中川菜々です。コンタクトを買いました。
踊る時、眼鏡だと危ないからってことで生まれて初めてコンタクトを買いました。
確かに最初は怖かったですけど、つけたり外したりしている内に、慣れました。
二週間くらい怖がってましたけど……
そして、今日からは──夏休み。
親には生徒会のお手伝いって嘘をついちゃいましたけど、今日から本格的にスクールアイドル活動開始です!!
──っつーことで、スクールアイドル中川菜々育成計画が幕を開けた。
虹ヶ咲は夏休みも学園を解放している。部活も多いしな。
昨日の終業式の後、俺と神枝先輩と中川の三人で話して、夏休み中の平日は10時~16時までみっちり中川の特訓に当てることになった。
勿論、昼休憩を一時間入れるし、小休止もちょくちょく挟む。夏だからな、熱中症には十分に注意が必要だ。あと、お盆休みも一週間ほど取る予定でいる。
生徒会の仕事についても問題はない。
神枝先輩が中川に歌を教えている時は俺が生徒会の仕事を、俺が中川に踊りを教えている時は神枝先輩が生徒会の仕事をする事になってる。
まぁ、夏休み中の生徒会の仕事は部活中の生徒の見回りくらいだけどな。
……っと、そろそろ時間だ。
家の時計は9時45分を示している。
家から学園までは自転車で5~6分くらいなので、そろそろ出た方がいいだろう。
夏服の開襟シャツを着て、玄関から外に出る。
「あ~、こーちゃんだ。おはよ~! こーちゃんは生徒会のお仕事~?」
暑い日射しとともに、ゆる~い聞き慣れた声が聞こえてきた。彼方だ。
「おはよう。そうだけど、彼方はバイトか?」
「うん!夏休みは稼ぎ時だからね~。彼方ちゃんは頑張り屋さんなのです!」
「バイトに精を出しすぎて、夏休みの宿題忘れるなよ」
「だいじょ~ぶ~!彼方ちゃんは~夏休みの宿題を夏休み前にほとんど片付けてしまう派なのだぜ!」
「あぁ、そうだったな」
「こーちゃんこそ、忘れちゃダメだぞっ!」
「生徒会長舐めんな。んじゃ、行ってくる!彼方もバイト頑張れよ」
「ありがと~、行ってらっしゃ~い」
自転車に乗り、学園への道を走る。後ろに彼方がいないから少し違和感があるが……その代わり、ゆっくり走る必要はないんだよな。これは予定より早く着きそうだ。
思えばもう俺はこの時から、スクールアイドルのことを好きになっていた気がする。いや、多分最初からなんだかんだ言って俺はスクールアイドルに興味を持っていたんだろう。
俺のスクールアイドルに対する「大好き」な気持ちを教えてくれた中川には感謝をしないとな……。
そうして、夏休みのスクールアイドル中川菜々育成計画は始まった。
中川は元々、センスはあったのだろう。
最初は運動不足気味ではあったが、すぐに体力をつけ、踊りも歌も完璧にマスターした。
お盆明けにはもう教えることも無くなってきていたほどだ。
「じゃあ、今日はここまでにするか」
「ふぅ……。今日も疲れました!」
そう言う中川は確かに汗はかいているが、息はあまりあがっていない。
「お疲れ様ですわ、中川さん。それと内村会長も。生徒会室に冷たいお茶をご用意しております。どうぞ頂いて下さいまし」
特訓が終わったのを見計らって、神枝先輩が俺達に声を掛ける。
「神枝副会長、ありがとうございます!」
「俺もいいんですか?」
「勿論ですわ。適度に水分を取らないと、熱中症になってしまいますわよ」
そして、冷房の効いた生徒会室でお茶を飲みながら雑談をしていると、中川はソファの上で眠ってしまった。やはりなんだかんだで疲れてはいたのだろう。
「あら、中川さん。眠ってしまわれましたわね」
「やっぱ疲れてはいるんだな。あんまり表には出さないけど」
「会長の指導が厳しすぎるのではなくて?」
「その分、神枝先輩が優しくしてやって下さい」
「ふふふ、了解致しました」
中川が寝ている間に裏方の仕事は済ませてしまおうと考えた俺は神枝先輩にとある件の進捗を尋ねた。
「神枝先輩、中川のスクールアイドル衣装の件、どうなってます?」
「デザインは決まりましたわ。あとは色さえ決まればすぐにでも作れるのですけれど……」
色か……。中川は何色が好きなんだろうか?
