日本国召喚 皇帝暗殺計画   作:文月之筆

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読者の皆様、作者の文月之筆です。

1か月以上も更新が遅れてしまい、誠に申し訳ございません。
恐らくはこれからも更新が遅れてしまうでしょうが、どうか暖かい目で見守っていただければ幸いです。

それではどうぞご覧ください。


第10話

グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 陸軍省

 

帝都にある陸軍省の中では大きな騒動が起きていた。

「それは本当なのか!?」

ただでさえ騒がしい状態の陸軍省の中、全員の注目を集めるほどの大声でジークスは叫ぶ。その理由として帝都防衛艦隊司令部の元に敵艦隊を発見したとの情報が届いた為であった。

「はい。帝都防衛艦隊司令部に確認しましたが間違いありません」

一方のランボールは落ち着いた様子で答える。その彼の様子を見たジークスは深く深呼吸した後、落着きを取り戻す。

「そうか……。それで詳細について教えて欲しいが良いか?」

入れたてのコーヒーを一口ほど口にした後、ジークスはランボールに尋ねる。

「はい。まず最初にですが、ここから200海里ほど東の海域で哨戒活動を行っていた潜水艦が更に北東へ600km程の地点で敵の艦隊を発見したとの事です」

ランボールは本土とその周囲が乗った地図を机の上に広げると、ペンを取り出して幾つかの線を引く。その後、ある海域をペンで丸く囲んだ。

「なるほど。それで敵の規模や艦種などの情報に関しては分かるか?」

ランボールは首を横に振る。

「あいにくですが詳細な数などは不明との事です。ただし艦隊は日本国と神聖ミリシアル帝国で構成されている事と、多数確認されている事からある程度の規模を有しているものと思われます」

「そうか。ううむ……」

再びコーヒーを一口すすった後、ジークスは考える。相手の規模は分からないがそこそこの規模を有している事から、敵は我が本土に対して侵攻作戦を立てていると考えるのが普通である。

「帝都防衛艦隊は出撃したのか?」

「はい。現在、出撃できる全ての艦艇が出撃をしています。また他にも帝都以外の地方隊も動員させて当該海域に向かわせています」

ランボールは出撃した地方隊に丸を付けていく。その数は現存する地方隊の半分近くにも上っていた。

「うむ。これ程の戦力が迎撃に回ったか……」

これ程の戦力があれば、この世界の文明国程度ならば簡単に倒すことができるだろう。だがしかし、相手は前回の懲罰艦隊を無傷で撃破した事のある日本の艦艇がいる以上は無力と言えるだろう。

ジークスは頭を抱える。懲罰艦隊を撃破できるほどの戦闘能力を有している相手の侵攻を止める術がない事を心の中で嘆いていた。

「ジークス将軍。それに関してですが、大きな問題が二つほどあります」

ランボールの問いにジークスは二つの問題が頭に浮かぶ。

「帝都の防衛戦力不足と住民の説明か?」

「はい、そうです」

ジークスは思わず舌打ちをする。第一に帝都を防衛する戦力が足りない事である。これに関しては敵が必ず帝都に来るとは限らないものの、もしも帝都に対してきた場合は対処できずに占領されることが予想できた。

それだけでも十分致命傷ではあるが、同時に今まで敗北し続けた事を隠した事実を暴露する必要が出てきたことも大きな問題となっていた。

もしも今までの敗北についての情報を開示した場合、国民は大きく混乱する事になるだろう。それに加えて軍部や政府に対して強い不信感が降伏計画や会議に対して大きな悪影響を与える事も容易に想像できた。

「はぁ……。どうすればいいんだ……」

ジークスは自身のこめかみを押さえて黙り込む。このまま非常事態宣言を出さずにいれば最悪の場合、多くの国民が戦火に巻き込まれ死亡する恐れがある。だが一方で非常事態宣言を出した場合、今までの敗北を隠していた事実が判明して政府や軍部に対する信頼が大きく落ちる事が予想できた。

