異世界でも大東亜共栄圏   作:えなかま

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 満州国に虎頭要塞と呼ばれる大日本帝国陸軍の要塞がある。そこには日本軍では最大射程の火砲であると同時に唯一の列車砲である九〇式二十四糎列車加農が配備されていた。


第十話 魔王退散

トーパ王国 城塞都市トルメス即席司令部 現地時間 中央暦1639年12月22日午前6時

 

 

 

 皇国軍と日本軍の共同作戦によってミナイサ地区は取り戻すことが出来たが、依然として城塞都市トルメスは半包囲の状態にあった。

 

 

 「現在、我々は魔王軍によって半包囲の状態にあり、戦線は膠着しています。」

 

  パーパルディア皇国軍と大日本帝国軍、トーパ王国それぞれの将官が現状の報告を聞いている。

 

 「ミナイサ地区を取り戻した直後、皇国軍は2個師団で以てそれぞれ東西に分かれて攻勢に出ましたが、魔王軍は数の多さを活かした大規模な反攻作戦を実行。一時孤立の危機に瀕すも、予備師団投入によって戦線を維持。現在に至ります。」

 

 「皇国軍としては現状打破の見込みはあるのか?」

 

 日本軍参謀が質問する。

 

 「少しリスクはあるが現在リントヴルムとワイバーンを主体とした作戦計画を立案中だ。」

 

 皇国軍参謀が回答する。

 

 「ワイバーンによって戦線を撹乱し、そこへリントヴルムを突入させ戦線を強行突破し、再び戦線を構築される前に魔王を打ち取る。」

 

 「魔王の場所は分かってるのか?」

 

 「事前にワイバーンによる強硬偵察を行う予定だ。」

 

 「もし失敗すれば我々の戦力は半減どころでは済まなくなり撤退を余儀なくされるが、その時は日本軍に任せよう。」

 

 「ふむ、皇国軍様は余程戦果を独り占めしたいようだ。」

 

 「ほざけ。その為の1個軍団だ。日本軍に横取りされたのでは我々の沽券に関わる。」

 

 「横取りとは失礼な!我々の砲撃支援が無ければ何もできないくせに。」

 

 「何を!砲撃支援などなくともリントヴルムとワイバーンがあればどうとでもなった!ただそれでは街が破壊されつくしてしまうから少し力を借りたまでだ!」

 

 「そうですかそうですか。わかりました。ではご自由にどうぞ。もう砲撃支援しませんから。」

 

 「言われなくとも!我々だけで魔王を倒して見せるさ!」

 

 皇国軍と日本軍が騒いでいると

 

 「報告!北門正面より魔王出現!」

 

 「なに!北門はどこが対応している!」

 

 「は!北門はクラエス大佐率いる装甲擲弾兵連隊が対応しています。」

 

 

◆◆◆

 

 城塞都市トルメス北門

 

 

 「あ、あれはなんだ!」

 

皆ゴブリンと激しい鍔競り合いをしている中、一人の兵士が叫ぶと皆一斉にその方向を見る。

 

 遠くから何か大きなものが迫ってくる。

 

 それは巨大な生物のようだ。

 

 上には何かが乗っている。

 

 

 

 「愚かな人間どもよ。だまってあそばせておけば調子に乗りよって。」

 

 

 邪悪な声と共にそれまで青く澄んでいた空が淀み始める。

 

 

 「な、なんだ頭に直接…」

 

 

 魔王の声が周囲数十キロの人間や亜人、魔族の頭に直接語り掛けられる。

 

 

 その瞬間、しばしの間戦闘が止まった。

 

 

 「お前たち、そこをどけ」

 

 

 すると魔族達が一斉に左右に移動し魔王に通路を開ける。

 

 

 遠く正面には北門守備に就いていたトーパ王国と皇国の兵士たちがいる。

 

 

 「我は魔族の王にして魔帝様の従順な僕なり。万物の長たるは魔帝様以外にはなし。神に作られし木偶人形どもよ。かつてお前たちが神と崇めし者は太陽神の召喚と引き換えに消え去った。愚かなる者よ、お前たちは魔帝様を崇めるほか生きる道はないのだ。わが名はノスグーラ。魔族を束ね、暗黒魔法司るもの。」

