少しばかり投稿が遅れてしまい、誠に申し訳ございません。
もうすぐで物語はクライマックスを迎えますので、どうか気長にお待ちください。
グラ・バルカス帝国 帝都郊外 兵器保管庫
グラ・バルカス帝国の航空業界において最も優れているとされるカルスライン社。その同社が有する帝都郊外にある兵器保管庫の近くには多数の男とトラックが集結していた。
兵器保管庫が存在している場所は山岳部の近くであり、帝都郊外の中でも最も地価が低く人気のない土地であった。
近くには住宅が存在せず、ただただ兵器が保管されている倉庫が存在するだけである。そんな場所で今、ある事が起きようとしていた。
「エルチルゴ殿、あれが例の兵器保管庫ですか?」
「はい、そうですね。あそこが弊社が有する兵器保管庫です」
トラックの車内ではエルチルゴとネイアの二人が話し合っていた。
「今更ですが、本当に大丈夫なのですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。周囲は人気が無い上に警備は手薄です。これ程の人数が存在すれば、すぐに制圧できるでしょう」
若干不安そうな表情を浮かべるネイアに対して、エルチルゴは自信のある表情で答える。二人の乗ったトラックの近くには多数の銃を持った男達が待機していた。
現在、彼らはカルスライン社の兵器保管庫を襲撃する準備をしていた。クーデター作戦を実行するにあたって、帝都を襲撃する第55連隊の支援を行うための部隊を編成するにあたって武器を必要としていたのだ。
「ネイア様、準備は完了しました。いつでも作戦を開始できます」
「うむ、それでは作戦開始だ。やってくれ」
「わかりました。それでは作戦を開始します」
ネイアに尋ねた男は二人の乗ったトラックを後にして、多数の男と共に兵器保管庫のある方向へと歩き出す。ネイアは彼らの背中を見送りながら、作戦の事を想い出す。
ネイアとエルチルゴが立てた作戦では、外で立っている警備員と保管庫の近くにある小さな社宅を同時に襲撃して短時間で制圧する計画を立てていた。社内でも一部の人間にしか知られていない例の兵器保管庫の警備は緩く、50人ほどの退役軍人でも制圧するくとは容易いとエルチルゴは話していた。
「エルチルゴ殿、やはり私は不安で仕方ありません。どうすればよいのでしょうかね……」
「それでは一服どうでしょうか?」
そう言うとエルチルゴは煙草を一本をネイアに差し出す。ネイアは感謝の言葉を口にした後、それを手に取り一服するのであった。
・・・・・・・・・・
「レジオ隊長、やりますか?」
襲撃部隊の隊長となったレジオの元に部下の男が尋ねる。レジオはその男の方に向いて話した。
「まだだ。社宅組の連中が遅れている」
彼は社宅を襲撃する部隊の方に目を向ける。彼らの部隊は凹凸の激しい地面に悪戦苦闘しながら進んでいた。
大きな岩から顔を出しているレジオは兵器保管庫の方を見ていた。外には木箱に座っている警備員が二人いるのが見える。銃は二人の後ろの壁に立てられて置かれていた。
「(油断しているな……。これならばすぐに仕留められそうだな)」
彼は、任せられた任務が予想以上に簡単に終わりそうだと感じた。事前の情報では合計で八人が警備しているとの事であった。入り口付近に二名がいるという事は、社宅には六名がいるのだろう。
彼がそう考えている内に、社宅を襲撃する部隊はついに社宅の前まで来ていた。
「よし、全員準備はいいな?」
社宅を襲撃する部隊の一人がこちらに手を振っているのが見えた。レジオは全員が準備を済ませている事を確認すると、事前に打ち合わせた通りに銃を構えた。
レジオは小銃の安全装置を解除して薬室に弾薬を装填すると、最初に欠伸をしている男に照準を合わせる。
「(照準よし……)」
男の胸に照準を合わせると、小銃の引き金を強く引いた。
ズドン!
