燦星夜世界樹ゴールデンバウム   作:kuraisu

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皆さま、あけましておめでとうございます!!
本編にぶちこめなかった要素の解説回になります。


燦星夜世界樹の舞台

銀河帝国の歴史

+前史

国家としての源流は「正史」通り銀河連邦である。

大きな転換点となったはルドルフがまだ終身執政官だった頃の宇宙暦三〇八年、地球外起源種の知的生命体ジェノバの一団と接触し、種の存亡をかけた絶滅戦争が勃発。

ルドルフの指導の下ジェノバとの絶滅戦争に人類は勝利したものの、一〇〇〇億を超える人命を失い、人類の社会機構が壊滅寸前になる大損害を被った。

だが、ジェノバの不老性にルドルフは着目し、戦時中から研究者たちに徹底的に調査をさせていた為、その細胞より万病を治癒するどころか老衰を完全克服する不老薬の生成方法を見出し、大量生産体制さえ整えていた為、人類はかろうじて滅亡より救われ、ルドルフを神として崇めだした。

ルドルフは民草の声に応える形で「神」を自称するようになり、それに合わせて宇宙暦が廃されて神聖暦が制定され、国号も銀河帝国と改められた。

最初に遭遇したジェノバというトラウマの為もあり、基本的に人類以外の知的生命体は問答無用で抹殺すべきという姿勢を堅持しており、その為の戦いを災厄戦と称するが、その実態は絶滅戦争であり、人類以外の知的生命体は一切の例外なく絶滅すべき対象として民草に至るまで認識されている。

 

+神聖暦九〇年頃

地球教団の一部が一部の貴族領主を取り込み、統治に支障をきたしていた為、帝国が地球教の根絶に乗り出し、内戦が勃発する。

災厄戦に比べれば明らかに小規模な被害で内戦は終結し、以後、ルドルフを神として崇める以外の信仰の在り方は、すべて古き宗教の形であるとして、全面的に禁止される。

また、二度とこの対策が起こらないように、神託をはじめとして、首都から神が直接地方統治に影響力を行使できるシステムの確立がはかられる。

 

+神聖暦一六〇年頃

アーレ・ハイネセンを首魁とする徒党がルドルフの超然的な支配に反感を抱いて帝国支配領域からの脱出を試みるも、「全人類の庇護者」という自負を抱くルドルフにとって、帝国支配領域内で海賊とかをするのなら可愛いものとして見過ごすところだが、自分の掌の上である帝国支配領域から抜け出そうという企ては極めて不快なことだったので、正規軍を投じて一党を殲滅。

よってこの世界では「正史」とは異なり、長征一万光年は始まる前の段階で終わったため、自由惑星同盟などは成立することもなかった。

 

+神聖暦二五〇年頃

幾度の災厄戦を乗り越えて、銀河系中心部をも帝国支配領域圏内となる。

これまでに滅ぼした知的生命体の科学技術の中で「銀河そのものを宇宙船とする構想」があり、その構想が実現すれば天の川銀河全体の様相が手に取るようにわかるようになるというメリットがあるらしいという情報もあり、ルドルフはその建設を命じる。

 

+神聖暦二七〇年頃

銀河中心部に聖なる方舟『神都ユグドラシル』が完成。これにより天の川銀河の情報をより詳細に知ることができるようになり、帝国の銀河全域の征服活動が一層活性化するようになる。

またこの頃より、方舟とそれ以外の交流がほとんど行われなくなり、いつしか神都の民は方舟の外の世界を『外界』と呼び蔑むようになり、外界の者たちは人類社会の全体像を理解できなくなっていった。

 

+神聖暦四〇〇年頃

銀河帝国が天の川銀河から人類以外の知的生命体を完全に絶滅させ、銀河全域を我がものとした。

他の銀河にも進出する予定であるが、銀河間を航行する技術力が追い付かない状況にあり、帝国の領域拡大はここ一世紀近く停滞状態にある。

 

+神聖暦四九〇年

本編の時代。技術開発研究実験のバグにより「正史の死者」を蘇らせる技術が爆誕。

闘争による人類の進歩を望むルドルフが外界に「正史の死者」をばらまき、ほどよい刺激となる戦乱を起こそうと画策している。

なお、この時点での帝国の人口は三〇〇〇億であり、その支配領域や技術力は「正史」のそれを遥かに凌駕している。これを「正史」よりこの世界が優れていると判断するか、不老なんて夢を実現してこの程度なのかと判断するかは、読み手の解釈に委ねられるところであろう。