 

 魔王はそう言い終えると止まった。

 

 

 「この赤竜の力を見るがいい。」

 

 

 全長50mの巨大な生物の表面が光りだす。溢れ出る膨大な魔力が口元に集まり始める。

 

 

 「こ、これはまずい」

 

 北門の守備を担当していた王宮戦闘魔導衆特戦隊の隊員が危機感を露わにする。

 

 「あの魔力。城門だけでなく城まで丸ごと吹っ飛んでしまうぞ。」

 

 隊員の一言でトーパ王国兵士は勿論、皇国兵も動揺し始める。

 

 「大丈夫じゃ!この門には防御術式が仕込んである。赤竜と言えど簡単には破れん!」

 

 隊長は皆を安心させるためにそう言うが、内心あの魔力にこの門が耐えられるか自信がない。

 

 「皇国兵の方!わしがあの赤竜に対抗するため防御術式を発動させる!しかし、この術式には膨大な魔力と少しの時間が必要じゃ!どうかこのおいぼれに魔力を分けてくれんか!」

 

 隊長が皇国兵にお願いするなど天地がひっくり返ってもありえないだろうと思っていた特戦隊隊員達は驚きを隠せない。

 

 「た、隊長!魔力なら我々が!」

 

 皇国兵にお願いするなどプライドが許さない特戦隊隊員が隊長に詰め寄る。

 

 「駄目なんじゃ!この術式は数多ある防御魔法の中でも最大級の物。今では失われた古代魔法の一つじゃ。本来人間の魔力では発動すら不可能な代物じゃが、特戦隊と皇国の擲弾兵がいれば何とか足りるじゃろう。わしが皆の魔力を何とか同期させる。」

 

 「こ、この人数の魔力を同期させるなど可能なのか!」

 

 

 クラエス大佐が信じられないという表情で隊長に疑問を呈す。

 

 通常、術式等の仕込み魔法はその規模に応じて複数人で術式を発動させる場合はあるが、多くても10人程度だ。魔導機関が登場するまでは都市や要塞など戦術規模の魔導防壁を数百人の魔導士で展開していたらしいが、現代では魔導機関に魔導防壁を展開させる術式回路を接続することで魔導士でなくとも魔導防壁を展開させることが出来る。

 

 「王宮戦闘魔導衆特戦隊を嘗めるでない!最近の若いもんは知らんだろうが、列強からも一目置かれるその理由をご覧に入れようぞ!」

 

 隊長はそう言うと早速術式を書き始めている。

 

 「もうやるしかない!」

 

 大佐は覚悟を決めると

 

 「わが連隊は特戦隊を支援する!トーパ王国に時間稼ぎさせろ!日本軍には砲撃支援要請だ!」

 

 大佐の指示はすぐにトーパ王国守備隊と日本軍砲兵隊に伝わった。

 

 

 ドカン!ドン!

 

 

 

 赤竜に砲撃が集中する。

 

 

 「五月蠅い下種共が。悪あがきしたところで苦しみがより長くなるだけだぞ。」

 

 魔王は絶え間ない砲撃に嫌気がさすも効果はない様だ。しかしベヒモスの口元に集まりつつあった魔力が段々薄らいでることが確認できた。

 

 

 「我らが魔族達よ!」

 

 魔王が呼びかける。

 

 「またグラメウス大陸に閉じ込められ惨めな生活に戻りたいか!?」

 

 「傲慢な人間や耳長共に虐げられる生活に戻りたいか!?」

 

 

 魔王が手をあげると降り注いでいた砲弾が着弾寸前で停止する。

 

 

 「否!我々は断固として示さねばならない!」

 

 「この世界が誰のものであるかを!」

 

 

 停止した砲弾が北門に向き始める。

 

 

 「今こそ我らが魔族の力を再び世界に示そうぞ!」

 

 「我らに歯向かうものを全て蹂躙せよ!破壊せよ!」

 

 「そして我らが魔帝様の世界を再び築くのだ!」

 

 魔王が手を振り下ろすと停止していた砲弾が一斉に解き放たれた。

 放たれた砲弾は一直線に北門へ向かい信管が作動する。

 

 

 ドカン!ガシャン!

