異世界でも大東亜共栄圏   作:えなかま

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第一話 大日本帝国転移

合衆国領 ハワイ 現地時間 1941年12月7日 早朝

 

 真珠湾攻撃のため、ハワイ近海に接近した日本海軍機動部隊から、第一波空中攻撃隊として艦戦43機、艦爆51機、艦攻89機、計183機が発進。乗組員達の期待を一身に背負って操縦士達は敵地へと向かっていた。 

 

 「予報では晴れのはずだが想定以上に雲が多い。気象隊は何をやってるんだ…そろそろオアフ島が見えてもいいはずだが」

 

 第一次攻撃隊の隊長、淵田中佐は97式艦上攻撃機の機内で静かに焦っていた。真珠湾攻撃における総指揮官であり、これまで何度もシミュレーションしてきた中で雲が多いからと言って航路を間違えるなどというミスは許されない。

 

 「隊長、航路に間違いはないはずです。計器も正常です。」

 

 操縦士である松崎大尉は頼れる相棒である。通常は目標への攻撃が完了したら母艦へ引き返すが、総指揮官機は今後やってくる第二次、第三次攻撃隊の戦果を見届け戦況を把握し続けなければいけない。激しい対空砲火の中でも上空で待機し続ける操縦士には特に高度な腕前が求められる。

 

 「ただ、ラジオの電波も何も受信できません。天気が悪いとはいえホノルル放送が聞こえてもおかしくないはずですが…」

 

 電信員の水木一飛曹の報告で一層疑念が深まるが、その時松崎大尉より予想外の報告を受ける

 

 「11時方向より黒煙!どんどん数が増えていきます!」

 

 「なに!?既に米海軍に察知されていたか!致し方ない、信号弾2発を発射する。電信員は無線封止解除し各機にトツレ発信!」

 

 真珠湾攻撃では奇襲の場合には合図が信号弾1発で火災による煙に妨げられることない状況で対艦攻撃を実施させるべく艦攻による攻撃を先行させ、強襲の場合には合図が信号弾2発で艦爆による対空防御制圧が先行させる作戦計画になっていた。”トツレ”は突撃体形作れを意味する。

 

 「いえ!あれは日本海軍です!一番大きい船はおそらく金剛型。」

 

 「馬鹿な!金剛型は全て南方作戦に参加しているはずだ!」

 

 ありえない報告に中佐はすぐさま双眼鏡を黒煙の方向へ向けた。

 

 「確かに金剛型に瓜二つだ。しかし旗が違う。どこの国だ。」

 

 前方から接近してくる艦隊は戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦8。赤い丸に白の十字を刻んだ旗が掲げられ単縦陣で明らかにこちらに気づいているようだった。

 

 「隊長!前方の艦隊より遭難信号と思われる信号を受電!」

 

 電信員の報告とともに砲口が外向きになり、白旗が掲げられる。

 

 「対話を望んでいるのか…。とりあえず現状を赤城に報告!指示を乞え」

 

 予期していなかった事態を前に淵田中佐は作戦中止も視野に入れて次の対応を考えていた。電信員が電文を赤城に伝えようとしていたその時…

 

 「赤城より暗号電文入電!『ツクバヤマハレ』作戦中止命令です!」

 

 「機動部隊の方でも何かあったのか。各機に作戦中止を伝えろ!現状を赤城に報告しあの艦隊をどうするか指示を乞え!」

 

 

 機動部隊から作戦中止が伝えられたということは南方作戦も何かあったに違いない。何がどうなっているんだ…そんなことを考えながら待っていると

 

 「赤城より入電!第一次攻撃隊は帰投。謎の艦隊に対してはそのままの進路で進むよう伝えろとのことです。」

 

 「伝えろって言われたって…相手何語話すんだよ。とりあえず日本語と英語の平文で良いからこちらの所属と遭難信号を本国へ中継したこととそのままの進路で進むよう伝えろ」

 

 電信員が発信するとすぐに返答が返ってきた。

 

 「…こちらグラ・バルカス帝国海軍第八植民地任務部隊司令長官代理兼オリオン級戦艦3番艦アルニラム艦長のアリゴ少将だ。先ほどの緊急信号への返答感謝する。」

 

 流暢な日本語に驚きつつも感情を表に出さないで返答する。

 

 「第一航空艦隊、赤城飛行隊長の淵田中佐だ。貴艦隊には本国よりそのままの進路で進むようにとの指令が来ている。あくまでも任意ではあるが従ってくれるか。」

 

 本当は色々聞きたいことはあるが、公私混同はしないタイプの淵田中佐であった。

 

 「了解した。我々も本国より日本の指示に従うよう厳命されている。失敬、今は大日本帝国だったな。それはともかくよろしく頼む。」

 

