神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス
誰もが……世界中の誰もが認める世界最強の国、神聖ミリシアル帝国、その他とは隔絶した栄え方、そのあまりにも高度な発展を前に人々は『世界の中心』という意味を込め、帝国の存在する大陸を中央世界と呼ぶ。
神聖ミリシアル帝国は
○世界で最も高い魔法技術
○国の基礎を安定して支える高度な政治システム
○広大な国土と優秀な物質の量産化システム
○優秀な学問体系
が高度に入混じり、この世界の文明圏国家や、列強国と比べても国力の優位性は疑いようがない。
帝国は、国土の所々に残る、古の魔法帝国の遺跡を解析し、高度な技術を支えてきたため、地球の歴史を基準にすると、軍事技術はいびつな発展をしている。
帝都ルーンポリスにある情報局、その建物の1室で、2人の男が会談をしていた。
「皇国はまた負けたそうだな」
対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部長ヒルカネ・パルペは最近何かと話題に上がっている大日本帝国の情報を得るため情報局のもとを訪ねていた。
「皇国は主力艦隊を喪失。いくら数だけは多い皇国と言えど当分は攻勢に出られんだろうな」
帝国情報局長アルネウスは煙草を吹かすと
「せめて一隻でも沈めてくれれば後で回収できるものを…パーパルディア皇国を過大評価し過ぎていたようだ」
ヒルカネは急に立ち上がる
「皇国が一隻も沈められなったのか!陸戦でも大敗したと聞いた時からもしやと思ったがそれほどとは」
「まあまあ落ち着け。話はこれからだ。情報によると日本艦隊にはグ帝の戦艦もいたそうだ」
アルネウスはヒルカネに煙草を差し出す
「なんだって!? なんでグ帝までいるんだ」
「とりあえず一回吸って落ち着け。恐らく既に日帝とグ帝は同じ移転国家、科学文明国として協力関係にあるのではないかと考えている。これに関しては皇帝も危惧されている事案であることから最優先で調査中だ。もしこれにムーも加われば科学文明対魔法文明の構図が出来かねん」
ヒルカネは座って一服する
「で、どうするつもりなんだ?」
「私は外務省に先進11か国会議にパーパルディア皇国の代わりに大日本帝国を列強に認定よう働きかけるつもりだ。既にレイフォルの代わりにグラ・バルカス帝国が入った前例つい最近出来たばかりだ。問題なかろう」
「なるほど。その機会に懐柔する魂胆か」
「うむ、科学文明が魔法文明に対抗するなど皇帝は許さん。もし国民が魔法文明より科学文明の方が優れていると思い始めたら我が国は終わりだ。皇帝もそれを最も危惧されていた」
「しかし魔法文明と科学文明のどちらが優れているか興味あるがなあ」
ヒルカネの研究者としての血が騒ぎ始める
「それ他で言うなよ」
アルネウスはもしバレたら反逆罪にもなりかねない発言に肝を冷やしつつも、これ以上この話で盛り上がるのはまずいと考え話を変える
「で、そっちはどうだ」
以前渡した諜報員の報告書とデュロの戦いで回収できた日帝の兵器の解析結果を尋ねる
「そうそうその話をしなければ!あれは革新的だ!」
途端にヒルカネは目を輝かせる
「革新的?」
アルネウスは余り軍事面の話に明るくない
「よく考えてみろ。うちが最後に戦争したのはいつだ?」
「うーん。ムーの南北戦争で介入したのが最後なのか」
中央暦1582年、ムーでの軍事クーデターをきっかけに政府軍と反乱軍で内戦勃発。双方合わせて100万にも及ぶ人的資源が投入されたが結果的には反乱軍が勝利し、共和制から帝制へと移行することとなった。実はこの際、ミリシアル帝国は密かに反乱軍を支援しており、これを機に現在にまで及ぶ従属関係が築かれることとなった。
「そうだ。それも50年以上前の話だし、規模的にも1個師団程度だ。」
「実際共和制ムーに勝つにはそれで十分だったからな。で、それがどうした?」
「お前んとこの諜報員の報告書を見せてもらったがな、あの国は転移したその日にロウリア王国とパーパルディア皇国に攻め込んだとんでもない戦争狂国家だ。我々とは経験が違いすぎる」
「しかし戦争狂で言えばパーパルディア皇国も大概じゃないか」
「そのパーパルディアにグラ・バルカス帝国並みの力があったら?」
「なるほどそういうことか!そいつはクレイジーだ!」
軍事に明るくないアルネウスも納得し、事の重大さに気が付き始める。
「お前が送ってくれた日本の小銃、38式と言うらしいが、我が国の小銃よりも威力以外は全て上回っている。そもそも威力は兵士それぞれの固有魔力に依存しているから一概に比べられるもんじゃないが…」
ヒルカネは煙草に火をつけ一服し落ち着くと
「兵器の性能も勿論だが、戦術面でも報告書を見る限り非常に洗練されている。陸海空どれをとっても戦闘速度が異常に速く短期間でここまでの戦果を挙げたのも納得だ。特にデゥロの戦いでは数十機に及ぶ爆撃機と砲撃によって集中的に都市を攻撃し、魔導防壁を破壊したそうだ」
アルネウスは驚愕しながらも質問する
「都市級の魔導防壁って砲爆撃で破れるのか?」
「理論上は可能だが、そもそも魔法文明国家は魔導防壁中和魔法があるからな。接近しなければいけないのがデメリットだが圧倒的な兵力差があれば兵糧攻めもあるしな。正直今までほとんど研究されていなかったのが実情だな」
