虹の花咲くその日まで   作:T oga

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38話から半年以上も更新出来ず、遅くなってしまって本当に申し訳ありません。

無くなってたモチベが少し回復して、なんとか一話完成しました。
感想めちゃくちゃ嬉しかったです!

途中からせつ菜目線になっています。
それでは、どうぞ!




39話 彼女の中の約束が目を覚ます

 スクールアイドルフェスティバルの本番があと一週間後にまで迫ってきた頃、高咲からとある連絡が来た。

 

『あの~、もしもし』

「おう。どうした、高咲?」

 

 少しの間、無言の時間が続いたが、待っていると高咲はこう聞いてきた。

 

『内村先輩、前に歩夢の様子がちょっとおかしいんじゃないかって言ってましたよね……』

「あぁ、言ったけど……」

 

 スクールアイドル同好会の合宿が終わってすぐに俺は上原の為に作ったソロ曲の音源データを彼女へと渡したのだが、その時の様子に少し違和感を覚えたので、高咲が合宿から帰ってきて最初のピアノ練習日の帰りに高咲に上原の様子について聞いた。その時の事を言っているのだろう。

 

 あの時は高咲も特に思い当たる節はないと言っていたが……

 

「もしかして、何かあったのか?」

『え、えっと……』

 

 高咲はまた無言になる。

 

「何かあったなら気軽に話してくれよ。俺で良ければ相談にのるからさ……」

『…………やっぱり、大丈夫です。私と歩夢の事なんでこっちでなんとかします! ありがとうございました!』

「お、おいっ……!」

 

 …………一方的に電話を切られてしまった。

 

「こんな意味深な電話されたら心配するに決まってるだろうが……」

 

 俺は自分の部屋でそんな一人事を呟いた後、とある決心をする。

 

「よし……!」

 

 


 

 

 次の日、俺はスクールアイドルフェスティバルの準備をしている上原の様子を見学しに行った。

 

 まず先にスクールアイドル同好会の部室を訪ねたのだが、もうすでにそれぞれ別れてフェスの準備をしているらしく、部室には誰もいなかった。

 

「どこにいるんだろうな…………あっ」

 

 探していると校門近くの噴水に座って一人で黙々と何やら作業をしている上原を見つけた。

 

「上原」

「わっ!? 」

 

 上原に声を掛けると、彼女は作業の手を止めて驚いた顔でこちらを見る。

 

「あっ、内村先輩……急に声掛けられたからびっくりしちゃいましたよ」

「あぁ、すまん。でも何してたんだ?」

 

 俺がそう質問すると彼女は自分が今書いていたメモを見せながらこう言った。

 

「フェスで披露する曲のセトリを考えてたんです。自分の歌はまだ内村先輩が作ってくれた一曲しかないのでカバー曲がほとんどになるんですけど……」

 

 メモに目を通すが、特に問題は無さそうだ。ちなみに俺が作った曲は最後に披露するらしい。

 

「ふーん。いいんじゃないか?」

「ありがとうございます」

「それで歌うステージはどこか決まったのか?」

「えーっと……それは……その……」

 

 上原が言い淀む。

 

「もしかしてまだなのか?」

「はい……」

「そうか……もし見つかりそうになかったら俺も一緒に考えてやるけど……」

「いえ、大丈夫です。私のステージなので出来れば自分でなんとかしたいんです!ファンの娘たちも手伝ってくれてますし……!スクールアイドルとしてファンの皆に報いたいなって思ってるんです!」

「そうか。わかった。頑張れよ」

「はい」

 

 おそらくここで俺が何を言っても上原は意見を変えるつもりはないだろう。

 悩んでいる事もなんとなくわかったし、今日のところは引き下がるか。

 

「そういえば、高咲がどこ行ったか知らないか。探してるんだが……」

「ゆ、侑ちゃんですか?」

 

 高咲の名前を呼ぶ時、明らかに動揺したな。

 

「……多分まだ教室だと思います。先生に頼まれてプリント運んでましたから」

「そうなのか。ありがとな。それじゃあ俺はそろそろ行くよ。あんまり根詰め過ぎるなよ」

「ありがとうございます」

「じゃあな」

 

 俺はそう言って上原と別れた。

 

 

 その後、上原の言葉を頼りに教室棟を歩き回っていると、一年生の娘に呼び止められている高咲を見つけた。

 

「侑先輩!ちょっとご相談が……」

「今日子ちゃん。どうしたの?」

「実は……」

 

 …………なるほどね。

 

 盗み聞きみたいな感じにはなってしまったがステージの件は高咲達に任せればなんとかなりそうだな。

 

 だが、もうひとつ問題がある。これはおそらく上原の気持ちの問題だ。高咲も頑なに口を割らない。一年生のあの娘にすら何も言えないのに、俺に相談してくれる訳ないよな。実際、電話では結局何も教えてくれなかったし……これは相当深刻な問題らしい。

 

 うーん。どうしたものか……

 

 


 

 

 あれから数日、高咲と上原の間に何があったのか詳細を探ろうと色々考えてはみたのだが、結局何も思いつかず……時間だけが過ぎていき……

 

 スクールアイドルフェスティバルまであと3日しかなくなっていた。

 

 そんな状況を打破してくれたのは……せつ菜からの電話だった。

 

『もしもし、輝助先輩?』

「おぉ、せつ菜か。フェスの準備は順調か?」

『はい!私の方は問題ありません!!でも……』

「でも?」

『侑さんと歩夢さんの間で問題があったみたいでして……』

 

 どうやらせつ菜も俺と同じく二人の違和感に気付いていたようだ。

 