下手な事をすれば国が滅亡しかねない状況にジークスは頭を悩ませる。彼は唸ったり首を捻ったりして何とか良い方法は無いかと考え続けた。

「(ここはやはり非常事態宣言を出し、敗北の事も正直に話した方が良いな)」

入れたてのコーヒーがすっかり冷めきった頃、ジークスは結論を出す。その様子に気づいたランボールは彼に尋ねた。

「ジークス将軍、どうしますか?」

「うむ、ここは非常事態宣言を出して国民には今までの件を正直に発表する事としよう。ランボールよ、君はどう思うかね?」

ジークスは意を決したように話す。ある程度は社会が混乱し、政府や軍部に対して不信感が残る結果となる事は承知の上での決断であった。

「異議はありません。今ここで発表しなくとも、いずれは国民たちは敗北続きであることを知るでしょう。そうなれば余計に信頼を落とすことになるでしょう」

ランボールもジークスの意見に賛同する。後々発覚する形で知られるよりも、予め発表しておいた方が社会や政府などに加わるダメージを最小に出来ると判断したからである。

他にもこれ以上、国民に事実を隠し犠牲を強いる事を彼は良しとしなかったのも大きな要因である。

「うむ、決定だな。それでこの事はいつ発表するべきだと思うかね?」

ジークスは次に懸念していた事を考える。これらの情報を開示する時期についてであった。

「そうですね……。私としては二日か三日後ほどが良いと思いますね」

ランボールは顎に手を当てて考える。彼の考えでは、発表を受け入れられない国民が何かしらの行動を起こすとなった事も考慮して、四個師団が到着して準備を整える二日か三日ごろが良いと考えたのだ。

一方のジークスも彼の考えを察した様子であった。

「なるほどな。……まあ、とりあえずは二日後に発表するとしよう。それまでは非常事態宣言を出して、国民には動かないでもらう事にしよう」

すぐに発表をすれば社会に大きな混乱をもたらし、様々な面で大きな悪影響を及ぼす。そう考えたジークスは準備が整えられる時まで発表を遅らすことにした。

もちろんリスクはある。何の前触れもなく非常事態宣言を出せば違和感を持つ人間も出るだろう。中には帝国が危険な状況である事を察する者もいる可能性だってある。

「(ううむ……)」

ジークスは冷めきったコーヒーを喉の奥へと流し込む。自身が下した判断が果たして正しいのかどうかで頭を悩ませていた。

「ジークス将軍、話が変わるのですがよろしいですか?」

頭を抱えているジークスにランボールは話しかける。

「何かね?」

「グラ・カバル皇太子の避難計画に関する話です」

ジークスの表情が一気に変わる。苦悩している表情から一変し、真剣な顔つきになった。

「もう準備は整ったのだな?」

「はい。カーツ長官の方からも準備が整ったとの連絡がありました。あとはジークス将軍の許可だけです」

ランボールは自身の隣に置いてあった鞄から一枚の書類を取り出してジークスに渡す。ジークスはペンを取り出すと、その書類にサインを書いた。

「ありがとうございます。それでは皇太子の避難計画を実行いたします」

ランボールは書類を鞄の中にしまい込む。

「ああ、しっかり頼んだぞ」

ランボールはジークスに一礼した後、執務室から歩いて出ていく。執務室の中にはジークスだけが残されていた。

「何という奇跡だ……」

彼は小さく呟く。この危機的状況から皇太子だけと言えども、攻撃を受ける可能性の高い帝都から脱出させられるのだ。

日本の事を良く知り、今後の帝国の運命を握るであろうグラ・カバル皇太子の生存は一大事項である。もし講和まで行きついたとしても、彼がいなければグラ・バルカス帝国の未来は暗いものになるだろう。

「(カバル様、必ず生きてください。そしてこの国の未来を託します)」

ジークスは書類の山の状態になっている机から離れて窓際に寄る。空高く輝いている太陽は普段よりも、より明るく見えるのであった。

 

