投稿が遅れてしまい申し訳ございません。
これからも投稿は続けますので、どうかよろしくお願いします。
グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 帝王府
帝王府長官であるカーツと皇太子のグラ・カバルは応接室にてある人物たちの訪問を待っていた。二人は華美な装飾が施された応接室の壁に掛かっている振り子時計を見て時間を確認する。
「もうすぐだな……」
グラ・カバルはふと独り言を放つ。二人は約束の時間まで5分を切ったあたりから落着きの無い様子で、しきりに時計の針を見て時間を確認していた。
「(ジークスとカイブの二人が用とは何かあったのか……)」
グラ・カバルはふと思い返す。
御前会議にて降伏する事を決めてから凡そ4日経った今日、ジークスから非常に重要な話があると連絡が入ったため急遽、面会が行われる事になったのだ。
その面会に関してカバルは嫌な予感を感じていた。と言うのもジークスの他に内務省の諜報機関に所属しているカイブ長官も面会に参加する事となっており、何かしらの事態が起きると予想していたからであった。
「カーツ様、グラ・カバル様。ジークス将軍とカイブ長官が到着しました」
応接室の外から職員の声が聞こえた事でカバルは現実の世界に戻される。その職員に対してカーツは大声で指示を出す。
「わかった。ここに案内しろ」
「了解、案内します」
職員の足音が遠ざかっていくのが聞こえる。これから訪れるであろう会議に向けて、カバルは心を落ち着かせるように意識する。
「(来たか……)」
複数の足音が近づいてくるのが分かった。その足音が止まるとドアをノックする音が聞こえる。
「失礼します。ジークス将軍とカイブ長官の両名を連れてきました」
「うむ、入りたまえ」
カーツがそう指示を出すと、外に居た職員はドアを開けて二人に入室するように勧める。
「失礼します」
二人はそう答えるとカーツとカバルに対して一礼を行う。
「ニブルズ城までご苦労だった。そこに座りたまえ」
カーツがそう言うと二人は近くに置いてあった椅子に腰掛ける。ちょうど二人が椅子に腰を掛けて一息着いた時を見計らい、カバルは二人に尋ねる。
「ジークス将軍とカイブ長官よ、単刀直入に聞こう。本日の重要な話とは何なのかを説明してくれたまえ」
単刀直入な質問にカイブは息を飲む。一方のジークスは動じた様子もなく答えた。
「はい。実は内務省の諜報局から入ってきた情報で降伏を阻止しようとする勢力が動き出している事が判明しました」
「何だと!」
カーツは思わず大きな声で叫ぶ。一方のグラ・カバルの方も大きな声こそ出なかったものの、顔に驚きの表情が浮かんでいるのが見えた。
続いてカイブの方が話を切り出す。
「情報局の元に入って来た情報を元に調査を開始しました。その結果、降伏を阻止するための行動を行おうとした者がいる事が判明しました」
二人の視線がカイブの方に集まる。カイブは続けて話す。
「現在判明した限りでは、帝国議会のタカ派議員の三人とそれと個人的なつながりのある人物たち二人の計五名だけです。現在、調査を進めています」
ふと疑問に思った事をカバルは尋ねる。
「具体的にどのような行動で阻止しようとしているのだ?」
「現時点で判明した限りでは議会の進行妨害程度の代物です。ただ恐らくは他にも何か計画を立てている可能性が高いです」
「ううむ。そうか……」
カバルは頭を垂れる。変わってカーツが質問をした。
「そいつらはどうするのだ?諜報局の方ではどんな対策をしているのだ?」
「現在の時点では調査の為に泳がせています。一応もしもの事態に備えて周囲に諜報員を配置しておりますので、必要に応じてその場で確保することが出来ます」
「なるほど、諜報局の方はもうすでに手を打っているという事か」
カーツは内心、不安に思いながらも納得する。本当はすぐに逮捕して欲しかったが、調査の為に泳がす事によって得られる情報を優先する事には理解を示した。
今度はカイブに代わりジークスが話し出す。
「陸軍の方からも武力を用いた行動に出た場合の対策として、帝都防衛の戦力の増強を行っています。表向きの理由としては世界連合軍からの攻撃に対処するためとしています」
