虹の花咲くその日まで   作:T oga

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果林さん回完結編です!
それでは、どうぞお楽しみに下さい!



36話 VIVID WORLD

 遥と綾小路さんが虹ヶ咲に来て、スクールアイドル同好会にダイバーフェスへの参加を訊ねてから二日が経った。

 

「あーダメだ……!また右手と左手が同じ動きになっちゃう」

「うーん。高咲は左利きだからな……。どう教えていいか分からん……。とりあえずもう一回右手だけで弾いて見てくれ」

「はーい」

 

 今日は高咲を俺の家に呼んで本格的にピアノの練習をしている。

 

 ピアノで右手と左手が同じ動きになってしまう場合の対処法としては右手のメロディを完璧に覚えてから、左手の伴奏に意識を傾ける事で解決出来るのだが、それは右利きの人の場合だ。

 左利きの高咲にどう教えればいいか、すこし迷っている。

 

────♪

 

 今、右手だけで弾いてもらったが、こちらは問題なく弾けている。左手だけでも同様だ。

 

「うーん。右手だけ、左手だけだと問題なく弾けてるんだけどな……ちょっとぎこちないところはあるけどさ」

「両手で弾くと手がどっちかにつられちゃうんですよ」

「じゃあまずは今やってるCHASEをやめて、3:2の指の運動をやってくか」

「3対2……?」

 

 3:2の指の運動とは、左で3拍子、右で2拍子の音を弾く事を言う。この指の運動で右手と左手で違う動きをするという事自体を慣れさせる訳だ。

 

「わかりました。やってみます!」

 

 

 そんな風に練習をしていたらあっという間に一時間が過ぎた。

 

「そろそろ休憩にするか。指も疲れただろ」

「はーい。でも右と左で大分違う動き出来るようになった気がします!」

「そりゃ良かった。飲み物用意するからちょっと待っててくれ。緑茶かウーロン茶か麦茶だとどれがいい?」

「麦茶でお願いします!」

「了解」

 

 やっぱり夏は麦茶だよな~!高咲もよく分かってるじゃねーか!!

 

 高咲のお茶の好みが自分と同じで内心嬉しくなった俺は心地よい気分でリビングの冷蔵庫から麦茶と紙コップを取りに行ったのだった。

 

 


 

 

 ピアノ部屋に戻ってきてから数分後、俺と高咲はお茶を飲みながら世間話に花を咲かせていた。

 

「それで昨日はゲーマーズに行ったんですけど、そこでダンススクールに行く途中の果林さんと偶然出会ったんです!! ゲーマーズにはスクールアイドルのグッズも少し売ってて! あっ、でもせつ菜ちゃんのはなかったんですけど……」

「あぁ、せつ菜のグッズなら秋葉原のスクールアイドル専門ショップに売ってるぞ? まだゲーマーズとかには置かれてないかも知れないけど、後々入荷する予定もあるんじゃないか?」

「そうだったんだ! そっか~秋葉原にはスクールアイドルの専門ショップがあるんだ~!!」

「秋葉原はラブライブ発祥の地だからな。第一回大会で優勝したA-RISEのUTX学園とか、第二回大会優勝校の音乃木坂も秋葉原の学校だしさ」

「音乃木坂って確かμ's(ミューズ)の学校ですよね!動画で何曲か聞いたんですけど、すっごくときめいちゃってー!」

 

 そして、そんな世間話は徐々にダイバーフェスについての話題へとシフトしていく。

 

「それで昨日の話に戻るんですけど、ゲーマーズで果林さんと出会った後、ラインで皆と話してダイバーフェスについて色々決めたんです!」

「朝香が出る事になったんだろ?」

「えっ!? 内村先輩なんで知ってるんですか!?」

「実は昨日の夜、彼方がめっちゃ嬉しそうな声で電話してきたんだよ」

「あー、彼方さんか~!やっぱ内村先輩と彼方さんって仲良いですよね~!」

「そりゃ幼馴染で一緒に居た時間も長いしな」

 

 所謂、腐れ縁ってやつか? いや、腐ってはないけどさ……

 