 何故日本語が話せるのか。何故相手は日本を知っているのか。そもそもグラ・バルカス帝国ってなんだ。疑問は尽きないが後は機動部隊に任せることにし、赤城に帰投した。

 

 

 

~帰投中の機内で~

 

 「隊長、何なんですかあいつらは。グラ・バルカス帝国なんて国ありましたっけ。」

 

 

 操縦士である松崎大尉は無線を聞きながらうずうずしていたのをやっと吐き出せてテンションが上がっている。他の機内でもその話で持ち切りだ。

 

 「いや、無いだろ。もう何の話かさっぱりだ。今日はわけがわからんことばかりで疲れた。これが夢なら起こしてくれ。」

 

 何年も前から準備していた真珠湾攻撃も失敗に終わり、中佐は今まで張りつめていた糸が切れてしまったようだ。

 

 

 「どうせなら隊長がついでに聞いてくれればいいのに…」

 

 飛行機乗りには好奇心旺盛な奴が多い。そもそも好奇心旺盛じゃないと飛行機に憧れは抱かないのだ。

 

 「あんなん首突っ込むなんて真っ平ごめんなこった。面倒事はお偉いさん方に任すのが一番よ。せっかく参謀から離れたんだ。今のうちに楽させてもらうよ。」

 

 

 既に頭から米軍のことが消えつつある淵田中佐であった。

 

 

──────────────────────

 

満州国軍 興安省南警備隊 興安騎兵第8団 現地時間 1941年12月7日 深夜

 

 

薄い白化粧をした広大な草原の中を10騎が普段通り国境線を監視している。空を見れば満天の星空が広がっている。

 

 

「あれ、いつもと星の位置が違うなあ」

 

 

モンゴル人のテムーレン中兵は毎日眺めている星々が今日は異なることを不思議がっていた。

 

 

「夜空ばかり見てねぇでちゃんと国境警備しろよな」

 

 

同じく中兵のボロルマーは階級も同じなら年も同じなくせに先輩面することが多い。

 

 

「確かに風景も少しおかしいな。」

 

遊牧民であるモンゴル人は広大で目印のない草原でも道に迷うことはなく、夜間でも目的地に着くことができるので騎兵の役割が狭まりつつある今でも重宝されている。

 

 

「あれ、松明だ」

 

一番目の良いテムーレン中兵が遠くに光る5つの松明に気づく。

 

 

「中国軍か?ソ連軍の可能性もなくはないが」

 

 

中国国境沿いではあるが最近はソ連軍の動きも激しい、米国との開戦をきっかけに攻め込んでくることも想定されていた。

 

 

しかし近づいていくとそのそちらでもないことが明らかとなる。

 

 

「なんか貴族みたいな服だな。」

 

 

「いかれた馬賊どもか?」

 

 

満洲で日本軍の支配が強くなるにしたがい、馬賊は日本人とも衝突するようになり、満洲各地で日本軍ないし日本人を襲う事件も多くあった。

 

 

「どうします分隊長?」

 

 

 馬賊であれば先制攻撃しても問題はない。

 

 

「数ではこちらが有利だ。もう少し近づき警告、必要あらば攻撃する」

 

 

分隊長は同じモンゴル人である馬賊と出来るだけ戦いたくなかった。

 

 

さらに近づいていくと流石に向こうもこちらに気づいたようだ。近づいてくる

 

 

 

「貴様ら、見かけない服装だな。どこの者だ?」

 

 

一番偉そうなやつが質問してきた。

 

 

「我々は満州国陸軍興安騎兵第8団だ。貴様らこそ何者だ。」

 

 

お互いに見慣れない服装で疑いの目が強まっている。

 

 

 

「満州国?私はパーパルディア皇国マルタ属領統治機構軍第3騎士団所属のニール = コープ曹長だ。」

 

何を言っているのか分からないという顔でお互い見つめあっている。先に切り出したのは皇国側だった。

 

 

「背中に背負っているのは銃か?貴様ら庶民が持っているはずはないが、もし持っていたとなれば重罪だ」

 

 

 反乱恐れている皇国では軍人以外が銃を持つことは認められていない。

 

 

「我々は軍人だ。当然銃を持つ権利はある。お前らこそ何がパーパル皇国だかマルタ皇国だか知らんが馬賊なら容赦せんぞ」

 

 

パーパルディア皇国をいかれた馬賊の名称かなんかだと思い込んでいる。

 

 

「誇りあるパーパルディア皇国を賊扱いするとは。ここまで堂々と言われると清々するな。心置きなく反乱分子として処分できる。」

 

そう言うと何やら丸いものを取り出した。

 

 