 

 ゴロロロロロ…

 

 

 北門の爆発と共に魔物達の咆哮がそこらじゅうで木霊する。

 

 「グゥゥゥゥゥグォォォォッォ!!!!!」

 

 「ガァァァァアアアアアアア!!!!!」

 

 

◆◆◆

 

 城塞都市トルメス即席司令部

 

 「何だ今の音は!」

 

 北門の爆発音と魔物達の咆哮は司令部まで届いていた。

 

 「只今観測所より北門が爆破されたとの報告がありました!北門を担当していたクラエス大佐率いる装甲擲弾兵連隊及び王宮戦闘魔導衆特戦隊は通信途絶!現在確認を急いでいます!」

 

 「ま、また…」

 

 

 「まだあるのか!」

 

 皇国の参謀がもうこれ以上聞きたくないという様子で反応する。

 

 

 「は、はい!前線より、魔王が何か叫んだのと同時に魔物達が咆哮し始め攻勢の勢いが一気に増したとの報告!」

 

 

 司令部付きの通信手が信じられないという表情で報告する。

 

 

 「恐らく古の魔法帝国の言葉かと。」

 

 トーパ王国の王立大学の教授が発言する。

 

 「翻訳は出来ないのか?」

 

 「既に失われて久しく、話すものも魔王やオーガ等の高等魔族のみですので…」

 

 「まったくこれだから御用学者は…」

 

 皇国軍参謀が文句を言うと

 

 「それよりこれからどうするかだ。北門が破られた今、皇国軍に動ける部隊はあるのか?」

 

 日本軍参謀が危機感を露わにする。

 

 「もう予備も使い切った今、動かせるのは司令部付きの1個中隊しか…」

 

 「では北門は我々に任せていただこう。」

 

 「ぐぬぬ…致し方あるまいか…」

 

 「アダン司令官も構いませんね?」

 

 「仕方あるまい。日本軍のお手並み拝見といこうか。」

 

 皇国軍参謀が皆悔しさをにじませる中、アダン司令官は顔色一つ変えない。

 

 「では現時点で以て、城塞都市トルメス北門守備隊指揮権及び、守備任務は大日本帝国陸軍関東軍トルメス派遣軍に移管された。責任者はそのまま西村中将で構いませんね?」

 

 「うむ。我々の戦い方を見せつけよう。」

 

 

◆◆◆

 

 満州国 虎頭要塞 第4国境守備隊砲兵隊

 

 「これを使う時が来るとは…」

 

 「ソ連がなくなった今、無用の長物かと思っていましたが…」

 

 目の前には遠距離からソビエト連邦の拠点を攻撃するために研究目的で1門だけフランスから購入された、九〇式二十四糎列車加農の姿があった。

 

 「しかしよく司令部から許可が下りましたね。」

 

 「うん、何で許可下りたんだろうな。まあ、せっかく的があるんなら撃ってやらんと勿体ないしな。」

 

 「そういうもんですか…」

 

 「この列車砲自体元々研究用で購入したものだしな。そう、わが軍は伝統的に勿体ない精神を重要視している。肝に銘じておけ。」

 

 「はぁ。しかし先週組立を終えたばかりで試験も何もしていませんが本当に大丈夫ですかね?」

 

 「既に本国で研究用としての役割は果たしたんだ。もし壊れても文句は言われんさ。なんなら貴重な戦訓を得られれば評価されるまであるぞ。」

 

 「確かに帝国陸軍始まって以来、実戦で40㎞先の目標を攻撃した記録はありませんからね。」

 

 「おう、そのための列車砲よ。もう少し的が近ければ試製四十一糎榴弾砲を使ってみたかったがな。」

 

 日本軍では最大射程の火砲であると同時に唯一の列車砲である九〇式二十四糎列車加農は大和型戦艦の四十六糎砲の42,000m(42km)を凌駕する最大射程50,120m(50.12km)を誇った。

 

 

 

 

 

