日本国召喚 皇帝暗殺計画   作:文月之筆

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読者の皆様、作者の文月之筆です。

今回から、本格的に物語が進んでいきます。
ぜひ楽しみにしてください。


講和派皇帝暗殺計画
第2話


グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ グラルークスの邸宅

 

地下の会議室には多くの重鎮たちが不安そうな顔つきで待機していた。

前回の御前会議から次の御前会議まで、本来ならば1週間後に行われるはずだったのだがその日の内に、3日後に開かれる事が通知されたのだ。

いきなりの予定変更に多くの者たちは不安に駆られる。理由も分からないまま、ただ「重要な案件がある」とだけ伝えられたのだから無理もないだろう。

突然呼ばれる事となったジークスも少なからず不安を感じていた。

「(グラ・カバル殿の言う事が確かならば、恐らくこれは……)」

その時、会議室の扉が開く。

「皇帝グラルークス様が入場されます!」

扉を開けた一人の男が大声で宣言する。それと同時に、会議室にいた全員が席を立つ。

ゆっくりと足音が近づいてくる。緊張がピークに達した時、一人の男が姿を現した。

「皇帝陛下万歳!」

全員が叫ぶ。その男こそグラ・バルカス帝国の皇帝グラルークスだったのだ。

グラルークスは一礼した後、自分の席に座る。

「座りたまえ」

静かな会議室にグラルークスの声が響く。それに合わせて出席者たちは次々と席に腰を下ろす。

全員が席を座り終えると、グラルークスはゆっくりと話し出す。

「まず最初に、急遽開催することとなった会議に、一人も欠けることなく参加してくれたことに感謝する」

全員が息を飲む。その声にはとても重みがあり、強大な帝国を統治する者の声であった。

全員の注目がグラルークスに集まる。彼は周りを見渡した後、話を始めた。

「それでは御前会議を開始しよう」

グラルークスは手元にあった資料を手に取ると、再び話し出した、

「これから重要な事を話そうと思う。心して聞いてほしい」

再び周りを見渡す。ほんの僅かな間ではあったが、出席した者たちにとっては非常に長く感じられた。

「私、皇帝グラルークスはここに宣言したいと思う」

深く息を吸った後、大きな声で宣言する。

「本日をもってグラ・バルカス帝国は、日本国を含めた世界連合に降伏することを決定する」

一瞬の静粛の内、会議室内では驚愕の声が爆発した。カーツが鎮めようとするものの、当然ながらいつもの様にすぐに収まった訳では無かった。

グラルークスは大声で叫んでいたカーツを手で制する。こうなる事を見通して少しの間ながらも、時間を置くことにしたのだ。

「(やはりか……)」

騒然となる会議室内でジークスは3日前のある事を想い出した。

 

・・・・・・・・・・

 

陸軍省の建物は、雄大な外見に反し内部は質素であると有名であった。だが、一室だけ異なる場所がある。

非常に華美な装飾がされている陸軍省の応接室にて、ジークスはグラ・ガバル皇太子と二人きりになっていた。

「単刀直入に話そう。心して聞いてくれ」

ジークスは息を飲む。カバルの口から出て来た言葉は予想外の物であった。

「父上に日本国を中心とした世界連合に降伏するように説得する事に成功したのだ」

「なっ!?」

思わず大きな声が出る。カバルは構わず続ける。

「其方も理解しているだろうが、日本国には絶対に勝てない!どうやっても我が帝国の軍事力では勝算は無いのだ!」

思わず話す言葉に力が入る。その様子を見たジークスは決意する。

「ええ、その通りです。このままでは我が国は滅ぼされてしまうでしょう。それだけは何としてでも避けねばなりません」

「そうだ、そのためにも君に協力して欲しいのだ!」

カバルはゆっくりと息を吐く。

「3日後に御前会議が開かれる事になる。その時、日本国と軍事的に勝てない事を説明して欲しいのだ。他にも外交や経済的にも勝てない事を説明してくれる協力者も何人かいる。私は彼らと協力して戦争を終結させていきたいと思っているのだが、どうだろうか?」

