日本国召喚 皇帝暗殺計画   作:文月之筆

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読者の皆様、作者の文月之筆です。

ここ最近、色々と大変な事があり更新が遅れそうになったりしましたが、今後も更新は続けていきたいと思います。


第6話

「パイス、準備はできたか?」

「はい、大丈夫です。先輩」

ターゲット三人と軍人らしき人物一人が入った別荘らしき建物に対して、ジェントとパイスの二人は偵察する事を決意した。

「よし、それでは行くぞ」

近場に駐車した灰色の車から二人は降りる。彼らは最初に周りに人目が無い事を確認した後、足音を立てることなく例の建物に向かって歩き始める。

ターゲットたちのいる建物は典型的なレンガ造りの家と言える外観をしていた。全体的には質素な外観ではあるものの、その建物の外側全体を覆う緑の庭とのコントラストによって美しさが醸し出されていた。

二人はレンガ造りの建物へとゆっくりと近づく。

「庭の辺りには見張りや番犬などはいないな」

ジェントは庭の周囲を見渡して、番犬や見張りとなる人物がいない事を確認する。一方のパイスは庭への正門以外の侵入口を確認していた。

「パイス、どこか入れそうか?」

「いえ、見当たりませんね」

庭全体を覆う柵を眺めながら答える。入り口の部分以外は黒色の柵に囲まれているようだった。

「先輩、正面以外からは入れそうにないですね」

パイスは首を横に振る。正面以外からは入れそうには無かった。

「少し待て。……あそこからならば入れるのでは無いか?」

ジェントはある場所を指さす。そこは柵の近くにゴミ箱が設置されていおり、柵を超えた反対側には低木が生えていた。

「なるほど。これは好都合ですね」

「ああ、実に運がいいな」

ゴミ箱を踏み台にした後、低木をクッションにすれば柵を簡単に乗り越えられるだろう。そう考えた二人は早速その場所にまで移動する。

「周辺に人影無し」

ゴミ箱の傍に着いた後、パイスは建物の窓や周辺に人影が無い事を確認する。

「よし、行くぞ」

ジェントはまず最初に自分がゴミ箱の上に登ると、そそくさと低木をクッションにして地面におりる。続いてパイスが同じようにゴミ箱の上に登った後に、低木をクッションにして地面に着地した。

「パイス、来い」

ジェントは小さな声でパイスを呼ぶと、足早に近くの木の生えた花壇の元にまで移動すると、二人はその木の元にしゃがみ込んで身を隠す。

「人影は見えません。こちらには気づいていないようです」

「ああ、そのようだな」

パイスは建物の窓を注意深く観察して報告する。ジェントもパイスと同じように窓の方を見ていたが、確認していたのは窓の配置であった。

「パイス、お前は人影が無いか監視しろ。俺はどこか遮蔽物を探す」

「了解」

ジェントは建物の窓から見えない位置にある遮蔽物を探す。左右に顔を向けて、辺り一面を見渡した。

「(若干遠回りになるが、右の方に行くか……)」

自分たちがいる場所から左側は遮蔽物が少ないものの、建物までの道のりは短い。一方の右側には倉庫らしき小さな小屋があり、その先には多くの遮蔽物となりえる花壇などが見えた。