彼が放った7.7mmの小銃弾は照準に捉えた男の胸に命中し、男はのけ反るように倒れる。男の胸から飛び散った赤い血液が建物の壁に付着した。
「撃てぇ!」
レジオ以外の誰かが叫ぶと同時に、三人が一斉に残りの警備員に対して発砲する。撃たれた男は、横に転ぶように倒れこんだ。
「やったぞ!」
レジオが叫ぶと同時に社宅の方から多数の銃声が聞こえた。それと同時に複数の叫び声が聞こえる。
「お前ら、行くぞ!」
レジオは先陣を切って走り出し、彼の後ろを三人が続く。彼らが兵器保管庫前に到着する頃には銃声は止んでいた。
「レジオ隊長、こいつまだ生きていますよ」
撃たれた警備員の一人が呻き声をあげていた。彼は赤黒く染まった腹を手で押さえて、わなわなと震えていた。
「殺れ」
レジオが命じると同時に、近くに居た一人が倒れていた警備員に対して小銃を撃つ。頭を撃たれた警備員は絶命し動かなくなる。
「社宅組も制圧した頃か……」
社宅の方から多数の男達が現れる。その男達は銃を高く掲げると、レジオ達がいる兵器保管庫の方に向かってくる。
「レジオ隊長、社宅の方の制圧が終わりました。こちらに被害はありません」
「わかった。それでは誰か一人をネイア会長の方に送って作戦成功を伝えよ」
「わかりました。それでは失礼します」
一人が立ち去るのを見送った後、レジオは警備員の一人が持っていた鍵を使って保管庫の鍵を開ける。
「入るぞ」
レジオを先頭にして彼らは兵器保管庫の中に足早に入っていく。
「これはすごい……」
「大漁だな」
誰かが呟く。小さな兵器保管庫の中には、彼らが予想していた以上の量の小銃や機関銃などの武器が保管されていた。
全員が中を見回す。上以外はすべて武器で満ちており、これだけの数があれば大隊クラスの部隊を構成することができるだろう。
「よし。全員、中にある武器を外に持ち出すぞ」
「了解」
「それでは最初に小銃を運び出すぞ。一列に並べ」
レジオたちは近くに置いてある小銃を手に取ると、バケツリレーの要領で外へと運び出す。最後尾にいた人間は到着したトラックに小銃を載せてゆく。
「よし、次は機関銃だ。今度は三人で運び出すぞ」
小銃を運び終えると、次は機関銃を運び出すことにした。彼らは三人組を作ると中に置いてあった機関銃を手に取り、ゆっくりと運び出す。
使える機関銃を運び出した彼らは、他にも弾薬や銃剣などの武器も彼らは運び出す。おおよそ一時間ほどした後、兵器保管庫の中にあった武器はすべてなくなっていた。
「レジオ隊長、撤収しましょう」
「ああ、そうだな」
置かれていた武器が無くなり広々とした兵器保管庫の中をレジオは見回す。彼は満足したような表情を浮かべると、兵器保管庫を後にした。
・・・・・・・・・・
グラ・バルカス帝国 東部海域
帝都ラグナから東方向の海域に一隻の潜水艦が航行していた。澄んだ青い海の上を航行するその潜水艦の特徴として、潜水艦としては大きな主砲を搭載し、飛行機を収納するための格納庫が司令塔の隣に存在していた。
その潜水艦の名はイビル少佐が乗るシーダス級潜水艦のバテン・カイトスである。
グラ・バスカス帝国が誇るその潜水艦の司令塔には五人の男が双眼鏡を使い周囲を確認していた。
「イビル艦長、周囲に艦船などは見えません」
「それはいい事ですね」
部下からの報告に対して、艦長であるイビルは素っ気ない様子で答える。だが彼は内心では深くため息をついていた。
「(なんとか間に合いましたね。このまま予定の時刻まで船が見えなければなおのこと良いのですがね……)」
彼は帝都防衛艦隊を帝都から引きはがすための陽動任務を任されていた。その任務を達成するにあたって、急いで予定の海域に急行して辛うじて到着したのであった。
「(あと10分程ですね……)」
イビルは左腕の腕時計で時間を確認する。予定の時刻までは残り10分を切っていた。
「イビル艦長、一つよろしいでしょうか?」
「何ですか?」
後ろにいた副長が尋ねてくる。
「予定では偽の無線を発信した後、本艦は反転して帝都に向かうこととなっていますがクーデター決行日までに間に合うのでしょうか?」
