日本国召喚 皇帝暗殺計画   作:文月之筆

8 / 10
読者の皆様、作者の文月之筆です。

色々な私事情とスランプの二つにより大幅に更新が遅れました。
誠に申し訳ございません。

次回はできるだけ早く更新できるように頑張ります。


第8話

グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 内務省情報局

 

容疑者四人の逮捕作戦が行われてから少しばかり経った昼の終わり頃、会議室では再び重大な会議が開かれる事となった。

「まず最初に報告です」

会議室にいたジークス、カイブ、エスピオの三人らの前でパイスが話す。全員の表情は暗く、パイスの声色はさらに暗かった。

「逮捕作戦の結果としてターゲットの四人の死亡と諜報員四人が負傷しました。また他にも、共犯者の存在が確認できる証拠品などは見つかりませんでした」

全員が頭を抱える。共犯者が存在しなかった可能性も十分あるのだが、共犯者の存在を証明できるターゲット四人が死亡したために証明が出来なくなってしまった。

「四人も負傷者を出した挙句、ターゲットを一人も確保できず誠に申し訳ございません」

パイスは深く頭を下げる。その様子を見たカイブは首を横に振る。

「気にするな。こればかりはこっちの落ち度による失敗だ。君たちの失敗ではない」

カイブはアクニの経歴を思い返す。逮捕作戦後に手に入った資料の中でアクニ将軍は過去に射撃などの大会に参加した事があるなどの経歴があった。

その実力は明らかであった。彼らを拘束しようとした諜報員二名が撃たれて負傷し、ターゲット四人に危うく逃げられるところであった事からもそれを証明できるだろう。

それ故にアクニを倒し、三人の議員の逃亡を阻止する事に成功したパイスを怒ったりする者は居なかった。良い結果では無かったものの、もしも彼がいなければクーデターの中心人物たちを逃がすという最悪の結果で終わる事となっていただろう。

カイブが思考の世界に入っている間に、ジークスはパイスに尋ねる。

「ところで君に一つ聞きたいことがある」

「何でしょうか?」

パイスは顔を上げる。

「君の相棒はどうしたのかね?」

「ジェント先輩は逃走した議員を追う過程で足に割れたガラスが刺さった為に、現在は病院で治療を受けています」

「そうか……」

ジークスの質問が終わったころを見計らい、エスピオは止まっていた会議を元に戻そうと話を切り出した。

「最初の話はここまでとして、次の話をしましょう」

「うむ、それもそうですね。それでこれから情報局の方では、どのような事をするのでしょうか?」

二人が新しく話を切り出した所でカイブは思考の世界から元に戻る。

「はい。情報局の今後の方針について話していきたいと思います」

カイブは気を取り直して話を始めた。

「まず最初に、現場の徹底検証と怪しいと考えられる全ての組織と人物の調査を行っていきたいと思います」

ジークスは首を縦に振る。効率は悪いだろうが、証拠がない中で敵を見つけ出すためにはこうするしかない。

「なるほど。それで怪しいとされる組織や人物に関する詳細はありますでしょうか?」

「はい、少しばかりお待ちください」

そう言うとカイブは資料を取り出してジークスの元に渡す。

「これらが怪しいと考えられる組織や人物です」

「多いですね……。果たして協力者は何人いることやら」

ある程度は整理されて見やすくはなっているものの、圧倒的な数にジークスは頭を抱える。その様子を見たカイブは苦笑しながらも話を続けた。

「恐らく大部分は無関係でしょうね。その中から見つけ出すのは至難の業でしょうが、最大限努力したいと思います」

カイブは何とも言えない表情を浮かべる。そして、エスピオとパイスはその資料を見て思わず天を仰ぐのであった。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス帝国 帝都郊外 オルダイカの邸宅

 

