DJ少女達との日々 作:変わり者
主人公にとって思い入れのある回想の部分を一人称にして懐かしむように表現したかったのですが、難しいものですね。
あの日見たDJに憧れた。その時確かに自分の中で心が動いた気がした。
いつものように手を引っ張ってくれるリボンの君と、僕。その後ろを僕のもう片方の手を握ってついてきてくれる絵が好きな君と、何か変わった事もなく遊んでいた。
変わった事がなかったというのは毎日3人で集まって遊んでいるという事だ。しかしその日、確実に僕らの中で大きく世界が変わった。
確かその日は珍しく遠出しようなんて元気に言うから、幼い頃の僕は賛成してあげた。けど弱気な君は、うさぎの絵を描いてる途中で少し嫌がっていたよね。僕の方が少しお兄さんだから、喧嘩しちゃった時は慰めたりもしていたな。そういう僕も久しぶりの冒険でワクワクしていたから、何も考えず賛成していた。そこは少し反省。
しばらく3人で歩いて行くと、普段聞かないような音楽が流れてきた。思わず僕たちは足を止めて音を探ったんだった。僕たちは子どもらしく、それでこそキャンプでしか立ち入らないような山で遊んでいたから生い茂る木々を避けながら徐々に音に近づいていった。光が差し込む方に歩いて行くと、やがて山の下を見下ろせるような位置に着くことが出来た。
そこから眺められる人混みと台の上にいる盛り上がってる人。正直昔の僕たちは曲で楽しむ事しか出来なかった。だがそれが音楽の本質なのかもしれない。
ふと金色の君を見たら、まるで漫画やアニメのように目を輝かせていたね。だから僕はドキドキしながら言ったんだ。
幼馴染と誓いを立てた。「いつかあんなステージやろうね」って。そうしたら2人とも「うん!」って言ってくれた。喜んでくれた。
あの輝きの更にその向こうを知りたくて、僕たちは進み続けた。ごっこ遊びしたり、それこそ普段買わないようなCDをおねだりしてみたり。
時が過ぎ、公園で遊んでいた僕らはリボンの君と会えなくなる事になった。当然僕らは泣いた。「もうこれでおしまいなんだ」と喚いた。
明るい君は涙目になりながらも笑った。「そんなことないよ! 大きくなったらステージで会おう!」その言葉を聞いて、一瞬でも諦めた自分が情けなくなって、必死に涙を堪えた。僕と可愛らしい君は手を繋ぎながら見えなくなるまで手を振った。さよならじゃなくて、またね。
そんな僕らはいつ頃からか、みんな離れ離れなっていった。
数年後……。そして俺は大きくなるにつれ、現実はそんな単純じゃない事を理解した。
♤♡♢♧
そこから何年経ったのか、
退屈なホームルーム、呆けた顔して窓の外を眺めていた。今日特別変わる事ない黒い雲。かなり懐かしい記憶を思い出して眼鏡をかけるのも忘れていた。
思い出がどんな色をしてるのか……。
今では君の名前も思い出せない。
《 DJ少女達との日常 》
桜舞い散る始業式、太陽が眩しい。
颯は今年から陽葉学園高等部、2年生となる。クラス分けと座席を確認した後、颯は特に何をする訳でもなく帰りのホームルームを待っていた。
「よっ! 颯、今年も同じクラスだな」
濃い金色の髪、制服を少しはだけさした男子生徒が颯に声をかけていた。チャラい見た目ではあるがヤンキーではない。
「奏助、今年も1年よろしく」
「しかし、まあお前ともこれで5年近くか。早えもんだな」
「結局今年も響子達といるだろうしあんまり変わらないとは思うけどね」
「ああ、そっか。あいつら今年1年か」
中等部の時から付き合いのある、ひとつ年下の腐れ縁。ユニット名は
「まあ正直オレにゃピキピキはわからんわ、お前に任せるからな?」
「大丈夫だよ、響子もしのぶも中等部のころより明るくなったというか……由香も絵空もいるし」
PeakyP-keyを一番近くで見てきた颯が安心し切った顔で大丈夫と断言するのだ。奏助は颯の言葉に納得してこの話をやめることにした。
「それもそうだな…… それよりお前ぇ!やっぱ今は
「ああ、えっと……奏助のお姉さんがやってるユニットだっけ?」
「いやいや、姉貴には興味ねーよ。違くて、ALTER-EGOってのはオレが会員になってるクラブハウス。優しそうな緋彩さん! 何より安心感のある葵依さん!」
