Vtuber銀玲の憂鬱   作:明日死ぬ

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ライブ 1/3

「人は?」「全員来てる」

 

「告知は?」「十分やった」

 

「機材は?」「問題なしだ」

 

「警備」「過剰なくらい」

 

「天候」「晴れ」

 

「クレーム等」「特には」

 

「客」「入ってる」

 

「交通機関の渋滞とか」「配信で見てもらえばいい」

 

いざライブが始まることになって、私はそわそわしていた。

 

「吸うか?」「いや、流石に、他のvtuberが近くに居るのにそれは」

 

薬は最終手段として、本当にどうしよう。

 

「こんなにそわそわするのは、10万人記念配信の時くらいです」

 

「初配信の時は緊張してなかったのにな」

 

「あの時は、遊びというか、失敗しても何とかなりましたからね」

 

今は違う。

 

「じゃあ配信でもしてみたらどうだ? そのノリでライブもやればいい」

 

「……やってみます」

 

メン限にしておこう。

 

 

 

 

 

「た、助けてください」

 

・ライブ始まった?

・あれ、メン限だけど

 

「その、緊張してしまって。皆さんの意見を貰えたらと」

 

銀玲でもそういうことあるんだね

 

「それはそうですよ。私だって……」

 

いや、違うか。私はvtuber、人でなし。

 

「緊張している銀玲の方が萌えますか」

 

・俺は葛藤している銀玲が一番好きだよ

 

「そうですか」

 

・それは何に対して???

 

「何というか。決して、歌の上手いわけではなく。笑いものにしてくれて構いません。こんなのでもステージに立てるんだって。勇気とか感動じゃなく、ただちょっと元気になってくれれば、それで」

 

・金払って行ってるから、微妙でも脳内で補正かけとく

 

「ありがとうございます。こうやって話しているおかげで、少し落ち着いてきました。そろそろライブが始まるので切ります。アーカイブは消しておくので、慌てふためく銀玲は心の中にしまっておいてくださいね」

 

●rec

ライブ頑張ってね

 

 

 

 

 

『第一部がまもなく始まります』

 

 

これから歌うのは、他人の歌。カバー曲による自己表現。罪悪感が無いと言ったら、嘘になる。所謂文化の盗用。プレミア公開よりも早く回る時計の針が零時を刺した時、物語は始まる。

 

 

『ヒビカセ』作詞:れをる 作曲:ギガP

 

「感覚 即 体感」

 

一曲目は『ヒビカセ』だ。これは初音ミクのために作られた曲だが、私達vtuberにも繋がる部分がある。

 

「ヴァーチャルだって 突き放さないで」

 

オープニングには、相応しい曲だ。静かな立ち上がり、拍手はない。次の曲を待っているのだろうか? 

かくいう私も待っていた。一曲目は事前に録音等を済ませている。声にエフェクトを掛けたり、演出の都合という部分もあるが、実際は私自身の声が震えてちゃんと歌う自信が無かったから。小さく口ずさみながら、画面の向こうで歌っている銀玲に私は溶け込んでいく。

 

画面が割れる。

 

「皆、調子どう!?」

 

「一曲目は『ヒビカセ』でした!二曲目に行く前に今日のライブを盛り上げてくれるvtuberを紹介します」

 

「一人目はバーチャル猫耳メイド美少女おじさんDJのレイムちゃん!」デュクデュクデュクデュク

 

「2人目はVOIZEより朱雀さん」よろしくお願いします

 

「ライブをやる時にVOIZEの人とやろうって話になって、一番いい娘を頼むって言ったら、朱雀さんが来て。私は掛け声だけやるから歌ってほしいって」

 

「先輩にそんな失礼なこと出来ません」

 

「まぁ、そんな頼りない先輩だけどよろしく。歌詞忘れちゃったら代わりに歌ってね」

 

「絶対忘れないくせに」

 

「皆も知ってる曲あったら一緒に歌ってオッケーだよ。

ではニ曲続けて。『合法的トビ方ノススメ』『僕はこの瞳で嘘をつく』」

 

デュクデュクデュクデュク

 

『合法的トビ方ノススメ』作詞:R-指定 作曲:DJ松永

 

 

「バチャ豚共ぶち上がれ!!」

 

と言いつつも小悪魔的の声色で歌う。この二曲がデュエットなのは、単純に曲が難しすぎて歌いきるのが困難というのがまず一つ。朱雀さんは超正統派のかっこいい系だから、それを活かす形で。

 

「イン」「アウト」

「インイン」「アウト」

「タイトなLoopで」「ヒーヒー言わす」

「高値の――」「ですから――」

 

「「ファム・ファタールの名はMUSIC」」

 

『僕はこの瞳で嘘をつく』作詞:飛鳥涼 作曲:飛鳥涼

 

