なんとか書き上げる事に成功しましたが、ひどい難産だったために所々おかしな部分があるかもしれません。
その点に関しては、予めご了承ください。
グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 高級料亭ミルトコウモ
帝都ラグナの一等地にある高級料亭ミルトコウモは、政府要人たちにとって御用達な場として知られてる。
そのミルトコウモのある一室にてオルダイカはエルチルゴを待っていた。いきなり呼び出しただけあって、エルチルゴは到着までは時間がかかりそうだ。
「ううむ……」
オルタイガは頭を悩ませていた。もしも自分たちが今までやって来た不正がバレる事になれば、間違いなく死刑に処される事になるだろう。
彼はカルスライン社との癒着や皇太子の視察中止を妨害した事などの他にも、様々な不正をしていた。それらが暴かれるのを防ぐためにも、2週間後に行われる講和だけは何としてでも防がなければならない。
オルダイカが頭を抱えている時、ふと足音が近づいてくる。
「遅れてすみません、オルダイカ様」
そこには息を切らしたエルチルゴが立っていた。予想よりも早く来たことにオルダイカは驚きつつも、エルチルゴに座るように勧める。
「いや大丈夫だ。それよりも重要な話があるから、一旦そこにでも座りたまえ」
「はい」
エルチルゴは近くの椅子に深く腰掛ける。額には大量の汗が流れており、ここまでくるのにかかった疲労が良く伝わった。
彼はハンカチを使って額を拭いた後、近くにあったコップの水を一口ほど飲みながらオルダイカに尋ねる。
「オルダイカ様、何か重要な要件でもあるのでしょうか?」
「ああ、お主にも関わる重大なことだ。よく聞いてほしい」
オルダイカは深く息を吸い込んだ後、小さな声で切り出した。
「実は今日の御前会議で陛下が世界連合に対して降伏すると宣言したのだ」
「なっ!?」
エルチルゴは驚愕する。思わず大きな声が出た上に、口をぽかんと大きく開けていた。
オルダイカは静かにするようにジェスチャーをする。外には漏れる事は無いだろうが、もしもの時に備えてできる限り声は小さくしたいものだ。
エルチルゴは、はっとなり口元を手で覆う。
「すみません、オルダイカ様」
「いや、大丈夫だ。話を続けるぞ」
エルチルゴは大きく頷く。オルダイカは続ける。
「この降伏が始まるのは2週間後だ。それまでに何とかしなくてはならないから、少しでも早く何かしらの行動を起こさなくてはならんのだ」
「2週間後に降伏が行われるのですか?」
「そうだ。……それまでに何とかならないか?」
エルチルゴに尋ねる。
「無理です。2週間程度の時間では今までの証拠を全部消すことはできません」
「そうか……」
オルダイカは頭を抱える。
「このままでは我々の不正がバレてしまうだろう。お主と共に極刑に処されかねん」
エルチルゴの表情が暗くなる。それを見たオルダイカは大きく切り出す。
「……それで一つ頼みたいことがあるのだ。俺に計画がある」
オルダイカの顔が歪む。それは悪魔の様に恐ろしいものであった。
「私は有志を募ってクーデターを起こしたいと思っている。そのクーデターに協力して欲しいのだ」
「ッ!?」
オルダイカの口からクーデターという言葉が出た事にエルチルゴは驚愕する。当のオルダイカは気にした様子も見せずに続ける。
「現在、我が帝国には降伏する事に納得の行かない者たちが多数いるだろう。そいつらを焚き付けて皇帝グラルークスを暗殺して政権を掌握すれば、降伏を中止させる事ができる」
「さようでございますが、果たして可能なのでしょうか?」
エルチルゴは恐る恐る尋ねる。実際、このクーデター計画が失敗してしまえば確実に身を滅ぼしかねないのだ。
一方のオルダイカは自信満々な様子だった。
「ああ、俺と親しい関係を持っている高級将校が何名かいる。そいつらに頼み込んでクーデターを起こしてもらおうと思っているのだ」
オルダイカと親しい関係を持つ高級将校たちの多くは、この異世界に住む住民たちを野蛮な人間と見下しており、自国を唯一にして絶対的な文明国と考えている人間たちであった。
そのため、誇りあるグラ・バルカス帝国が降伏することなど絶対に受け入れたりはしないだろう。それ故に、焚き付ければ間違いなくクーデター計画に参加してくれるという自信を持っていたのだ。
その事を聞いたエルチルゴはクーデター計画には納得はしたものの、ある一つの疑問を持っていた。
「クーデターの計画については分かりました。ですが、一つ聞きたい事があります」
「何だ?」
エルチルゴは深く息を吸い込む。
「そのクーデター計画に協力するというのは、どういう事なのですか?」
腹の奥底から不安がこみ上げてくる。あいにくエルチルゴは唯の社員であるため運動能力などは無く、戦えるような男ではなかったのだ。
「お主のカルスライン社の主力製品は航空機だが、銃火器や大砲なども限定的ながらも製造しているだろう?それを我々に譲ってほしいのだ」
「なるほど……」
エルチルゴは安心する。少なくともクーデターの直接的な実行役になる可能性は低いだろう。
オルダイカは話を続ける。
「事前に武器を流せるのであれば流してもらいたいのだが、難しいのであれば会社の兵器の保管庫の場所を教えてくれれば十分だ。クーデター当日か前日に襲撃や事故に見せかけて掻っ攫っていくつもりだ」
「分かりました。兵器保管庫の詳細などについては後日、そちらの方に伝えたいと思います」