九〇式二十四糎列車加農 諸元

 

口径:240mm

全長:12.823m(51口径)

砲列砲車重量:136t

砲架:2輪6軸ボギー車

仰角:0°~+50°

旋回角:360°

初速:1050 m/s

最大射程:50,120 m(50.12 km)

弾重:176kg

弾種:破甲榴弾、榴弾

 

 

 

 「砲撃諸元はどうだ?」

 

 「大体は求められましたが、細かいところは撃ってみないとなんとも…」

 

 「それは向こうも分かっていることだ。前例のない長距離砲撃の上、ろくな標定も出来んまま撃つんだから初弾から至近弾など期待してはおらんよ。まあ、時間も限られているから7射目くらいには当てたいがな。」

 

 「7射目も厳しいと思いますが。」

 

 と二人が話していると

 

 「大尉殿!準備できました!」

 

 「おう!今行く!」

 

 二人は一抹の不安を抱えながらも指揮所へ向かった。

 

 

◆◆◆

 

 大日本帝国陸軍関東軍トルメス派遣軍城塞都市トルメス南部即席司令部 

 

 「王宮戦闘魔導衆特戦隊が生きていたのは朗報でしたね。」

 

 「ああ、虎頭要塞の列車砲を使うまでは良かったが、肝心の目標に命中させられるかが微妙だったからな。言ってみるもんだな。」

 

 司令と参謀が話していると、

 

 「王宮戦闘魔導衆特戦隊の方々が来られました!」

 

 「いや、遅くなって申し訳ない。ちょっとこちらでも作戦会議しててな。」

 

 「いえいえ、噂の王宮戦闘魔導衆特戦隊の方々に協力していただけるだけ有難いことです。あれ、隊長は?」

 

 「ああ、隊長は現場に残るそうだ。その方がやりやすいらしい。」

 

 「そうですか。では作戦について最終確認を行いますね。」

 

 「たのむ。」

 

 参謀はそう言うと今回の作戦を話し始めた。

 

 

 第一段階:戦車連隊による攻勢

 

 「現在、多大なる犠牲を払って魔王を食い止めていますが、そこに戦車連隊を投入し前線を撹乱。魔王の注意を逸らし足止めします。」

 

 第二段階:野砲による集中射撃

 

 「現在、魔王軍に対して弾幕射撃を行い、敵の侵攻を阻止していますが、これを一時中断し赤竜に対して集中射撃を行います。」

 

 第三段階:列車砲による砲撃

 

 「後方およそ40kmに虎頭要塞があり、そこに今回の作戦の主役である九〇式二十四糎列車加農があります。これによる長距離砲撃を行います。」

 

 最終段階:王宮戦闘魔導衆特戦隊による弾道修正

 

 「これが今作戦の肝となる部分です。虎頭要塞より放たれた176kgにも及ぶ砲弾は約120秒後に赤竜付近に降ってきます。王宮戦闘魔導衆特戦隊の皆様にはこれを弾着する前に赤竜に直撃するよう弾道修正をよろしくお願いします。」

 

 「うむ、任された。既に準備は整っている。」

 

 「それは心強い!では早速決行しましょう!」

 

◆◆◆

 

 城塞都市トルメス北門 防衛陣地

 

 「目標!前方の雑魚共!斉射300!5連!」

 

 「準備ヨシ!」

 

 「撃て!」

 

 破壊された北門に築いた即席の防御陣地で九二式重機関銃が押し寄せるゴブリン共に十字砲火を浴びせていた。

 

 

 ダンダンダンダンダン!

 

 

 「オークが来たぞ!」

 

 皇国兵が叫ぶ。

 

 

 「擲弾!」

 

 ポン!……ドカン!