帝都郊外にあるオルダイカの邸宅では五人の男たちが集まっていた。そしてその五人の表情はいずれも暗く、焦りの表情を浮かべても居た。

「アクニ将軍とエヴィン、ベム、ソーム議員の四人がやられたのか……」

五人の内の一人であるオルダイカは険しい表情を浮かべる。

「はい。恐らくはクーデター計画の件に関してでしょう」

同席していたバガン大佐も同じように、険しい表情を浮かべながら話す。同時に彼の声色には焦りが感じられた。

その理由として、内務省情報局にクーデター計画がバレたのが大きな要因であるだろう。四人がアクニの邸宅に居る時に情報局がガサ入れを行おうとした事からも、それは明らかであった。

「バガン殿、イビル殿。クーデター計画は成功するのでしょうか?」

不安そうな顔でエルチルゴが尋ねる。

「何とも言えませんね。情報局の連中がどれだけクーデター計画と参加者について把握しているかによります」

イビルは顎を手でさすりながら答える。彼の懸念はクーデター計画と参加者がどれほど把握されたかであった。

「もしも情報局が全員の参加者を把握しているとした場合、間違いなく失敗するでしょう。しかしながらも情報局の行動を見るに恐らくは誰一人把握できていない可能性が高いです」

全員が驚いた表情でイビルの方に向く。

「それは本当なのか!?」

オルダイカは興奮した様子で尋ねる。イビルはそれを手で制しながら話し出す。

「恐らく本当だと思います。確認の為に独自にスパイを放ったのですが、相手は怪しいと思った組織や人物をしらみつぶしに調べているそうです」

イビルは用意されたコーヒーを一口ほど口に運んだ後、話を再開する。

「それに、ちょうど情報局によるガサ入れが行われる前日にアクニ将軍の邸宅から、クーデターの詳細な計画書や参加者名簿などを回収していました。ですので現場から私たちの情報やクーデターの作戦が洩れる事は無いでしょう」

イビルは窓から外を見る。

「これらの行動からも相手は私たちには気づいていないでしょう。それに仮に私たちを把握しているならば、何故私たちの方にもガサ入れが行われないのでしょうか?」

イビルは全員に問う。その問いにバガンは気づいた。

「もしも私たちがクーデター計画に参加している事に気づいているのであれば、今頃は私たち全員が死んでいるか、取り調べを受けているでしょう。わざと泳がせる理由などありませんからね」

全員が納得する。もしも同時にガサ入れをしなければ、相手に気づかれて逃亡されるだろう。そのために自分たちの方にガサ入れが入らなかったという事は情報局は自分たちがクーデターに参加していると気づいていないという事の証明であった。

全員が安息する。しかしイビルは険しい表情を変えなかった。

「なるほどな……。我々がクーデター計画に参加している事には気づかれていないのだな」

「そうです。ですが喜ばしい事ではありません」

イビルの言葉に再び全員が表情を硬くする。

「クーデター計画の存在自体は判明した以上、相手の警備が大幅に強化されるでしょう。そうなれば四日後のクーデター計画が成功する可能性は低くなります」

イビルはバガンの方を見る。

「バガン大佐、貴方の第55連隊で帝都にある近衛師団を排除する事は可能でしょうか?」

「なかなか難しいだろうが、恐らくは可能だろう。幸いにも近衛師団は各地に分散しているから数が少ないし、我々の連隊は良い装備も多数備えた精鋭ぞろいだから負ける事は無いだろう」

