異世界でも大東亜共栄圏   作:えなかま

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9月25日から始まったパーパルディア皇国監察軍によるフェン王国対する懲罰行動によりフェン王国は滅亡。しかし大日本帝国の登場によりフェン王国に駐留していた監察軍は補給が絶たれ、身動きが出来ない状態であった。皇国は孤立無援のフェン王国駐留軍を救出、あわよくば日本本土攻撃を目的とした皇国海軍と監察軍艦隊の連合艦隊の派遣を決定。その噂は世界中に広まった。


第十一話 大和の初陣

 神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス とある酒場

 

 

 

 中央世界にある誰もが認める世界最強の国、神聖ミリシアル帝国。

 

 その交易拠点となっている港町カルトアルパス。

 

 とある酒場では、酔っ払い達が話しをしていた。

 

 

 

「列強パーパルディア皇国と、文明圏外の国が戦ってるらしいぞ」

 

 

 

「また、国が滅び、パーパルディア皇国がその版図を広げるのか・・・しかし、最近のパーパルディア皇国は無茶苦茶をしているな。

 

 戦争戦争戦争だぜ。

 

 第3文明圏の統一でもするつもりか」

 

 

 

「パーパルディア皇国は中位列強国、神聖ミリシアル帝国や機械文明ムーに比べたら国力は落ちる。世界の主導権でも握りたいのか?」

 

 

 

「しかし、その国も勇敢だな。国民のほとんどが不幸になると解っていて従属しないとは」

 

 

 

「新興国の大日本帝国だ」

 

 

 

「ああ、最近噂になっている偉そうな名前の国か…」

 

 

「トーパ王国に侵攻した魔王軍もそいつらが倒したらしい」

 

 

「でもあれは皇国も派遣してたろ」

 

 

「魔王って皇国軍でも倒せるのか?」

 

 

「魔王たって俺らが聞いてるのは神話の時代の話だろ。皇国軍だって当時の種族間連合よりはよっぽど強いはずだしな。そんなもんなんだろう」

 

 

「まあでもその皇国軍と魔王軍を討伐したということはそれなりの力はあるんだろうな」

 

 

 酒場では、皇国圧勝という意見が大半を占めた。

 

 

 

◆◆◆

日本海上空 中央歴1640年1月18日14時

 

 

 

 ガハラ神国 風竜騎士団長スサノウは、ガハラ神国南沖100km上空を飛行していた。

 

 そろそろパーパルディア皇国軍と大日本帝国軍の海戦が始まるということで、その観戦武官として、大日本帝国海軍の艦隊を待っていた。

 

 何故こんなまどろっこしいことをしているかというと皇国軍にばれると不味いからだ。一応皇国としては建国時の借りがあるガハラ神国を積極的に敵にする理由は無いので今まで攻められなかったが、これがばれたらどうなるかわからない。

 

 今回、大日本帝国側に観戦武官を派遣したのはお隣のフェン王国が滅亡するのを目の当たりにし、国内で危機感が広がっているというのがある。また、前々から日本の方角から見慣れない空を飛ぶ物体や島のような大きな船を目撃するようになり一度皇国の敵である日本の力を見極めたいという目的がある。

 

 「あれか…」

 

 スサノウは、地平線のかなたに灰色の煙が立っているのを見た。

 

 近づくにつれその威容があきらかとなっていく。

 

 

「あれが船だというのか、まるで島だな。」

 

 スサノウはすぐに皇国の敗北を確信した。

 

「いやはや、事前情報として聞いてはいましたが、これほどの大きさの金属で出来た船が海に浮かんでいるとは・・・。」

 

 部下の騎士が同意する。

 

「私も数回、パーパルディア皇国に行った事がありますが、これほどの大きさの船は見た事がありません」

 

 

彼らの視線の先には、大日本帝国海軍の堂々たる陣形が広がっていた。

 

常軌を逸した大きさの灰色の船9隻と、それに比べると小さい船2隻と、さらに小さい船13隻が見える。

 

 そのうち1隻は周りに比べても一回り二回り大きく、2隻は甲板が平たく着陸出来そうな大きさだ。

 

 

 

「まぶしいな」

 

 

 スサノウの相棒の風竜が話しかけてくる。

 

 風竜は知能が高い。

 