「終戦工作ですか」

「そうだ」

ジークスの口元に笑みが浮かぶ。彼はカバルの提案に乗る事にする。

「任せてください。必ずや成功させてみます」

「ありがとう。感謝する!」

カバルはジークスに深く頭を下げると、ジークスも同じように深く頭を下げたのだった。

 

・・・・・・・・・・

 

少し時間が経ち、会議室内のざわめきが弱くなる。その時を見計らうかのように、カーツの声が響く。

「静粛に!静粛に!」

騒然としていた会議室内に沈黙が訪れる。さっきまで無我夢中に騒いでいた者も一言もしゃべらなくなっていた。

回想の世界にいたジークスも一気に現実へと引き戻される。そして、これからやって来るであろう一世一代の大仕事に、心臓の鼓動がどんどんと高まっていく。

「話を続けたいと思う」

グラルークスは続ける。

「今の帝国の現状は決して良くない。海軍戦力の大半を失い、陸軍にも少なからず被害が出ている。だが、それ以上に一番の脅威である日本国に対して何も被害を与えられなかった以上、このまま戦っても勝算はないだろう」

皆が息を飲む。彼が、かつて皇太子時代に軍を指揮していた事があるのは周知の事実である。ある程度は軍事知識を持っている為に、説得力が増していたのだ。

ふとジークスはグラルークスの視線を感じた。顔を上げて、グラルークスの方をうかがうと確かにこちらの方を見ていた。

「ジークスよ。今の帝国軍が戦っても勝てるだろうか説明したまえ」

「はっ!」

弾かれたように席を立つ。手元にある資料を手に取るとジークスは話し出す。

「陛下のご指摘の通り、我が国が日本国を倒すことは事実上不可能と私は判断しています。今から資料を配りますので、そちらをご覧ください」

出席者の元に資料が配られていく。

「この資料はナグアノレポートと言うものです。これは情報局のナグアノと言う人物がまとめたレポートです。今までは欺瞞情報として処理されていましたが、すべて事実である事が判明しています」

息を飲む声が聞こえる。全員の注目が一つのレポートに集まる。

「まず最初にですが、日本は我々よりも大幅に進んだ技術を有しています。その一例として次のページをご覧ください」

全員がナグアノレポートのページをめくる。そこには衝撃的な内容が載っていた。

 

日本が有する兵器に関する情報

 

1.日本の兵器にはとても強力で先進的な物が多く、その一例としてこのようなものがある。(細かな詳細は後述する)

 

・誘導弾(ミサイルとも称される)

自ら目標を追尾する事のできる兵器があり、多くの場合で高確率で目標に命中する。また、対空、対艦、対戦車など様々な種類の兵器がある。

 

・ジェット機

我が国で開発中のジェットエンジンを搭載した航空機が存在する。だが性能そのものは、我が方のジェット機よりも遥かに優秀であり音速を超える事も可能である。加えて、機銃の他に高性能なレーダーとミサイルで武装している。

 

・戦車などの兵器

戦車そのものは我が国にもあるが、性能は蟻と象を比べるようなものである。

例として、日本の戦車の主砲は2km先から400mm以上の鉄板をも貫徹可能である。

他にも我が国の重戦車でも装甲は35mmしかないのに対して、日本の戦車は鉄以外の高性能な素材を使った複合装甲と言われる装甲を有している為に、先述の砲弾に耐えられるだけの防御力を有している。

 

・イージス艦

これは日本の前の世界の同盟国であったアメリカと言われる国の装備であるが、ミサイルを主武装とし、200個の目標の同時追尾及びに12個の目標に対する同時攻撃が可能である最強の防空艦である。

 

・潜水艦

日本の潜水艦は数日間もの連続潜航が可能である他にも、非常に静粛性が高いことから我が国のソナーでは探知不可能であることが判明した。

そのため日本の潜水艦は探知不能な存在なために、我が国の軍艦は一方的に沈められる存在にしかならないだろう。

 

・・・・・・・

・・・・・

・・・

 

もはや夢物語にしか見えないほど文字の羅列に全員が驚愕する。普段であれば間違いなく欺瞞情報と扱われるのは確実であり、懲罰艦隊の敗北まで軍部が欺瞞情報と判断するのも無理はないだろう。