 

この世界の固有用語

+神

全人類の庇護者にして全宇宙の征服者、外宇宙より来る災厄を退けし勝利者、賢明なる黄金樹の方舟の領導者、大神オーディンと古き神々の権能の継承者、神聖にして常勝不敗なるいと高き万軍の主、永劫にして不滅なる最後の神――つまりこの世界におけるルドルフ・フォン・ゴールデンバウムのこと。

実はいうと「神」という呼称は誇張であっても、まったくの虚構というわけではなく、ルドルフはジェノバとの戦いの際に寄生されかけたのだが、その強靭な自我意識によって寄生をレジストしたばかりか、逆にジェノバを吸収するようなことを仕出かしており、ジェノバの能力の一部を我が物として使いこなしているため、明らかに他の人類とは少し次元が違う領域にいる。

 

+ジェノバ

元ネタはFF7に登場する同名の地球外生命体。全く同一のものというわけではないが、だいたいのイメージ的にあっている気がしたのでそのまま持ってきた。

この世界の歴史が「正史」と全然違うものになってしまった元凶であり、帝国の歴史における最初の「災厄戦」の相手。

FF7の設定的に「この世界の人類って全員ソルジャー?」と思われた方もいるかもしれないが、あくまでこいつの細胞を材料にした不老薬による効果なので、別に身体能力が化け物じみたものになってたりするわけではない。

ただしジェノバと融合したみたいな感じになってるルドルフだけは例外。

何故自己崩壊しないのかって? ルドルフが素でチートだからです。

 

+貴族

基本的にひとつの有人惑星にひとつの領主一族として配置されている貴族家。

領主の地位にある者は統治者としての権力を持ち、ルドルフからの神託を受けて主命の実行に尽力する義務を負う。

一応、外界における特権階級であるが、外界の暮らしは領民と信頼関係を構築しないことには生活するのが難しく、さらに正々堂々とした方法で領主一族を弑逆すれば、ルドルフは貴族位の移譲を是肯定するので、領民との上下関係はそんなに厳しくないことが多い。

 

+外界

方舟以外の帝国領のこと。

ひとつの有人惑星に一〇〇万から一〇〇〇万の住民が暮らしている。日常的にドラウグルの脅威に悩まされているが、よほどひどい状態にならない限り、基本的には放置されている。

それどころか研究実験の現場として使われる場合もあり、良くも悪くも帝国では雑に扱われている。

 

+方舟

別名、神都ユグドラシル。人口は五〇億前後。

天の川銀河そのものを、無限の大宇宙を征く宇宙船として機能させることができる機械仕掛けの人造天体であり、その天体の内部には都市部も有しており、そこが銀河帝国の首都として機能している。

ルドルフの人種的嗜好により白人系の割合が圧倒的であるが、強者と認めた者であれば非白人であろうとも住民にするので、ルドルフに認められた者とその末裔の非白人系の住民も少数派として存在する。

その人口構成から白人優越思想もあり、非白人への差別が存在しているが、目に余るものであれば白人であろうとも処罰される程度の公平な秩序は存在する。

逆に言えば程々であれば見逃されているということになるのだが。

 

+帝国正規軍

ルドルフ直属の近衛艦隊と一八個の軍からなる。

一個軍は三~五個艦隊で構成されており、一個艦隊は一万~二万隻で構成されている。

それぞれの軍のトップは統帥という役職であり、帝国元帥をもって充てられる。

統帥には巨大な権限が与えられており、任されている軍の人事を含め、かなり自由な裁量権を有する。

軍のナンバーは固定ではなく強さ順であり、災厄戦がよくあった頃は武勲を踏まえてルドルフがランク分けしていたが、ここ一世紀は戦争らしい戦争がないので、大規模な模擬訓練の結果に基づいてランク分けしている。

各軍は基本として競争関係にある為、軍同士の関係は良好なものとはいえず、特にリン・パオが統帥をしている第一三軍は外界で暴れていた宇宙海賊をルーツに持つ幹部が少なからず存在する為、他の軍から目の敵にされており、孤立気味である。

このような亀裂を抱えつつも、ルドルフへの忠誠心は一様に高く、ルドルフが総指揮をとるという話になれば、「我らが神に恥ずかしいところは晒せない」と華麗な連携を見せることだろう。

