同好会メンバーは皆合宿へ行っている為、輝助と遥ちゃんを絡ませました。
話の主軸になるのは歩夢のソロ曲制作についてです!
それでは、お楽しみ下さい!!
「それじゃ、輝助。一ヶ月くらい家を空ける事になるけど……何かあったらすぐ連絡するんだぞ」
「あぁ、分かってる。大丈夫だよ。行ってらっしゃい。頑張ってきてね、父さん」
「おう。じゃあ、行ってくる」
父さんはついに長年の夢であるハリウッドの映画への出演が決まり、一ヶ月間アメリカのホテルで過ごす事になった。
母さんが死んでから……いや、その前から色々な事があったが、ついに家族一丸の夢であったハリウッド映画への出演が果たされるのだ。
天国にいる母さんもきっと喜んでくれている事だろう。
そして、俺もそろそろ行かなくてはいけない。
今日は──終業式。明日からは夏休みだ。
「……暑っ」
そして、夏休みが始まって一週間が経った頃
俺はやる事もなく、家で暇を持て余していた。
「昼飯食べて、洗い物と洗濯物の取り込みも完了。夏休みの宿題はほとんど終わらせたし、ドラマの撮影も昨日でクランクアップ、他の撮影は今のところ入ってないし……スクールアイドル同好会の皆は今日から合宿だからな……」
ちなみに去年は当時の生徒会副会長であった神枝先輩と二人で生徒会として夏休み中の学園の見回りをしながら、せつ菜の練習に付き合っていた。あの時、作った曲がCHASEだったな……
一昨年は母が死んですぐという事もあり、家の前にマスコミが張り込んでいて、家から出られなかった……。そもそも精神的に追い詰められていて、家から出ようとも思わなかったしな……
こんな何もない夏休みは始めてかもしれない。
「何かやる事なかったっけ……?」
数分間、
「……そうだ! 上原の曲、まだ完成してねえ!」
という事で俺は上原のソロ曲制作を始めたのだった。
「……ここはこうした方が……いや、でも上原のイメージはこんなんじゃないよな……うーん」
ピンポーン
「……ん? 誰だ?」
俺が上原のソロ曲制作に没頭していると、誰かが家を訪ねてきた。
今、家に居るのは俺一人。何か宅配で頼んだ覚えもないし……誰だろう?
そう思いながら玄関を開けると、そこに居たのは……遥だった。
「輝助さん、こんばんわ」
「あ、あぁ、こんばんわ……?」
「こんばんわ」という挨拶に少し戸惑いながら玄関の靴箱の上の置き時計に目を向けると、時刻はすでに18時を過ぎていた。
「おぉ、もうこんな時間だったのか」
「もしかして気付いてなかったんですか!?」
「うん。昼過ぎから上原のソロ曲作ってて時間忘れてた」
「……じゃあ、夜ご飯もまだ食べてないんですよね?」
「そうだな。まだ何も、作ってすらないよ」
「それなら、良かったです!」
「えっ……?」
どうやら遥は、彼方が合宿でいない事を失念しており、いつも通りの量の夕飯を作ってしまったらしい。
「お母さんは今日も夜勤でいないですし、どうせなら輝助さんに夕飯をお裾分けしようかなって思って訪ねたんですけど、来て正解でした!」
「俺も作ってなかったし、もらえるならすごく助かる。ここじゃなんだし上がれよ」
「はーい」
こうして、俺は遥を家に上げた。
……いや、やましい事は何もないからな。
ただ夕飯をご馳走になるだけだ。……あっ、そうだ! それとついでに……
「ご馳走様」
「お粗末様でした」
「このカレーめっちゃ旨かったよ。彼方のとも遜色ないんじゃないか?」
「ホントですか!? 良かったです! カレーは結構自信あって、お姉ちゃんの味にも大分近付いてきたな~って最近思えてきてたので、輝助さんがそう言って下さると益々自信持てます!!」
俺が遥の料理への率直な感想を述べると遥が笑顔でそう言った。
やはり目指す先は彼方か。あいつの料理はもはやプロ級だからな。
「そういえば、輝助さん。さっき上原さんの曲作ってるって言ってましたよね?」
なんて切り出そうか迷っていた時にちょうど遥からその話題が出た。
先ほど遥が訪ねてきた時、夕飯のついでで上原の曲について少し相談に乗ってもらおうと思っていたのだ。
「あぁ、その事でちょっと遥にも相談乗ってもらいたいんだが、いいか?」
「はい。なんでしょう?」
「実はな……」
実は俺は上原のソロ曲について息詰まっていた。俺が楽曲制作をする時は、その曲を歌う人のイメージを元に制作する。せつ菜にはせつ菜らしくカッコいい感じの曲を、中須には中須らしくあざとく可愛い感じの曲を、彼方は癒されるような曲を……といった感じだ。
「だけど、上原のイメージが湧かなくてな……。どんな曲を作ればいいのか、悩んでるんだよ」
「歩夢さんのイメージ……ですか」
遥にその事を相談すると、遥はこう言った。
「歩夢さんは、可愛らしいって感じですかね~。でもかすみさんみたいな「可愛い」を全面に押し出した感じでもなくて……うーん」
可愛らしいけど「可愛い」を全面に押し出した感じでもない……良くも悪くも普通の女子高生といった印象でやはり曲のイメージが湧かない。
「ピンク色が好きって事は前、ニジガクに遊びに行った時に聞きましたけど……他に好きなのは、確か……花とか? だったと思います」
「ピンクと、花……か。少しイメージが掴めてきたような……そうでもないような……」
「うーん。やっぱり幼馴染の侑さんに聞いた方がいいかもしれませんね」
「そうだな」
確かに高咲に聞けば、他にも色々曲の参考になるような話も聞けるだろう。明日電話で聞いてみるか~
「あまりお役に立てなくてすみません……」
「いや、大丈夫。十分参考になったよ。ありがとう」
「じゃあ、そろそろ私は帰りますね」
「あぁ、カレーありがとう。本当に美味しかったよ」
「はい。こちらこそありがとうございました。ではおやすみなさい」
「うん。おやすみ」
こうして、遥は帰っていった。
次の日、俺は高咲へとラインを送った。
合宿中だった為、返信がきたのは夜だったのだが、高咲のラインを見て、上原のイメージは掴めたと思う。
おそらく彼女は警戒心が強いのだろう。他人が彼女の事を正確に理解するのは難しい。だから曲作りが難航したのだ。
自分がスランプになったのでは……と少し錯覚したが、高咲から送られてきたラインを見てからはすぐに曲が完成した。
その高咲のラインには上原について色々と書かれていたが、一番彼女を理解出来たのはこの言葉だった。
『歩夢はどんな事にも前向きで、諦めたり投げ出したりは絶対にしない子なんです! どんな事でもコツコツ真面目に取り組んで一歩一歩前に進んでいく凄い努力家なんですよ!』
これからは上原の事を良く見てみよう。
もしかしたら、新たな上原の魅力を知る事が出来るかもしれないからな。
そんな事を思いながら、俺は合宿から帰ってきた上原へと完成した曲を渡したのだが……
『あ、ありがとうございます……』
「お、おう……」
……何か、様子がおかしいような……?
読んで頂いてありがとうございます!
おや、歩夢のようすが……?
次回もお楽しみに!!