「いいか?左は建物までは近いが遮蔽物が少ない。右は少し遠回りだが小屋などの遮蔽物が多くあるから、そちらに回る」

「了解、何処まで移動しますか?」

「小屋の所まで移動する。人影は見えないな?」

「はい、人影は見えません」

二人は建物の窓と周囲に人影が無い事を確認する。ジェントは人影が無い事を確認した後、パイスの肩を叩いて立ち上がった。

「行け、行け」

小屋に向かうジェントの後にパイスが続く。少し走った後、小屋に到着した二人は小屋の壁に背をつける。

「先輩、どうしますか?」

パイスが尋ねる。ジェントの方は周囲を確認しようとした時、ある事に気づく。

「パイス、あそこを見ろ」

パイスはジェントが指さす方向を見る。そこには窓があり、カーテンがかかっているものの下の方からは人の足が見えていた。

「四人分の足が見えるから全員があの部屋にいるのは確実だ。あの近くにまで行くぞ」

「了解しました。行きましょう」

ジェントはゆっくりと窓の傍を目指して歩き出す。気づかれる可能性は低いが一応、途中にあった花壇の傍に身を隠しながら少しづつ近づいていく。

ぞろぞろと近づいていった彼ら二人はついに建物の壁にまでたどり着いた。

「足音を立てない様に気をつけろよ」

かすかな風の音でかき消される程の小さな声で話す。ジェントはゆっくりとカーテンのかかっている窓の元へ近づいていく。

「(気づかれていない様だな)」

足元が同じ場所から動いていない事を確認したジェントは安心する。続いて振り返り、パイスの方に向く。

「奴らはこっちには気づいていないようだ」

そう言うと彼は手で来いと合図する。その合図に従い、パイスはゆっくりと窓の傍にまで近づいた。

そろりそろりと足音を立てないように二人は近づいていく。窓の傍に着いた二人はしゃがみこんで中の様子をうかがってみた。

「うむ……」

隣にいたパイスにも聞こえないほど小さな声で唸る。四人は丸いテーブルを囲うように座っており、何か話しているようであった。

「先輩、あれが例の軍人ですね」

パイスが四人の中で唯一異なる足元を指さして話す。二人であれば、その服装が軍服であることが容易に判断できた。

ジェントは返事をせずに頷く。彼はパイスに動かない様にとハンドサインを出した後、窓に耳を当ててみる。

「(何か聞こえるな)」

窓の向こうから小さいながらも声が聞こえて来た。彼は深く集中してそれを聞き取ろうとする。

「……それではクーデター計画について話し合いましょうか」

「ッ!?」

雷に打たれたような強い衝撃に襲われる。ジェントはパイスの方に向かうと、手招きして聞くように促した。

「パイス、絶対に聞き逃すなよ」

ジェントの小さいながらも力強い口調にパイスは会話の内容の重大さを直感的に予想した。彼は一呼吸をし、気を引き締めてからカーテンのかかった窓に耳を強く当てた。

 

・・・・・・・・・・

 

帝都郊外にあるアクニの邸宅の中には四人の男たちが居た。広い居間の中で彼らは丸い机を囲う様に集まり、皆で話し合いをしていた。

「エヴィン議員殿、そちらの方は上手く行っていますかな?」

「ええ、ささやかながらも会議進行の妨害はできていますよ」

アクニは薄気味悪い表情をしながらエヴィンの話を聞いている。他の二人の議員はアクニが淹れたコーヒーを飲んでいた。

「予定ではあと五日で計画を実行することになる。それまでの間、君たちには頑張ってもらおう」

彼らはクーデターの実行を御前会議の九日後としていた。その御前会議から四日過ぎた今、五日後にはクーデターを引き起こされる事となっていた。

時間としては非常に短い期間でこそあったが、現時点で多くの準備が整っていた。これ程の短い期間でここまで準備が整えられたのは、計画を主導したアクニ将軍と多数の協力者のお陰であるのは言うまでもない。

「わかりました。それまで我々の方でも頑張っていきます」

降伏まで二週間ほど時間があるものの、予定よりも早く降伏する事が無いようにするため、彼らは国会における降伏会議の妨害を行っていた。

なぜならばタカ派議員の約半数がトップのギーニ議員に同調しているため、会議の進行は普段以上にスムーズに進んでしまっていたのだ。そのため、その会議の妨害役として彼らの存在はクーデターを成功させる上でとても重要だったのだ。

「しかし、五日後は長く感じられますな」

コーヒーを啜っていたベームが話す。その発言にソムは頷き、エヴィンは苦笑する。ただ単に時間的な長さの事ではない事に気づいたアクニは尋ねる。

「どういう事かね、それは?」

「私たちの妨害活動に賛同してくれるタカ派議員がいるのです。しかし、ギーニ議員の説得活動が激しくて、その数を減らしつつあるのですよ」

他にもクーデター計画には参加していないものの、エヴィン達の妨害活動である降伏反対に賛同してくれるタカ派議員も彼らには重要な存在であった。しかし彼らはギーニの説得によって勢力を減らしつつあった。

