とりあえず今回はスクールアイドルフェスティバルに向けての最後の楽曲制作についてのお話です。
それではどうぞ!
ラ~シ~ソ~ ラ~シ~ソ ラ~シ~♪
ソファ ソファ~レ ソ♪
ラ~シ~ソ~ ラ~シ~ソ ラ~ソ~♪
ソ ソ ソ~ファ~ファ ラ~シ~ソシ~♪
「確か、これだよな?」
「はい。それです! そんな感じの曲でした!昨日、侑ちゃんに聞かせてもらった曲は!」
「……このイントロしか出来てないのに今から曲完成させて、作詞もして、振りも考えろって?今日中に?無理だろ?」
「振り付けと歌詞は私でもなんとかなります!曲だけでもお願いします!侑ちゃんにサプライズしたいんです!」
「いや、でも……」
「内村先輩なら出来ますよね!?侑ちゃんにピアノ教えたの内村先輩なんですから!!」
事の発端は数分前──
高咲と無事和解出来たらしい上原が一人で俺の家を訪ねてきたのだ。
家に上げた上原は何故か鋭い目で俺を睨んだ後、笑顔を作ってこう言った。
「侑ちゃんが今、作曲してる曲ありますよね。あの曲を明日のスクールアイドルフェスティバルで歌いたいんです!!」
「は?」
──そして、今に至る。
そんな無茶な……そう思ったが断れる雰囲気ではない。というより断ったら、何をされるかわかったもんじゃない……
「出来ますよね!!!!」
上原の圧が強い。……上原ってこんなやつだったっけ?もっとおとなしかったイメージなんだが……
「はぁ……仕方ない。やるよ」
ため息混じりにそう言うと、上原はパーッと笑顔を輝かせこう言った。
「本当ですか!ありがとうございます!さすがは侑ちゃんのピアノの先生ですね!」
なんか、煽られてるような気もするけど……気のせいだよな?
まぁ、いいや。んじゃ早速考えてみるか……と、その前に……
「あのさ、上原。作る前にひとつ聞いてもいいか?」
「はい……なんですか?」
「助っ人として、天王寺を呼んでもいいよな?」
「璃奈ちゃんですか?」
明日のフェスの最後で歌うなら、歌詞と練習は最悪、明日のフェスの合間時間でもいいんだが、それでも曲と振り付けについては今日中になんとかしなくてはならない。
「俺一人だとどうしても人手が足らない。せめて天王寺がいてくれると助かるんだが……」
「……うーん。私一人で歌おうかなって思ってたんですけど、璃奈ちゃんも来るなら……」
この後、上原はさらにとんでもない事を言ったのだった。
「じゃあ、同好会の皆呼んじゃいましょう!……っていうか学園で皆で作ればいいじゃないですか!!それで明日は皆で歌うんです!侑ちゃんの前で!!」
……フォーメーションまで考えなくちゃいけなくなったな。いやその前に……「皆で歌う」か……
その後、俺が彼方とせつ菜に、上原が他の高咲以外の同好会メンバー全員にラインで連絡を送り、部室で作戦会議をする事になった。
「皆、急にごめんね。明日のために今日はお休みしようって言ってたのに……」
「歩夢!謝らないでよ!愛さん、明日の事ずっと考えててソワソワしてたんだよ!」
「愛の言うとおりね。むしろ呼んでくれて嬉しいわ」
「果林ちゃん、おやすみの日なのに珍しく早起きしてたもんね」
「もうエマ~!」
「うふふ……。それで侑先輩へのサプライズの為に明日の最後、皆で歌おう……でしたっけ?」
桜坂が本題に入ってくれた。
「あぁ、実はイントロまでは作ってあってな。この曲をグループ曲にするのはどうかって提案なんだが……」
そう言って俺がイントロを弾こうとしたのだが、その前に彼方が口を開く。
「待って、こーちゃん。本当に全員で歌うの?」
その彼方の言葉に続けるように、せつ菜がこう言った。
「元々、私達はグループで歌うのが難しいという結論に至ったからソロで活動する事に決めたんですよ。ただでさえ歌った事のない新曲をいきなり皆で合わせて歌うなんて……それにそもそもまだイントロしか出来てない曲を今日中に完成させて明日披露するだなんて無茶なんじゃ……」
……やっぱりそういう意見は出るよな。特にせつ菜と中須は……
そう思い、中須の方へ視線を送ってみたのだが、中須の表情は俺が思っていたものとは、少し違った。
「……かすみん思うんです。かすみん達は侑先輩にいっぱいいっぱい助けてもらいました。侑先輩がいなかったら、きっと同好会はあの時終わっちゃって……そのまま……」
確かに高咲がいなかったら、同好会の再始動はあり得なかっただろう。俺もあの時は諦めてしまっていた。
高咲がいたから今の同好会があって、明日のスクールアイドルフェスティバルも開催出来る。
「侑先輩にありがとうの気持ちを伝える一番の方法は多分、歩夢先輩やコースケ先輩の方法なんじゃないかなって……」
その中須の言葉に今まで黙っていた天王寺も口を開いた。