 

+エインヘリヤル

北欧神話において死んだ勇士の魂が成るとされる存在で、最終戦争においては大神オーディンの配下として馳せ参じるとされる者たちのことで、称号名はそれに由来している。

元々は帝国騎士号の最高位程度の意味で制定された称号であったが、帝国の歴史の中で爵付き貴族籍の価値が暴落し、反比例して帝国騎士号の価値があがり続けたことにより、現在ではルドルフに直接進言することが許された冠絶する才能の所有者たちの称号となっている。

この称号を持つ条件は、政府において閣僚以上の地位にあるか、軍部において統帥の地位にある者、もしくはルドルフの勅命により任じられた者だけであり、現在は二〇名を少し超える程度しか存在しない。

称号保有者の共通点として帝国の領域拡大に多大な貢献を成した者というのが存在したが、ラインハルト・フォン・ミューゼルがエインヘリヤルとなったことで、この共通点は崩れた。

 

+ドラウグル

北欧神話におけるアンデッド、ゾンビの類の概念であり、不老を実現した人の終わりの形のひとつとして誕生するようになった怪物の名称として用いられるようになった。

「悲しいとか辛いとかのマイナスの感情を持ち続けるとなる」と外界では一般的に信じられているが、微妙にそれは間違っており「自分に生きている価値はない」と強く思ったり、長期にわたる向上意欲の低下などがあると、ドラウグルに堕ちる。

これは強固な意志力がなければ、ジェノバの細胞に毒されてしまい魔物と化すのと同じような原因なのである。

本能的に彼らはジェノバとして再び新生することを望んでおり、他の生命体を食しながらエネルギーを蓄え、唯一この宇宙に残っている核であるルドルフをも取り込んで、再びジェノバとして新生しようとしているが、ルドルフが強すぎるのでまず不可能であろうし、それ以前の問題として方舟を守護する帝国正規軍の防衛線を超えられない。

ルドルフは外界の人間を堕落させないための都合のいい脅威として、本来邪魔者でしかないはずのドラウグルを帝国統治システムの中に組み込んでしまっているのである。ジェノバは泣いていい。

 

+叡覧の間

方舟の中枢区画の最深部にある神聖な空間。

ルドルフの他、エインヘリヤルの称号を持つ者しか入ることは許されない聖域。

この空間の星空には、天の川銀河全体がリアルタイムで再現されており、特別な操作を施すことによって過去の光景の再現を行うことも可能である。

帝国が天の川銀河全域に領域を拡大することができたのは、方舟の建設によって叡覧の間を機能させ、天の川銀河内の恒星間異種族文明の規模と精力を正確に知ることができたのも大きな理由のひとつである。

ただしここの星空では宇宙空間の再現しかできておらず、各惑星については「こういう大きさの星がある」程度で、惑星内部の情報を再現することはできない。

執筆中のイメージとしてはFF零式のラストバトルの間である。

 

「正史」からの召喚者

+ジークフリード・キルヒアイス

リップシュタット戦役終結後の勝利式典で、アンスバッハの暗殺から主君ラインハルトを守って死んだ後、この世界の帝国の実験のバグというか理論がわからない謎の大失敗によりこの世界に召喚された。

元々の予定では「正史」の死者をもっと登場させる予定で、同じようにこの世界に復活した皇帝ラインハルトから「キルヒアイス、お前が皇帝をやれ。ここではお前の方が先輩になるわけだし、俺は……もう十分楽しんだ。これ以上やったら不公平だろう」と言われ、覚悟を決めてエンドにするつもりだったのだが、何人も復活させたら自分の力量では処理しきれないことに気づき、キルヒアイスの描写は、ほとんど外界の暮らしの様子を描くためだけの道具になってしまった感があり、筆者としては反省している。

 

書く予定は一切ないが、この物語が続くのであれば、きっとキルヒアイスの旗の下に「正史」のラインハルト、ロイエンタール、オーベルシュタイン、シュタインメッツ、ルッツ、レンネンカンプ、ラングといった帝国の死者たちの他に、ヤン、シェーンコップ、フィッシャー、ボロディン、ビュコック、トリューニヒト、レベロといった同盟の死者たち、もしかしたらルビンスキー、ド・ヴィリエとかも加わって、ルドルフ神の帝国に挑む感じになるのかもしれない。

