日本国召喚 皇帝暗殺計画   作:文月之筆

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この作品を読んで下さり、ありがとうございます。
作者の文月之筆です。

今作の「日本国召喚 皇帝暗殺計画」に関してですが、
本作の展開は2つのルートに分岐するようになります。
(その際には章で分けることにしますので、それぞれのルートをお楽しみください)

拙い部分もありますですが、大目に見てくだされば幸いです。
それでは、どうぞご覧ください。


プロローグ
第1話


グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ グラルークスの邸宅

 

グラ・バルカス帝国の首都にある大きな邸宅。それは同国の皇帝であるグラルークスが住まう住居であり、その中では御前会議が行われていた。

地下に作られた戦時会議室内には多くの重鎮たちが集まっている。そして、重鎮たち全員の顔色は良くない状態であった。

「まず最初に重要な報告があります。いずれも悪い報告です……」

暗くしなびた声で司会役の男が話出す。彼もまた顔色が悪い。

「最初に、日本を中心とした連合軍がムー大陸レイフォル地区とイルネティア島に攻撃を行い、両方とも陥落しました」

司会役の男は一旦、言葉を区切る。会議室では息を飲む声のみが聞こえる。

日本を中心に神聖ミリシアル帝国とムーの3ヵ国で構成された連合軍は、一気にレイフォル地区を攻め落とすと続いて、イルネティア島を奪還したのだ。

結果としてグラ・バルカス帝国は、経済を支える植民地の大部分を失ってしまった。これらのことは大きく帝国を崖の淵へと追いつめる事となったのだ

「続いてですが昨日、哨戒に出動していた帝都防衛隊所属の第54地方艦隊8隻と近くに居た民間船6隻が、潜水艦からの攻撃を受けて撃沈されたことが判明しました」

先ほどとはうって変わり、会議室内は一気にどよめく。

第54地方艦隊は帝都ラグナの近辺に展開している。その艦隊が予想よりも早く攻撃を受けたという事は、本国とその帝都の位置が判明している可能性が高い。

いつ帝都が攻撃を受けてもおかしくない事に、彼らは恐怖を感じていた。これほど短期間で2つの要所が陥落したという事は、本土の防衛が不十分な可能性が高い。

騒然となる会場を帝王府長官のカーツが鎮める。

「静かにしろ!皇帝の前なのだぞ!」

一気に会議室が静まり返る。辺りが完全に静まり返ったのを確認して皇帝グラルークスは話しだす。

「そうか。……それで敵の動向はどうなっているのだ、ジークスよ?」

グラ・バルカス帝国において「帝国の三将」と呼ばれている帝都防衛隊のジークスは、青い顔をしながら席を立つ。

「はい。敵の動向に関してですが、現時点で確認できた限りではイルネティア島に前線基地を作っており、このままだとパガンダ島が落とされるのも時間の問題になります」

いつもと比べて、終始小さな声であったものの、静まり返った会議室ではきちんと聞こえていた。

「馬鹿な……、そんな馬鹿な……」

頭を抱えた軍本部長のサンド・パスタルが壊れたラジオの様に繰り返す。本来ならば咎められるものだが、誰も咎める事はしなかった。

皆は理解していた。恐らく内心では彼と同じことを思っていたに違いない。

海軍の全戦力を用いた日本への懲罰艦隊の派遣は大失敗に終わった。同国の切り札である特殊殲滅作戦部のグティマウン型戦略爆撃機と一緒に、大部分が撃破されてしまった。

この大敗北に続き、レイフォルとイルネティアが陥落した時には自殺者すら発生した。この戦いで陸軍にも無視できない程の被害が出てしまい、グラ・バルカス帝国はどうする事も出来ない状態になってしまったのだ。

彼らは改めて強大な相手を敵にした事を後悔をする。この世界に移転してから連戦連勝で負け無しだったことが、慢心と言う致命的な間違いに繋がった事をようやく理解したのだ。