ちょうどギーニ議員が陸軍省に訪れた時から帝都防衛の名目で軍を集結させていた。武力を用いたクーデターなどに対応するためだが、怪しまれないようにするために表向きは世界連合軍対策としていた。
「現在、帝都防衛の為に4個師団をこちらに向けていますが、到着までにはもう少し時間がかかります」
4個師団もの戦力を帝都に待機させていれば、いくらクーデター側が戦力を集めたとしても勝てないだろう。他にも大戦力を整えておくことにより、敵の戦意を挫く目的もあった。
「うむ、そうか。軍の方も対策をおこなっておるのだな」
「はい。必要に応じてこれからも更なる対策を取る予定です」
ただ、これらはあくまでいざという時の備えである。実際に武力を用いたクーデターが起きる可能性が高くなった時は、更なる戦力増強も視野に入れていた。
ジークスはカバルの方に向く。
「カバル様に進言いたしたいことがあります」
「何だ?」
カバルは真剣な表情で尋ねる。その表情には若干の不安も浮いていた、
「もしもの時に備えて陸軍省の方から退避用の別荘を用意しています。もし貴方の身に危険が迫った時、そこに移動していただきたいと思っています」
カバルはカーツと顔を合わす。
「う、うむ。そうか……」
若干とまどっているカバルに対してカーツは真剣な表情で頷く。もしもの時が来た場合は陸軍省の用意した別荘に避難する事に理解を示すのだった。
「カバル様、もしもの時には移動していただきますが良いでしょうか?」
ジークスは確認を取る。カバルはカーツに助言を求めた。
「カーツよ、個人的には皇族である以上、いかなる時にも留まる責務があると思うがどうだろうか?」
「いえカバル様、貴方は帝国の未来を担う重要な存在です。もしも貴方の身に何か起きては取り返しがつきません。例え帝都から避難する事となったとしても、決して恥ではありません!」
もしもの時に身を守るために避難する事は恥ではないとカーツは力説する。
「その通りです、カバル様。必要な時には逃げる事も大切なのです!」
ジークスも同じように力説する。カイブに関しては特には言わなかったものの、首を縦に振っている事から、同意見である事には変わりは無かった。
「……わかった。もし、その時が来たならば避難しようと思う」
カバルは三人の意見に応じた。以前ならば絶対に自身の信念を曲げずに帝都に留まると言って譲らなかっただろう。
しかし現在は違った。必ずしも自分の考えが正しいとは限らないし、日本にて周りや他人の意見を聞く事への大切さを教わった事が主な要因だった。
「ご決断、ありがとうございます」
ジークスとカーツは頭を下げる。彼らはカバルが助言を受け入れてくれた事に、心底安心したのだった。
その後も面会は続く。彼らが面会を終えた頃には昼が過ぎていた。
・・・・・・・・・・
グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 国会議事堂前
「ジェント先輩、ターゲットが動き出しました」
国会議事堂前に停車していた一台の車の中に一人の男が話す。車内には二人の男が乗っており、ジェントと言われたもう一人の男が答える。
「よし。パイス、追跡するぞ」
その男は煙草を灰皿に押し付けて消すと、ハンドルを握り車のアクセルを踏む。
「ジェント先輩、あの黒い車です」
「了解、しっかり見張っていろよ」
ターゲットの乗った車を確認したジェントは例の車を追跡し始めた。灰色の車はゆっくりと気づかれない様に動く。
「パイスよ、奴らは何をするつもりだと思う?」
黒い車を追いながらジェントは尋ねる。パイスは少し考えた後に答えた。
「良からぬことをするのではないでしょうか?我々の想像を超えた何かをすると思います」
余りにも抽象的で具体性の欠片もない答えにジェントは吹き出しそうになる。
「そらそうだろうよ。そうでなければ俺たちが出動する事なんてないのだからな」
ターゲットの乗った黒い車は右に曲がる。それに合わせて灰色の車も右へと曲がっていく。
車は右へ左へと曲がり続け、信号が赤になるに合わせて停車し、青になるたびに発進するを繰り返す。相手に気づかれない様に何台もの車を間に挟んだり、時には別の道を通って再び尾行を再開するなどの方法で巧妙に追跡を続ける。
