テンション上がって文字数多めになってしまった……
ということで、今回はしずく回です!
私──
幼い頃から自分の頭の中で考えたお話……というほどではないですが、設定を色々考えて遊ぶ事が良くありました。
最初はぬいぐるみに名前をつけて、お友達に見立てて遊ぶくらいだったんですけど、そのうち設定を考えるのが楽しくなってきて……
例えば、『おままごと』とかでも……
『しずくちゃーん、おままごとしよー』
『いいよ~。じゃあ、あなたはいそがしくてお家にあんまり帰ってこれない外交官のお父さん役ね!』
『がいこーかん?』
『そして、あなたはその奥さんの役!だんなさんに会えない寂しさを抱えながら、小さな子どもを二人育ててるの!子どもはこのぬいぐるみにしましょ!』
『しずくちゃんは~?』
『私はそのお家に代々仕えて子どもたちの送り迎えをする住み込みの運転手さん役!外交官のお父さんよりもお屋敷のことに詳しいけど、だんな様の顔を立てるためにわからないフリをしてるの』
『がいこーかんってなにするおしごとなの~?』
『外国との交渉とかする人のことだよ』
『こーしょー?』
『おはなし!』
『へ~、だからあんまり帰ってこないんだ~』
『じゃあ、まずは急にお父さんが帰ってくることになったところからはじめよ~!』
『でんわ~?』
『うん、まずお家にでんわがかかってくるの!』
と、こんな感じで私が決めた設定でおままごとをやっていた。はじめはみんな興味を持ってくれていたけど、おままごとが楽しくて、設定を膨らませていくほどちょっとずつみんなが離れていっちゃって……
『おまごとしよー』
『……やだ』
『しずくちゃんのおままごと、おぼえるのむずかしーもん』
結局、誰も遊んでくれなくなっちゃいました……
でも、とめどなく溢れてくる物語に触れ、そこに生きる人物を演じる。
それは私にとって、とても楽しいことで──
そんな私が演劇の世界に惹かれたのは必然でした。小学生になってすぐに私は近所のこども演劇教室に通い始めたんです。
そこで出会ったのが、先輩だった……
「よぉ、桜坂!今日も早いな」
「先輩!おはようございます!今日は土曜日なんで早く来ちゃいました」
「しずくちゃんは本当に演劇が好きなのね」
「先輩のお母さん!いらして下さったんですか!」
「未来の名俳優と名女優を見るためにね」
「かの有名な主演女優賞受賞経験者のお母さんが見てくれるんですから、より一層頑張らないとですね!」
私の二つ年上の内村輝助先輩は女優である竹中裕子さんと俳優である内村大輝さんの息子で、私達の通うこども演劇教室でも一番の表現者。
私と同じ小学生なのに、大人顔負けの演技力でドラマの子役などにも抜擢されているすごい先輩なんです!
そんな先輩に少しでも追いつくために、練習がない日も演劇の本を読み、セリフを紐解いたりして……自分が舞台に立つイメージトレーニングを欠かさずに過ごしてきました。
でも、やはり小学生になると友達の目を気にし始めてしまいます……
『誰かに変な子だって思われたくない』
『誰かに嫌われるのが怖い』
『誰かに違うなって思われるのが怖い』
『演劇が好きだ』って思う自分とは違う。そんな風に思ってしまうもう一人の自分が心の中に姿を表しました。
そんな悩みを抱えているのをなんとなく察してくれた先輩はとある日、こんな風に声を掛けてくれたんです。
「桜坂、何かあったのか? なんか演技に集中出来てなかったみたいだけど?」
「えっと……あの……」
私が恐る恐るその悩みを吐き出すと、先輩は優しくこう言ってくれました。
「自分をさらけ出せないなら、さらけ出せるようになるまで……その自信が持てるまでなりたい自分を演じればいい。俺もそうしてる。桜坂も演じるのは得意だろ?」
この言葉を聞いてから、私は日常生活でも理想の自分を演じるようになって、そのおかげか演技力もついて来て……でも結局、先輩に追いつく事は出来ないまま、先輩は中学校を卒業して、こども演劇教室からも卒業して行きました。
それから二年──
「それじゃ、お母さん!行ってくるね!」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
私は演劇部で有名な虹ヶ咲学園を受験する事に決めました。迷いは全くありませんでした。
今日はその虹ヶ咲の文化祭の日。
虹ヶ咲に入学した先輩に会えるかもしれない!
そんな期待を胸に私はスキップしながらお台場へ向かいます。
久しぶりの先輩! 昔からイケメン俳優のお父さん似ですごくカッコ良かったけど、今はもっともっとカッコよくなってるんだろうなぁ……!
そして、虹ヶ咲についた私はお昼ご飯を食べてすぐ地図を片手に講堂へ駆け込みました。
虹ヶ咲の構内は広くて広くて……地図がなければ多分迷ってたと思います。地図があって本当に良かったです!
「吹奏楽部の演奏、めちゃくちゃ上手かったね~!」
「そりゃそうでしょ! ニジガクの吹奏楽部って全日本コンクールに出場出来るくらいの強豪校なんだよ!」
講堂に入ると、今はちょうど吹奏楽部の演奏が終わったところのようでした。
ということは準備が終われば次は演劇部です!
演目は私も大好きなシェイクスピアの『ハムレット』らしいので楽しみで仕方がありません!