 

 

 「グオォォォォォォ!」

 

 

 擲弾が直撃して腹が抉れたオークの最後の断末魔が木霊する。

 

 「まだ来るぞ!」

 

 オークが戦列を成して突撃してくる

 

 

 「戦車はまだか!」

 

 隊長が通信兵に呼びかける。

 

 「もう間もなくです!」

 

 「もうすぐ戦車がくるぞ!それまで何とか持ちこたえろ!」

 

 日本兵の士気は上がるが皇国兵やトーパ王国兵はいまいち何のことだか分かっていないようだ。

 

 「歩兵砲!射撃用意!」

 

 連隊砲たる四一式山砲が直接照準出来る位置に陣取る。

 

 「準備ヨシ!」

 

 「直接照準!目標前方のオークの集団!連続射撃!」

 

 「撃て!」

 

 

 ドン!  ドン!

 

 

 直接照準射撃によって圧倒的に命中率が上がった四一式山砲が毎分10発の連続射撃をしていると…

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴ…

 

 

 「きたか!」

 

 

 地面からかすかな低音の響きが聞こえてくる

 

 

 「な、なんだ…」

 

 聞きなれない音に皇国兵やトーパ王国兵の中には怯える者もいる

 

 

 ギャラギャラギャラギャラギャラ…

 

 

 瓦礫を踏み越えて九七式中戦車がやってきた。

 

 「すまん、待たせたな。」

 

 ハッチから戦車第11連隊連隊長が飛びだしてきた。

 

 「よくきた!待ちわびたぞ!」

 

 銃撃と砲撃の轟音の中、とびきりの笑顔で駆けつける。

 

 「状況は?」

 

 「もう限界だ。敵の数が多すぎる。速く行ってやってくれ。」

 

 「了解した。2個中隊をここに置いていく。それで大丈夫か。」

 

 「2個中隊もあれば十分だ。感謝する。」

 

 

 話を終えるとすぐに戦車に戻り指令を下す。

 

 

 「第一中隊、第二中隊は守備隊の支援!他は付いてこい!」

 

 戦車が突撃隊形を組んで魔物達を踏みつぶさんと突撃していく。日本兵は勿論のこと、初めて戦車を目撃した皇国兵やトーパ王国兵にも強い印象を残した。

 

 

 

 

戦車第11連隊 編成

 

   本部:九五式軽戦車×1輌・九七式中戦車×2輌

 第一中隊:九五式軽戦車×3輌・九七式中戦車×8輌

 第二中隊:九五式軽戦車×2輌・九七式中戦車×9輌

 第三中隊:九五式軽戦車×3輌・九七式中戦車×8輌

 第四中隊:九五式軽戦車×11輌

 第五中隊:九五式軽戦車×2輌・九七式中戦車×8輌

 第六中隊:九五式軽戦車×3輌・九七式中戦車×4輌

 整備中隊

 

 総勢764名

 

 

◆◆◆

 

 魔王は薄々気づいていた。しかし見ないふりをしていた。きっと下種共の猿真似に過ぎないと。火を噴く鉄龍を見るまでは…

 

 

 「あ・・・あれは・・・ま・・・まさか!!!」

 

 

 「た・・た・・た・・・太陽神の使いの鉄龍!!!!」

 

 「おのれ・・・人間どもめ!!!どおりでレッドオーガ、ブルーオーガがやられた訳だ!!!まさか太陽神の使いを・・・そんな大それたものを召喚していたとは!!!」

 

  しかし、眼前にいた鉄龍は、魔王の記憶の中にある太陽神の使いが使役していた鉄龍よりも遥かに小さく無骨であり、あの忌々しい爆裂魔法を放つ角も、魔王の知るそれよりも遥かに小さく、短かった。

 

 

 「チッ!!!やはり所詮は下種共の猿真似か!」

 

 

 とはいえ記憶の中の鉄龍よりも数が多くゴブリン程度では歯が立たないのは目に見えていた。

 

 

 「赤竜よ!目の前の鉄龍を滅せよ!」

 

 

 赤龍の口が光りだす。

 

 

 ドン!ドン!

 

 

 鉄龍が爆裂魔法を放ってくるがこの程度では防壁はビクともしない。

 

 

 「フン、雑魚共が!」

 

 

 ガァァァアアアアアアアアアア!!!

