異世界でも大東亜共栄圏   作:えなかま

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 突発的に発生したパーパルディア皇国と大日本帝国との戦闘は双方の思惑を超えて拡大していく。兵士たちは何も知らされないまま死んでいく戦友を後目にそれぞれの大義名分を胸に今日も戦う。


第五話 デュロの戦い

パーパルディア皇国 デュロ 現地時間 中央暦1639年12月7日午前4時

 

 

 

デュロ防衛隊陸軍基地

 

 突然の非常呼集が基地内に鳴り響く。聞きなれない音に戸惑いつつもすぐに飛び起き装備を整える。窓の外を見ればどうも我々だけでなく他の部隊も非常呼集されたらしい。新兵のニコロは眠気眼に同室の先輩についていく。

 

 「先輩、非常呼集ってなんです?」

 

 寝起きで活舌がついてこない。

 

 「馬鹿、習わなかったか?まあ、俺も実際に聞いたのは初めてだが、何か非常事態が発生したということだ。急げ!完全武装で兵舎前に集合だ。」

 

 相部屋で3年先輩のウンベルトは実戦を経験したことがあるといっても属領の小規模な反乱鎮圧くらいしか経験していない。初めての非常呼集に内心高揚していた。

 

 兵舎前に行くと既に中隊長が待っていた。既に魔信で情報は伝わっているようだ。

 

 「早く整列しろ!。班長はすぐに報告!急げ!司令が話されるぞ。」

 

 中隊長が全員そろったことを確認するとまた魔信で報告したようだ。程なくしてストリーム司令官の演説が始まった。

 

 「まず言っておく。諸君、これは訓練ではない。実戦だ。」

 

 兵士たちに緊張が走る。皇国三大基地の1つであるデュロ防衛隊陸軍基地が出動する事態など列強国相手の戦争くらいしかないと思っていたからだ。

 

 「およそ1時間前、夜間巡回警備を行っていた部隊から賊を討伐したとの連絡があった。しかし近くに仲間がいたらしく戦闘となった。」

 「警備部隊も増援を呼んで対処したらしいが賊の規模が思っていたより多かったらしく、奮戦するも結果的には敗走した。」

 

 兵士たちに重い空気が漂う。

 

 「誉あるパーパルディア皇国の兵士が賊を相手に逃げだしたことが諸国に知られれば皇国の沽券にかかわる由々しき事態となる!」

 「我々は第三文明圏唯一の列強国である!列強国の兵士として責任ある行動をとる必要がある。」

 「パーパルディア皇国の兵士は強い!勇敢で!恐れ知らずだと!今こそ示そうではないか!」

 

 「おおー!!!!」

 

 演説の終わりとともに兵士たちが雄たけびを上げる。それが収まると中隊長が口を開いた。

 

 「既に警備隊からの情報により敵の位置は判明している。」 

 「我々はブレム将軍の指揮の下、すぐに打って出ることになる。」

 「質問はあるか?」

 

 ウンベルトが手をあげる。

 

 「賊相手に過剰な兵力かと思いますが、数は?」

 

 「すまん、言ってなかったな。警備隊によると1個連隊規模で連発式の銃で武装しているらしい。」

 

 兵士たちに動揺が広がる。パーパルディア皇国で連発式の銃を装備しているところなど皇都防衛軍の一部精鋭に過ぎない。それも神聖ミリシアル帝国のお下がりを買い付けたものだ。実際に撃っているところを見たことのあるものなどごくわずかしかいない。

 

 「気持ちはわかる。司令部も賊にしては装備が強力過ぎるとして列強国のどこかが支援していると考えている。」

 「心配するな。我々にはブレム将軍とデュロ防衛隊総勢11万2千人がついている。負けることはない。」

 「時間がない。敵は刻一刻と迫ってきている。行くぞ!」

 

 兵士たちは一抹の不安を感じながらも皇国民としてのプライドを胸に戦場へ向かっていく。

 

 

 

◆◆◆

 

 戦場に鼓笛隊の笛とドラムマーチが鳴り響く。戦列歩兵は3列横隊の密集陣形を組み足踏みを揃え前進する。そのすぐ後ろには地竜がついており督戦隊的な目的も含んだ配置となっている。

 

 「全体止まれ!」

 