ちなみに私の
役者さんの演技だけではなく、音や照明の当て方なども勉強したいので、スピーカーとライトの位置なども確認しながらどこに座って見ようか、考えていると……
「あれ? あの人、もしかして……」
先輩のような後ろ姿が見えました……でも、今から講堂を出ていくようです。
先輩は演劇部に所属しているはずですし、こんなところにいるはずがありません。多分見間違いだと思います。それか空目か白昼夢。私の先輩に会いたい気持ちが作り出した幻かもしれません。
とにかく、こんなところに先輩がいるはずないですもん。きっと、先輩は劇に出て来ます!もしかしたら、主演かも!! 先輩がハムレット王子とか最高じゃないですか!?
うわぁ~、また楽しみになってきました!!
そして、始まった舞台。先輩は何故か出て来ませんでしたが、高校生とは思えない大人顔負けの演技力のある役者さんばかりで感動してしまいました!
音楽も照明もすべてが完璧で、涙なしには見られない最高のハムレットです!
「気高いお心が砕けてしまわれた……。王座に登っておられれば誰よりも王としての真価を見せられたお方であったはずだというのに……どうか、安らかにお眠り下さい、ハムレット王子」
ゴーン!ゴーン!
鐘の音と一緒に幕が一旦下り、再び上がって役者の皆さんの紹介。その後、公演が終わってからも涙の止まらない私に隣にいた人が声を掛けてくれて……
「あの……かすみんのハンカチ使いますか?」
「あ……ありがとうございます……」
彼女──中須かすみさんとも仲良くなる事が出来ました!
もうこの時にはかすみさんと話すのが楽しくて、先輩の事を忘れてしまっていたくらいだったんですが、演劇部の次のステージ演出で私は二つの衝撃を受けます。
「はじめまして!虹ヶ咲学園のスクールアイドル『優木せつ菜』です! あっ、今「穂乃果さんじゃないんだ……」とか思いましたね! 安心して下さい! 彼女のライブはちゃんとありますよ!!」
始まった。虹ヶ咲のスクールアイドルの舞台。
「虹ヶ咲にもスクールアイドルっているんだね」
「うん。でもかすみんも初めて知った……」
スクールアイドルが大好きらしいかすみさんも初めて知ったって事はもしかして初舞台なのかもしれません。
「初めて知ったって事はあのせつ菜さんって人、今日が初舞台なのかもね」と、そう言葉にしようとした時、私は驚きから声を飲み込んでしまいます。
「あっ、輝助さん!こっちです!」
「おーい、こーちゃーん!」
「ありがとな、席取っておいてくれて」
後ろの席から聞こえてきた声と「輝助さん」と呼ばれた名前……
ふと、後ろを見てみると、目を輝かせて舞台に立つスクールアイドルを見つめる先輩がいました……。
先輩……!? さっきの演劇部の舞台にはいなかったのに、どうして……!?
最初はそう思ったのですが、そんな驚きも次の衝撃で上書きされてしまいます。
「まずは高坂穂乃果さんのライブにお越し頂きありがとうございます!彼女のステージの前座として、私から一曲だけ歌をお届けさせて頂きます!!4分ほど私にお時間を下さい! では、歌います!……『CHASE!』」
はし~りだした~ 思いは強くす~るよ~♪
な~やんだら~ 君の手をに~ぎろ~♪
「……っ!?」
歌を聞いたその刹那、私は彼女の──優木せつ菜さんの舞台に心を奪われてしまった。
演劇はあらかじめ決められた役になりきるために台本を読み解き、お芝居を磨き、その人物像を表現していく。
一方、スクールアイドルは一人一人が持つ「自分の個性」を舞台で最大限に表現していく。
これまで「自分ではない何か」になるためにアプローチを重ねていた私には、それは本当に衝撃的な存在で……
夢はいつか~ ほら輝きだす~んだ~♪
彼女の歌が終わった後も私の胸はドクンドクンと脈打って止まらなかった。
「ねぇ、見た……しず子……?」
「うん、すごかったね……」
「すごかった……! ……かすみん……ニジガク受けようかな」
「いいんじゃない! 一緒に虹ヶ咲受けようよ!」
「うん!」
かすみさんも私と同じく、せつ菜さんの舞台に衝撃を受けたようだ。
演劇とスクールアイドル。それぞれ表現としては別物。でも、だからこそ演劇とスクールアイドルどちらも
確か、虹ヶ咲は兼部も可能だったはずだ。
もし、虹ヶ咲に入学出来たら、演劇部に所属しながらも、あのせつ菜先輩やかすみさんと一緒にスクールアイドルをするのもいいかもしれない。
その為にもまずは入学試験に合格しないとね!
「しず子……勉強付き合ってくれる?」
「いいよ! 一緒に合格しようね!」
そんな話をかすみさんとしていて、また先輩の事をすっかり忘れていました。気付いた時には先輩の姿はなくて……。なんで演劇部の公演に出てなかったんですか?とかそもそも私の事を覚えてますか?とか色々聞きたかったのに…………入学すれば会えますよね?
読んで頂いてありがとうございます!
今回も少し触れましたけど、次回は主人公である輝助の過去話を書いていこうと思います。
輝助の過去は一話で終わればいいですけど、長くなりそうだったらまた文化祭編みたいに二話に分けるかもしれません。
感想、誤字報告等お待ちしております!
次回もお楽しみに!!