だが、悲しい事にこれらは現実であったのだ。少なくとも現実から目を背けるほど彼らの多くは馬鹿では無かった。

ジークスは周りを見回し、ナグアノレポートの効果がどれ程大きいかを身をもって実感する。これで多くの者たちが日本に対して徹底抗戦しようとする主張を取り下げさせられるだろう。

「この様に、我々の兵器を圧倒的に上回る兵器を有しており、今の戦力では戦って勝てる望みはありません。このまま戦ったとしても、我が国は無駄な犠牲を出し国力を減退させることにしかならないでしょう」

やや唸るような声が所々から聞こえる。非情な現実を突き付けられた彼らは、すぐには受け入れられる事ができなかった。

「そうか……」

グラルークスはジークスに座る様に促す。ジークスが椅子に座った後に、別の人物を指名する。

「内務省次官のナイウです。まず最初に継戦能力などに関してですが、我が国の資源事情は慢性的に良くない状態でしたが、レイフォルの陥落からより一層厳しくなっています」

そう言うと再び資料が配られる。そこに書かれていた文字も先ほどの様に良くないものであった。

「まず最初にですが原油の備蓄が残り5か月ほどしか残っていません。本来は2年分の貯蔵があったのですが、懲罰艦隊の派遣時に使用した事と貯蔵施設の大半がレイフォル地区を中心とした植民地に作っていた事が原因です」

室内がざわめく。その時、グラルークスも手を挙げて質問をした。

「ナイウよ、なぜ貯蔵施設の大半がレイフォルなどの植民地に建造したのだ?」

「それに関しては艦隊などを運用するにあたって、貯蔵施設が大きな橋頭保であるレイフォル地区にあった方が良いと判断されたことが原因です」

グラルークスの顔が歪む。まさか世界征服の為に行ったことが、自国の首を絞める結果になるとは思わなかったからである。

「続けてくれ」

「はい。続いてですが、国内において国民の不満や不安が高まっています。懲罰艦隊の派遣やレイフォルの戦いが原因と思われています」

全員が頭を抱える。いずれの情報に関しても情報統制を行って外部に漏れないようにしていたのだが、余りにも被害が大きすぎた為に統制しきれていなかったのだ。

「現在、適当な理由をつけてごまかしているのですが、ごまかしが効かなくなるのは時間の問題です」

全員が最悪の事態を想像する。国民達は大パニックを起こし、暴動や略奪が起きて国内の治安は大きく乱れるだろう。

ナイウの口から赤裸々にされていく情報たち。それらはグラ・バルカス帝国が、数多くの時限爆弾をあちこちに仕掛けられている事を示していた。

その時、多くの者たちはグラ・バルカス帝国が到底戦える状態ではない事に気づいた。もはやグラルークスが決めた降伏の選択肢以外、彼らには残されていなかった。

「それでは会議を終了します。なおこの会議の決定は2週間後に公式に発表しますので、それまでは皆様は口外しないようにしてください」

御前会議が終了する。全員が暗い表情の中、ジークスは会議が予定通りに成功した事に内心は喜んでいた。

「(これで良し。後はその時を待つだけだ!)」

多くの者たちが重い足取りで会議室を出ていく中、一人だけやや軽い足取りのジークスであった。

 

・・・・・・・・・・

 

一方で、この決定を良く思わない者たちも居た。

「(まずい。このままでは、このままでは我々の不正がバレてしまう!)」

その男はグラルークスの邸宅から自動車で自宅に戻ると電話を取る。

「もしもし。何かあったのですか?」

「ああ、とても大変な事が起きた。今すぐいつもの場所に来てくれ」

その男は電話である者と連絡を取る。電話の向こうから聞こえる声は少し驚いている様子だった。

「分かりました。それではいつもの場所でお会いしましょう」

「ああ、それでは」

電話を切った後、男は急いで服を着替える。

「何としてでも、阻止しなくては……」

頭をフルに活用し思考を巡らせる。あと2週間しか時間がない中、降伏を中止させなければならない。

彼は服装を綺麗に整えたのち、自動車に乗って待ち合わせの場所に向かったのだった。

 




いかがでしたでしょうか?

本作に関してですが、
なるべく早く更新できるように頑張りますが、更新が遅れてしまうかもしれません。
その点に関しては、予めご了承ください。

これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。
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