 

 

 

 臨界点を超えた光点は一直線に鉄龍に向かっていく。

 

 雄たけびと共に放たれた光線は戦車1個小隊と付近の魔族諸共消滅させた。

 

 

 

 「やはり魔導防壁が無かったな。本当に太陽神の使いなのか…」

 

 魔王は過去の記憶を呼び覚ましながら太陽神の使いのことを考えていた。

 

 強大な爆裂魔法と防御魔法を持ちながら魔力を全く感じられないため接近されないと気付かない。

 

 魔力を隠す魔法を使ったのかとも思ったが攻撃しても魔導防壁が反応するでもなく結局謎のままであった。

 

 

 ヒュ~…ドカン!

 

 ボカン!ドン!

 

 

 「クソ!忌々しい砲撃がまた来たか」

 

 魔王は自分自身に攻撃が集中していることに気が付き始めていた。同時に赤龍の魔導防壁に信頼を置き始めていた。流石に攻撃する余力はない様だが…

 

 

 「赤龍!ノロマな鉄龍を踏みつぶせ!」

 

 

 赤龍は足を振り回すも近くにいた魔物どもを蹴り飛ばすばかりで鉄龍にはなかなか当たらない。鉄龍共が周囲をかき乱しながら攻撃してくるせいで赤龍の気が散ってしまっている。

 

 「小癪な鉄龍め!」

 

 魔王が自ら鉄龍を攻撃しようとした瞬間

 

 

 「いつの間に!?」

 

 

 上空に魔力が薄い膜状に広がっていた。

 

 砲撃や鉄龍に気を取られていたせいか分らんが気づくのに遅れてしまった。しかし何なんだこれは。

 

 魔王が上空の薄い膜に気を取られていると…

 

 

 「クッ!!」

 

 

 ダン!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

◆◆◆

 

 「やったか!?」

 

 九〇式二十四糎列車加農の破甲榴弾は確かに直撃した。

 

 

 グォォオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!

 

 

 赤龍の断末魔が戦場に響き渡る。

 

 

 フランスのシュナイダー社製の51口径240mm加農砲は、初速1050 m/sの高速で発射され、魔導防壁を貫通し赤龍に直撃した。

 

 赤龍から血しぶきが噴き出している。血と共に魔力も漏れ出し大地に広がっている。目から光を失った赤龍は重力に身を任せ足から崩れ落ちた。

 

 静粛があたりを支配する。

 

 

 

「あ・・あ・・・あ・・・」

 

 

 

 城門の瓦礫からそれを見ていた兵士は、そのあまりの光景に声が出ない。

 

 伝説の赤龍が血を噴きながら倒れる光景・・・。

 

 

 

 ボン!!!!!

 

 

 

 赤龍の亡骸の後方から、魔王ノスグーラと呼ばれた者は、上に向かって飛び出す。

 

 

 「ん?」

 

 

 

 魔王ノスグーラの手に黒い炎が宿る。

 

 

 

 「騎士団を全滅させた、あの強力な火炎魔法か!!!まずい!!!」

 

 トーパ王国兵が叫ぶ

 

 

 「中隊長より各車へ!魔王に集中射!弾種徹甲!準備出来次第撃て!」

 

 

 赤龍を攻撃していた各戦車は魔王に狙いを定める。

 

 

 ドン!!ドン!

 バン!

 

 

 57mm戦車砲と37mm戦車砲の徹甲榴弾が魔王に襲い掛かる。

 

 魔王は攻撃魔法を解除し防御に切り替えるも、空中にいたせいで砲弾の運動エネルギーを抑えることが出来ず吹き飛ばされる。

 

 

 「追い討ちをかけるぞ。撃てぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 

 九五式軽戦車、九七式中戦車は勿論、九〇式野砲と九一式十糎榴弾砲の集中射撃に加え、連隊砲の四一式山砲の直接照準射撃が加わる。

 

 

 ボン!ドカン!ドン!ガン!