・・・・・・・・・・

 

ニヴルズ城の駐車場では四人の男が車に乗車しようとしていた。

「こちらへ」

ランボールは車のドアを開けて一人を助手席に招く。その男の顔は多くの国民がしる顔であった。

「ああ。失礼する」

黒のスーツを着たグラ・カバルはランボールの案内に従って助手席に座る。彼が座った後、ランボールたち三人も車に乗り込み走り出した。

「これよりカバル様には陸軍省が用意した隠れ家に住んでもらいます。そこには後ろの二人が護衛に付きますので安全に過ごせるでしょうが、くれぐれも危険な行動はしないでください」

車の運転を行っているランボールが話す。グラ・カバルは彼の言葉を真面目な表情で聞いていた。

「わかった、危険なマネはしないようにしよう」

グラ・カバルはランボールに対して答える。周りの反対を押し切って強行したバルクルス視察の頃の自分の姿を想いながら彼は考える。

「(あの時の様な愚行は絶対にダメだ。私には未来のグラ・バルカス帝国を守り発展させていく義務があるのだ!)」

彼は自身が背負っている大きな責任を感じていた。それは戦後のグラ・バルカス帝国の未来という常人にはとても背負いきれない程の重大な物であった。

先のバルクルス基地攻撃作戦で日本に捕まった後、彼は日本で色々な事を教わった。そして自分たちの置かれた現状を理解し、そう遠くない未来に訪れるであろう滅亡から国を救う数少ない存在になるのであった。

「(少なくとも私には戦争が終わり、講和を結び終えるその時までは生き延びなければならないのだ!)」

現在の時点でグラ・バルカス帝国の政治中枢を担う人物の中で、日本と太いパイプを有する者はグラ・カバルのみである。そのため、現時点において彼の存在価値は現皇帝であるグラルークスを上回っていると言っても過言でなかった。

自身の責任の大きさを再確認したグラ・カバルは息を吐く。そんな中、車は人通りの少ない路地裏で停車するとランボールはドアを開けた。

「降りてください」

グラ・カバルは驚いた表情で尋ねた。

「なぜここで降りるのだ?目的地に向かわないのか?」

「このまま目的地に向かえば相手に気づかれる可能性があります。ですので途中で降りた後、服を着替えて別の車に乗ってから目的地に向かいます」

ランボールは答える。グラ・カバルは小さく頷いた後、車を降りてランボールの後に続いた。

ランボールたちは少しばかり歩いた後、人気(ひとけ)の無い建物の中に入った。

「(帝都にも人気の無い所があるのだな)」

前世界において最も栄えていた帝都ラグナにも人気の無い場所が存在する事に驚きながら、ランボールが示した部屋の中に入る。

「カバル様、こちらに着替えてください」

グラ・カバルは予め用意されていた服を手に取ると、その服へと着替え始めた。

「(うむ。思ったよりも悪くはないな)」

用意されていた服は少しばかり古くボロいものではあったものの、不潔さというものは一切ない代物であった。サイズに関しても少しだけ大きかったが、そこまで違和感を感じるものではなかった。

「お待たせしました。それでは行きましょう」

ランボールら三人も着替え終えると、彼らは完全に帝都でよく見かける一般市民たちと対して変わらない姿に変身していた。四人は先ほど入った扉とは別の扉から部屋を出ると、人気の少ない場所に置いてあった別の車に乗った。

「それでは別荘の所に行きますよ」

「ああ」

前ほどの黒の高級車から、どこにでも見かける灰色の一般車に乗り換えた彼らは一息つく。これで相手に追跡されていたとしても、追跡を振り切る事ができたであろう。

彼らの乗った車は再び帝都の外にある別荘を目指して走り出していくのであった。




いかがでしたでしょうか?

これからも何とか最後まで頑張って投稿していきたいと思います。
投稿頻度に関しても以前よりは遅れるでしょうが、どうか長い目で見ていただければとても幸いです。
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