 ブレム将軍からの魔信によって戦列の先頭を歩く上級指揮官は馬上から指揮を出す。

 

 その時。

 

 「ぎゃあああ!」

 「俺の足がああああ!」

 

 突如歩兵の中で弾が炸裂し、兵が吹き飛ぶ。

 

 「クソ!止まったところを狙われたか!魔導防壁展開!魔導防壁展開!」

 

 上級指揮官が即時に指示を出す。すると地竜の背中に乗せられた魔導機関が光り輝き兵士たちはオブラートのようなものに包まれる。

 

 パーパルディア皇国が列強国にまで成長した最大の要因は、地竜の使役に成功したことが大きい。地竜そのものの戦闘力も脅威だが、1番の脅威は積載量だ。馬の比較にならない積載量によってより大きな魔導機関、より大きな大砲を戦場に持っていくことが可能になり、諸国を武力でもって圧倒することが出来た。

 

 「た、助かった…」

 

 新兵のニコロが腰が抜けて座り込むも涙ながらにまだ生きていることを神に感謝している。

 

 「おい!立て!死にてぇか!」

 

 先輩のウンベルトが喝を入れる。

 

 「す、すみません!」

 

 浮足立った兵士たちに戦列組めのドラムマーチが鳴り響く。

 同時に陸軍の直掩をするはずだった竜騎士団のワイバーンおよそ100騎が突撃を敢行する。

 

 「おお!竜騎士団だ!」

 「やっちまえ!ワイバーン!俺らに仕事残さなくていいからな!」

 

 兵士たちの歓声が上がり士気が復活する。

 

 「総員弾込め!」

 

 上級指揮官が指示を出す。先込め式であるマスケットは装填に時間が掛かり、およそ30秒~15秒を必要とする。また装填自体も基本的には立って行う必要があり、火薬が湿気って不発になるのを防ぐため装填は直前に行う。

 

 「行進始め!」

 

 再びドラムマーチが鳴り響き兵士たちはそれに合わせて行進する。歩くことによって命中率は下がったとはいえたまに防壁直上に砲弾が直撃する。その度に防壁が波打ち悲鳴のような共鳴音を響かせる。

 

 「クソ!竜騎士団は何をやっているんだ!これでは防壁が持たんぞ。」

 

 上級指揮官が焦り始める。パーパルディア皇国軍が標準装備している魔導砲ではここまで大きな爆発と破壊力にはならない。要塞砲並みの破壊力がある野砲を敵が持っていることに内心恐怖を抱きつつ一刻も早く砲撃が収まることを祈っていた。

 

 「ん、羽音?が聞こえるような…」

 

 この砲撃音の中でニコロが些細なことに気が付く。

 

 「馬鹿なこと言ってねえで黙って歩け!」

 「羽音ってなんだよ…ん?黒い点?う、上からなんか来るぞ!」

 

 先に気が付いたウンベルトがそう言うとみんな上を見始める。

 

 「ワイバーンじゃないのか!?」

 

 「あんな速いわけがない!こっちくるぞ!」

 

兵士たちが騒ぎ始めると爆音を轟かせながら急降下してくるそれは黒い何かを落とすとまた上昇に転じた。黒い何かは隣の連隊の防壁に直撃し爆発した。これまでの砲撃の破壊力とは比べ物にならない爆発に防壁は耐えきれず最後の共鳴音を出すとガラスの様に割れ、同時に魔導機関はオーバーヒートしたかのように煙を出し停止した。

 

 「クソ!隣の連隊の防壁が破られた!」

 

 「また助かった…」

 

 

防壁が破られた連隊は潰走するも一部の中隊の指揮官は周りの防壁へ入り合流しようとしている。兵士達は浮足立つも防壁から出れば待つのは死であることは知っているので恐怖に支配されながらもドラムマーチに合わせて行進する。

 

 「全体前進!戦友の死を無駄にするな!」

 「この丘を越えれば敵は目前だ!パーパルディア皇国軍の意地を見せつけてやるのだ!」

 