 

 

 魔王の周囲は着弾の度に地面が抉られ土埃が巻き上げられる。直撃の度に魔導防壁は悲鳴を上げるが遂には土埃で見えなくなった。

 

 「攻撃止め!攻撃止め!」

 

 

 バーーーン・・・ゴウゥゥゥゥゥ・・・

 

 

 

 静粛・・・

 

 

 最後の砲弾が炸裂し音が戦場に響きわたる。

 

 誰もが、トーパ王国軍でさえもその光景を唖然として眺めていた。

 

 自分たちは、神話に刻まれし伝説の勇者たちの戦いよりも遥かに強く、強烈な戦いを目撃したのだ。

 

 

 

「おのれぇぇぇぇぇ」

 

 

 

 頭だけとなった魔王から声が聞こえる。

 

 遠くまで良く響く、猛烈に大きい声だ。

 

 

 

「な・・・奴は不死身か!!!」

 

 連隊長は唖然とする。

 

 

「おのれぇぇぇぇぇ、太陽神の使いめぇぇぇぇ!!!1度ならず、2度までも我の野望を打ち砕きおってぇぇぇ!!!

 

 良く聞け!!下種どもよ!!!

 

 近いうちに魔帝様の国が復活なさる!!!おまえら下種の世界も間もなく終わるぞ!!!圧倒的な魔帝国軍によって、お前らは奴隷と化すだろう。はーっはっは・・・・」

 

 

 

 声は弱くなっていき、魔王の頭は石化し、崩れ落ち、砂となった。

 

 頭を失った魔王軍の魔物たちは、叫び声をあげ、雪崩のように北方の魔物の大陸、グラメウスへ逃げていった。

 

 

 

「た・・・倒しちまった・・・。」

 

 

 

 ガイはその戦いを見て絶句する。

 

 

 

「な・・なんというすさまじい戦いでしょう」

 

 

 

 トーパ王国軍も眼前の伝説を目に焼き付ける。

 

 

 

「う・・・・」

 

 

 

「ウオォォォォォォォーーー!!!!」

 

 

 

 城壁の上から歓喜の声があがり、民衆を包み込む。

 

 その声は伝播し、城塞都市トルメス全体を包み込んだ。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 モア視点

 

 魔王ノスグーラは強烈な魔法で精鋭騎士団を壊滅に追いやった。

 

 奴はさらに赤龍を使い、その破壊的な魔力で城門や鋼鉄の魔獣を消滅させた。

 

 それに対し、王国軍の超エリート部隊、王宮魔導戦闘衆特戦隊は10名すべての魔力を惜しむ事無く注ぎ込み、魔導防壁を応用することで日本軍の砲弾を赤龍に直撃するよう誘導した。

 

 直撃した砲弾には猛烈な爆裂魔法が封入されており、赤龍を吹き飛ばした。

 

 しかし魔王にダメージは無く、日本軍を知る者を除き、誰もが絶望した。

 

 日本軍は爆裂魔法が封入された砲弾で魔王を集中して攻撃し、遂には倒してしまった。

 

 今が神話になった瞬間だった。

 

 

 

 日本は、結果からすると、あの圧倒的な魔王軍を倒してしまったのだ。。

 

 ああ・・・なんてことだ。

 

 ロウリア王国の件も、パーパルディア皇国との戦いも、日本の戦績はおそらく本当の事だったのだ。

 

 

 

 そして・・・私は今気がついた。

 

 

 

 魔王の最後の言葉、太陽神の使いに対する言葉。

 

 

 

 思い出した。

 

 

 

 日本軍が自らの国旗を白地に赤丸としているが、神話の太陽神の使いたちが自らの国、太陽の国の国旗として掲げていたもの。それも、日本の国旗と同じ、白地に赤丸だった。

 

 太陽神の使いたちは、自らを日出ずる国の住民と言っていたという。

 

 何か、関連があるのかもしれない。

 

 

 

 もしかすると、日本そのものが太陽神の使いの国なのかもしれない。

 

 もしそうだとすると、いったい誰が何のために国ごと召喚などという、大それた事をしたのだろうか?