 

 

「確かに、今日は快晴だ」

 

 

 

 太陽がまぶしく、雲の少ない日だった。

 

 

 

「いや、違う。太陽ではない。あの灰色の船から、線状の光が様々な方向に高速で照射されているのだ」

 

 

 

「船から光?何も見えないが」

 

 

 

「フッ・・・人間には見えまい。我々が遠くの同胞と会話をする際に使用する光、人間にとっては、不可視の光だ。何かが飛んでいるか、確認も出来る。その光に似ている」

 

 

 

「飛行竜が判るのか?どのくらい遠くまで?」

 

 

 

「個体差がある。ワシは120kmくらい先まで判る。あの船の出している光は、ワシのそれより強い」

 

 

 

 まさか・・・。

 

 

 

「まさか、あの船は、遠くの船と魔通信以外の方法で通信出来たり、見えない場所を飛んでいる竜を見ることが出来るのか?」

 

 

 

「1隻を除いて他は通信にしか使っていないようだな」

 

 

 その1隻は日本海軍が海戦でのレーダーの運用を学ぶため要請した、オリオン級戦艦3番艦アルニラムであった。

 

 

「そうか・・・それでもすごい国だ」

「・・・ってことはあの船と通信できるのか?」

 

 

 

「我らと同じ方法で会話しているなら出来るだろうな」

 

 

 

 

 

 

 大日本帝国海軍 連合艦隊 旗艦 戦艦「大和」

 

 計画段階から徹底された機密保持の下、12月16日に就役した戦艦大和だが、転移によって敵国アメリカもいなくなり条約も関係なくなってしまったので機密にする必要が無くなってしまった。それまで旗艦であった長門から大和に旗艦が移ったのはつい先週のことであった。

 

 

 

 

「信じられんな・・・。」

 

 

 

「確かにあの竜からの通信のようです。」

 

 

 

「話せる上に無線通信もできる竜がいるとは」

 

 

 

「あれはガハラ神国の風竜ですな。あの国特有の物です」

 

 最近になって第八植民地任務部隊司令長官代理から主席駐在武官となったアリゴ少将は今回観戦武官として戦艦大和に乗り込んでいた。

 

 

「強度も品質も我が軍のそれを上回っているな」

参謀達この世界特有の生物に驚愕するとともに興味津々だ。

 

 

「レーダーのような能力もあるようです。詳しくは存じませんが。」

 

 

「電探まであるのか…それがあれば敵艦隊や敵航空機の探索がだいぶ楽になるな」

 

 

 上空に飛んでいる風竜と呼ばれる生物から、無線通信と思われる電波が照射されている。

 

 この電波は、航空機の物として見れば、かなり出力が高い。

 

 文明圏から外れた国で、電波を放つ飛行物体が確認された。

 

 グ帝より神聖ミリシアル帝国では電探を搭載した機体があるという情報、今回の会戦で電探の有用性や日本の技術の遅れを再確認したこともあり、電探の開発が急がれることとなった。

 

 

 

「着艦許可を求めていますがいかがしましょうか?」

 

 

「鳳翔に誘導せよ。私も気になるからそちらに向かおう」

 

 

 連合艦隊司令長官 山本五十六はガハラ神国 風竜騎士団長スサノウを出迎えた。

 

 

同日 18時

 

 

 

「風竜より大規模な艦隊と思しき反応を察知したとの報告!」

 

 

観戦武官として乗艦するだけだったはずのスサノウは日本艦隊の上空で索敵を行っていた。

 

 

「方位190、距離10万!」

 

 

「距離10万で発見できるのか!」

 

 

 参謀達から驚嘆の声が上がる。

 

 

「空からの索敵とはいえオリオン級戦艦が文明圏外の国に索敵能力で負けるとは…」

 アリゴ少将も衝撃を受けたようだ。

 

 

「艦種はまだ分からんか?」

 

 

「近づけば数や大きさも分かるとのことですが…」

 

 

「ガハラ神国の事情は分かっている。あとはグラ・バルカス帝国に任せよう。」

 

 

「全艦変針 進路180」

 

 第1艦隊司令長官の高須四郎中将が来るべき第二次日本海海戦に向けて指令を出した。

 

 

 

第二次日本海海戦 参加兵力

 