 

+アンスバッハ

「正史」でキルヒアイスとほぼ同じ時間と場所で死んでいた為なのか、キルヒアイスと一緒にこの世界に召喚されていたが、速攻で研究部隊に収容された挙句、尋問を受ける羽目になった可哀そうな人。

ルドルフたちが知っている「正史」の情報は彼から聞き出したものであり、特に描写はないが、尋問後はルドルフから才幹を認められて近衛艦隊の一士官として遇されている。

 

 

外界の民

+ラルフ・フォン・ヴォスハイト

惑星ヴォスハイトを運営する貴族家の一員で、領主軍の指揮官の一人。

現在六七歳であるが、五〇〇年前に全人類の不老長寿を達成したこの世界においては若すぎる側に属する人間である。実は延々と神の指示に従ってドラウグル討伐を繰り返す日々に対して言葉にできない疑問を抱いていて、ジェノバ襲来以前の人類史を知りたいと願っており、キルヒアイスから宇宙暦というワードを聞いてテンションがあがっていたのはその為。

 

+バルサック・フォン・ヴォスハイト

現ヴォスハイト家の当主であり、ラルフの高祖父にあたる人物。

二〇〇年以上生きているが、その容姿はラルフとほとんど変わらない。

領民を大切に思う領主であるが、この世界ではあまり珍しくない貴族の在り方である。なぜかというと、良くも悪くも領民とは運命共同体であるのが、この世界では常識である為。

 

+アーレ・ハイネセン

数百年前の外界の民。

帝国の支配体制に不満を持て、帝国支配領域外の謎の宙域に逃げ出そうというカッとんだことを考えて実行したためにルドルフの逆鱗に触れて殲滅された。

この世界では別に奴隷というわけでもなかったのだが、自由への衝動は抑えられなかったらしい。

 

エインヘリヤルのメンバー

+ラインハルト・フォン・ミューゼル

第一八軍統帥。「正史」におけるローエングラム朝初代皇帝とは並行世界の同一人物。

この世界は歴史が大きく異なっている上、不老の達成により恋愛模様も著しく変化しているため、「正史」本編時代の同一人物はほとんど存在しないのだが、いかなる運命の偶然か、ミューゼル家はこの世界でも同じ家族構成で神都の住民として存在していたのである。

ミューゼル家は平穏な生活が送っていたが、ラインハルトの物心がつく前に、母クラリベルが軍高官の不注意で死亡してしまう事故があり、激怒した父セバスティアンはその軍高官に公然と決闘を申し入れ、相打ちになって世を去っていたのである。

残された姉のアンネローゼはラインハルトを養育するために、体を売って生計を立てていたが、そのことがラインハルトに知られて姉弟関係が壊滅的に捻じれてしまった。

ラインハルトはそんな金で生かされていたことを恥と捉え、同時にそんな金の稼ぎ方しかできなかった姉を激しく軽蔑するようになったが、一方で姉がいなければ自分が成長できたかも怪しいという自覚もあり、「自分の弱さの象徴であり、生命の恩人」であるとして、軽蔑しつつも育ててもらった恩を返すべく生活費の仕送りを行っている。

軍人を志したのは幼き頃からの憧れであったからであり、天性の才能を発揮して頭角を現し、エインヘリヤルという挑み甲斐のある壁が大量にあるため、実に充実した人生を送っている。

特に自分の能力を高く評価してくれたルドルフへの感謝と憧憬の念は強く、何百年かかるかわからないし、もしかしたら千年かけても足らぬかもしれないが、絶対にルドルフと同じ領域に足を踏み入れてみせると強く思っている。

「正史」とは異なり、公私にわたって対等な存在だった友はおらず、姉という心の中の聖域も存在しないため、冷徹冷酷な一面が強くなっている一方で、良くも悪くも自分に匹敵する人材が多く、上層部に対する不満も少ないため、「正史」に比べると穏やかな性格になっているのかも。

もし「正史」の自分と出会おうものならば、色々な意味で気に入らない存在であると認識するだろう。

 

+ディアナ・フォン・ゴールデンバウム

第七軍統帥。この世界では何百人いるかわからないルドルフの子の一人。

一応、ルドルフの子として他者よりは恵まれた環境で育ったものの、「ルドルフの子」というだけでいつまでも安寧が約束されない程度には「弱肉強食思想」が徹底されており、そのことを理解していた彼女は軍に入り込み、圧倒的な才覚で頭角を現し、幾多の災厄戦で武勲をあげてエインヘリヤルの紅一点となってしまった。