「お前も気付いてたか……。俺も二人とちょっと話してみたんだが、どうにも出来なくて悩んでたんだよ。何があったのかも良くわかんねぇし……」

『……実は私、侑さんと歩夢さんの会話を聞いてしまって……』

「えっ?」

『一週間くらい前の事なんですけど……』

 

 


 

『待って、歩夢。昨日の事、ちゃんと話そう』

『だからいいよ、それは……』

『良くないよ!……こんなモヤモヤした感じ、絶対良くないって……私、昨日歩夢に伝えたい事あったんだよ……』

『…………』

『私ね、やりたい事が、夢が出来たんだ』

『……!』

『せつ菜ちゃんが知ったのは偶然で、歩夢には最初に言うつもりだったんだ。内緒にしてたのは悪かったけど、ちゃんと考えて決めたから……だから歩夢には聞いてもらいたいんだ、いいかな?』

『…………やだ』

『……え?』

『それって私と一緒じゃなくなるって事でしょ!!わかるよ!だって侑ちゃんがこんなこと言うの初めてだもん!! やだよそんなの! 私のスクールアイドルの夢はまだこれからなのに……侑ちゃんと一緒じゃなきゃ私は一歩も前に進めないよ』

『そんなこと』

『あるよ!……あるんだよ……』

 


 

 

「なるほど……」

『それを聞いてから私もどうしたらいいかわからなくなってしまって……でもこのままじゃ不味いと思って輝助先輩に連絡したんです』

「高咲の夢……せつ菜が知った……それってピアノの事か?」

『はい。良く考えてみたら私達の知り合いでピアノについて教えたり出来るのって輝助先輩だけだと思ったんです。やっぱり輝助先輩が侑さんにピアノを教えていたんですね』

「まぁな」

 

 上原はおそらく高咲にずっとそばに居てほしいと思っているんだろう。高咲がピアノを始めれば、上原のそばから離れてしまう。そう感じているのだろう。

 高咲が音楽科に転科したらクラスも別々になってしまうし、まぁ上原の予感もそういう意味では間違ってはいないのだが……

 

「待てよ」

『え?』

「いや、実は上原も高咲から離れていってるんじゃないのか?」

『どういう事ですか?』

 

 一週間前、噴水の近くで話した上原の言葉を思い出す。

 

『いえ、大丈夫です。私のステージなので出来れば自分でなんとかしたいんです!ファンの娘たちも手伝ってくれてますし……!スクールアイドルとしてファンの皆に報いたいなって思ってるんです!』

 

 もし、上原が高咲に依存してるならスクールアイドルとしての姿を見せたいのはファンじゃなくて高咲のはずだ。あの時、ファンの皆に報いたいと言った言葉が嘘じゃないとしたら……

 

 

「せつ菜、今日か明日にでもお前から上原に話をしてもらえないか?」

 

 


 

 

「皆さん、この後はステージに行くんですか?」

「うん。もう組み立て始めてるみたいだから」

「自分のステージだから任せっきりにしたくないよね」

「彼方ちゃんも今日からアルバイトおやすみして頑張るよ~」

「それじゃ」

「また明日だね」

「うん。また明日」

 

 輝助先輩に連絡した次の日の帰り道。

 私は輝助先輩に頼まれた通り、歩夢さんと話してみる事にしました。

 

「歩夢さん。途中まで一緒に行きませんか?」

「えっ?……うん。行こう。せつ菜ちゃん」

 

 

 歩夢さんの隣を歩きながら、私は彼女にこう話かけました。

 

「本当に色々変わりましたね。すごいですよ。同好会が復活してから間もないのに」

 

 『これも侑さんのおかげです』と口に出しかけましたが、その言葉は飲み込んで、あえてこう言います。

 

「これもファンの皆のおかげです」

「うん。そうだね」

「その気持ちに答えるためにも私達はどんどん進んでいかなくてはいけませんね」

「でも私」

 

 その話の途中で歩夢さんは立ち止まりました。

 

「……私、もう動けないよ」

「……歩夢さん」

 

 彼女の表情はとても辛そうで悲しそうで、今にも消えてしまいそうな、そんな表情でした。

 

「私がスクールアイドルを始めたのは皆のためじゃないんだ。見てほしかったのはたった一人だけだったの」

「侑さんですね」

「だけど今は変わってきてて、こんな私をいいって、応援してくれる人がたくさんいて、その気持ちが嬉しくて大切で、今は私の大好きな相手が侑ちゃんだけじゃなくなってきて、本当は私も離れていってる気がするの」

 

 輝助先輩が思っていた通りみたいですね……

 

「私も我慢しようとしていました」

「え?」

「大好きな気持ち。でも結局やめられないんですよね」

 

 私もスクールアイドルを大好きな気持ちは良くわかります。自分の気持ちに嘘をつこうとした事は何度もありますが、結局今、優木せつ菜としてこの場に立っています。一度スクールアイドルを始めてしまったらもう止まることは出来ないんです。それなら……!

 

「始まったのなら貫くのみです!」

 

 私の言葉は歩夢さんにも響いたみたいです!

 

「……そうだね。ありがとう!」

 

 そう言って歩夢さんは走り出しました。拳を合わせて、私は歩夢さんにエールを送ります!

 

 歩夢さんが走って行った先には輝助先輩も立っていました。

 

「上原ぁ~!高咲が向こうでお前を探してたぞ~!」

「ありがとうございます!」

 

 お互い頑張りましょう!歩夢さん!!

 




読んで頂いて本当にありがとうございます。

二期ももうすぐ始まるので、それまでに次回の一期最終回を書き上げたいなって思ってます。

二期編はアニメ見てから書く予定です。

次回も気長にお待ち下さい。
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