大日本帝国海軍

 

連合艦隊(山本五十六大将)

 直卒 第一戦隊 旗艦 戦艦「大和」「長門」「陸奥」

 

第1艦隊(高須四郎中将)

 第2戦隊 戦艦「伊勢」「日向」「扶桑」「山城」

 第3戦隊 戦艦「金剛」「榛名」「霧島」「比叡」

 第6戦隊 重巡「青葉」「衣笠」「加古」「古鷹」

 第9戦隊 軽巡「大井」「北上」

 第1水雷戦隊 軽巡「阿武隈」

  第6駆逐隊 駆逐艦「雷」「電」「響」「暁」

  第17駆逐隊 駆逐艦「谷風」「浦風」「浜風」「磯風」

  第21駆逐隊 駆逐艦「初春」「子ノ日」「初霜」「若葉」

  第27駆逐隊 駆逐艦「有明」「夕暮」「時雨」「白露」

 第3水雷戦隊 軽巡「川内」

  第11駆逐隊 駆逐艦「吹雪」「初雪」「白雪」

  第12駆逐隊 駆逐艦「白雲」「叢雲」「東雲」

  第19駆逐隊 駆逐艦「磯波」「浦波」「敷波」「綾波」

  第20駆逐隊 駆逐艦「天霧」「朝霧」「夕霧」「狭霧」

 第3航空戦隊 航空母艦「鳳翔」「瑞鳳」駆逐艦「三日月」「夕風」

 

 

グラ・バルカス帝国海軍

 

 第8任務部隊(セシリオ少将)

  戦艦 「アルニラム」

 

ガハラ神国(非公式) 

 

 風竜騎士団(スサノウ)

  風竜3騎

 

 

◆◆◆

デュロ南東方向約150km沖合い 洋上 同日 20時 超フィシャヌス級戦列艦「パール」

 

 

 

 澄んだ空気、星々は輝き、風はほとんど無い。海は凪であり、水を切る音だけがこの静寂な海に染みわたっていく。

 

 そんな平和な海を、多数の船が白い航跡を引き、北北東方向に向かっている。

 

 その数324隻。

 

 パーパルディア皇国 皇軍 

 

 100門級戦列艦を含む戦列艦211隻、竜母12隻、地竜、馬、陸軍を運ぶ揚陸艦101隻。

 

 中央世界を基準とすると、東側に位置する第3文明圏において、他の追従を許さないほどの圧倒的戦力。

 

 皇軍は大日本帝国を滅するため、フェン王国駐留軍を救出するため北北東方向へ向かっていた。

 

 パーパルディア皇国最大最強であり、大艦隊の指揮をとる超F級戦列艦パールに乗艦する将軍シウスは海を眺めていた。

 

 戦略家であり、冷静、無愛想な将軍、それが部下たちのシウスに対する評価だった。

 

 

 「見張り員の交代時間です!異常ありませんでした!」

 

 

 報告が上がる。

 

 

 「うむ。下がっていいぞ」

 

 艦長ダルダが報告を受ける

 

 

 「夜戦の経験はあるか?」

 

 

 唐突に将軍シウスは隣に立つ艦長ダルダに尋ねる。

 

 

 「いえ、ありませんが…」

 

 ダルダは質問の意図が分からず困惑している。

 

 

 「実のところ私も無い。しかし最近はムー帝国は夜間海戦の研究をしているらしいぞ。神聖ミリシアル帝国に至っては既に実戦レベルらしい。」

 

 「はあ。しかし…」

 

 ダルダが反論しようとすると

 

 「確かに夜戦は野蛮人がすることで文明人である皇国軍がすることではないという風潮は今日まで続き、私も最近までそう思っていた」

 「だからこそ大日本帝国は卑怯で野蛮人の集まりであると信じて疑わなかった。」

「ただ、最近思うのだ。時代に取り残されているのは我々の方なのではないかと」

 

 

 「将軍!それ以上は」

 

 ダルダはようやく質問の意図を察したようだった。

 

 「わかっている。皇帝陛下への忠誠を疑ったことなど一度もない。安心しろ。」

 

 シウスはダルタに忠告されてこれ以上を打ち明けるのは止めたようだった。

 