「私はかすみちゃんの意見に賛成。侑さんがいなかったら、せつ菜さんのライブもなかったことになっちゃうから、私も愛さんもきっとスクールアイドルになってなかったんじゃないかな?……歌は私と内村先輩で頑張って作るから、皆でやってみたい」
「そうだね……!愛さんも賛成!!」
「私もかすみさん達の意見に賛成です!」
宮下も桜坂も異論はないようだ。
「きっと侑ちゃん、私達が同じステージに立って踊ったら泣いて喜んでくれるんじゃないかな?」
「絶対エマの言ってる通りになるわ。それに難しい方が燃えるじゃない!やってみましょう!!」
エマも朝香も賛成みたいだな。
「わかった。彼方ちゃんも頑張ってみるよ~。侑ちゃんに恩返しする為だもんね」
「彼方……!」
「こーちゃん。最高の曲作ってね」
「任せろ」
そして、後はせつ菜だが……
「私はやっぱりまだ怖いです。皆で……グループで歌うのは……」
やっぱり、難しいのか……
そんなせつ菜に上原がこう言う。
「せつ菜ちゃん、昨日私に言ってくれたよね。ファンの皆の気持ちに答えるためにも私達はどんどん進んでいかなくちゃいけないって。侑ちゃんもファンの皆もきっと私達が同じステージに立って歌う姿を期待してると思うんだ。そんな皆の気持ちに答えるためにって考えたら頑張れないかな?」
「皆の気持ちに答えるために……」
その上原の言葉でせつ菜の顔色が変わる。
「わかりました!……やりましょう!!」
「うん!始まったのなら貫くのみ!だもんね!」
「はい!!」
上原とせつ菜が拳を合わせる。
「それじゃ早速曲を作ってくか~! 時間もないから早く……それでいて最高の出来の曲を完成させるぞ~!!」
数時間後──
「よし、曲はだいたいこんな感じか。天王寺、直した方が良さそうなとこあるか?」
「えっと……あっ、ここのラスサビ前なんですけど……」
ピピピピ……♪(着信音)
天王寺と協力して作曲している途中、俺の携帯が鳴りだした。
電話を掛けてきたのは……
「すまん。天王寺、ちょっといいか?」
「はい」
天王寺に断りを入れてから電話を取る。
「はい。内村です」
『もしもし~ごめんね急に電話しちゃって。ちょっと明日の事で聞きたい事があるんだけど……今大丈夫かな?』
「いいですけど、明日のフェス……俺はメインで関わってる訳じゃないんで答えられるかわかりませんよ?」
『運営に関する事じゃないからその点は心配無用だよ。もし君がわからなかったら他の人に聞くさ。聞くだけならタダじゃない』
「わかりました……って、あっ!?」
明莉さんと電話をしながら、同好会の部室から廊下に出たのだが、俺は視線の先でとある人影を見つけた。
誰かが階段を登って、こちらへ向かってくる。
『どうしたんだい?』
「いや、ちょっとだけ……すいません」
俺は明莉さんに断りを入れて、再び部室に戻り、小さな声で全員にこう言った。
「皆、高咲も来た」
そう。こちらに向かってきているのは高咲だったのだ。おそらく彼女も暇を持て余して、なんとなく部室に足が向いたのだろう。
「えっ?侑ちゃん?」
「侑先輩も来ちゃったんですか~?」
「かすみさん!歌詞ノート早くしまわなきゃ!」
「ホワイトボードも消さないといけないわね」
「待って果林!ホワイトボード写メるから!!」
「愛さん……は今、手が話せないから……えっと……」
「璃奈ちゃん、キーボードとパソコンしまうの手伝うよ!」
「私もエマさんと手伝います!彼方さんもソファで寝てないで手伝って下さい!」
「おぉ~わかったよ、せつ菜ちゃ~ん。彼方ちゃんもてきぱき手伝う~」
「てきぱき手伝う」とか言っておきながらもスローペースの彼方はさておき、他の皆が一斉に片付け始める。
その様子を見ながら俺は再び電話に戻る。
「すいません。もう大丈夫です。それで何でした?」
『うん。実はね……』
電話している途中、彼方が小さな声で「隠蔽完了なのだよ」と俺に伝えてくれた。
その合図を聞いて安心した俺が再び廊下に出てしばらくすると、俺が電話しているのを、横目に見ながら高咲は会釈だけして部室へと向かっていった。
「あれ?皆、何してるの。廊下に内村先輩も居たけど……」
「侑ちゃん!実は皆、明日の事考えてたらソワソワしちゃって……ここに集まって来ちゃったみたいなんだ」
「そうなんだ。実は私もおんなじでさ……そうだ!せっかく皆集まってるし、私からちょっと言いたい事があるんだけど……いいかな?」
部室の中の声がこちらにもかすかに聞こえてくる。おそらく高咲は同好会の全員に転科の話をするのだろう。
『もしもし~聞いてる?』
「あぁ、すいません」
ここだと部室の声も漏れてきて気になるし、とりあえず屋上にでもいくか……
この日は結局、これ以上の作曲は出来なかった。進捗として85%といったところか……
明日はスクールアイドルフェスティバル当日だ。合間時間を使って曲の完成と練習まで出来ればいいのだが……
次回、ついに1期最終回となります。
『最終話
お楽しみに!!