良かった事として一応、バルクルス基地にて捕らえられたグラ・ガバル皇太子は無事に帰還したのだが、彼らにとっては何の慰めにもならなかった。

「サンド・パスタルよ、其方は少し落着きたまえ」

妙な雰囲気を作り出していたサンド・パスタルをグラルークスは優しな声色で宥しめる。このままでは埒が明かないと考えたからである。

少し時間が経ち、サンド・パスタルは落ち着きを取り戻す。

「申し訳ございません、陛下」

「いや大丈夫だ。それよりも、会議を続けてくれ」

本題の会議が再開される。

「現在、本土防衛の為に陸軍が42個師団と海軍が8個艦隊80隻が本土に待機しています。ですが本土防衛を行うには不十分と判断されたため戦力増強策として以下の事をしたいと思います。お手元の資料をご覧ください」

サンド・パスタルに代わり、ジークスが説明を始める。

各自の手元に資料が配られていく。その資料を読んだ者たちが次々と驚愕の声をあげていく。

「これは……」

グラルークスも驚きを隠せず、大きく目を見開く。

「大変遺憾ではありますが、パガンダ島などの植民地から軍を引き上げて、その部隊を本土防衛に回したいと思います」

ジークスは質問は無いかと尋ねた。当然、強烈な抗議が入る。

「どういうことですか!これでは植民地の警備が出来なくなってしまい、我が国の貴重な財源が無くなってしまいますよ!」

ひときわ大きな声があがる。その声の主は、征統府長官のガネフだった。

「落ち着いてくださいガネフ長官。確かに軍を引き上げるとは言いましたが、全部を引き上げるわけではありません」

ジークスは冷静に反論する。その冷静な声色にガネフの怒りの炎は一気に弱まる。

「資料の次のページを見ていただきたいのですが、植民地の中で一番大きなパガンダ島に対外防衛の為に3個師団を配置し、その他の小規模な植民地には最大1個連隊規模の部隊を反乱防止の為に各地区ごとに配置していきたいと思います」

ガネフらは手元の資料をめくる。そこにはジークスの言っていた事が、そのまま載っていた。

「もし、小規模な植民地で反乱が起きて対応できない場合については、パガンダ島から部隊を派遣します。そうすれば本土防衛の兵力を動かさくても対応できます」

本土の部隊を動かさないで済み、なおかつ植民地の反乱防止が可能なジークスの案は、現状においては最善の案とも言えるだろう。

だが犠牲となるものも当然ある。

「確かに植民地の反乱は防げるでしょう。しかしながら、もし相手が攻めてくるのには対応できないのではないでしょうか?」

ガネフは質問をする。彼は軍人では無かったが、敵の攻撃に耐えられるだけの戦力ではない事は薄々感じていた。

「相手の規模にもよりますが、日本やミリシアルの軍が来ればほぼ間違いなく負けてしまうでしょう。ですが本土の方が重要である以上は、このような案でも行わなければなりません」

ジークスははっきりと断言する。慢心が招いた悲劇を繰り返さぬように、楽観的な希望は完璧に排除するのだ。

一応誰もが分かっていたが、現実は苦汁よりも更に苦いものだった。

「分かりました。征統府からは異論はありません」

「ありがとうございます。続いての事ですが……」

会議はまだまだ続く。時には怒号が飛び交う程に紛糾し、時には一言も発せぬ程の沈黙が支配し、感情の激流が会議室を駆け巡る。

一方の内容の方に関しては、殆どがジークスを中心とした軍人が微調整を行いながらも、通していくという状況になっていた。

「……それでは一旦、休憩時間に入りましたので休憩を行いたいと思います」

4時間も続いた会議は一旦休憩に入り、やつれた顔つきをした重鎮たちは部屋から次々と出ていく。

「はあ……」

ジークスは深くため息をつく。大勢の重鎮たちの質問に答え、時には反対をねじ伏せる事を4時間も続けたからである。

彼は椅子に深く座り込むと、ポケットの中から煙草とライターと取り出す。

「どうすればいいんだ……」

周りに聞こえない位の小声で嘆く。煙草に火をつけると口に持っていき、それを深く吸う。

勢いよく口と鼻から紫煙を吐くと、再び深く吸いこみ吐く。煙が空気中に溶けていく中、ジークスは周りを見回した後、ふと思う。

「(……皇帝陛下はどう思っているのだろうか。現状、我が国は戦局を覆す程の戦力も何もかもが無い以上、このままでは詰んでしまう)」

煙草を灰皿に置いた後、彼は頭を悩ませる。そんな中、一つの単語が頭によぎる。

「(やはり降伏しかないのか)」

降伏するという選択肢が最も現実味を帯びてきたことに、彼は嫌気がさす。全世界に宣戦布告を行った以上、降伏すれば自国はタダでは済まないだろう。

だが、このまま戦争を続ければどうなるだろうか?