「問題ありませんよ。海域A地点ならば一日で帝都まで引き返すことができますから翌日の決行日までには必ず間に合いますよ」
彼は自信満々の表情で答える。実際にバテン・カイトスの居る海域から帝都までは、一日足らずで引き返せる距離である。そのためイビルの回答は正しかった。
ふとイビルは腕時計を見てみる。ちょうど予定時刻の一分前になっていた。
「よし、予定時刻一分前だ。見張り員、艦船は見当たらないな?」
「はい、大丈夫です」
見張り員の報告に口元に笑みを浮かべたイビルは伝声管に向かって叫ぶ。
「無線手、準備通り偽無線を入れろ」
「了解。偽無線を入電します」
イビルの命令を受けた無線手が無線機を起動させて無線を入れた。
「帝都防衛艦隊司令部へ。こちら潜水艦バテン・カイトスです。聞こえますか?」
少し間が空いた後、無線機の方から音声が伝わる。
「こちら帝都防衛艦隊司令部。潜水艦バテン・カイトス、何があったのだ?」
「緊急報告です。艦載機によって本艦からおよそ600kmほど北東の方角に艦隊を発見しました。詳細な数などは不明ですが、神聖ミリシアル帝国や日本国の軍艦と思われる船が多数確認されています」
「なんだとっ!?」
無線機の向こう側から驚愕と息を飲む声が聞こえる。無線手は続けて話す。
「これより本艦は敵艦隊を捕捉し攻撃を行いたいと思います」
短時間の沈黙の後、無線が入る。
「わかった。それと貴艦のいる海域は何処なのだ?」
「海域B地点です」
無線手は事前に打ち合わせた嘘の位置情報を伝える。
「了解。貴艦の武運を祈る」
「はい、それでは」
そういうと無線機は沈黙する。無線手は電源を切った事を確認した後、伝声管を使って司令塔上のイビルに報告を入れた。
「イビル艦長。偽無線作戦、成功しました」
「よくやりました」
顔は見えないものの伝声管から入って来るイビルの声は嬉しそうであり、全員が彼が喜んでいるのが目に浮かんだ。
無線手からの報告を受けたイビルは口元に笑みを浮かべていた。作戦が上手く行って上機嫌な中、副長が話し出す。
「艦長、そろそろ帝都に戻りましょう」
ふとイビルは我に返る。副長の言う通り、早く帝都へと引き返さなければならない。
「うむ、それもそうですね」
イビルは再び伝声管に向かって叫ぶ。
「面舵一杯、速度そのままで帝都に向かいますよ!」
「了解、面舵一杯、速度そのままで帝都に向かいます」
復唱が返ってきた後、バテン・カイトスはゆっくりと旋回を始める。ゆっくりと旋回する潜水艦の上でイビルは帝都のある方角を眺めていた。
「(これで恐らくは海軍の全ての艦艇が帝都を離れるはず。その隙に近衛師団を撃退できればクーデターは成功する……)」
彼は頭の中でクーデター作戦を思い返していた。僅かながら残っている帝都防衛艦隊はクーデター作戦を行うにあたって一つの懸念材料であった。
というのも、乗組員たちが臨時の陸戦隊として戦闘に加わる可能性がある。アクニ将軍の第11師団であればまとめて粉砕できるだろうが、あいにく彼は死亡している。
そのために、代わりとしてバガン大佐の第55連隊が戦闘を行う事となるのだが、彼らは近衛師団との戦闘で手一杯である。それ故に即席の陸戦隊が加われば失敗する可能性が高まることから艦隊を帝都から離すのが重要であった。
他にも艦砲射撃による支援も考えてはいたが、イビルは可能性は低いと思っている。理由としては帝都に存在する多くの国民に多大な犠牲が出るだろうからだ。そのため艦砲射撃だけはしないと彼は考えていた。
「(まあとりあえずは帝都から艦隊を引きはがせたので、これ以上は考える必要はないですね)」
そう考えた彼は、もう既に達成したクーデター計画について考えるのをやめる。そしてこれから行うべき事について考えるのであった。
いかがでしたでしょうか?
最近、執筆が思う様に行かず作者のモチベーションが下がり気味です。
そのため、評価やコメントなどを行ってくださりましたらとても励みになりますので、そちらの方もよろしくお願いします。
誤字報告を行ってくださりました、
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。