継承の転生者(仮)   作:鳥飼緋衣

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【登場人物】

鴻池 翔(おおとりいけ しょう)
・本作の主人公。転生物の読みすぎで時々メタいことを言う。
ドレイク
・優男。皆からの信頼も厚い。
シャリーさん
・優オカマ。皆からオカマだと思われてる。
エルフ
・不明。


第二話 エルフ

あの後、奥の部屋に通されてドレイクさんと受付の人に介抱された。何故か身に危険を感じていた。

「兄ちゃん…体調悪いなら無理しなくていいんだぞ?」

「ドレイクちゃんの言う通りよぉ、冒険者になるんだったら体調管理はきっちりしないとぉ」

「す、すみません…環境にまだ慣れてないもので…」

別にオカマが気持ち悪い訳じゃない。俺が吐いた理由はもっと別にあった。それは、この受付さん、恐らく下を履いていない!しかも!スケスケのスカート履いてる!ヤバいでしょ!これが…異世界…?

出来る限り受付さんの下半身には目を向けずにいる事にした。

「まぁいいわ。時々いるのよねぇ。冒険者手続きをしに来て吐く子が」

「因みに…どのくらいいるんですか?」

「そうねぇ…3人に2人くらいかしらぁ?」

「…貴方は自分自身が考えうる中で最悪の兵器である事を知った方がいい…」

「? 兵器…?まぁいいわ。じゃ、手続きをしちゃうましょうねぇ」

受付の人は1枚の紙を取りだし、そこに記入を始めた。

「じゃ、俺は部屋から出て酒場にいる。終わったら言ってくれ」

ドレイクさんは部屋から出ていった。

「じゃあまず年齢を教えてくれるかしらぁ?」

「えっと、18歳です」

「ふむふむ…働いていた事は?」

「学び舎で学生をしていました。働いていた事はありません」

「ふぅん…じゃあ身長体重を」

「それ関係ありますかね!?と言うかどっかで聞いたような質問ばかりなんですけど!?」

「あら、ごめんなさいねぇ。半分私情が混じっちゃったわぁ」

半分混じってたのかよ…。

「出身地はどこかしら?」

「えーっと、東の国の日本という国からです」

「東の国のニホン…なるほどなるほど?じゃあこの街に来た経緯を教えてくれるかしら」

「実はそこが曖昧でして…家族が居たのですが、住んでいた街が何かに襲われて…俺を逃がす為に家族は街に残りました。俺は商人の馬車に潜り込み、眠ってしまいました。目が覚めたらこの街の近くの草原にいたんです」

嘘だが、怪しまれる方が怖い。俺は出来うる限り信憑性がある話をした。

「…そうなのねぇ、辛かったでしょう…」

「いえ、確かに家族と離れ離れになってしまったのは悲しいですが、そうクヨクヨしていられません。家族の為にも生きなきゃって思ってます」

「強いのねぇ…分かったわ。経緯は問題無し、と。じゃあ最後にステータスね」

来た…!ステータス!転生物によくあるステータス機能が使えなかったので、自分のステータスが分からなかった。だからここで判明するのは有難い…!

受付の人は一つの水晶を取り出して、机の上に置いた。

「この水晶に手を乗せて。そしたら貴方の目の前に自分のステータスが現れるはずよ。それを貴方はこの紙に書き写す。おわかりかしら?」

「は、はい。大丈夫です。では、行きます…!」

水晶に手を乗せる。すると水晶は淡い光を放ち、その光は小さな粒子になって、みるみるうちに視界の真ん中に固まっていく。

そして光が止むと、目の前にはメッセージウィンドウのような物が表示された。

 

名前 鴻池翔 人族 18歳

職業 学生

【ステータス】

HP 25/25

MP35/35

STR/8

ATK/6

VIT/11

DEF/4

INT/

AGI/14

LUK/10

 

【スキル一覧】

 

HP、MP等が一番上にあり、その下にSTR、ATK、VIT、DEF、INT、AGI、LUKの文字がある。ゲームで言う所のHPはヒットポイント、MPはマジックポイント。STRは力、ATKは攻撃、VITは生命力、DEFは防御、INTは知力、AGIは敏捷、LUKは運、って所だろう。

何故か知力だけは表示されていない。まだ転生したばかりだからだろうか。ここは書き写す時、周りとそんなに変わらないステータスにしておこう。

攻撃力と防御力紙で草も生えなかった。しかし、やはり確認したいのは転生特典。これを確認したくてステータスを見たんだ。スキル一覧のボタンを押してみる。

 

