Fortune Lover ニコルルート ノベライズ版 作:Brahma
令嬢たちのつぶやくような会話が聞こえてくる。
「あの光の魔力が特別だからとひいきされている金色の虫だわ。」
「ゴキブリにも金色がいるなんて」
「君たち、やめないか。」
ニコル様が振り向いて顔をしかめてみせる。
「きゃあ、ニコル様だわ。すみません。」
令嬢たちは顔を赤らめて、距離をとるがその会話は聞こえてしまう。
「そういえばニコル様は、あの金色虫だけでなく妹様のことで大変な思いを。」
「あの妹様は老人のような髪と血の様な瞳。気味が悪いわ。呪われているのでは?」
「アスカルト家も二コル様も不幸になってしまいますわ。」
「どこか親戚筋で片親がいやしい出自で拾われてきたんじゃないかしら。」
「二人ともインチキをして生徒会に入ったに違いないわ。」
ニコル様は、寂しそうな顔をされ
「すまない。」とおっしゃる。
「二コル様。わたしは、二コル様は、素晴らしいご両親とソフィア様のように教養をお持ちの素晴らしい妹さんをお持ちになっていらっしゃいます。決して不幸ではいらっしゃいません。ただソフィア様が寂しそうなのが気になります。」
「ああ、そうなんだ。」
向かい側からソフィア様がいらっしゃった。
「お兄様。」
「ああ、ソフィアか。一緒に行こう。」
「あの、キャンベルさん」
「ソフィア様?」
「同情はいりません。」
「そんなつもりではないです。わたしも光の魔力をもつ特別な子ということで避けられてきたのです。ソフィア様のおつらい気持がわかります。わたし、昔お菓子を作って持っていたことがありますが、食べていただけなかったのです。」
わたしソフィア・アスカルトの気持ちが動いた。マリアさんはいつもわたしに話しかけてくれる。本気でわたしの気持ちを考えようとしてくれる。
それがじわじわ感じられる。平民だからとお兄様にくっついて伯爵家にありつこうとしているのかと思ったがそうじゃないと感じられる。昔お菓子を食べてもらえなかったそうだ。なにか申し訳なく思った。
「あの、わたしは、生徒会室だけが安らぎの場なのです。努力がきちんと認められて皆様よくしてくださるのでいつも楽しみなのです。ソフィア様も悪口をいわれながら頑張ってこられた。そのお気持ちよくわかります。」
翌日、わたしは、マリアさんのクッキーをいただいた。二枚目も。メアリ様が声をかけなかったら三枚目もいただいたかもしれない。
生徒会室でソフィア様がわたしのお菓子を遠慮がちに召し上がってくださっている。そのときメアリ様がこれ見よがしに声をかけて下さった。わたしとソフィア様を交互に見ながら。
「わたしの家のバラが今咲き誇っていて美しいのです。今度お茶を召し上がりながら皆さんご覧になりませんか?」
メアリ様がウインクする。ソフィア様と仲良くしたいというわたしの願いを聞きますよという合図だ。
「ソフィア様、メアリ様のお宅でバラをご覧になりませんか?」
「....日焼けしてしまうので...肌が弱いのです。」
「あの...日傘をわたしが持ちます。ぜひいかがですか?」
「....わかりました。お伺いします。」
「ソフィア様?」
「メアリ様?」
「ソフィア様は、読書がお好きですわよね?最近読んでいるご本をご紹介いただければ嬉しいのですが?」
メアリ様がわたしとソフィア様交互に笑顔を向けられる。
「...わかりました。お持ちします。」
メアリ様のお宅におじゃまする。
「すばらしいバラですね。いい香りもします。」
「赤いバラの花ことばは、「愛情」「情熱」、メアリ様にふさわしいです。白いバラの花ことばは、「純潔」、「深い尊敬」、ソフィア様にふさわしいです。」
「メアリ様は、アラン様に植物を育てる才能をもつ『緑の手』をお持ちだとおっしゃられたんですよね。」
「はい、とてもうれしかったのです。」
「ほんとうに素晴らしいです。」
「今日お持ちになった小説はなんという小説ですか?」
「『エメラルド王女とソフィア』といいます。王女がおしのびで、白い髪と赤い瞳をもつ平民の少女、ソフィアと親しくなるお話しです。」
「あの、実は...わたしも町の本屋さんで見かけて...。」
「マリアさんもですか?」
「はい。わたしは平民で、メアリ様、ソフィア様をはじめ生徒会の皆さんのようにわけだてない方以外は、貴族の方々からかなり中傷を受けてきましたので他人事ではなくて...。この小説は、失礼でなければ...わたしとソフィア様がなんとなく重なって...。ソフィア様、ソフィア様の絹のような髪もルビーのような瞳も美しいと感じています。わたしも最近教科書以外の本を読みようになりました。ロマンス小説も最近読んでいます。裕福ではないのでおいそれとは買えないので。よろしければ面白い本を紹介していただけませんか。それからわたしとお友達になっていただければ。」
「はい。」
ソフィア様は笑顔になられた。