 「将軍、これほどの大艦隊と、最新の戦列艦をもってすれば、神聖ミリシアル帝国の有名な第零魔道艦隊を相手にしても負けますまい。

 

 海戦の強さを決するのは、戦列艦の質と量です。

 

 第3文明圏最高の質と、戦列艦211隻の量を超える者など、ここには存在しません。」

 

 

 

 話は続く。

 

 

 

「もし仮に、日本軍が夜戦を仕掛けてきたとしても数の多さを活かして敵艦隊へ切り込み、接近戦に持ち込めば必ず勝てるはずです。」

 

 

 

 艦長ダルダは絶対の自信を見せる。

 

 

「そうだな。今のは軽率だった。忘れてくれ。」

「しかし、ダルダに諭されるとは私も年を取ったものだな。」

 

 

「シウス将軍は今でも皇国海軍の誇りです。対パンドーラ大魔法公国戦での竜母を主軸としたワイバーンの集中運用はは世界に衝撃を与え、今でもその」

 

 

艦長が将軍を偉大さを伝えようとすると

 

 

「そんな若いころの話はやめてくれ。…そうだな、あの頃はまだ騎士道精神が生きていたからな。そんな時代もあったな。」

 

 

 艦長と将軍が談笑に耽っていると

 

 

「報告!魔導レーダーに感アリ!方位5、距離5万、速度16ノット、南南東に向かっています。距離が遠いため詳細はまだ不明ですが、既にミリシアル帝国の戦艦並みの反応が複数!」

 

 魔導技師からの報告を受けると

 

 

「流石はミリシアル製の魔導レーダーだ。高い金を出しただけはあるな。」

 

 

「あれ1基で100門級の戦列艦が作れると聞いたときは驚きましたが、それだけの価値はあるようですね。しかし夜戦とは」

 

 

口では強気の艦長も、机上の空論と思っていた夜戦が目の前に迫っていることに不安を覚えている

 

 

「どうも敵の動きからして我々の航路と時間は予想していたようだな。情報通りなら敵はミリシアル帝国の魔導艦隊と思って対処した方がいいだろう。」

 

 

「夜戦ではワイバーンは使えません、竜母艦隊と揚陸艦隊は退避させましょう。」

 

 

「うむ、竜母艦隊と揚陸艦隊は護衛を伴って別命あるまで待機せよ。戦闘艦隊は竜母艦隊と揚陸艦隊が退避後、単縦陣を組め。」

 

 シウス将軍が指令を出すとそれまで重厚な護衛船団を組んできた艦隊から竜母と揚陸艦が抜け、艦隊ごとに単縦陣が組まれる。その陣形転換は流石は列強と言わしめるものであった。

 

 

 

 

同日 21時

 

 

 単縦陣系が組み終わって間もなく

 

 

「艦種と数が判明しました!ミリシアル帝国海軍識別コードによりますと…」

 

魔導技師が以下の報告をする

 

 

ミスリル級魔導戦艦 4隻

ゴールド級魔導戦艦 7隻

マーキュリー級魔導戦艦 2隻

シルバー級魔導巡洋艦 4隻

ラ・シキベ級軽巡洋艦 4隻

ラ・ヴァニア級空母 1隻

ラ・コスタ級空母 1隻

小型艦 32隻

識別コードに該当しない巨大戦艦1隻

 

 

「あくまでもミリシアル帝国やムー帝国の保有艦に近い規模という意味ですので実際の戦力は分かりかねますが…」

 

 魔導技師はこれから戦う敵の戦力に圧倒されている。信じられないという表情だ

 

 

「この巨大戦艦というのはどのくらい大きさなんだ?」

 

 

シウス将軍はとりあえず敵の戦力把握に努めようとしている。

 

 

「全長およそ260mという測定結果が出ています。」

 

 計算間違いを疑いたくなる大きさに一同唖然とする。

 

 

「いくら敵の船が大きかろうとも我々の戦列艦は211隻だ。数を活かして敵艦隊へ切り込み、接近戦に持ち込むしか道はない。夜戦は初めてだがこの暗闇の中接近するには好都合だ」

 

「全艦に通達、灯火を全て消せ。速度や位置は随時魔導通信にて報告、敵が発砲するまでは一切の灯火を禁ずる」

 