「彼方から聞いてて朝香が出る事は知ってんだけど、歌う曲とかはどうするんだ?そこら辺何も聞いてなくてさ。 やっぱStarlightか?」

「それについても少し話し合ったんですけど、果林さんが「ニジガクの代表として出るんだから私の歌じゃなくて、ニジガク皆で作った歌を歌いたい」って」

 

 虹ヶ咲のスクールアイドル同好会全員で作った歌でダイバーフェスに……か。責任感の強い朝香らしい提案だ。

 

「なので、作曲を璃奈ちゃんが、作詞は同好会の皆でやろうって決まったんです!!」

「そうか、じゃあ今回は俺の出番はなさそうだな」

「いや、内村先輩にも作曲手伝って欲しいです! 内村先輩だって仲間じゃないですか! 同好会に入ってなくてもここまで協力してくれてるんですから、ちゃんと皆の中に内村先輩も入ってますよ!!」

「……ありがとな」

 

 今の高咲の言葉に若干、涙腺が弱まったのは内緒にしておこう。

 

 


 

 

 次の日の月曜日から、朝香の新曲製作に取り掛かっていき、一週間後──

 

 ダイバーフェス用に天王寺と俺が作曲、同好会の全員で作詞した朝香の新曲『VIVID WORLD』が完成した。

 

 この曲は虹ヶ咲のイメージを体現する楽曲になっており、歌詞にも高咲や上原、エマが考えた「虹の色(rainbow colors)」や「君とだったら」などといった仲間を意識するフレーズが散りばめられている。

 

 他にもせつ菜が「熱く」、彼方が「目を閉じても」、中須が「光」、桜坂が「白と黒」、宮下が「自由に」など思い思いのフレーズを入れているのも特徴だ。

 

「あとはダイバーフェスまで練習あるのみ! ですね、果林さん!」

「えぇ、任せて侑! 完璧に仕上げて見せるわ」

 

 朝香のその宣言通り、練習はとても順調に進んでいき、ついに迎えたダイバーフェス当日!

 俺も皆と一緒に参加出来れば良かったのだが……

 

「まさか、ドラマの撮影と被るなんてな……」

「内村さーん!シーン21からお願いします!」

「はーい!」

 

 ダイバーフェスのスクールアイドル枠は18時からだと聞いている。虹ヶ咲はスクールアイドル枠の大トリで18時20分からの開演らしい。

 撮影が順調に終われば、17時半にはダイバーフェスに着く予定だから余裕で間に合うはずだ。

 

 朝香の大舞台を見る為にも、まずはドラマの撮影に全力で取り組まなければ!

 

 

 そして──

 

「……やっと着いた」

 

 俺がダイバーフェスの会場であるお台場の野外特設会場に着いたのは18時過ぎだった。

 

 ドラマの撮影が少し長引いてしまい、遅れてしまったのだ。

 

「えっと……会場は……あそこか」

 

 ダイバーフェスのライブステージの前にはすでに何千人……いや、何万人にも見える観客で埋め尽くされている。正直、予想以上だ。

 

「東雲学院、やっぱ凄いね~!」

「うん! 藤黄も楽しみ!!」

 

 俺の前にいる女子大生くらいの二人組の声が聞こえてくる。ちょうど今、東雲学院の出番が終わった所のようだ。

 

 今から同好会の皆に会いに行くのは難しそうだな……

 

 そう思った俺はこのままここで藤黄と朝香を見ている事に決めた。

 

 待っているとすぐに藤黄学園スクールアイドル部が舞台(ステージ)に上がってくる。

 

「東雲学院の皆さん、ありがとうございました!! 次は私達、藤黄学園スクールアイドル部の歌をお聞き下さい!!」

 

 センターに立つ綾小路さんの言葉を合図に藤黄学園の歌が流れ始めた。

 

 

────♪

 

 

 黄色い衣装を身に纏い、優雅な踊りと歌を魅せる藤黄学園の舞台(ステージ)は「見事」としか言いようのないモノだった。

 メンバー九人がそれぞれ助け合いながら楽しそうに歌っている様子がとても伝わってくる。

 