「ターゲットの車、こちらに気づいた様子はありません」
「間違いないな。俺の運転技術の高さの賜物さ」
ジェントは自画自賛をする。相手の車はこちらに気づいてはいないようであった。
15分ほど運転を続けて、二台は帝都の外に出ようとしていた。
「先輩、もうすぐ帝都を出ます」
「ああ、わかっている。それよりもパイスよ、奴らの本拠地は帝都郊外ではなかったよな?」
ジェントはここに来て本格的に警戒を深めていく。ターゲットとなる国会議員の政党の本拠地は帝都内にしか存在しなかったはずであり、郊外に出ていくことに対して違和感を感じていたのだ。
「ええ、奴らの本拠地は帝都内にしかありませんね」
ターゲットとなる議員についてのファイルを読みながらパイスは答える。ジェントは自身の持っている違和感が確信に変わった。
「パイスよ、ここから先は一切気を抜くなよ。それと念の為に道具の準備も進めておけよ」
「了解」
そういうとパイスは懐から拳銃を取り出し、マガジンを引き抜き残弾を確認する。残弾の確認を終えると幾つかの動作確認を行い問題が無い事を確かめた後、その拳銃を再び懐の中に入れた。
「道具に異常ありません」
「そうか。俺の道具も確認してくれ」
ジェントも同じように拳銃を取り出すとパイスに渡して、残弾確認と動作確認をしてもらう。
「異常ありませんでした。問題なく使えます」
「どうも」
本人には自覚は無いのだろうが若干嫌味っぽく聞こえる。彼は自身の所有する年季の入った拳銃を返してもらうと、懐にしまい運転に集中する。
二人の乗った車はついに帝都から出た。ターゲットの乗った黒い車は相変わらず進み続けるのであった。
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「先輩、もうすぐで10分経ちます」
パイスは腕時計を眺める。郊外に出てから10分ほど経ったことを伝えると、ジェントは顔を歪める。
「長いな……。一体奴らはどこまで行くつもりなんだ」
彼は率直に愚痴をつぶやく。ターゲットの車は右へ曲がると、ジェントはハンドルを右に切った。
車が溢れて渋滞を時々起こす帝都と違い、帝都郊外では渋滞は余り起きてはいなかった。その為、二台はスムーズに車を走らせることが出来た。
しばらく愚痴と共に車を走らせていると、ターゲットの車は別荘と思われる建物の中に入り、停車したのが見えた。
「先輩、ターゲットが停車しました」
「ああ」
相手から気づかれない位置にジェント達は車を停車させる。停車した後、二人は窓からターゲットたちを観察を始める。
「先輩、あのあたりは要人たちの別荘がよくある事で有名な場所ですね」
「ああ、そうだな」
ちょうどあのあたりは、各種要人たちが別荘を建てている事で有名な場所であった。その事は二人も知っていたのだ。
そんな会話を行っていると、黒い車の中から三人の男が降りてくるのが見えた。その三人こそ、ジェントとパイスが追跡を命じられたターゲットなのであった。
その三人の姿を見るや否や、パイスはカメラを取り出して彼らを撮影した。
「パイス、あれを見ろ」
ジェントは別荘に近づいてくるもう一台の黒い車を指さす。その車は別荘の庭に駐車すると、中から一人の男が降りて来た。
「あの男も撮影しろ」
「はい」
パイスはその男の顔も撮影する。その男は特に気づいた様子もなく、建物の中に入っていった。
「先輩、あの男について何か知っていますか?」
「いや、わからないな。だが服装から察するに軍の人間だろう」
男が誰であるかは判らなかった。しかしその男は軍服を着ており、装飾などから階級の高い人物であることは判った。
「先輩、思わぬ収穫が得られましたね」
「ああ、そうだな」
二人は車の中でそう呟いたのであった。
いかがでしたでしょうか?
以前から相変わらず、投稿は遅れるかもしれませんがご了承ください。
もうしばらく投稿は続きますので、ぜひ最終話までご付き合いください。
誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。