くぅ〜〜! と実に楽しそうな奏助を見て、お前はその2人の宣伝役か何かかと思ってしまう。でも颯は奏助がクラブハウスの会員になるまで通い詰める生粋のファンということは知っていたし、何よりALTER-EGOは会員制だということもあってDJのレベルは高いと聞いていた。
(確か奏助がハマっているのはお姉さんの影響だった気も……)
でも、だからこそ奏助は実の姉である渚の事は特別何も言わなかった。兄弟だしそんなものだろうか。
「俺は前に一回話を聞いただけで詳しくは知らないなぁ……」
「ええっ!! お前それもったいねーー! オレが今度クラブハウスに誘ってやるから行こうぜぇ、ライブ!」
大袈裟に驚きながらも興奮を抑えられない奏助は、その興奮を共有したいからか颯を誘っている。音楽の趣味が似ている辺りやっぱり兄弟だなと内心微笑ましくもあった。
「PeakyP-keyの手伝いが終わったら行くよ。ぜひ見てみたい」
「はぁ……相変わらずのお人好し馬鹿だな、たまには息抜きに休めばいいのに」
奏助はピキピキの事を知ってはいるが深い関わりがあるわけではない。強いて言えば従姉妹に犬寄しのぶがいることぐらいだ。
「もちろん興味が無いとかそういうわけじゃないんだ。むしろDJに関わってる身として気になっているよ。ただ……」
「ただ?」
奏助は聞き返す。
「響子は他のユニットに興味示すと不機嫌になるし、しのぶは怒って拗ねる。絵空に至っては最悪……」
「さ、最悪……?」
「いや……なんでもない。つまり練習中、話し相手が由香しかいなくなる。しかも筋肉談義」
あー、それはちょっとしんどいなと奏助は苦笑いした。
(何がタチ悪いかってコイツ、ただ口聞いてももらってないだけだと思っている所だ)
どこが最悪なのだろうか。今どき珍しい想いに気づかない鈍感野郎だった。
「許してくれるまで勉強してるけどね」
日向颯は勤勉な学生だ。学力はかなりのもので、もし本気になれば学年上位も狙えなくない。その事にプライドがあるわけでもない上に趣味で勉強してると言い放つ辺り、目的のない勉強に意味などないと思っている奏助には、アホだと本当のアホに思われていた。
「まあ、その……なんだ……死ぬなよ」
「なんで!?」
なんやかんやありつつも、颯達は帰宅する事にした。
♤♡♢♧
多少の持論を交えつつも趣味の話に花を咲かせ、颯と奏助は帰路に就いた。陽葉学園を抜け商店街を通って行くのだ。都会の中心地であるこの街には様々な人で賑わっている。
和菓子、薬局、惣菜、服屋。この街には近くに大きなショッピングビルがあるが、商店街には商店街にしかない良さがある。
商店街を越え、コンビニの前を通り過ぎようした時に奏助が大声を出した。
「ああぁっ!!! そういや今日漫画の最新刊の発売日だった、ちょっと買ってきてもいいか? ついでに夕飯買いたいからAMEZAのコンビニ行きたいんだが……」
「いいよ、そしたら俺はコンビニの前で待ってるから」
「いやぁー本当助かる! マジでお前いいヤツだよ!」
商店街からAMEZAまで中々距離がある。AMEZAとは街の一角に存在する、まるで駅前のような場所だ。映画館やカラオケなど娯楽、息抜きが出来るスポットがある点では、街の真ん中にあるショッピングビルとの大きな違いだろう。
颯も響子によく連れられ、ハンバーガー屋にはよく来ていた。
「んじゃあちょい買って来るわ!」
自称読書家の奏助はよく本を買って帰っている。といっても読むのは雑誌か漫画なのだが。何の本を買うのか、などと駄弁っていたら案外早く着いた。勢いよく買いに行った奏助を見送り、颯は道の真ん中では邪魔になると思い、角を曲がって道の端に避けようと動いた。その時……。
「うわぁぁぁっ!」
「ちょっと! ……大丈夫?」
曲がり角から猛スピードで少女が飛び出してきた。ぶつかりそうになった勢いからかなりの速さで走ってきたようだ。ギリギリぶつかりはしなかったが、反動で少女は尻餅をついてしまった。颯は手を差し伸べ、少女を手を取り立ち上がる。
「ご、ごめんなさい!」
