Fortune Lover ニコルルート ノベライズ版 作:Brahma
さて卒業パーティの日がやってきた。
マリアの純白のドレスは、控えめながらも優雅さ、可憐さ、気品にあふれ、教養あるソフィアが選んだまさしく彼女のためにあるような逸品だった。すずらんのように謙虚、純粋、控えめで、かすみ草のように清らかな心、親切といったものを表現しているように感じられ、他の令嬢たちもいったん目を止めざるを得ない感すらある。
ふだんマリアをいじめている令嬢たちは、目をそらしてしまう。気品があって自分を主張しないマリアそのものを見せられ、押し黙って気恥ずかしささえ覚えていた。
わたし、マリア・キャンベルは、このような素敵なドレスでこのような大規模なパーティは、初めてだったので、気恥ずかしさとともにどうしていいかわからず部屋の隅を選んでしまう。
メアリ様が、「マリアさん、よく似合っていますわ。マリアさんそのもののようなドレスです。」と微笑みながら声をかけてくださったが、作り笑いになってしまう。メアリ様のご好意でアラン様と踊ったほかは、壁の華状態だ。
しばらくそんな状態だったが、
「そのドレス。よく似合っている。」
甘く囁くように話しかける声がした。
「ニコル様?」
声の主は、素晴らしくりりしい礼装に身を包んだニコル様だった。
「とても綺麗だ。キャンベル嬢のためにあるようなドレスだ。スズランのように清楚で控えめ、カスミソウのように清らかだ。」
「ニコル様...ニコル様こそ一段と素敵です。」
ニコル様は笑みを浮かべ、わたしの手を取ると
「ありがとう。それでは、あちらで話をしよう。」
わたしは、ニコル様に手を引かれて行ったのは。満天に星空の広がるバルコニーだった。
パーティのにぎやかな話し声や音楽のざわめきが遠くに聞こえるが、それが逆にここが二人だけの空間であるような不思議な感覚に包まれる。
「マリア...。」
ニコル様は,ファーストネームで呼んでくださった。
わたしは驚きのあまりパーティ会場のざわめきが聞こえなくなるほどだった。
「君のことが好きだ。マリア、ずっと君と歩んでいきたい。君となら陽だまりのように穏やかで温かい日々を過ごしていけると思っている。これほどの気持ちははじめてなんだ。どうか俺の生涯のパートナーになってほしい。」
ニコル様は片膝をついて手を差し出した。
わたしは、生まれてこのかたこのような暖かく大きく包み込まれるような気持ちを向けられたことはなかった。
血がにじむのではないかという努力の日々。ようやく入った生徒会という忙しいながらも充実した安息の場。
わたしはひどく動揺したが、ニコル様の笑顔からにじみ出るやさしさに冷静さと熱くこみあげる想いを同時に感じる。
(わたしは、ニコル様とお別れしたくない。卒業されてからもずっと一緒にいたい。そうだ、ソフィア様にもこの気持ちをお話ししたんだった。)
ソフィア様の笑顔が脳裏に浮かぶ。
(ニコル様と自分の気持ちに素直に向き合おう)
とまどっているキャンベル嬢の視線が凛としたものになる。彼女のほおはやや赤らんでいる。
彼女は俺の手を取って
「わたしは、ずっとニコル様をお慕いしておりました。よろしければ私をニコル様のおそばにおいてください。ずっとずっと永遠に...。」
と答えてくれた。
ニコル様は微笑んで、わたしの手の甲にやさしく口づけをしてくださった。
「マリア、君に永遠の愛を誓おう。」
わたしの手を取ってニコル様はたちあがった。
「ニコル様、よろしくお願いします。」
わたしはニコル様の手を握り返した。
なぜか春の夜風が優しく感じられた。