これは本人に聞かないとやっぱりわからないか……
と、そんな風に考えていた時、中川がこんな寝言を呟いた。
「セツナ……スカーレット、ストーム……!」
この夏休み中に気付いた事なのだが、中川はアニメや漫画、ライトノベルなどのサブカルチャーもスクールアイドルと同じくらいに好きなのだそうだ。
俺も結構アニメなどを見る方なので、休日ふと足を運んだアニメイトで偶然一緒になった時は心底驚いた。
中川の寝言に出てきた「セツナ」というのは、中川が特に好きなライトノベルに出てくる登場人物の名前らしい。確か来年にアニメ化が決定したと昨日か一昨日あたりに大はしゃぎしていた覚えがある。
「寝言でもアニメかよ……。本当に好きなものに全力だな、中川は……」
「会長!
「ん?……あっ」
そういうことか……。
「「スカーレット!」」
俺と神枝先輩は声を揃えてそう言った後、急におかしくなって笑い出す。
その笑い声を聞いてか、中川は目を覚ました。
「ふぁあ……先輩たち?何笑ってるんです……?」
「おっ、中川。起きたか」
「さて、中川さんも起きられましたし、そろそろ帰り支度をしないといけませんわね」
「あっ……やだ!? 私、もしかして寝ちゃってました!?ごめんなさい!」
「気にしないで下さいまし。さぁ帰りましょう」
「そうだな。帰るか」
「あれ?輝助さん?」
学園からの帰り道、俺は後ろから声を掛けられた。声の主は彼方の妹の遥だ。
「おっ、遥か。どうしたんだ、こんなところで?」
そう質問しながら、自転車から降りて遥の隣で歩き始める。
「受験勉強で疲れたので、少し近所を散歩していたんです。輝助さんは学校ですか?」
「あぁ、生徒会でちょっとな……」
間違いではない。
「遥はどこ受ける予定なんだ?」
「東雲学院です!私は輝助さんやお姉ちゃんみたいに頭が良くないから虹ヶ咲で特待生になるなんて難しいですし……」
虹ヶ咲は偏差値高い方だからな。普通科の有名大学への進学率もトップだし……
「その点、東雲学院は偏差値も高すぎないですから!あと公立なんで授業料を気にしなくていいのも魅力です!」
「彼方は「授業料とか気にしなくていいのに~」とかなんとか言ってたけどな」
「はい、私も言われました!輝助さん、お姉ちゃんの真似上手いですよね」
昔からあのゆる~い喋り方を隣でずっと聞いてるからな。
「……でもいいんです!私は東雲学院に行きたくて選んだんですから!」
「へぇ~、東雲学院に何かあるのか?」
「はい!東雲学院はスクールアイドル部が有名なんですよ!」
へぇ~、そうなのか。やはり最近はスクールアイドルに憧れる子が多いんだな。
「そうか。虹ヶ咲の一年生にも一人スクールアイドルをやりたいってやつがいてな。その子も今、色々頑張ってるよ」
「そうなんですね!なんか、それを聞いたらやる気出て来ました!よーし、私も頑張らないと!」
「まずは受験、頑張れよ。応援してる」
「はい!ありがとうございます!」
そう言って、遥は家の方へと走っていった。
俺はその小さい背中を見ながら、ゆっくりと歩いて家へと向かうのであった。
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