混ざった男の旅日記   作:trois

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事の始まりと着任。そして再会

気づけば僕は1人だった。

 

1番古い記憶は、同い年くらいの子供たちと一緒にどこかへ連れていかれた事だった。

 

車の中には8人の子供。

種族はバラバラだけど、生まれ育った町で見た事のある顔ばかりだった。

 

クランタの元気な男の子。

リーベリの気弱な女の子。

サルカズの少し大人びた少年。

お調子者なフェリーンの男の子。

オドオドしてたウルサスの女の子。

そんな子を励ましていたコータスの女の子。

無口なサブラの女の子。

そして、手元の手錠に興味津々だった僕。

いや、その頃は他人に興味を持ってなかった。あの子達の名前を覚えていないのが、その証明だ。

 

 

 

連れていかれた場所は、何かの研究所。

真っ白な部屋で、みんな一纏めにされた。手錠も外され、住み心地は良かった。

家具はしっかり人数分用意され、1日3回トレイに載って食事が支給される。簡単な娯楽も用意され、足りないものをいえば入手できた。

 

部屋に入れられた当初は、親元に帰りたいと泣く子もいたが2ヶ月が経つ頃には、環境に適応したようだった。

 

 

 

 

 

そんなある日の事だった。

それぞれに個別の部屋が与えられ、検査が増えた。

今まで住んでいた部屋は共有スペース。または待機所になり、検査の順番待ちをそこでするようになった。その時少し古いピアノが用意されていた。

研究所の職員に聞くとリーベリの女の子が懇願したらしい。

それから検査の合間に、楽しそうに引く彼女をよく見かけた。

検査と言っても、採血されたり腕輪をつけられただけだった。

 

 

そんな生活を続けて8年。

気づけば、クランタの男の子の姿が消えた。

共有スペースに姿を見せることが無くなり、ほかの6人も見かけなくなったという。

その頃、ウルサスの女の子がお腹に傷が出来たと言って、見れば手術痕だった。いつ出来たかはわからなかったが、問題もないから放置していた。

そしてそれから数週間後、日に日に彼女が変わっていった。

はちみつを異様に嫌がり、何故かあまり食べなかった肉を食べるようになった。

性格もオドオドしていたのに、急に思い切りが良くなった。

みんなはやたら気にかけていたが、俺は無関心だった。

生活さえ出来れば、どうでもよかったのだ。

 

唯一、リーベルの女の子とは少し仲が良かった。

その時が初めてだった。他人の名前を覚えたのは。

彼女は『フィール』と名乗った。

それ以来、僕は共有スペースに入り浸るようになった。

彼女のピアノの演奏を聴くと、不思議と気分が落ち着いたから。

それから彼女とよく話すようになった。

ピアノの弾き方を教わった。

連弾のやり方も教わった。

 

そんな生活をして行って、とうとう施設には5人しか残っていなかった。

 

僕とリーベリの女の子、サルカズの男の子とコータスの女の子、ウルサスの女の子だけが残った。

 

 

僕とリーベリの女の子以外、昔と変わっていた。

 

昔に比べて、冗談を言うようになったサルカズの子。

コータスの女の子は前に比べて無口で居るようになった。

ウルサスの女の子は言わずもがな。

 

 

 

17歳になった日。

 

注射を受けた俺が目覚めたのは、ベッドの上だった。

俺のお腹にも、手術の縫合痕が出来ていた。

胸とお腹の2箇所。

それからサルカズの青年とウルサスの彼女の姿が見えなくなった。

 

次の日、フィールの様子がいつもと変わっていた。そして、コータスの女の子が消えていた。

少し無口に、クールっぽくなっていた。

そして彼女にも、お腹に傷が出来ていた。

 

 

ある日、フィールがおかしくなった。

喋り方が滅茶苦茶になり、記憶がちぐはぐになっているようだった。

その日から、彼女はピアノを弾かなかった。

だからこっそり、ピアノに細工をすることが出来た。

 

彼女から聞いていた事を実践する為に。

 

 

ーーー

あれから1年。

俺は今日も1日検査で潰れてしまうのだろう。嫌だなぁ……と思いつつ診療台に固定された。

 

 

また採血と注射。そうしてまた麻酔で眠った。

その日、手術痕が六つに増えてフィールの姿を見ることは無かった。

 

 

何となく察していたが、それでも彼女を待っていた。次の日も、また次の日も。だが彼女はいつまでたっても現れる様子は無かった。

 

 

そしてまた検査を受けた後、シャワールームで俺は偶然知ってしまった。

気づいたのは偶然に近い。肩の辺りの何かに肌着が引っかかるような感覚があり、触ってみると硬い物が浮き出ていたのだ。

 

そしてこの症状を俺はサルカズの子から聞いていた。

 

鉱石病(オリパシー)

致死率100%の不治の病。

 

 

次の日の検査で職員に鉱石病を発症した事を伝えると、悲願が叶ったように喜びそのまま部屋を出ていこうとした。

 

出ていく時に、何かを質問したが覚えていない。

何故ならその職員をワイヤーで絞め殺していたから。

血で塗れたワイヤーと赤色に染まった両手。

 