その事を聞いたアクニは納得した表情を浮かべる。

「なるほど。それは大変ですね」

その後も四人の話は続くのであった。

 

・・・・・・・・・・

 

「パイス、帰るぞ」

窓から耳を離したジェントがパイスの頭を軽く叩く。ターゲットの話している内容を聞くことに集中していたパイスは、はっと我に返る。

「行くぞ」

そう言うとジェントは立ち上がり音を立てない様に歩き出す。二人のスパイは再びこの邸宅内から脱出するために移動を開始した。

まず最初に自身の足音と周囲に気をつけながら低木の元へと走り出す。移動中は身を隠す必要性が無かったことから、侵入する時よりも早く移動できた。

「(危険を冒してでも侵入した甲斐があったな)」

移動中にジェントはふと思った。このチャンスを逃したら五日後に行われるクーデターの情報を掴めなかったかもしれない。

そんな事を考えている内に二人は低木の元までたどり着いた。

「行くぞ」

パイスがついてきている事を確認した後、ジェントは低木を登ったあと柵を超えて、ゴミ箱の上に移り地面におりた。パイスも遅れて同じようにゴミ箱の上から地面におりる。

「来い」

「わかりました」

二人は再び周囲を確認すると車を駐車している場所まで急いで走る。しばらく走ると車の元にまでたどり着いた。

「周囲に人影はありません」

「わかった。それじゃあ、出すぞ」

発進前の確認を行った後、二人の乗った灰色の車は急いでその場から離れていく。例の建物の姿が見えなくなった後、パイスは話し出した。

「予想以上に重大な事が起きていましたね」

くたびれた様子のパイスが話す。一方のジェントはまだまだ元気がある様子だった。

「ああ、すぐに上に報告しないとな」

ジェントは車のハンドルを握りながら話す。これ程の重大な情報を握れたことに彼はとても満足していた。

「パイス、お前は今の内にメモをまとめておいてくれ。忘れる事は無いだろうが念の為にな」

「わかりました」

パイスはメモ帳と鉛筆を取り出すと、今日の出来事を記載し始めた。彼は簡潔で分かりやすい様に箇条書きで書いていく。

次々と書き上げていくその様子をジェントは横目で見ながら今日の事をふと振り返る。

「(今回の偵察でクーデター計画が凡そ判明したが、今回の四人以外にもまだまだいるはずだ)」

ジェントは他にも協力者が存在すると考えていた。少なくともこれ程の大物たちが集まって計画を立てている以上、この程度で済むとは考えていなかった。だがしかし残念ながらも、これらは憶測の域を出ない話である。彼らの会話の中には協力者の存在を暗示する発言は聞こえなかったからだ。

「(まあ、捕まえて吐かせれば良いだろうな)」

彼は結論を下す。存在のはっきりとしない物を一人で考えるよりも、直接捕まえて尋問した方が確実であり、なおかつ手っ取り早いと判断したからである。

しかしながらも不確定要素である協力者の存在は気になるものであった。気にしない様にしたかったものの、それが頭から離れなかったことから彼はパイスに尋ねた。

「なあパイスよ。あいつらに協力者はいると思うか?」

「証拠はありませんが、個人的には存在すると思いますよ」

特に気にした様子を見せずにパイスは答える。

「ああ、そうだな。俺も存在すると思うが、気にはならないのか?」

「そんなに気になりません。直接捕まえて吐かせれば、すぐに判明するでしょうから」

メモを書き終えたのかパイスはメモ帳を服のポケットの中に収める。やはり彼も自分と同じことを考えているようであった。

「それもそうだよな。よし、上に捕まえてもらう様に提案しよう」

ジェントはそう呟くと車のアクセルを強く踏み込む。

真っ赤になった夕焼けを背景に、二人の乗った灰色の車は無事に内務省情報局の建物の元にまで着いたのであった。

 




いかがでしたでしょうか?

ジェントとパイス達がクーデター計画を察知したため、本格的にクーデター計画の崩壊がこれから始まっていくと思います。
これから先、物語が本格的に動き出す予定です。
ぜひともご期待ください。

誤字報告を行ってくださりました、
ぴょんすけうさぎ 様
アドミラル1907 様
にしなさとる 様
この場を借りてお礼申し上げます。
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