 皇国艦隊から光が消えた。暗闇に紛れた艦隊は速度はそのままに日本艦隊に接近していく。しかしそれを日本艦隊が知らないはずがなかった。

 

 

同日 21時34分

 

 もうすぐ日本艦隊まで15キロという距離で羽虫のような音が聞こえ始める。

 

「何だこの音は」

 

 水兵一同聞いたことのない音に不安を覚える

 

 

「対空魔振感知器にそれらしき反応はありません。」

 

 魔導技師が報告するも、そもそも日本軍がワイバーンを運用していたなんて話は聞いたことがないので対空魔振感知器ではなく魔導対空レーダーがあればと後悔するシウス将軍であった。

 

 

 羽虫のような音が過ぎ去っていったかと思うと、突如空に複数の太陽が浮かび上がる。

 

 

「くそ!眩しい。これが照明弾というやつか」

 

 水兵は皆突然の光に目が眩み、状況を把握できていない。

 

 

「全艦灯火管制解除!戦闘旗を掲げよ!日本艦隊に向かって突撃する!」

 

 

 日本海軍の水偵から投下された吊光弾によって縦6m横12mもの大きさの戦闘旗が照らされる。総数211隻にも及ぶ戦列艦それぞれに戦闘旗がはためく光景は圧巻と言うほかない。

 

 

「全砲門開けっ!!!」

 

 

各艦の艦長はそれぞれ戦闘準備する。

 

位置がばれた以上は皇国艦隊の消耗を減らすためにも速やかに接近戦に持ち込み早期決着を期待するほかない。

 

各艦は単縦陣を維持しつつも一番艦に合わせて増速する。

 

 

「敵艦!爆発した!?」

 

 今まで戦列艦の大砲の射撃しか見てこなかった見張り員が敵艦の発砲炎を爆発と誤認する。

 

「馬鹿!敵艦の大砲が射撃したんだ!」

 

 発砲炎と共に敵艦のシルエットが明らかとなる。

 

 

 ドドドドドドドーン・・少し遅れて発砲音。

 

 

「何と言うデカさだ。」

 

 

 敵戦艦も単縦陣で砲撃してくるようだ

 

 

「魔導防壁展開!前方集中!」

 

 

 各艦は速度に振り分けていた魔力を防御にも割り振る。防御力は魔導機関の出力に比例し、魔導機関の出力を全て魔導防壁に割りふった時の防御力は最大魔導防御力と呼ばれ各国で最高機密となっている。

 

 

「総員衝撃に備え!」

 

 

 

◆◆◆

同日 21時45分 大日本帝国連合艦隊 旗艦 戦艦 大和

 

 

「初弾弾着、今!」

 

 

 大和率いる第一戦隊、第二、第三戦隊、合計11隻の戦艦が単縦陣を組んでいる。突撃してくる敵に対してT字有利を保ち一方的に砲撃を加えようと変針中だ。グ帝の戦艦1隻だけは別行動で先に砲撃を開始している。

 

「手前200mくらいか。初弾から流石だな。」

 

「これがグラ・バルカス帝国が誇るレーダー管制射撃です。これによってこれまで出来るだけ避けていた夜戦や風雨での戦闘を積極的に行えるようになりました。」

 

 

「これはレーダーによる精密な距離測定結果を手動で諸元に反映して射撃していますが、最新のものであればレーダーが火器管制装置と連動して砲が自動で目標を追尾し射撃することが出来ます。」

 

 

「なるほど恐らくアメリカが開発していたのもこのようなものだったんだろうな」

 

 

「アメリカ??」

 

観戦武官の方々は困惑する。

 

 

「いや、前の世界での話だ。気にせんでくれ。」

 

 

「第二射弾着、今!」

 

 

 弾着した瞬間、青白く光り輝く魔法陣が船を包み込みこんだかと思えばガラスのように割れてしまった。間もなくして命中した艦は大爆発し跡形もなく消えてしまった。

 

 

「命中弾1発!1番艦撃破!」

 

「爆発で周囲の艦も巻き込んだ模様!現在戦果確認中」

 

 戦艦アルニラムからの報告が入る

 

 

 

「これがグラ・バルカス帝国か…」

 

