異世界でも大東亜共栄圏   作:えなかま

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パーパルディア皇国が主力艦隊を喪失して以降、戦線は膠着し一時の平和が訪れていた。大日本帝国はこれまでの戦闘で多数の捕虜を収容しており、特に日本海での海戦では揚陸部隊10万が捕虜となりその扱いに困り果てていた。


第十三話 大脱走マーチ

中央歴1640年4月2日 デュロ防衛隊陸軍基地

 

 かつては第三文明圏最大の工業都市として栄華を誇ったデュロには旭日旗がはためき、通りは日本兵が巡回し異様な雰囲気が立ち込めている。デュロが陥落して以降、外に頼れる者がいる住人は逃げ出し、いないものは日本兵を恐れながらも仕方なく生活している。郊外にあるデュロ防衛隊陸軍基地は姿はそのままに半分は捕虜収容所に変わり十数万の捕虜たちが日本兵としての訓練を受けていた。

 

 

 「突撃ぃぃぃぃぃ!!」

 

 

 うおぉぉぉぉぉ!!

 

 おりゃあああああああ!!!

 

 しねえぇぇ!!

 

 

 指揮官の号令と共に突撃ラッパが鳴り響き、パーパルディアの男達の雄叫びが木霊する。

 

 

 「走れ!走れ!死ぬ気で走れ!」

 

 

 「銃口をふらつかせるな!お前どこを見て走っとるんだ!」

 

 

 「旗手が先にくたばってどうするんだ!走れ!」

 

 

 日本軍の下士官が監督となって捕虜の訓練を指導している中、一人の捕虜が突然足を止める。

 

 

 「もう、止めだ止めだ。くだらねえ」

 

 

 その男は銃を捨て煙草を吹かし始めた

 

 

 「おい、何止まっている! グハッ!」

 

 

 駆け寄った下士官にその男が手を向けるとその瞬間血を吹き出し倒れてしまった。

 

 

 「もう好きにやらせてもらいますよ。いいですよね?」

 

 

 そう言いながら何かに目線を向けている

 

 

 

 ピーーーーーー!!!

 

 

 

 異常を察知した憲兵が笛を吹き応援を呼ぶ

 

 

 

 「あいつを射殺しろ!」

 

 

 

 近くにいた下士官や憲兵が徐に銃口をその男に向けると

 

 

 

 「今だ!」

 

 

 その男が叫ぶと周りの捕虜たちは下士官や憲兵を襲いだす

 

 

 「クソ共が!ガハッ!」

 

 

 バン!

 

 

 バンバン!

 

 

 「死ねえ!」

 

 

 

 数人の捕虜は射殺されるも、数に物を言わせて銃剣で日本兵を突き刺していく

 

 

 

 「奪った銃は狙撃兵に渡せ!」

 

 

 「武器庫に向かえ!」

 

 

 周りの兵士たちをぶっ殺した捕虜たちは武器庫へ行ったりそのまま逃げだしたり思い思いの方向に向かって走り出すと

 

 

 

 ダンダンダンダンダン

 

 

 バン!バン!

 

 

 

 「機関銃だ!」

 

 

 「本隊が来たぞ!」

 

 

 

 機関銃を前に捕虜達が次々と倒れていく中

 

 

 ドンッ!

 

 

 蒼白い閃光と共に突如機関銃陣地が消滅

 

 

 「魔導士だ!捕虜に魔導士が紛れているぞ!」

 

 

 予想外の魔導士の攻撃に右往左往する日本軍を前にその男は笑みを浮かべる

 

 

 「あとは捕虜共に任せるか…」

 

 

 武器庫に一足先に着くや否や武器を回収し始める

 

 

 「しかし我が国もこんな魔法無し国家に脅威を抱くとは落ちたもんだな」

 

 

 武器は全て魔法が仕込まれた腰巾着に入れられ、外目からは汚らしい捕虜にしか見えない。

 

 

 「パーパルディアの捕虜共には悪いがおさらばさせてもらおう」

 

 

