Fortune Lover ニコルルート ノベライズ版 作:Brahma
最近、ソフィアの笑顔が日に日に増えている。キャンベル嬢は不思議な人だ。
ソフィアは、マリアさんとメアリ様とお友達になりました。毎日が楽しいですと笑顔で話しかけてくる。
生徒会でも最初は仕事ばかりやってさっさと帰っていたのが、最近は、仕事だけでなくキャンベル嬢とメアリ・ハント嬢と談笑している姿をみかけることが多くなった。
仕事が終わると持ち込んでいるロマンス小説を二人に見せて楽しそうに話している。
「ソフィア、二人は本以外の話もしたいんじゃないか?」
「いいえ、ソフィア様と本の話をするのは楽しいです。」
キャンベル嬢は笑顔で答える。
「わたしもですわ」
メアリ嬢も笑顔だ。
俺自身もキャンベル嬢と一緒にいる時間は楽しいと感じていた。
二コル様と生徒会のお仕事をするのは楽しい。わからないことは適切にフォローしてくださるし、一方では、信頼して任せて下さって、成果を認めて下さる。こんな日々がずっと続けばいいのにと思っていた。
新年になり、年末年始の休みが明けて、三学期になった。二コル様とのお別れの日が近づいてくる。わたしは平民で二コル様は貴族で、しかも宰相アスカルト伯爵のご令息。学業、魔法、剣技ともに優秀な方で将来を嘱望されている。それだけでなく美男子で人柄も申し分ない方だ。
わたしは二コル様とこのままお別れしたくない。魔法省から卒業後の入庁についてお話をいただいているが、一年後だし、たとえ魔法省に入れても多忙な職場と聞いている。お会いできる機会があるとは限らない。
わたしが下を向いて仕事をしていると
「キャンベル嬢?どうしたのか?体調でも悪いのか?」
と二コル様が話しかけてくる。
わたしは作り笑顔になって
「二コル様、大丈夫です。たいしたことありません。」
「ごまかさないでほしい。」
二コル様はおっしゃる。
わたしは降参して正直にお話しする。
「あの、二コル様はもうすぐ卒業されます。そう思うと寂しいのです。ご卒業はおめでたいお話なのに...これっておかしいですよね。」
またわたしは作り笑顔をする。
「そうか...実は俺も同じ気持ちだった。今まで出会いや別れがあっても無関心だった。だが、キャンベル嬢と会える時間がなくなっていくのに寂しいと感じる自分がいた。そんな強い気持ちは家族以外に感じたことはなかったのに。」
「....ニコル様...。」
「表しか見ない他人から愛する家族を、ソフィアを足かせのように言われるのがつらかった。ソフィアをかばえばかばうほど逆効果で...。ねたむ連中や宰相の息子と媚びてすり寄ってくる連中、ほとほといやだった。貴女は、俺とソフィアの人格をあるがまま受け入れ、笑みを向けてくれる。ソフィアがあれほど楽しそうにしているのは、キャンベル嬢、あなたのおかげだ。ありがとう。」
「いえ、わたしのほうこそ。わたしが平民の身分だからと蔑まずに、公平に親しく接してくださるニコル様やソフィア様のおかげで楽しく学園生活が送れています。私の方こそ感謝しています。」
ニコル様は、ひやかすように笑みを浮かべ「本当に?」
とおっしゃる。
わたしはてれかくしのように
「本当ですよ。」
と答える。ニコル様は真顔になって
「キャンベル嬢」
「はい。」
「卒業パーティの後会ってくれないか。大事な話がある。」
「わかりました。」
卒業パーティの日が迫ってくる。わたしは重大なことに気が付いて非常に不安に感じた。
卒業パーティに着ていくドレスだ。繕わなければならないし、見るからに安いものだ。二コル様に恥をかかせるのではないかと非常に不安だった。しかしいまさらお金はない。生徒会の皆さんにお話ししてすこしづつ借金しようか...魔法省に入庁すればお給料もいただけるからお返しできるだろうと考えた矢先だった。
ドアをたたく音がする。
「はい、どなたでしょうか?」
するとソフィア様が入ってくる。顔には微笑をうかべていらしゃる。
なんてすてきな微笑みだろうとわたしが見とれていると、
「わたしの部屋へいらしてください。」
とおっしゃる。
「はい、お伺いします。」
ソフィア様はわたしの手を握って引っ張っていく。
そしてお部屋に案内され、
「お兄様のことをどうお考えですか。」
「心からお慕いしております。ご卒業なさるとお会いできなくなると思うとつらく感じます。」
「マリアさんならそうおっしゃると思っていました。お兄様とマリアさんはおたがいにお慕いしあっているのが見え見えでしたから。」
わたしは恥ずかしくなってほおがほてる。きっと真っ赤になっているのだろう。
「こちらをご覧になってください。」
それは純白のドレスだった。平民である私自身が悪目立ちすることなく、控えめだが上品で清楚な中にも可憐さを醸し出すよく考えられた素晴らしいものだった。
「マリアさんに似合うと思ってお選びいたしました。試着なさってください。」
「はい、ありがとうございます。」
わたしがそれを着ると、ソフィア様が今度はほおを染めて、見とれている。
「すてきですわ。マリアさんはわたしのお義姉さまになるのでしょうか。」
「本当にありがとうございます。」
わたしは心からのお礼をいって深いおじぎをする。
「いいえ、気に入っていただけたようでわたしもうれしいです。どうかお兄様をよろしくお願いします。」
ソフィア様の笑顔はこれまで以上に愛らしいものに感じられた。