 指揮官が部下を鼓舞するも、指揮官自身も内心は絶望感で満たされている。ブレム将軍の命令の下号令を出しているが、勝ち目はあるのだろうか。百戦錬磨の皇国軍の魔導防壁が破られるなど聞いたことがない。しかし戦列歩兵という密集陣形が前提の兵種の特性上、撤退戦や遅滞戦闘は不向きだしそんな練度はない。どうしても撤退する必要がある場合はワイバーンにより敵をかく乱し時間稼ぎをするはずだったがそれはもういない。このタイミングで退却の号令を出そうものなら部隊は一瞬で瓦解し潰走する。だから我々はこのまま進むしかないのだ。少なくとも魔導防壁があるうちは潰走せずに済むのだから。

 

 「し、死にたくない。もう家へ帰りたい…」

 

 ニコロが泣きべそをかいてとぼとぼと歩いている。

 

 「おい黙れ!お前だけじゃないんだぞ!俺たちの後ろにはデュロの民がいるんだ!俺たちが立ち向かわなければ…立ち向かわなければ…」

 

 ウンベルトが再び喝を入れるもその声は弱々しい。

 

 「も、もう嫌だあああああああああああああああああ!!!!」

 「お家へ帰るんだああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

 突然ニコロが武器を捨て隊列を離れる。

 

 「お、おい!待てニコロ!」

 

 突然の出来事にウンベルトや周りの兵士が動揺し始める。

 

 「やだああああああああ!!!もうやだあああああああああああああ!!!!!」

 

 「あっ…」

 

 銃声とともに突然ニコロが倒れた。

 

 「逃亡罪は現場指揮官の判断で即処刑だ!」

 「わかったか!進め!進め!行進だ!」

 

 上級指揮官がピストルを構えながら再度行進の号令を出す。ドラムマーチのテンポが先ほどより速く、音量も大きくなっていく。

 

 「また向こうの連隊がやられたか」

 

 指揮官の絶望感は峠を越え、死ぬまでに敵に一矢報いてやるという復讐心に支配されている。

 制空権を取られたデュロ防衛隊に次々と爆撃や銃撃が加えられ、爆撃音の度にどこかの防壁が破られ部隊が潰走している。各指揮官は部下の士気の維持と潰走を防ぐので必死で陣形はバラバラになりつつある。

 

 「丘を越えるぞ!」

 

 「やっと攻撃できる!」

 

 丘の頂上を目前にして兵士たちの士気が上がり始める。何もできずに攻撃を受け続け、死の恐怖に苛まれる時間から解放される喜びを噛み締める。

 

 最初に先頭を歩く上級指揮官が丘の頂上にたどり着いた直後…

 

 「あ…」

 

 敵の集中攻撃を受け一瞬で防壁が破られる。指揮官は丘の下の敵陣地を見たかと思うと次の瞬間には吹き飛ばされていた。

 

 「と、突撃!総員突撃!」

 

 下士官が透かさず号令を出す。防壁が破られたとなれば途端に士気は崩壊し、潰走し始める。ここで士気を保つには突撃しか道はない。

 

 「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

 「パーパルディア皇国万歳!!!!!!!!!!」

 

 「皇帝陛下ばんざい!!!!!!!!!」

 

 兵士たちは雄たけびを上げて突撃する。あとから到着した他の連隊も遂に耐え切れなくなり突撃し始める。近代戦を経験したことのないパーパルディア皇国軍兵士はその圧倒的火力の前に次々に倒れていく。

 

 「お、俺の手は…手…。あ、あった…へへへ。」

 

 「誰か俺の足をくっつけてくれええええええ!」

 

 「いでぇぇぇぇよ!いでぇぇぇぇよ!おっかああああ!」

 

 敵の突撃破砕射撃は壮絶を極め、大量の機関銃弾や迫撃砲弾・榴弾の雨あられの中で生き残った僅かな捕虜のほとんどがPTSDを発症することになった。

 

・デュロの戦い

 

国家:パーパルディア皇国

指揮官:デュロ基地陸軍将軍 ブレム

戦力:パーパルディア皇国軍デュロ防衛隊 50,000名

戦死または戦病死:45,000名

負傷:1,000名

行方不明:4,000名

 

国家:大日本帝国

指揮官:第23軍司令官 酒井隆中将

戦力:支那派遣軍第23軍 39,700名

 

戦死または戦病死: 106名

負傷: 300名

 

 

 

 

 

 




次かその次くらいに本土描写したいですね。
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