これについて「正史」ほどではないにしても、男尊女卑の気質がある父のルドルフからはなんで女に生まれてしまったんだろうと思われてしまっている。無論、流石は自分の血を継ぐ子であると誇らしくも思っているが。

かなり性には奔放な気質で、容姿が気に入った異性であれば褥になかば強引に誘って情事に耽ることを繰り返しているが、趣味であると割り切りはしているため、軍の職場の同僚を誘惑しない程度の節度は持っている。

ラインハルトのことを気に入っているのは、一時自分の部下だった(とはいっても十階級近い差があった)時に、彼に突出した才覚を感じ取り、武人として気に入っており、なにかと世話を焼いているだけのことである。

だが、それはそれとして、ラインハルトの顔は好みである為、ラインハルトの側が望むならばベッドインは吝かではないし、自分がラインハルトを性的に狙っているという噂に対しても笑うだけで明確な否定はしない。

 

+クロプシュトック

第九軍統帥。強烈な白人優越思想の持ち主であり、リン・パオのことを嫌っている。

おそらく第二代社会秩序維持局長官アルブレヒト・フォン・クロプシュトックの子孫であると思われるが、少なくとも「正史」におけるウィルヘルム・フォン・クロプシュトックの並行世界の同一人物というわけではなく、三〇〇年以上の人生を歩んでいる。

自らがエインヘリヤルの地位にあるのは、幾度の災厄戦による実績故という強い自負心があり、その裏返しとして同じ白人のラインハルトに対しても「実績なき新参者である」と嫌っており、ルドルフのお気に入りであることを承知の上で反発するエインヘリヤル内の反ラインハルト派筆頭格である。

彼の率いる第九軍は、白人優越思想を反映しており、白人以外の軍人の所属が禁じられており、そのことから「白い軍(ヴァイス・アルメー)」の異名を持つ。

 

+リン・パオ

第一三軍統帥。「正史」におけるダゴン戦役での同盟の英雄とは並行世界の同一人物。

元々は外界の領主軍に属する人間だったが、領主との関係が破綻して対立、そこからの内乱に突入して領主を抹殺してしまう。そしてそのまま領主に成り代わろうと気もしなかったので、自分の側についた領主軍を引き連れて宇宙海賊を旗揚げする。

ハイネセンとは異なり帝国領域圏外の謎の宙域にあえて冒険しようとする発想とは無縁だったので、宇宙を気ままに流離い、時たま各有人惑星を襲撃して物資を蓄えるという生活を送っていただけだったので、外界の連中にドラウグル以外の脅威を意識させる良い要素であると長年放置黙認されていた。

しかし流石にリン・パオの海賊行為による被害が大きくなりすぎたことにより、遂に正規軍のひとうが派遣されることになるのだが、あろうことかリン・パオはその正規軍を撃退し、それを率いた統帥すらも戦死させたために、ルドルフに興味を抱かれて直々に半殺しにされることになる。

その後、命乞いをするような形式でルドルフの軍門に下り、エインヘリヤルの一員となったのだが、そのアウトロー気質な経歴の為にルドルフへの敬意という点で周囲から大いに疑問を持たれており、事実リン・パオはルドルフの偉大さを認めつつも、神として崇敬することに対しては大いに懐疑的である。

またリン・パオは異常なレベルの健啖家にして猟色家であり、そのこともエインヘリヤルの中で孤立を深める原因のひとつとなっているのだが、当人は自覚しつつも改める気は一切ない。ただあまりにも孤立し続けるのも良くないと思ったのか、何度かディアナを誘って一緒に寝たことはある。

 

+ヨアヒム・フォン・ノイエ・シュタウフェン

帝国宰相・兼・第一軍総帥。

「正史」における第二代皇帝ジギスムント一世の父とは並行世界の同一人物。

帝国政府の最高責任者であると同時に、帝国最強の第一軍を率い、エインヘリヤルの首席でもあるため、名実ともにルドルフに次ぐ銀河帝国のナンバー・ツーの地位にある実力者。