オルダイカは満足そうな表情を浮かべる。彼は懐から1枚の紙を取り出した。
「交渉成立だ、エルチルゴ。必要ならばここに連絡を入れてくれ。もし人員や情報などが必要な時は協力する」
「ありがとうございます。今日はこの辺で失礼します」
エルチルゴはそう伝えると席を立とうとする。
「エルチルゴ、ちょっと待て」
オルダイガが呼び止める。エルチルゴが振り返ると、机の上に大きな鞄が置かれてあった。
「これは?」
「賄賂だ。もしお主が、会社の内部で必要になる時があれば使うが良い」
エルチルゴは鞄を開ける。中には大量の札束が入っていた。
「ありがとうございますオルダイカ様。幸運を祈ります」
「ああ。気をつけてな」
互いに別れを言うと、エルチルゴは急いでミルトコウモから出ていったのだった。
・・・・・・・・・・
帝都ラグナの郊外から1台の自動車が入って来る。所々渋滞している車道を避けながら、その車はある場所を目指していた。
「ミルトコウモは確かこの辺りだったか?」
しばらく走らせた後に男は呟く。彼は急にオルダイカから呼ばれたために、はるばるラグナ郊外から高級料亭ミルトコウモまでやって来る事になったのだ。
彼はオルダイカと癒着を行っている仲であった。戦争を行う事になった際に現地にて略奪によって蓄えた財で私腹を肥やしたり、その一部をオルダイカや軍内部に送る事によって、自らの部隊に装備を優先的に支給させてもらえる様にしたり、軍内部での発言力の強化などを行っていた卑劣な人物である。
「ここか」
その男は待ち合わせの場所を見つけた。彼は駐車場に車を止めると、料亭の中に入っていく。受付に自らの名を告げると部屋を案内される。
「こちらの部屋になります。それでは私の方は失礼いたします」
女将が離れていくのを確認した後、彼は部屋の中に入る。
「失礼します、オルダイカ様」
「アクニ将軍か、久しいな。とりあえず近くに座りたまえ」
アクニ将軍と言われたその男は軽く一礼をすると、近くの椅子に座る。
「アクニ将軍よ、早速だが重要な話がある。心して聞いてほしい」
そう言うとオルダイカは、エルチルゴの時と同じように2週間後に降伏が行われる事とクーデター計画について話す。
それを静かに聞いていたアクニは気難しい顔をする。
「なるほど……。2週間後までにクーデターを起こす必要がありますね」
「ああそうだ。その為にお主に協力して欲しいのだが良いだろうか?」
「喜んで協力します」
アクニはあっさりと協力する事を伝える。続いて彼は話す。
「クーデターの実行にあたっては味方が多く必要ですね。他にも協力者はいるのですか?」
「ああ、カルスライン社のエルチルゴという者に会社の兵器保管庫の場所を探してもらうように頼んである。クーデター時の武器供給の為にな。他にも、お主と知り合いのバガン大佐やイビル少佐などにもこれから協力を頼みこもうと思っていた所だ」
オルダイカの口から出て来た、バガン大佐やイビル少佐という者もアクニと同じく不正などを行っていた。
「なるほど、分かりました。バガン大佐とイビル少佐の方には私の方から伝えておきます」
「ああ、頼んだぞ」
オルダイカは傍に置いてあった鞄を手に取ると、中から紙と鉛筆をとりだして机の上に置く。
「それでクーデター計画についてだが、お主の作戦を聞かせてほしい」
アクニは鉛筆を手に取ると紙の上に帝都の大まかな地図を書いた後、少しの間考える。鉛筆が紙をなぞる音だけが聞こえていた。
短時間の沈黙の後、アクニが切り出す。
「まず最初に、私の第11師団とバガン大佐の第55連隊で帝都の主要施設を制圧したいと思います。この際にニブルズ城に居る近衛師団が抵抗すると思いますが、我が第11師団ならば近衛師団など簡単に撃破できます」
アクニは続ける。
「近衛師団を撃破した後、ニブルズ城に居る皇帝と国会議事堂にいる講和派議員らを殺害します。また、参謀本部に居る軍本部長なども殺害することによって我々は政府中枢全体に加えて、軍の中枢も掌握したいと思います」
紙の上では殺害目標として以下の人物が挙げられていた。
皇帝グラルークス
皇太子グラ・ガバル
軍本部長サンド・パスタル
帝王府長官カーツ
総理大臣ダム・サンドラス
国務大臣の全員
講和派議員の全員
その他、脅威となりえる者
「ほう……」
オルダイカはその文字を深く見つめる。いずれもクーデターを起こす際、邪魔になる人物たちであった。
「イビル少佐に関しては、帝都に居る海軍部隊を動かすために陽動として働いてもらう予定ですが、場合によっては変わるかもしれません」
イビルは海軍で潜水艦の艦長を行っており、アクニは日本軍が来たとの偽の報告で海軍部隊を全力出撃させる事を考えていたのだった。
「現在、考え付いた限りではこのようになりますが何か質問はありますでしょうか?」
アクニはオルダイカに尋ねる。
「成功する確率はどうなのだ?」
「予定通りに進めば、ほぼ確実に成功するでしょう」
アクニは断言する。オルダイカにとってそれは、とても力強く感じた。
「なるほどな。それでは、クーデター計画についてはお主に任せたぞ」
「ありがとうございます。必ず成功させます」
オルダイカとアクニの二人は不気味に笑い続けるのであった。
いかがでしたでしょうか?
書いている途中で感じたのですが、所々おかしな所や変な所があるように感じます。
再び読み返して修正していく予定ですが、予めご了承ください。
更新に関してですが、今回の様な難産が今後も続くかもしれません。
その時は、どうか暖かい目で見守ってください。