「司令部、こちら第3騎士団第3分隊。通常警備中に反乱分子を発見。恐らく我々だけで対処できるが、銃を持っているため念のため援護求む」

 

 おそらく無線機のようなものだが、満州国にも大日本帝国にも無いものだ。

 

 

「おい、テムーレンとボロルマー。本隊に伝令、我馬賊と遭遇、援軍の要ありと認む。以上。頼んだぞ」

 

 

 話からそれなりの規模の馬賊であるらしいことが分かった分隊長は本隊に援軍を求めた。

 

 

「おい、伝令を追え、反乱分子は根こそぎ潰せ」

 

 ニール曹長が部下に指示をする

 

 

「わかってないようだな」

 

分隊長は伝令を追いかけようとした騎兵を即座に射殺した。

 

 

「ほう、民の面前で公開処刑しようと思ったがやめだ。皆殺しだ!」

 

 

そう言うと剣を抜いた。

 

 

とっさに分隊長はニール曹長を撃ったが謎の光に阻まれて弾かれた。

 

 

「今のはなんだ!?」

 

 

満州国側のの兵士は皆驚きで一瞬体が固まってしまった。しかしその隙をニール曹長は見逃すはずもなかった

 

 

「これだから魔法ナシは…」

 

「死ね!」

 

剣に謎の光を纏わせ、蔑みの笑みに満ちた顔で分隊長に切りかかる

 

 

  ドサッ

 

 

次の瞬間には分隊長の頭が地面に落ちていた。

 

 

銃で防ごうとしたようだが鋼鉄製の銃身はいとも簡単に切断され、そのまま頭が胴体と分離してしまった。

 

 

 

「分隊長!」

 

 

部下たちは必死に応戦する。ニールの部下たちは倒すも肝心のニールには攻撃がなかなか当たらず、当たっても謎の光に弾かれ、次々とやられていく。逃げる者は銃に撃たれ、果敢に挑む者には刃が飛んでくる。

 

 

このような光景が中国戦線各地で見られた。

 

 

──────────────────────

ロデニウス大陸 ロウリア王国(旧クワ・トイネ領) 大日本帝国陸軍 コタバル上陸部隊 現地時間 1941年12月7日 午前1時過ぎ

 

 

真珠湾攻撃が始まる数時間前の深夜、マレー半島に上陸する部隊があった。

 

 

「攻撃が全く無いぞ」

 

 

山貝二等兵は小声で話しかける。

 

 

「そもそもこんな寒いなんて聞いてないし、草原が広がってるし、本当にここはコタバルなのか?」

 

 

同期の斎藤二等兵が反応するが、他の第一回上陸部隊約1300名も同様に思っていたことだろう。

 

 

それは司令部も同じであった。

 

 

 

 

 

同上 コタバル上陸部隊戦闘司令所

 

 

「橋頭保が確保できたのはいいが、ここはどこだ?」

 

 

佗美浩少将が部下に尋ねる。

 

 

 

「は、イギリス領マレー半島東北端のコタバルであります!」

 

 

部下は内心、半信半疑ながらも堂々と答える。

 

 

「まあ、ここまで送ってくれた橋本信太郎海軍少将もそう言ってたからそうなんだろう。この寒さと景色を除けばな!」

 

 

佗美少将は普通に焦っていた。

マレー作戦におけるコタバル上陸部隊はシンゴラ上陸部隊を上陸させるための陽動が目的だ。もし場所が違っていたとなれば作戦の成否にかかわる重大な問題だ。

 

 

「もうすぐ斥候が帰ってくる予定です」

 

 

上陸時点で予想された敵の攻撃も無ければ陣地も無かったので周囲を偵察し、現在地や今後の行動の判断材料として斥候を出していた。

 

 

「南方軍司令部はどうだ」

 

 

「海軍に依頼しましたが、原因不明の雑音で通信できないようです」

 

 

実は移転直後にこの星特有の磁気嵐が発生していた。

 

 

 

「近くの部隊にも繋がらんか」

 

 

「全ての周波数で原因不明のノイズが乗ってしまうようで…」

 

 

司令部の中に重い空気が漂うと

 

 

「報告!」

 

斥候部隊が帰ってきた

 

 

「周囲は畑が広がっており、小屋も見受けられますが、全て燃やされ朽ち果てておりました!また、松明を持った兵士らしき人物を目撃しましたがそれが…」

 

 

報告を聞いて更にここがコタバルではないと思い始める司令と参謀達。

 

 

 

「…摩訶不思議でして、まるでおとぎ話に出てくる騎士みたいな恰好でありまして…」

 

 

斥候の兵士も自分が見たものが信じられないという表情で報告している。

 

 

「夜で見間違えたんじゃないのか!」

 

 