 スサノウはグ帝の戦艦の主砲の桁違いの威力に底知れない恐怖を感じていた。何度か見たことのある皇国の戦列艦の強力な魔導防壁が破られるなど想像だにしていなかった。

 

 

 

「なんだあの光は…」

 

 日本海軍の参謀達は二射目にして敵艦に命中させたレーダー管制射撃よりも青白く光った敵艦に興味津々だ。

 

 

「あれは魔導防壁ですね」

 

「あれが噂の、魔導防壁か」

 

陸軍より噂はかねがね聞いていた海軍であったが実際に見たのは初めてだ。

 

 

「レイフォル戦でもそうでしたが一部の高出力魔導機関を搭載している艦はオーバーロードすると爆発するようです。全てが爆発するわけではありません。」

「戦技研では既存の魔導機関を無理やり高出力に改造しているから爆発するとの見立てが出ています」

 

 

アリゴ少将が解説する。少将はレイフォル戦での報告を逐次受けていた。

 

 

「流石に戦艦の砲弾は防げないということか」

 

「いえ、榴弾であれば防がれた例がありますので今回は徹甲弾を使用しました」

 

「半端な攻撃は効かないというわけか」

 

 

日本海軍の参謀達は帆船ごときが戦艦の砲撃に耐えるなど信じられないという顔で聞いていた。

 

 

「とは言いましてもそれは一部の艦のみで、ほとんどの艦は駆逐艦の砲でも何発か当たれば魔導防壁は破れます。そもそも戦艦の砲弾が防げる艦であっても魔導防壁の回復速度を上回る攻撃を加えればそのうち破れます」

 

 

「そういえば陸軍からそんな話を聞いたな。半信半疑だったが」

 

「帆船だからと侮っていたら痛い目を見るところでしたな」

 

 

 この戦いをきっかけに海軍ではグラ・バルカス帝国協力の下、魔法研究所(仮称)が開所されることとなった。

 

 

「しかし思いのほか敵が速い。もっと早く変針するべきだったな。」

 

「帆船が20ノットも出せることは想定外でした。これも魔法の力か…」

 

「レイフォルでの海戦でも確かに20ノット出す帆船はいましたが皇国艦隊は直前まで12ノット程度だったので油断しておりました」

 

 

 

「6番艦撃沈!」

 

また戦艦アルニラムからの報告が入る

 

 

 

この間も皇国艦隊は20ノットの速さでT字有利に持ち込もうとする日本艦隊に迫っている。もう距離は1万を切っている。

 

 

「しかしこのままだと切り込まれるな」

 

「まだ完全ではないが攻撃開始しよう」

 

 

 山本五十六大将は決断する。

 

 

「各艦は探照灯を先頭艦に照射!準備出来次第攻撃開始!」

 

 

最初に射撃準備が出来たのは一番艦である大和であった。

 

 

「左砲戦用意!目標!探照灯を照射している敵艦!弾種徹甲!」

 

 

大和の艦長である高柳儀八大佐の命令の元、目標に主砲を向ける。

主砲には全長2m、砲弾重量1460kgにも及ぶ九一式徹甲弾が装填される。

 

それに対して、皇国艦隊は日本艦隊の探照灯に向かって突っ込んでくる。

 

まず、測的と装填を完了した大和が砲撃を始める。

 

「撃て!」

 

 

大和の45口径46cm3連装砲塔が実戦で初めて火を噴いた。

 

自艦よりも巨大な発射炎が出現する。

 

その威力、衝撃波は海上にも伝わり、海が震えた。

 

時速2808kmで打ち出された巨弾3発は放物線を描き飛翔する。

 

 

「初弾弾着、いま!」

 

目標艦の周りに水柱が立つ

 

 

「目標、夾叉!」

 

 

距離が近いとはいえ初弾から夾叉は幸先が良い。乗組員達には歓声をあげる者もいる

 

 

「お!おう…」

 

 スサノウは目の前で広がる発砲炎と衝撃波に驚いて後退りしてしまった。すぐに周囲を見渡し自分が後退りしたことに気づいたものがいないか確かめる。幸い皆弾着地点に視点を向けていたおかげでいなかったようだが、名誉ある風竜騎士として、団長として、国を代表する観戦武官としてそんな自分を恥じていた。

 

 

「諸元そのまま!第二射撃て!」

 