 そう言うとまた捕虜の顔に戻り、捕虜収容所を後にする。捕虜たちが武器庫を見たときの絶望した顔を思い浮かべ、自然と笑いが込み上げてくる。

 

 

 

 郊外の森まで来くるとその男は立っていた。

 

 

 

 「ほら、とってきたぞ」

 

 

 いつの間にかそこにいた男に武器が入った腰巾着を投げ渡すと報酬が返ってきた。

 

 

 「今回は楽な仕事だったな。捕虜共には犠牲になってもらったが」

 

 

 その男は初めて口を開いた。

 

 

 「問題ない。次も頼むぞ」

 

 

 そう言うとその男は消えた。

 

 

 「ちっ。愛想のないやつ。まあいいけど」

 

 

 そう吐き捨てるとタバコに火をつけた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

デュロ 第23軍司令部(旧デュロ防衛隊司令部)

 

 

 「本日11時、第三兵舎の捕虜2000人が反乱するも第104師団がこれを鎮圧。しかし数百名が脱走し現在も追撃中。被害ですが、56名が戦死、16名が重傷、18名が軽傷。また、武器庫の火器が全て無くなり」

 

 

 報告途中で第23軍司令官である酒井隆中将が口を開く。

 

 

 「おいおい、なんでそんな被害が多いんだ?」

 

 

 参謀長の栗林忠道少将が追加で説明する。

 

 

 「捕虜に魔導士が紛れていたようです。現在、捕虜の魔導士を呼び寄せ探させています。ただ武器庫にあった火器が何処へ行ったのかは調査中ですが、恐らく逃走した捕虜たちが何処かへ運んでいるのではないかと」

 

 

 「何としても見つけろ。しかし何で捕虜共は何で武器を使わなかったんだ?」

 

 

 

 「少なくとも下士官や憲兵の武器は奪って使っていたことが確認されていますので不可解な出来事です。もしかしたら今回の反乱は裏でパーパルディア皇国が手を引いているのかもしれません」

 

 

 酒井司令官は少し考えると

 

 

 「確かに今後パーパルディア皇国軍が今回強奪された火器を使っていたと判明すれば私の責任問題になりかねん…」

 

 

 司令官はまた少し考えると何かをひらめいたかのように目を開く

 

 

 「捕虜の戦力化を急がせろ。特に魔導士は重要な戦力だ。出来るだけ確保したい」

 

 

 

 「しかし魔導士に関しては陸海問わず各方面から追加の要請が届いています」

 

 

 これまでの戦いで魔法の重要性に気が付いたのは陸軍だけではない。海軍は前回の海戦で得られた魔導士だけでは足りず、魔導士を比較的多く確保している陸軍に要請を出していた。また陸軍側でも魔導士をバランスよく配分しようと動いていた。

 

 

 

 「適当に理由をつけて遅らせろ。我々第23軍は対パーパルディア皇国戦において先陣を切る!そのためには魔導士はいくらいても足りん」

 

 

 酒井司令官は中央に失態がバレないよう独断で動こうと決意した。

 

 

 

 「パーパルディア方面軍司令部には何と?」

 

 

 最近になって支那派遣軍は編成が多少変わり、パーパルディア方面軍へと名称が変わっていた。

 

 

 

 「演習を行っていたらパーパルディア皇国軍が捕虜収容所に攻め込んできたので反撃した。これでいこう!」

 

 

 

 

 「ではそれで早速作戦立案を行います」

 

 

 勝てば問題無かろうと言わんばかりの適当なストーリーで乗り切ろうとする司令に呆れつつも、自分は参謀としての職務を全うするだけだと心に留める栗林参謀長であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

多摩陸軍技術研究所

 

 

 パーパルディア皇国との戦いで魔法が発見された後、極秘裏に建てられた多摩陸軍技術研究所では魔導士が集められ日々魔法実験が行われていた。

 

 

 「3000…3500…4000…4500…」

 

 

 中央には西瓜サイズの青い球体が置かれ、それに電圧を加えている。

 

 

 

 「膜状の白い帯が出現!」

 

 

 

 電圧が上がっていくと共に帯が広がっていく

 