ジェノバとの災厄戦をも経験している古強者であり、ルドルフがまだ人であった頃から彼に仕えていることもあって、ルドルフに対する忠誠心は強いが、彼個人は平穏を望む気質であるため、エインヘリヤル同士の対立に頭を悩ましていたり、ルドルフの無茶ぶりに振り回されたりしている苦労人でもある。

 

+ドクトル

技術開発省長官。ドクトルとは研究者の意味なので、名前は別にあると思われるが、しっくりくる名前が思い浮かばなかったので、作中はドクトルで一貫した。

研究さえできれば満足なマッドサイエンティストであり、組織運営力も持ち合わせているが、自分たちの科学技術探求以外の目的の為に使おうという発想がなく、ルドルフに忠節を尽くしているのもそれが一番自分たちの研究を深める為には有益だと思っているからであって、ルドルフ個人への忠誠心や人類の繁栄への貢献とかは微塵も考えておらず、自分たちの研究成果の発表も、それが必要な行為だとはわかっていても、煩わしく感じている。

ルドルフからは「なんだこいつ」と思われているが、自分がまだ人だった頃にジェノバの遺骸から不老薬を生成した大貢献者であり、文句なしの異才である為、帝国が成立してからずっと技術開発省長官の地位に就けている。

 

+ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム

人類を支配する現人神。「正史」におけるゴールデンバウム朝初代皇帝とは並行世界の同一人物。

終身執政官になる辺りまでは「正史」と同じ人生を歩んでいたのだが、ジェノバの一団が襲来したことにより彼の人生、ひいてはこの世界の歴史は「正史」から大きくズレることになる。

単身で恒星間航行を行い、惑星そのものを食料にする邪悪な知的生命体の襲来に対して、ルドルフは自分の下に集約していた権力を巧みに行使して人類社会全体をジェノバとの戦争に最適化させて対抗し、大量の死者を出し、ルドルフ自身もジェノバに寄生されかけるという苦難を味わったが、かろうじて人類はジェノバとの種の存亡をかけた戦争に勝利してみせた。

ジェノバとの戦争、そしてその後の人類社会再建の流れの中で、ルドルフの人類に対する感覚が大きく変化した。以前のルドルフは人類には「優良な種」と「劣等な種」があり、後者に存在価値はあるのかと長く考えていたのだが、人類全体の滅亡がかかっていたあの状況の中ではそんなものはなかった。「何のために生きているのか」とすら思っていた重度の遺伝病患者でさえも「死んでたまるか」と歯を食いしばり、自分の指導によく従い、人類存続の為に役に立とうと彼らなりに身を粉にしてジェノバとの戦いに、そしてその後の人類社会再建に熱狂的に取り組んだのである。それにルドルフは深く感動した。人類以上に優れたる知的生命体などこの宇宙には存在しない、いや、あってはならぬという信念を抱くようになり、この宇宙から人類以外の知的生命体を抹殺するべく見敵必殺の災厄戦、人類生存圏拡大路線を推し進めるようになる。

人類社会を再建しているうちに、ルドルフはいつしか神として人類から崇められるようになり、ジェノバに寄生されかけた際に自分が人間では何かに変成してしまったのではないかという自覚もあって、それを受け入れて「神」を自称するようになる。

帝国首都の政治に関しては帝国宰相のヨアヒムに任せがちで、普段は叡覧の間から外界を観察し、大きなドラウグルの集団を見つけては近場の領主に神託を送って討伐に赴かせ、その戦いを観戦しながら光る人材はいないかと探している。

この世界のルドルフも「正史」と同じく白人系優越意識や遺伝子理論への傾倒があるにせよ、「正史」のような極端な形で実行することは決してない。劣弱な者たちを不甲斐なく思い、苦難を味合わせようとすることはあっても、絶滅させようなどとはしない。

 

自らが神になった時の、自分が劣弱な種と思い込んでいた者たちを含めたすべての人間が輝いていた、あの時の感動の光景はルドルフの根幹に焼き付き、消えそうにもないのだから。




この世界のルドルフは、まごうことなき人類悪の権化である。

ちなみにFGO二部の異聞帯をこの作品のルドルフが知ったら

ロシア異聞帯
→頑張ったことは痛いほど伝わってくるが……

北欧異聞帯
→スカディには同情を禁じえない。

中国異聞帯
→人をなんだと思っておるのだ(激怒)

インド異聞帯
→神があほすぎる

大西洋異聞帯
→こんな人類史など存在してはならぬ(絶対零度の殺意)

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