 再び目の前で発砲炎と衝撃波が広がる。今度は後退りしなかったようだ。

 

 

「2発命中!目標艦とその後ろの艦が大破!」

 

 距離が近かったため仰角が浅く、過貫通を起こしそのまま後ろに命中したようだ。

 

 

「まだまだ敵艦は残っている!近づけさせるな!」

 

「副砲、高角砲も準備出来次第攻撃開始!」

 

艦長の指令で副砲である60口径15.5cm3連装砲塔と40口径12.7cm連装高角砲も射撃を開始する。

 

 

2番艦の「長門」や3番艦「陸奥」も続々と攻撃を始める。

 

 

20分後には戦艦12隻全てが皇国艦隊に向かって攻撃していた。

 

 

◆◆◆

同日 21時45分 超フィシャヌス級戦列艦「パール」

 

オリオン級戦艦「アルニラム」の45口径35.6㎝連装砲塔から発射された砲弾は、正確にパーパルディア皇国、皇軍の100門級戦列艦に着弾し、対魔弾鉄鋼式装甲をあっさりと貫通、爆発した。

 

 爆圧は内部から外部に向かい、木造部分を粉砕しながら上部に突き抜ける。

 

 艦は壮大に吹き飛び周囲の船を巻き込んだ。

 

 

 

「戦列艦ロプーレ轟沈!!!マコケール、アーマンドも巻き込まれた!」

 

 

 

 唖然……。

 

 

 

「な……ど……どういう事だ!?」

 

 

 

 将軍シウスとパール艦長のダルダは眼前の現実の理解に苦しむ。

 

 

 

 ズドオオォォォン!!!

 

 

 

「敵艦再び発砲!!!」

 

 

 

「こ、交互撃ち方か!!!」

 

 

 

 艦隊の前方に連続して火柱が上がる。

 

 

 

「戦列艦ミシュラ、レシーン、クション、パーズ轟沈!!!」

 

 

 

 沈み行く船が多すぎて、報告が間に合わない。

 

 敵船は未だ我が方の射程距離のはるか先にいる。

 

 

「クッソ!魔導防壁が一発で破られるとは!」

 

 

 

「超巨大戦艦も発砲!!」

 

見張り員の報告を受けてシウスとダルダは前方を見るとこれまでにない巨大な水柱が立っている。

 

 

「あんなのを食らったらパールと言えども一溜まりもない」

 

 艦長ダルタは目の前に迫る恐怖に足が竦んでいる。

 

 

「超巨大戦艦再び発砲!」

 

 

「こんな……こんな現実があってたまるかぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 将軍シウスは閃光と共に、強烈な揺れと衝撃に見舞われ、壁に叩きつけられる。

 

 

 

「艦首に被弾!!!!」

 

 

 

 120門級戦列艦パールの艦首に大きな穴が開く。

 

 海水が艦内に流れ込み、バランスを崩したパールは、徐々にその巨体が傾き始め、やがて転覆、装甲の重みでゆっくりと沈んでいった。

 

 

 

 将軍シウスは海を漂う。

 

 流れてきた木材に捕まり、海上から皇軍を見る。

 

信じられないほどの短時間で、第3文明圏最強の国、列強パーパルディア皇国の大艦隊は1隻も残らず、海の藻屑と消えた。

 

 

 

 パーパルディア皇国皇軍211隻は大日本帝国とグラ・バルカス帝国の戦艦12隻と交戦、211隻全てを失い全滅した。

 

 

 

 その数時間後、後方に待機していた皇国軍の竜母艦隊と揚陸艦隊はその主力を失ったため、帝国海軍連合艦隊に降伏、数日後にはフェン王国駐留軍も降伏し、列強と2カ国連合軍の戦いは、2カ国連合の圧勝に終わった。

 

 

 




前にも言ったかもしれませんが、パーパルディア皇国を悪者にしたくないので原作と異なりあまり印象が悪くならないように描いています。

思っていたよりも投稿に時間が掛かってしまいましたが、これは気分転換に古代魔王編を描いていたら思いのほかオリジナル要素が多くなりすぎて原作から逸脱しすぎてしまったというのがあります。古代魔王編に関してはまた暇なときに考えたいと思います。

次回は戦闘以外を描きたいと思っています。
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