「より範囲を広げて偵察すべきかと具申いたします!」

 

 

「いや、もう作戦の前提から狂っているんだ!南方軍に指示を仰ぐまで動くべきではない!」

 

 

参謀達が論戦を繰り広げていると突然佗美少将が立ち上がる

 

 

 

「既に賽は投げられた。南方軍に指示を仰げぬ以上、独断で行動するしかない!」

 

 

司令はそのまま続ける

 

 

「斥候の範囲を拡大し、現地民に接触。兵士らしき者との接触は今は出来るだけ避けろ」

 

 

 

 

同上 4時

 

 

斥候の結果、ここがロウリア王国クワ・トイネ属領でここの兵士は剣や弓等しか持っていないことが分かった。

 

 

「…ということだが、皆の意見を聞きたい」

 

司令が参謀達に意見を求める

 

 

「もし報告が本当であれば我々は全く知らない国に勝手に上陸してしまったことになります。まずは船に戻り現状把握に努めるべきかと」

 

 

「間もなくシンゴラ上陸部隊が上陸する時間です。もし座標が間違っていなければ伝令を出し、接触するべきかと具申いたします」

 

 

「他の部隊と歩調を揃える必要があります。まずは橋本信太郎海軍少将とも相談する必要があるかと思いますが」

 

 

参謀各々が意見を出し、司令は腕を組み考えている。

 

 

事態は突然やってきた

 

 

「報告!ロウリア国兵士と思われる集団500が我が陣地前で集結しております!」

 

 

参謀達は騒然となる

 

 

「念のため戦闘配備させろ。橋本少将には私が伝える」

 

 

陣地内に信号ラッパが鳴り響く

 

 

休憩をとっていた兵士たちは突然の事態に驚きながらも配置につく

 

 

 

 

同上 5時 コタバル上陸部隊陣地正面

 

 

ロウリア王国軍と大日本帝国陸軍が睨みあっている中、ロウリア側から一人の騎士が陣地に近づく。

 

 

「我々はロウリア王国ワ・トイネ属領軍である!住民の通報あってここに参上した!慈悲深い私だ!降伏すれば命まではとらん!責任者は前に出ろ!」

 

 

暫くたつと

 

 

「私が責任者だ!」

 

佗美少将が前に出る

 

 

「ふむ、お前か」

 

騎士はニヤッとすると剣を振った

 

 

 ドサッ

 

 

次の瞬間には佗美少将の頭が地面を転がり、主を失った胴体は首から血を吹き出し、重力に従って膝から崩れ落ちた。

 

 

「わっはっはっは!反乱軍を生かすわけ無いだろ!全員ここで死ね!」

 

 

騎士はそう言い捨てると命令を下した

 

 

「お前ら!久しぶりの反乱軍だ!報奨金が欲しけりゃ殺しまくれ!以上!」

 

 

士気の上がった属領軍は果敢にコタバル上陸部隊陣地に突撃する

 

 

 

「うおおおおおぉぉぉぉ!!」

 

 

「金だぁぁぁあああ!!!」

 

 

「首寄越せえええぇぇぇ!!」

 

 

ダン!

 

 

一発の銃声と共に先頭を走っていた属領軍の兵士が倒れた

 

 

後ろを走っていた属領軍の兵士達は一瞬な何が起きたのか分からず反射的に止まってしまった

 

 

ダン!ダン!ダン!ダン!

 

 

銃声の度に属領軍の兵士が倒れていく

 

 

「じゅ、銃だ!」

 

 

兵士の誰かが叫んだ

 

 

 

ダダダダダダダダダダ

 

 

機関銃も射撃し始めると属領軍の士気は一気に崩壊し、敗走し始める

 

 

「グハッ!」

 

 

「何で反乱軍如きが銃なんて持ってるんだ!」

 

 

「お、お前ら逃げるな!」

 

 

属領軍の部隊長らしき騎士も恐れをなして部下を置いて一目散に逃げていく

 

 

 

 

陣地前には多くの亡骸だけが残った

 

勝ったコタバル上陸部隊兵士は皆うなだれている

 

 

 

 

これをきっかけに対ロウリア戦が始まることとなった

 

 

 

 

第三文明圏勢力図(中央歴1639年12月7日時点)

 

【挿絵表示】

 

 

 




矛盾点やミスがあれば教えていただければ幸いです。


(2021,05/11)序盤は色々説明不足感あるので転移直後の描写を追加しました。また、それに合わせてタイトルも変更しました。南方戦線の描写もそのうち追加したいと思っています。

(2021,05/17)転移直後の第三文明圏勢力図の挿絵を作ってみました。気になる点や質問等ありましたらお気軽にコメントください。

(2021,05/18)南方戦線の描写を追加しました。
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