彼女から教わった。

『ピアノ線って結構危ないんだよ。強くてよく曲がる。これで首を切って殺すって言う人も居たくらい。』

 

だから誰も引かなくなったピアノから、一番端の線を切って持っていたのだ。前から逃げる経路は組み立てていた。

 

 

もう、研究対象にされるのは懲り懲りだった。

だから、殺した後は逃避行の始まりだった。

 

深い森を駆ける。

 

何故か、体力が有り余っていた。前より足が速くなっていた。

追っ手が来ても、すぐに気づいた。

嗅覚と聴覚が鋭くなっていた。

気配のようなものが、肌で感じ取れた。

視力が良くなったのか、遠くの追っ手までよく見えた。

 

もし気づかれても、ワイヤーで斬殺するのは容易だった。

腕力も増していた。

 

頭の回転が早くなりアイデアが湧き出てきた。けど、それは自分が思いついたのではなく、誰かが言ったことを聞いているようだった。

 

 

 

どうにか追っ手を撒いた後、川辺で血を落としていると手術痕が増えていた事に気づいた。

 

 

強くなった腕力と、走っても疲れない体力。

嗅覚と聴覚が鋭くなった。

目がよく見えるようになった。

気配が感じ取れた。

思考が早くなった。

手術痕は七つ。

自分の体の変化も七つ。

 

そして体に起きた変化は、それぞれあの7人の種族の特徴だった。

 

 

そうして、俺はキメラになった。

いや、されたと言うべきか。どっちでもいい。

 

どんな身体でも、まだ生きていたいから。

 

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「初めまして。今度新規採用枠の戦闘オペレーターとしてお世話になります。」

部屋に居たのは、ありふれたサンクタとは違う、モスティマと同じような黒くくすんだ光輪を持った青年だった。

 

「新規採用のシメールです。よろしくお願いします。……あなたがCEOのアーミヤさんですね?」

 

「あっ、はい。私がCEOのアーミヤです。そしてこちらが……」

「医学者のケルシーだ。」

「えぇ存じ上げています。それで、そこに居る子は誰ですか?」

 

今、この男はなんと言った?

そこにいる子、私兵のレッドの潜伏が気づかれた。

 

その時、視界の端で赤い物が動いた。

「待てッレッド!」

静止の声は間に合わず、レッドはナイフを彼に突きつけようとしていた。

 

切り裂く寸前、銀糸がレッドのナイフごと腕を絡めとっていた。銀糸の伸びた先は、彼の両手。

 

(あの一瞬で見切り、絡めとったと言うのか!?)

「……レッド、同族に見つかったのと、ナイフが止められたのは初めて。」

レッドも困惑気味で、信じられないようだった。

「あー……ちょっと僕は気配とかそういうのに敏感なんだよ。それと僕はサンクタだよ。もうナイフで切りつけない?」

 

「……()()()()()()()()から間違えた。レッド、ケルシーの言うことを聞く。だから、もうあなたには、ナイフ振るわない。」

 

その言葉を聞いたシメールは、ワイヤーを巻き取りレッドを離した。

 

「ごめんね。多分少し痛めたかも。」

 

「大丈夫。ケルシー、この人、強い。アーツ無しでここまでできる人、ヘラグさん位しか知らない。」

 

……なるほど、戦力としては優秀。索敵能力もピカイチ。

 

「私の私兵が失礼した。……君の部屋だが、相部屋になってしまうんだが、大丈夫か?」

 

「問題ありません。」

 

「君の部屋だが、B303だ。同室の奴は滅多に帰ってこないから当分1人で使うことになる。」

アーミヤが右手を差し出す。

「最後にひとつだけ。私たちロドスはあなたを歓迎します。これからよろしくお願いします。」

 

彼も同じく右手を出した。

「こちらこそよろしく。アーミヤさん。」

 

 

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「B303…303……っと、あった。」

白いリノリウムの廊下で、探していた自室を見つけて胸元のカードをスキャンし、部屋に入る。

 

部屋は2人部屋。照明は消えていて、真っ暗。

ちょうど真ん中でスペースが区切られていて、同居人の物と見られる荷物が棚などに収納されていた。観光ガイドブックや、行く先々のお土産らしき物が少し雑に置かれていた。

 

少し埃が被っていて、少なくても数ヶ月は同居人は留守のようだ。

 

だがひとつだけ、机の上に綺麗なままの少し大きいアーツユニットが2つ。鎮座していた。

そして、それを僕は知っていた。

「『錠』と『鍵』」

 

限られた者しか所持が許されないアーツユニット。それがここにあるという事は……同居人はサンクタ。

 

思わず『錠』と『鍵』を持つと、アーツユニットから光が溢れ出した。

 

「……なんで君がそれを起動できるのかな?」

声の主は青い髪の堕天使……

「…………モスティマ。」

「うん、そうだよ。久し振り、シメール。」

 

ペンギン急便所属、国際トランスポーターのモスティマ。

彼女は扉に寄りかかりながら、こっちを見ていた。




友人からのアイデアを肉付けしてって出来た作品になります。

書き方を忘れてたので、誤字などあるかもしれません。
その場合、報告していただければ幸いです。

後Wですが、無料分です来ちゃいました。
現在スキル3を特化中です。
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