【スキル一覧】

 

lv.─

女神の加護【転生継承】 lv.─

話術 lv.1

グロ耐性 lv.1

 

どうやら転生特典は受け取れているようだ。ホッとした。これで特典が得られてなかったらきっと挫けていただろう。それと…また表示されてないスキルがあるようだ。さっきからなんなんだ…?って思ってはいるけど、転生物的に言うんだったらこれが伏線って奴なんだろうな。元々持ってた能力とか、違う神から貰った能力とか。まぁ楽しみにしておこう。

「どう?書けそうかしら?」

「は、はい。大丈夫です」

にしてもこの「グロ耐性 lv.1」…絶対この受付の人のせいで手に入ったスキルだ…話術もコミュ障な俺に焼きが回って女神様が付けてくれたおまけだろう。転生特典はあまり口外しない。それが転生物の鉄則なのでそこ以外を写して紙を受付の人に渡す。

「成程…へぇ…ふぅん…」

「何か、変でしたかね…?」

受付の人がじっくりと俺のステータスを見ている。転生特典を書かなかったことがバレた…?いや、どうなんだ…?

「貴方…どうして冒険者になろうと思ったの?」

「え…そうですね…。冒険が好きなんです。小さい頃から冒険に憧れてて、それで冒険者になりたいと思いました」

「…ふふ、そうなんだ。よし、大丈夫よ。今日から貴方は冒険者よ!」

受付の人がそういうと、どうしてだか胸の中が熱くなり、これから怒るだろう冒険に心をふくらませた。

 

酒場に戻ると、ドレイクさんが壁によりかかって待っていた。

「お、手続きは済んだみたいだな」

「はい。おかげさまで登録出来ました。ありがとうございます」

ドレイクさんには本当に御世話になった。あのままだったらきっと路頭に迷っていただろう。

「俺はまだ依頼があるからもう行くけどよ、兄ちゃんも何か依頼を受けてみたらどうだ?日もまだまだ落ちないだろう」

「そうですね。少し試したい事もあるので依頼を受けたいと思います」

「そうか。でもまだなったばかりなんだから、無理して死ぬんじゃねぇぞ?」

ドレイクさんはポンと俺の肩を軽く叩いて、組合から出ていった。

「…よし、頑張るか!」

「ショウくーん、ちょっといいかしらぁ」

「ひっ!」

気合いを入れた途端、後ろから受付の人に呼ばれる。ゆっくりと後ろを振り向き、受付の人の元へ向かう。

「ショウ君はまだ冒険者に成り立てじゃない?だから初心者でも受けやすい依頼を提案させて貰おうと思ってね」

「は、はぁ…ありがとうございます…それで…」

「ん?どうかしたかしら?」

「ショウ君って言うのは…」

ステータスを書いた時、名前は本名で書いた。それを受付の人に渡したら、ショウ君と呼ばれるようになっていた。

「あら、そうね。自分の名前も名乗ってないのに君付けはおかしいわよね。紹介が遅れてしまってごめんなさいねぇ。あたしの名前はシャリル。シャリーちゃんって呼んで?」

「あはは…」

シャリーさんに引きつった笑顔を見せる。名前だけはヒロイン並みのオカマだなぁと思った。

「それで、今回ショウ君にお願いしたいのは…これよ」

「薬草採取…いいですね!」

薬草採取。転生物の名物と言っても過言ではない依頼である。転生した主人公達はまず薬草の依頼を受けるのが鉄則だったりするのだ。これは一度俺もやってみたかった!

「わかりました。いっぱい取ってきますね」

「はぁい。薬草は10個1束で銀貨2枚だから、結構稼げると思うわぁ。頑張ってね」

シャリーさんは最後に俺に向かって投げキッスをしてきた。依頼の紙を凝視して気付いてない振りをした。

 

「はぁ…はぁ…いや…きつ…やば…」

俺は街から出て1時間、汗だくになっていた。

「薬草採取って、なんか、簡単そうじゃん…いや、取るまでがキツいわ…」

森の中は舗装されてない山道が続いている。しかも薬草が採取できる場所の周辺には勿論、薬草以外の植物が沢山生えている。つまり、間違えたら水の泡。この努力も虚しく消えてしまうのである。