 

────♪

 

 

「「ありがとうございました!」」

 

 歌が終わった瞬間、パチパチパチパチという大きな拍手と喝采が会場を包んだ。

 俺も他の観客と同じように大きな拍手で称賛を送る。

 

「ひとときの夢!最高のエンターテイメントを届けられたと自負しているよ!! 楽しい舞台だった!ありがとう!」

「桐原優香です。皆さんの声援もとても良く聞こえましたよ!応援して頂いて本当にありがとうございました」

「えっと、実は小雪……会ったことのない人に歌を届けるのって、最初はちょっと怖かったんですけど……今日はとっても楽しかったです!ありがとうございました!

 

 各学年を代表して、三年からは相川が、二年からは桐原さん、一年は白瀬さんが最後に観客へと言葉を送る。

 白瀬さんは相川の幼馴染なんだよな。相川から聞いた覚えがある。確か今日が初舞台になるんだっけ?

 桐原さんはすごく綺麗な声だな。特に滑舌がいい。まるでアナウンサーのようだ。

 

「次でダイバーフェスのスクールアイドル枠は最後になります! 最後までお楽しみ下さい!!」

 

 最後は綾小路さんが綺麗に次の虹ヶ咲に繋げてくれて、藤黄の出番は終わった。

 観客のボルテージは最高潮だ。この舞台……例えば上原だったら緊張して立てるか怪しいくらいの熱気だが……朝香ならきっと大丈夫なはずだ。

 

 そんな俺の信頼に答えるかのように、大きな舞台の上に一人、朝香が足を踏み入れる。

 

 

 そして、前振りなどはなく、すぐさま曲へと入っていった。

 

 

 Just like a Rainbow colors……♪

 

 

 巨大なジェット噴射の音とともに歌い始めた朝香の声はダイバーフェスに来ている観客のすべてを魅力するような歌声だった。

 

 まるで「私の歌を聞け!」とでも言っているかのような……そんな力強い歌声だ。

 

「虹ヶ咲のスクールアイドルってソロアイドルなんだ……すごっ!」

「うん。私も初めて見た……これは本当に凄いね……!」

 

 前の方からそんな声も聞こえてくる。やはり虹ヶ咲学園のスクールアイドル同好会はまだ知名度も低いが、今回のダイバーフェスでその知名度も少しはあがりそうだな。

 

 そんな事を思っている内にVIVID WORLDの歌詞はサビに近付いていく。

 

 

 答えなんて誰も知らない 自由に未来創ろ~♪

 

 

 そして、サビを迎えた頃には観客の持つペンライトの色がすべて真っ青に染まった……

 

 

 Vividな世界 ねぇ どうして♪

 一緒だったら心はずむの♪

 

 

 今、この舞台(ステージ)は朝香が支配していると言っても過言ではないだろう。

 

 観客の盛り上がりは先ほどの藤黄学園の舞台(ステージ)を軽く圧倒していた。

 

 

 正解も輝きもひとつじゃな~いから~♪

 Just like a Rainbow colors……♪

 

 

「「「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」

 

 とても大きな拍手と喝采。これも藤黄とは比べ物にならないほどの大きさだった。

 

「カッコいいじゃん!」

「うん!初めて見たけど好きになっちゃった~!」

 

 後ろからもそんな声が聞こえてきて、ふと後ろを振り返って見ると、そこには高咲の姿もあった。

 

 どうやら高咲は俺には気付いていないようだ。

 

 高咲の瞳はキラキラと輝いて、真っ直ぐただ舞台(ステージ)を見つめていた。

 

 




読んで頂いてありがとうございます!

藤黄学園の優香と小雪ちゃんは個人的に喋らせたかったので台詞入れられて良かった~

3rdライブのVIVID WORLDであったジェット噴射とか、「私の歌を聞け~!」とか色々ネタも織り交ぜられて楽しく書けました!

次回は遥ちゃん回になりそうです。最初、予定になかったけど遥ちゃんがヒロイン候補に浮上してきている……

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