DJ少女達との日々 作:変わり者
とノアさんが言ってました。
日常系オリ主物です。よろしくお願いします。
Dで始まる新世界
4月7日、昼。明日から高校二年生だというのに、今やっと部屋の片付けが終わった。サボり?いや、違うのだ。そうではない。魅力的すぎる物がたくさん出てくるのが悪いのだ。
今日は祝いの日で、陽葉学園に近い普通のどこにでもあるアパート。その角部屋に一人暮らしをすることになった。狭い部屋ではあるものの、一人ではこのぐらいが心地いい。そこまで古くもない、床や壁の木の色も綺麗なままだ。流石に新築特有の匂いはしなかったけれど、若いうちの引っ越しはテンションが上がる。ついつい声を出したくなるものだ。
「やったぞぉおおお!!! 今日から一人暮らしだ! 叫べる! 自由だ!」
やっとの思いで実家から解放された少年、
そんな彼は一人という空間に気持ちが昂っていた。はしゃいだっていいじゃない。彼もまた人間なのですから。
近隣に住んでる人にうるさい! と言われる前に声を抑える。この日のためにパーティの準備もしてある。特別豪華なものではない。
「まず気合いだろ? 飾り付けは面倒だったのでやっていない、パーティの参加者は呼んである、食事……はデリバリー頼んでおいて……もうそれでいいか」
この男、実に適当である。実際、飾り付けは片付けたばかりの部屋を汚すことになるし、言葉の通り単純に面倒だった。参加者が来るまで暇だったので、何か良いものでも届いていないかな?などの淡い期待を抱いて開けた。
「あれ、このチラシ……」
新しく人が住むとなると、必ずと言っていいほどここぞとばかり色んなものが回ってくる。颯の家にももちろん届いており、三枚のチラシがポストの中にあった。
「えーっと……超銀河、新しい宇宙を作り出そう……? ……なにこれ、宗教?」
魂でぶつかり合える仲間と共に、そういうコンセプトの元で募集された、アイドルのオーディションみたいだ。入れるところを間違っていないか?
「もう一つは……ホテル内のクラブハウス新設に伴いコンテスト優勝者を専属DJとして採用……常夏島のリゾートホテルゥ!?」
実に大きな話だ。こんなのに挑戦する物好きはいるだろうか。少なくとも自分はやらない。うん、やれない。
「最後は……ALTER-EGOか。これは椿さんに渡した方がいいのかな……あの人も狭い世間で足踏みしてるような器じゃないだろうし」
きっとあの人は、
「全部俺には無縁な話だな」
興味を失くした颯はまとめて机の上に放置して、そのまま新しいベッドに身体を預けた。いつか関わることも知らないで……。
♤♡♢♧
ピンポーンと初めて押されるチャイムの音が新鮮だ。
「はーい」
来た来たと扉を開けると4人の少女達がそこにはいた。私服姿の至って普通の彼女達が、時には圧倒的人気と実力を誇るのだ。とてもピーキーである。
「やあ、調子どう?」
「よーっす、端の部屋取れるなんてラッキーだったな」
「なかなかいいところじゃん!」
「ハヤテ、こんにちはぁ〜」
腐れ縁とは言いつつも実際はそんな事はなく、この心地良い関係性を颯がそう例えているだけだ。
四人を中に入れる。引っ越してきたばかりの男子高校生が女子高校生四人を家に連れ込む……側から見たら凄い状況だった。学園人気1位のピキピキをもてなすにはあんまり褒められたものではなかった。
各々に落ち着くように座る。出すお茶も用意してないことに今更ながら気がついた。気を使えない男!
「ね、颯。荷解きやっちゃおうか?」
「荷物は後で適当にやっておくよ」
気持ちは嬉しいがとやんわりと断る颯。由香がいいよいいよトレーニングになるからと気を使ってくれる。しかし手伝わせに来たわけではないから複雑な気持ちだ。由香は心優しい少女だ。いくら断ったところで気になって仕方ないのだろう。
「後で手伝ってくれると助かる」
「うん、もちろん!」
「いつも頼ってごめん、由香」
意図せず出たごめんの言葉に由香が一瞬、驚いた顔をする。その後すぐいつもの明るい由香に戻ると、颯に指摘する。
「気にしないで、そこは素直にありがとうでいいのよ」
片目を閉じてウィンクする。響子の見守るような表情と、来たばかりでも我が城のように落ち着いてスマホを見ているしのぶ。少し気恥ずかしさがあった。
「ふふっそうだぁハヤテ、眼鏡はどう?」
「ああ、うん。調子良いよ。ありがとう絵空」
「いえいえ! 他でもないあなたの頼みですから!」
絵空は意外にもお嬢様だ。特殊な環境にいるからこそ特殊な颯に合った眼鏡は、彼女だから用意できたのだ。
「しかし最近の技術は凄いな。ちゃんと色が見えるよ」
「それはもちろん、清水家がスポンサーとして開発費を出した特別製ですよ♪」
日向颯は視界に色がない。彼の目から見る光景は、由香の持っている古いカメラで撮ったような景色だった。颯の灰色の瞳に落ち着いた眼鏡はよく似合っている。
「また君はとんでもないことをする……」
「お世話になった人のために、出来ることをしているだけですよ?」
それを言われたら何も言い返せない。颯がもう一度お礼を言うと、絵空はいつもの笑顔でハートマークを作る。