 

 

 「5000…5500…6000」

 

 

 

 「結晶に亀裂!」

 

 

 結晶の亀裂から光が漏れ出した瞬間白い帯は消え、過電流保護装置が動作した発電機はその動きを止める。

 

 

 「う~んダメか。もう少しだったんだがな」

 

 

 主任研究員はため息をつく。

 

 

 「また絶縁耐力が足りんかったようですね。やっぱりもう少し出力の小さい魔導防壁に変更します?」

 

 

 部下の研究員がまたかという表情で応える。

 

 

 

 「これ以上小さくすると陸軍の要求に答えられんし、魔導士曰くこれ以上小さい物は作れんそうだ」

 

 

 

 それを聞いた女性の魔導士が話に加わってくる

 

 

 

 「大賢者クラスの方であればもっと小型で高出力の物を作れるんでしょうけどね」

 

 

 

 「パーパルディアにはそういう奴はいないのか?」

 

 

 

 「少なくとも一人はいますね。私が魔法を学んだ学校の校長でした」

 

 

 

 「そうか…」

 

 

 主任研究員は捕虜としてここで働いている魔導士の彼女に同情する。

 

 

 

 「神聖ミリシアル帝国には5名の大賢者がいるそうです。その校長も昔、神聖ミリシアル帝国に留学に行ったんだとか。まあ、パールネウス共和国時代の話らしいですが」

 

 

 「その校長何歳なんだよ?」

 

 

 研究員がツッコミを入れる。

 

 

 「誰も知らないんですよね。少なくとも100歳は超えているらしいですが。」

 

 

 

 「どんだけ長生きなんだよ」

 

 

 ボケかと思ったら本当の話のようで驚く研究員

 

 

 「魔法使いは魔力のおかげで比較的長生きすると言われています。とは言ってもパーパルディア皇国の魔法使いはその殆どが軍に徴兵されるおかげで長生きできませんが」

 

 

 

 「戦死か?」

 

 

 反応しづらい内容に主任研究員が助太刀する

 

 

 「いえ、魔導士は皇国にとっても重要戦力ですし、何より魔導士自体が防御手段を数多く持っていますので戦死することはほとんどありません。ただ魔力は使いすぎると寿命を縮めます。それが何故なのかは分かっていませんが、魔力は生と死を司ると考えられていますのでもしかしたら魔力自体が人間の生命力と表裏一体の物なのかもしれません。」

 

 

 

 

 「そうか…」

 

 

 

 湿っぽい雰囲気に気が付いたのか魔導士は話を元に戻す

 

 

 

 「その魔導防壁装置は亀裂が入る前に既に回路が溶解し始めていました。亀裂はその結果に過ぎません。その溶解した回路を見直せばもしかしたら耐えられるかもしれません」

 

 

 

 

 「中が見えるのか!」

 

 

 他の魔導士には分からなかった事実が判明して喜びと驚きが噴き出す。

 

 

 

 「いえ、私は魔力の流れが見えるだけです。電気と言う力はどうも魔力に近いようですが、暴れ馬のように荒々しく回路を流れているので普通に魔力を流すよりも回路を工夫する必要があるかと思います」

 

 

 

 「やっぱり一回魔力変換機を通さんと厳しいかなあ」

 

 

 

  研究員が今後の方針について相談し合っている。

 

 

 

 「しかし時間がありません。とりあえず今回は回路の工夫で乗り切りましょう」

 

 

 

 「そうだな。よし魔導士、溶解した部分を教えてくれ」

 

 

 

 研究員が集まり、魔導士が説明を始める。

 

 

 科学と魔法が結びつき、この世界に新たな技術が生まれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お久しぶりです。今回は割と難産でしたがこれでいこうと思います。当初は科学文明国家で同盟を組めば魔法文明国家に対抗できなるかなと思いましたが、原作の神聖ミリシアル帝国が思ったよりも早く対空ミサイルを実用化してしまったのでちょっと厳しいかな思い、魔法の力も借りるという流れにしました。次回はパーパルディア皇国との陸上戦になるかと思います。
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