次は私が大好きな曲の一つ(選んだ曲は皆好きだが)の、『僕はこの瞳で嘘をつく』だ。この曲の問題点としてまず、どっちがCHAGEでASKAなのかがある。昔はASKAが凄いとしか思っていなかったのに、今聞くとCHAGEのハモリに驚く。結果、私がASKAで朱雀さんにCHAGEを担当してもらうことになった。

 

「僕はこの瞳で嘘をつく」

 

Creepy NutsやCHAGE and ASKAはアーティストの中でもトップレベルの実力を持ち、歌唱力で張り合うなんてものは夢のまた夢だ。原曲を超えるとか馬鹿みたいなことを言うより、私達なりのやり方でやるしかない。朱雀が私に微笑んで、私もまた返す。合わせる。

 

「僕の中の秘密の事 僕の中の誰かの事…?」

 

やがて曲が終わる。

 

「――朱雀さん、ありがとう。……ちょっと疲れちゃった」

 

「もう?」とか「ライブお疲れ」といったコメントを幻視。

 

「お水飲みます。これが本当の仮想水(バーチャルウォーター)なんてね」

 

「ではそろそろ。踊ります」

 

『ハイファイレイヴァー』 作詞:Easy Pop 作曲:Easy Pop

 

というわけでダンスナンバー。勘のいい人ならすぐにわかりますが、これも別撮りです。だってライブ中に踊ったら疲れるので。最初は他の人に踊ってもらおうと思ったのですが、自分で踊った方がいいとのことで、ライブまでのボイトレと並行してダンス練習に結構時間を取られました。後半の方ちょっとバテてますが、そっちの方がリアリティがあるとかないとか。

 

「Wow wow yeh yeh 顔が近づいて 大胆な私がいる」

 

特別にガチ恋距離もやりました。

 

『Over Drive』 作詞:YUKI 作曲:TAKUYA

 

この曲はVark outのメンバーに楽器を担当してもらいます。この曲も凄い難しくて、メンバーと一緒にかなり練習しました。そして、アレンジとしてアコースティック青春的な感じに。要するに逃げなんですけど。うまく騙されてくれると幸いです。

 

「『ハイファイレイヴァー』『Over Drive』でした」

 

オーケストラアレンジとか、ラスボスアレンジとかが嫌い(一番嫌いなのは歌い手のラスト直前でのアレンジ)。その曲にある微妙な要素を殺すというか、『Over Drive』にはそれがあるのに、私はそれから逃げた。そう思うと嫌な気分になるけれど、テンションが下がる分にはそこまで問題が無い。

 

「暗くなりました」

 

単に照明を切ってるだけ。

 

「そろそろお眠の時間なので、最後です」

 

素で欠伸が出そうになって堪える。私は歩く、演出案としてアニメのEDよろしく私が曲の間走るというものがあったけど没になって、その名残で歩く。星が流れる。

 

「星…」

 

私が、浮かび上がる。さっき嫌いと言っておきながらもオーケストラアレンジの『夜に駆ける』が始まる。

 

『夜に駆ける』 作詞:Ayase 作曲:Ayase

 

疾走感がある曲だが、少しゆっくり目にして、優しく歌う。レゲエDeejayの如く、息を吐く。段々加速する。ここから先はアレンジ無しの直球勝負だ。

雨が降る。

 

『低血ボルト』作詞:ACAね 作曲:ACAね

 

曲がそのままの分、演出でフォロー。私の姿がぼやける。白黒の私、時たまのノイズ。ずっと真夜中でいいのに。の特徴として、何度も変化するメロディがある。サビが終わったらサビが始まったという感じで、そのテンションを最後の曲まで繋ぐ。

 

「ラスト、『平面鏡』」

 

 

『平面鏡』 作詞:Reol 作曲:Reol

 

舞台は夜空、雨と流転し、何もなくなる。暗転する。配信で見ている人は、自分の顔が映ったかも。使う声色はかっこいいでもかわいいでもなく、語り掛けるような生々しい声。客は一気に幻想の世界から引き戻されるはずだ。

 

「憂いを流してよアルコホリック」クルクルクル

 

あんまりかしこまって歌うような曲じゃないという考察。

 

「君の目 映り込む身体 真実よりも確かな虚像を」

 

銀玲よりも、生身の私に近いトーン。メン限でもあんまり見せたことない。

 

「壊れていく平面世界」

 

照明は落ち着きが無く揺れて、私を捉えては放して客席の方にも興味を示す。またもや暗転。明るくなって、私が居ない。

 

アナウンス。担当は妖精さん。

 

『ニ十分の休憩を挟んだ後、第二部を開始します』

 

休憩の時間は、私が体力回復のため本当に寝たり、機材の準備をしたりするほか、妖精さんが場を繋いでくれる。

 

「応援メッセージです」

 


使用楽曲コード:00549053,71413316,71999922,N00096939,N00118838

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