 

 謎は深まるばかりである。

 

 

 

◆◆◆

 

 トーパ王国軍と魔王軍の戦いを見物に来ていた、誰もが認める世界最強の国、神聖ミリシアル帝国の情報官ライドルカは、驚きに震えていた。

 

 

 

 古の魔法帝国の遺産の一つとされる魔王ノスグーラ、奴がどの程度の魔力を持ち、どういった魔法を使用するのかを、一般人に紛れ確認する。

 

 それが彼の仕事だった。

 

 

 

 伝説の魔獣といわれたレッドオーガとブルーオーガ、奴らのタフさはすごかった。

 

 魔力総量の多い魔獣が微弱な回復魔法をかけ続けると、ああいった戦いが出来るのだ。

 

 皇国兵では敵わないだろうと思っていたが意外と善戦してして驚いた。評価を改めなければ…

 

 

 

 そして・・・問題は魔王だった。

 

 まずやはり、制御不能の魔物たちを制御する能力はすごいものだ。

 

 そして、トーパ王国騎士団約200名を滅した技、超高温の黒い獄炎の炎、すさまじいの一言だった。

 

 

 

 昔の勇者たちも、魔王の強さには絶望したことだろう。

 

 

 

 そして、魔王は古代の魔獣生物である赤龍を使役していた。

 

 皇国が使役しているリントヴルムよりも遥かに大きい。

 

 魔王の有り余る魔力があるからこそ、制御できるものなのだろう。

 

 

 

 そしてその赤龍に対し、日本という名の新興国は戦車と名のついた兵器を使用した。

 

 

 

 神聖ミリシアル帝国の魔船であれば赤龍をたやすく消し去る事が出来るだろう。

 

 しかし、陸を走る乗物に魔導回路を搭載するとなると、現時点の技術から言って

 

あれほどの大きさの鋼鉄を動かし、高威力の兵器を陸戦兵器として使用するのは出力不足で不可能だ。

 

 神聖ミリシアル帝国の魔導技術をもってしても不可能なのだ。

 

 

 

 日本の兵器から魔力反応が無い事から、あれは機械文明ムーに近い技術なのだろう。

 

 

 

 日本は赤龍を倒したが魔王はまだ健在であった。

 

 その時使用された日本の兵器、猛烈な砲火力は神聖ミリシアル帝国の魔船を以てしても何隻必要になるか…

 

 

 

 そして日本は魔王を倒した。

 

 魔王が死に際に言った台詞が、今回一番の衝撃だった。

 

 

 

「間もなく古の魔法帝国が復活する」

 

 

 

 人族よりも、いや、あのエルフでさえも遥かに上回る魔力総量を持った人間の上位種たちが作り上げた歴史上最強の国家。

 

 神聖ミリシアル帝国でさえ、かれらの遺産が高度すぎて解明できていない点が多い。

 

時々発掘される遺跡からも、とても高度な文明だったことが伺える。

 

 その進みすぎた文明ゆえに、神々に弓を引いたとされる古の魔法帝国。

 

 恐怖の国の復活が近いと魔王の口から出た。

 

 

 

「こ・・・これは、本国に報告しなければ!!!」

 

 

 

 ライドルカは早急に帰国準備にとりかかるのだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 太陽が降り注いでいた。

 

 激しい戦いだった。

 

 地面に座り込む兵が多数いる。

 

 

 

 今回の魔王軍侵攻で、魔王軍は離散したが、トーパ王国軍も死者3千人と、多大な戦死者を出した。

 

 しかし、守りきった。

 

 トーパの民は、フィルアデス大陸に至る前に、魔王の侵攻を防ぎ、魔王軍を滅した。

 

 恐怖からの開放と、やり遂げた達成感。

 

 その日の出来事はトーパ王国の歴史書に大きく大きく掲載されるのであった。

 

 

 

 夜―

 

 

 

 戦勝の宴が催され、日本軍と皇国軍の活躍は世界に大きく報道された。特に日本はパーパルディア皇国と戦争中ということもあり注目されていたが、今回の報道により列強国にも一目置かれる存在へとなった。

 

 トーパ王国の民の対日感情はとてつもなく良いものになり、トーパ王国は、日本にとって極めて友好的な国となった。そしてこれまで劣悪であったパーパルディア皇国の印象が少し向上した。

 

 

 因みに次の日には魔王軍残党追撃のために皇国軍と日本軍は我先にとグラメウス大陸に攻め込んでいったのは別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作では間話でしたが、ここでは本編とします。
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