恐らく、帝都を含めた全土は焼け野原になり自国民にも多大な犠牲が生まれるだろう。もしそうなればグラ・バルカス帝国は文字通り、この世界から滅亡することとなるだろう。

「(屈辱的な降伏であっても、国体の維持の方が大切だろう。しかし、皇帝陛下はその選択を選ぶだろうか……)」

あくまでもジークス個人の考え方だが、最も良いと思っている「降伏」という選択を皇帝グラルークスが選んでくれるかどうか不安になっていた。

もし選ばれなければと彼は考えた。彼は顔を横に振る。

「(いや、今は自分のやるべきことに集中するべきだ!)」

ジークスは邪な考えを頭の中からどける。その頃、灰皿においてあった煙草は真っ白な灰だけになっていた。

 

・・・・・・・・・・

 

御前会議が終わり、来ていた人物は次々と帰っていく。ジークスは邸宅の表門に止まっていた自動車に向かう。

「ジークス殿、こちらです」

「ああ」

ドアの開けた部下に対して帽子を預けると、車の中に乗る。

「陸軍省に向かってくれ」

「分かりました」

運転手に行き先を告げると、自動車は陸軍省に向かっていく。

自動車の窓からは栄えた帝都ラグナの様子が広がっている。流れゆくその風景を背後にジークスは考えていた。

「(次回の御前会議は1週間後か……)」

1週間後に再び開かれる事となった御前会議の事を想う。その会議では帝国の方針が完璧に決まる時なのだ。

敵の攻撃から愛する帝国を守るためにも、それまでに少しでも良い方針をとらねばならない重荷が彼の肩には重くのしかかっていた。

「(カイザルとミレケネスはもう居ない。せめて二人でも居れば……)」

先の懲罰艦隊派遣で戦死した二人の事を想う。特にカイザルは個人的な交友も深かっただけあり、戦死した事が判明した時は一晩中、涙が止まらなかった。

考え事にふけて涙が出そうになる中、運転手の声がジークスを現実へと引き戻した。

「陸軍省に到着いたしました」

ジークスは考えるのを一旦中断し、降車の準備を始める。

「それでは、失礼します」

運転手と別れを告げると、ジークスは陸軍省の建物へと足を動かしていく。

ふと建物の入り口近くになった所で、ジークスはある人物に気づく。

「グラ・ガバル様ですか!?でも、なぜ此処に!?」

ジークスは驚愕する。一方のグラ・ガバルは気にせず話し出す。

「ジークス将軍、話があるのだが良いだろうか?」

「すみません。現在仕事がありまして、その……」

少し戸惑った口調でジークスは返事する。

「もし都合が合わないのであれば、後で話そうと思うのだが良いだろうか?」

「分かりました。1時間ほどで仕事が終わりますので、それまで待っていただけるでしょうか?」

「ああ大丈夫だ。それまではここで待っておこう」

「ありがとうございます。もしよろしければ、陸軍省の応接室にお越しになられたらどうでしょうか?」

流石に、自国の皇太子を外に待たせるわけにはいかないため、ジークスは応接室へ案内する。

「それではそうしよう。案内を頼む」

「はい、ついてきてください」

会話を終えた二人の男は、陸軍省の建物へと歩き出す。

本来、来る予定だったジークスの他に皇太子のグラ・ガバルのいきなり現れたため、陸軍省内はちょっとした騒ぎになったのは言うまでもなかった。

 




いかがでしたでしょうか?

今後に関しての話ですが、
ストックが無い為、投稿については不定期になると思いますがご了承ください。
(投稿頻度に関しては、あまり期待しないでください)

これからも頑張っていきますので、どうかよろしくお願いします。
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