魔導防壁により野戦でも自ずと接近戦になることが多かった魔法文明では攻城戦も例外ではなかった。特に攻城戦の場合は守備側の魔導防壁が段違いに強いため、昔ながらの兵糧攻めが最も効果的な手段であった。
「うちは大丈夫なんだろうな?」
「少なくともうちの都市級魔導防壁の耐久力はパーパルディア皇国の比ではないからな。デュロと同じようにはいかん。だが、それでもデュロの魔導機関と防壁発生装置はうちが輸出したもので師団級の出力があるものだ。それが科学文明に破られたのは衝撃的だよ」
まだ心配なアルネウスは続けて質問する
「今回は数十機だったが数百機と押し寄せてきたらどうするんだ?」
「そうならないように空軍がいるわけだ。いくら列強一位と言えど数百機の爆撃は耐えられん。でも確かに対空兵器の拡充は必要かもしれんな。グ帝や日帝の航空兵器は強力だ。対策を練る必要がある」
「仮想敵国としては最適というわけか」
アルネウスは皮肉を込めて言ったがヒルカネには伝わらなかった
「そういうわけだ。だから今後とも情報よろしく頼む。特に稼働する戦車や戦闘機が鹵獲できれば最高なんだがな」
「それだがな。すぐには無理だが、うちから義勇軍と称して兵士と武器を送ろうかと検討している。パーパルディア皇国だけではまともな戦になりそうもないからな。そうなれば戦車や戦闘機を鹵獲する機会もあるだろうさ」
「それは楽しみだ!期待してるぞ」
再び目を輝かせたヒルカネはミリシアルの行く末などどうとでもいいとばかりに対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部に帰っていった。
◆◆◆
第2文明圏 列強国 ム―帝国
世界5列強国の一つ。 第二文明圏最強にして、世界最強の神聖ミリシアル帝国に次ぐ第2位の国力を持つとされている。魔法技術に重点が置かれるこの異世界において、独力で科学技術中心の文明を築きあげ、グ帝と日帝が移転してくるまでは唯一の科学文明国家であった。
技術士官マイラスは軍を通じて伝えられた外務省からの急な呼び出しに困惑していた。
控え室で待つこと20分、
カチャ・・・。
軍服を着た者と、外交用礼服を着た者2名が部屋に入ってくる。
「彼が技術士官のマイラス君です」
軍服を着た者が外交用の礼服を着た者に紹介する。
「我が軍1の、技術士官であり、この若さにして第1種総合技将の資格を持っています」
「技術士官のマイラスです」
マイラスはニッコリと笑い、外交官に答える。
「かけたまえ」
一同は椅子に腰掛け、話が始まる。
「何と説明しようか・・・。」
外交官がゆっくりと口を開く
「今回君を呼び出したのは、正体不明の国の技術レベルを探ってほしいのだよ」
正体不明と聞いても何も思い浮かばないマイラス
「といいますと?」
すると、思わぬ答えが返ってくる。
「大日本帝国と言うらしい。先ほどグラ・バルカス帝国から情報提供があった。パーパルディア皇国の東にある同じ移転国家で科学文明国家だ。既に大日本帝国は国交を結ぶために船でグラ・バルカス帝国に向かっている。このタイミングで我々も接触し、交渉が上手くいけばそのまま日本へ向かう手筈となっている」
マイラスは大日本帝国という遠い異国の地に思いを馳せながらも疑問が湧いた
「解りました。願ってもない申し出です。しかしそこまで情報があるのであればグラ・バルカス帝国は既に日本の技術水準は把握しているのでは」
「情報によればグラ・バルカス帝国とそう変わらないらしいが細かいところはまだこれからだそうだ。それにあまりグ帝の情報ばかり頼りにしてられんからな。特に今回の件は皇帝肝入りとなっている。失敗は許されん。もしこれが成功すれば科学文明だけで魔法文明に立ち向かえるかもしれん。」
マイラスは全く話の内容が分からず顔に疑問符が浮かぶ
「技術レベルを探ってほしいのはあくまでも目的の一つに過ぎない。最終的には大日本帝国とは軍事同盟まで持っていき、ミリシアル帝国の傘からの脱却を目指す。現在グ帝にレイフォルの情報を流しているのもその一環だ」
「そ、それは、私のような人間が知って良い話なんですか?」
技術士官のマイラスは、事の重大さを理解し震えている
「そんなに緊張しなくても良い。どうせこの任務に就いたら遅かれ早かれ知ることになるから問題はない。我々がマイラス君に期待しているのはあくまで技術士官としての職務だけだ。それ以外のことは気にするな。今話したことも口外無用だ」
そう言い終えると外交官が背後にいた女性を手招きする
「たった今からこの者が君の身の回りのお世話をする。好きに使ってくれ」
「パーシャです。よろしくお願いします」
印象に残りづらいがよく見ると美人な女性だ
「あの、これは?」
マイラスは突然のことに困惑している
「これから忙しくなるだろうからな。それなりの待遇を与えなければいかん」
外交官は席を立つ
「細かいことは追って知らせよう。それまで休息をとることだ」
外交官は困惑して立ち尽くしているマイラスをよそ目にドアから出ようとすると
「あ、そうだ。口には気を付けることだマイラス君。その家政婦は怒ると怖いぞ」
とんでもないことを引き受けてしまったと後悔し呆然と立ち尽くすマイラスにパーシャは家政婦として接する
「家までお送りします。マイラス様」
「あ、はい…」
マイラスはこれからの自分の人生を悲観しながらパーシャと共に帰路についた
お久しぶりです。思ったより時間が経ってしまいました。次回の内容については迷っていますが、少なくとも戦闘以外を描写しようかと考えています。