「それにしても何もない部屋だねー」
「DJ機材やネット環境ぐらいは整えても良かったんじゃない?」
「……それも後でやるよ」
荷解き中の由香とWi-Fiがないことを気にするしのぶの言葉に全員が部屋を見回す。改めて何もない部屋だ。
「どうせなら、部屋全体を改装して……豪華な家具もたくさん置いちゃう!」
「いやいや絵空、流石にそれはないでしょ」
絵空の何とも言えないスケールの計画には響子も反対した。颯も追加で反対する。だって嫌だもん。絵空に一任すると、よくわからない置き物や明らかに一人用ではない家具を買いそうで怖かった。
「そんなことより、颯。お前に頼みたい事があるんだ」
「頼みたい事……? どうしたんだ、しのぶ。改まって」
しのぶが会話を途切らせてでもこんなことを言うって事は何か困っているのだ。聞かないわけにはいかない。
「しのぶが新しい曲作ったんだけど、ノリのいい曲調だから颯にコールを作って欲しいんだって」
響子が説明をしてくれた。PeakyP-keyは定期的にライブを開催している。人気があればもちろんファンもいる。そのファンや観客達のためにも時には客視点としてアドバイスや提案をするのだ。
「お、やるじゃんニンジャ」
「アタシはクノイチだ!」
しのぶがぐっと拳に力を入れて訂正する。なんとも可愛らしい。
「あはは、このいじりも最近では恒例だね」
いつでも楽しそうな由香。その明るい性格はピキピキのムードーメーカーと言っても過言ではない。
「しのぶとハヤテ、なんだか仲良さそうで妬けちゃうなぁ〜」
絵空はたまに本気で言っているのかわからない時がある。昔からだ。
「よっし、早速考えてみるか」
颯は気持ちを前向きに持っていき、今日の作戦会議を始める____。
「俺たちで協力して舞台みたいに踊るってこと?」
「それそれ〜きっと私達のラブリー友情パワーなら、更なるパフォーマンスが出来ると思わない?」
「それは……」
緊張の一瞬。みんなが颯の言葉を待っている。
「「「「…………」」」」
静けさの中、颯がカッと目を見開いた。
「…………アリだな」
「やったぁ〜!」
「おー!」
「悪くない」
にやりと肯定する颯に喜ぶ絵空、嬉しそうにする由香に悪くないと意外と好感触な響子。
「マジかよ……こいつら」
一部始終を見てガッカリするしのぶであった。やるやらないは別として面白そうではある。現実的に考えたら、颯はメンバーというよりサポートの立ち位置にいるため、絵空が変なことをしなければ十中八九参加しない。
♤♡♢♧
そうして盛り上がってきたPeakyP-keyは、新しい家でたまには昔話でもという響子の提案で中等部時代の話を始めた。出会いのきっかけというべきか、颯がみんなと出会ったのは陽葉の中等部時代。まだPeaky P-keyが揃っておらず、活動もしていなかった時期だ。
「正直、あの出会いは運命だったよね颯」
「運命は言い過ぎじゃない?」
中等部時代の話、響子はこの手の話になると毎回思い出を美化して話す。まるで颯が英雄みたいに盛る時がある。それに響子の事を一番気に入ってるしのぶはその話に便乗する。
「いや実際運命だったろ、お前がいたからPeakyP-keyは人気が増したし、パフォーマンスの幅が広がった」
「それは俺じゃなくてみんなが」
「そういう謙虚なところも好きですよ♪」
手で両頬を抑える絵空。好きなら最後まで喋らせて欲しい。
「運動面は酷かったけどねぇー、あの時の颯は面白かったなぁ」
「あの時の由香も面白いぐらいはしゃいでたけどね……」
「ふふっ、絵空より体力なかったもんね」
「あーーー! そういえばそうだった! いやぁ、一番身長あるくせに情けなかったよなー」
「可愛いぃ〜」
「ま、まあね……」
誰にだって不得意な事はある。笑わないで欲しい。恥ずかしすぎる颯はついに無の境地に達しそうになった。
その後ピーキーな少女達は語り尽くした。未来は予想出来ても誰にもわからないのだ。だったら過去を思い返すのだって悪くないだろう。
月も顔を覗かせるいい時間になり、話を切り上げみんなを帰した。手伝ってもらった事もあり、大分荷物が片付いた。それでも少し残った荷物があったので、それを整理して今日は寝床に潜ったのだった。
これは、とある一人の少年とDJ少女達との成長物語である。
今日はとっても楽しかったね。明日はもっと楽しくなるよね、傳之丞(しのぶの祖父)
【プロフィール】
主人公 日向颯
陽葉学園2年
身長175cm
家族構成 父 母 兄
特技 暗記
趣味 ディグッター
主人公である日向颯は陽葉学園に在学している優等生。灰色の瞳にかけている眼鏡に、黒い髪が特徴的。表情筋が死んでいるかのように顔からは感情が読み取りづらい。が付き合いの長い友人には割とわかりやすい。8年前、精神的なショックにより色盲になるも、清水絵空から色盲用眼鏡を貰い色が見えるようになる。
愛本りんくと大鳴門むにと幼馴染だが、その事を忘れてしまっている。記憶の中にもやがかかったように思い出せない。
兄が昔DJをやっていたが、今はあまり仲が良くない。