颯が少女を一目見て最初に目を引いたのは金色の髪だ。陽葉学園の制服を着た少女は赤色のリボンをしており、目立っているのに見たこともない姿から今年入ってきた転入生だろうか。
立ち上がった少女はまだ綺麗なままの制服についてしまった汚れを払っている。その様子を見ていると、ふと少女が落としたであろう一つの持ち物がそこにはあった。
颯は少女の代わりに拾い上げる。そこには名前が書いており、陽葉学園の生徒手帳だった。
「はい、これ落としたよ。今度は気をつけてね」
「は、はい! ありがとうございます!」
それでは!と元気よく走っていく少女。
「愛本りんく……どこかで……」
どこかで聞いたことがある気がする。颯はそう感じた。
「わりいわりい! 収穫アリだぜ! よし、帰るか!」
「……あ、ああそうだな」
自動ドアから笑顔で飛び出してきた奏助に颯の思考はかき消された。それでもまあいいかと思った颯達は家に帰ることにした。
♤♡♢♧
「ただいま」
一人暮らしのアパート。それが今の颯の住処だ。一人暮らしではあるが、颯は毎日帰ったらただいまと挨拶をするようにしている。
シーン……と静まり返る暗い部屋に明かりをつける。
「……今日は来てない、か」
颯はとある人に合鍵を渡している。今日は来てないみたいだが、よく自分の帰りを待っているのに珍しいなと考えていた。
由香に夜でもいいから定期的に走れと言われていたので、今日の夜はジョギングに使うことにした。
さっと着替え鍵を閉め、走る。
(走ることを続けてないと体力が落ちてしまう。弱い自分のままじゃあ自分はピキピキのみんなと一緒にいる資格はない)
響子もしのぶも由香も絵空もみんな、自分にはない高いレベルを持っている。颯のその考えはずっと一緒にいたからこその考え方であり、不甲斐ない自分でももがき続ける。
(だから走り続けることはやめない。気持ちだけじゃあついていけない!)
静まり返った暗い夜にひとりの少年は、人知れず足を動かし続けた。
「はぁ……はぁ……」
しばらく走り続け、夜も深まってきただろうか。息を整えながらこのぐらいでいいだろうと今日の記録を日記につけていく。
(そうだ、今日も少し寄り道していこう)
颯には習慣がある。自宅付近に小さな小屋があり、そこで占い師が運勢を占ってくれる。それが習慣だ。
特別な用事がない夜は基本、寄るようにしているのだ。家から近い点に、なかなか当たるものだからつい寄ってしまう。占いも馬鹿には出来ないのだ。それに颯にとって、これは誰にも言ってない自分だけの趣味であり空間だとも言える。
こじんまりとした小屋の前に到着した。扉を開けると雰囲気作りのためか、薄暗いのだ。明かりは小さな電球がある程度。黒いカーテンで部屋全体を覆っているため、外からの明かりはない。
小さめな机の前に、黒いベールで顔を隠し、口元だけ見える人が座っている。颯はその占い師と対面するように座る。
「お久しぶり、颯クン。今日は何かあったの?」
「はい、実は___」
この人が得意なのは夢占いで颯も最近よく見る過去の夢だったり、その日あった出来事を伝えている。
心理学もかじっているとかで、悩みだったりほんの些細なことでも話せたりする。カウンセラー的なオーラも持っているのだ。
「うぅん……そうねー……確かにその今日会った女の子のことは気になるわ」
「ですよね……それに今日もまた夢を見ると思うんです。あと何日続くかわからないですけど……」
「……………」
ベール越しに見えているのかいないのか。それこそわからないが颯は顔をじっと見られていた。言葉や答えこそ無いものの、決して歓迎されていないわけではないようだ。
話し込んでいたらもうそろそろ深夜といってもいい時間帯になりそうだ。颯は明日も学校なのでと切り上げて帰ることにした。
「それではまた来ます」
「ええ、いつでもどうぞ」
颯は軽く挨拶し、小屋を後にした。店じまいをする占い師はボソッと呟いた。
「何か新しい事が始まる季節ね……」
いかがだったでしょうか?まだ全然キャラは出せていませんがもしよろしければ感想をお願い致します。
一人称視点の幼少期颯は僕ですが、高校生颯は俺です。わかりにくくて申し訳ありません。