬢。あれ?お皿用意するの?あ、そこにチュール出すんですね。……友希那のお嬢なら撫でながら、袋開けて、私のペースに合わせて中身を出してくれるんですけど……。
「はい。どうぞ」
「にゃ!」
まあ、食べられるのですから文句は言えないですよね。そういう事で、ハグハグと食べていると、頭を撫でられました。この感触は!!
「にゃ!(特別意訳:友希那のお嬢!!)」
「クロ、大変だったわね」
「ゆ、友希那さん。突然出てこないでください!!」
と、優しく撫でてくださる友希那のお嬢。その友希那のお嬢に対して何故か文句を言っている美竹のお嬢。あの、
「あら?私、きちんと声かけたわよ?『美竹さん。こんにちは』って」
「え……」
「うんうん。友希那ちゃん、きちんと挨拶していたよ?蘭ちゃん、クロに夢中で気付いてなかったみたいだけど」
「っ!!か、帰ります!!」
と、顔を赤くした美竹のお嬢が凄い勢いでラウンジから出て行ってしまった。あれれ?何があったというのでしょう?私と友希那のお嬢、そしてご主人モドキがポカンと扉の方に視線を向けています。もうちょっと遊んで欲しかったのですが、まあいいでしょう。チュールの残りをもらいましょう。
その後、友希那のお嬢からチュールをもう一本貰った私は、友希那のお嬢にたくさん遊んでもらったのでした。尚、夕方の食事がまた1/3に減らされたので、ご主人モドキに大抗議をしたのでした。本当にご主人モドキの行動が解せません!!
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