「ええ、そうでしょうね。しかし四個師団が相手ならばどうでしょう?」

「なにっ!?」

バガンは大きな声をあげ、周りを驚かせる。

「スパイの報告によれば二、三日後に帝都に四個師団が到着するそうです。これではバガン大佐が率いる第55連隊をもってしても勝ち目が無いのは明らかです」

全員が息を飲む。本来のクーデター開始は九日目である。しかしそれよりも先に四個師団が到着すると知り、全員がクーデター失敗の恐怖に慄いた。

「どっ、どうすればいいんだ!?四個師団が相手ならばアクニ将軍の第11師団でも厳しいのだぞ!ましてや一個連隊と民兵程度では歯が立たないじゃないか!」

オルダイカはまくしたてるように話す。イビルとバガンの二人は慌てて彼を落ち着かせようとする。

「落ち着いてくださいオルダイカ様!クーデター計画を先倒しにすればいいのです!」

オルダイカの声を遮るほどの大声でイビルは叫ぶ。その声を聞いたオルダイカは一瞬、息を止めたのち落ち着いて息を吐いた。

「すまないな。……それで、その計画を先倒しにするというのはどういう事だ?」

今度はイビルに変わりバガンが話し出す。

「簡単です。クーデターの実行日を二日後にするのです。幸いにも準備は大体整っているので二日後に前倒ししても問題はありません」

本来のクーデター計画が四日後になった理由は、主力を務めるアクニ将軍の第11師団の準備に時間がかかった為だ。すなわちアクニ将軍の亡き今、クーデター計画を実行するまでに、そこまでの時間は不要になったのだ。

「うむ、それでいくつか聞きたいことがあるがいいか?」

「何でしょうか?」

オルダイカはエルチルゴともう一人の男の方を向いた。

「武器調達のエルチルゴと退役軍人会のレジオはどうするのだ?」

例の退役軍人会のメンバーの一員であるレジオが、本来出席する予定のネイア会長に代わって出席していた。その彼は少しばかり緊張した表情で周りを見渡した。

イビルが話始める。

「退役軍人会の方は二日後に行われるクーデター計画の際に、帝都攻略と後方かく乱を行ってもらいたいと思います」

「後方かく乱とは、何をするのですか?」

「具体的に言えば、帝都に向かう増援師団の乗った列車を脱線させたり爆破するなどの方法で帝都に到着するのを食い止めてもらいたいです。それならば可能でしょう」

レジオは頷いた。

「その程度ならば可能でしょう。この事はネイア会長に伝えておきたいと思います」

イビルはエルチルゴの方を見て話した。

「エルチルゴ殿、退役軍人会の武器調達の準備はできていますね?」

「はい。ちょうどカルスライン社から武器の一部と武器の保管場所を特定しました。退役軍人会の方から申し入れがあればいつでも大丈夫です」

エルチルゴは自信のある表情で答える。その様子を見たレジオは満足そうな表情を浮かべていた。

「ありがとうございます、エルチルゴ殿。そしてイビル少佐、必ず後方かく乱作戦を成功させます」

「任せましたよ」

そう言うとイビルはオルダイカの方に向く。

「オルダイカ様、クーデター計画を成功させるためにも作戦の前倒しと作戦の一部変更を認めて貰いたいと思いますがよろしいでしょうか?」

オルダイカは頷く。このままアクニ将軍の立案したクーデター作戦を行ったとしても成功しないのは明らかであった。そのため軍事について素人の彼でも、成功するためには作戦の変更が必要である事は理解していた。

「わかった。バガン大佐とイビル少佐の二人に作戦変更をまかせるとしよう。皆はそれで良いか?」

オルダイカが周りを見回すと全員が首を縦に振っていた。

「よし、それではバガン大佐とイビル少佐の両名にはクーデター計画の再編と準備を任せる事にする」

「わかりました。成功させるためにも頑張ります」

バガンとイビルの両名がオルダイカに深く頭を下げる。その二人の姿を見たオルダイカは口元に笑みが浮かぶ。

その後も夜が来るまでの間、五人の男達のクーデター計画の会議は続いていくのであった。




いかがでしたでしょうか?

更新が遅れてしまい誠に申し訳ありません。次回はより早く投稿できるように頑張っていきます。
これからも完結できるように更新を続けますので、これからもよろしくお願いします。

誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ 様
にしなさとる 様
この場を借りてお礼申し上げます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。