「…しょうがない、ここで使っちまうか…?転生得点の【転生継承】…ん?なんだ…?」

森の中がざわつく。耳を澄ませると、遠くから風を切るような音が聞こえる。自然の風ではないような…。

「もしかして…魔法か!?」

俺は急いでその方向へ向かった。"魔法"…もし本当にそれなら初めて見る。期待に足取りも軽くなる。木々や雑草をかき分けて、その音が鳴った方へ向かう。

しばらく進んでいると、音はどんどん大きくなっていった。風を切る音と共に、何かが何かにぶつかる音や、木が倒れるような音が聞こえる。開けた場所が見えてくる。

「…!あれは…」

木の後ろに身を潜めつつ、様子を伺う。するとそこに居たのは巨大な猪と、ローブを深く被った人の影だった。ローブの人物は息が切れていて、岩に追い詰められている。

「…もしかして…かなりピンチなんじゃ…」

だが、先の山道でかなり体力を消耗していて、尚且つ助ける必要があるのか分からない戦い。この世界で生まれていたならこれがどういう状況なのか理解できるのだろうか。

「…風の声よ、鋭くなりて、貫け!」

ローブの人物がそういうと、風がその人物の上に集まり始め、少し音がなったかと思うと、猪の体には切れ込みが入っていた。猪もかなり消耗していて、辛そうにしている。

「ブモォォォォ!!!」

猪が雄叫びをあげると、ローブの人物目掛けて突進した。ローブの人物はそれを既の所で交わす。猪はそのまま岩に激突し、頭を強く打ったのか動かなくなった。

「はぁ…はぁ…」

残ったその人影のローブが風に晒されて顔が見える。みた瞬間、ドキッとするような感覚に襲われる。金髪の長髪に凛とした整った顔立ち、碧眼。そして何よりも、その耳に注目が言った。

「…エルフだ…」

「!?」

思わず呟いてしまう。その声が聞こえたのか、彼女はこちらをすぐさま振り向く。そう。彼女。そのエルフは女性のエルフのようだった。

「す、すまない。盗み見るつもりはなかった」

潔く彼女の前に出る。バレているのだから隠れているだけ怪しまれるだけだ。にしても…エルフめっっっちゃ可愛いんですけど!?てか、女性って事はさっきの呪文の詠唱の時から分かってたから!?期待大でしたよ!?まさかのエルフ!俺の心は初の女性ってだけでドキマギしちまってるんだが!?

「…貴方は誰ですか」

しかも敬語ー!敬語だって!いやもしかしたら結構ラフに話す人なのかもしれない!でもさ!敬語ー!いやー素晴らしい。スタンディングオベーションで彼女を褒め讃えたい。どんな君でも俺は素敵だと思うよ。うん。

「俺は冒険者だ。薬草採取の依頼を受けて森に入ったら、大きな音が聞こえてその方向に歩いていたら、君が戦っていた」

「…そうですか。失礼しました。剣を抜こうとしてしまって」

あれ?剣に手をかけてたんだ。気付かなかったなー俺の視界にはその高貴で気高い耳しか写ってなかったもんなー。あー、触りたい。

「気にしないでくれ。慣れてる」

言ってみたかったセリフ言えたし、もう俺満足かもしれん。

「…では私はこれで…ッ!?」

彼女が剣を抜く。え、やっぱ俺殺されちゃうの?ごめん。耳だけ見てるみたいに言ってるけど実はその豊満な胸も見てたりしてたかも知れない本当にごめんなさい!

「早く逃げて!」

「え?」

後ろを振り向くと、先程の猪よりも一回りも二回りも大きい猪がそこに居た。

え?俺死んだ?

「…!」

猪が巨大な体で俺にのしかかってくる。あ、これ死んだわ。転生して早5時間弱。それだけでも楽しかったよ…ありがとう…。あと…満足したりねぇや…。

目を瞑ると走馬灯が見えた。しかし、それは強い衝撃によってかき消された。猪に押し潰されたんじゃなく、それは突き飛ばされたかのような感覚。ゆっくりと目を開けると、目の前には猪の下敷きになった彼女の姿があった。

「え、え、嘘だろ…」

猪も息をしていない。傷だらけの姿をみるに、恐らく彼女はこの猪とも戦っていたのだろう。そして、猪は最後の力を振り絞って彼女を倒したんだろう。

「待てって、おい!しっかりしろ!」

彼女の首元に手を当てる。…どうやら脈はあるようだ。人間と同じ場所に脈があってよかった。

でも俺にはどうする事も出来ない。猪を持ち上げる事も、彼女を引っ張り出す事も。そこまでの力を持っていない。

「くそ…どうする…どうするよ…」

そこでハッとする。ある事を思い出した。転生特典の事を、思い出した。

「…!仕方ない!もう少し勿体ぶりたかったけど…命の恩人の危機だもんな、恩は恩で返さないとな!」

そして叫ぶ。転生特典のスキルの名前を。

「【転生継承】!!!」




第二話です。ゆっくり投稿していきます。
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