継承の転生者(仮)   作:鳥飼緋衣

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【登場人物】

鴻池 翔(おおとりいけ しょう)
・本作の主人公。異世界転生系の作品を読み漁って知識を身に付けた。義務教育をラノベで終わらせた男。
エリル・ラ・キングフォルト
・本作のヒロイン。エルフ。
シャリーさん
・本作のヒロインじゃないオカマ。



第三話 正体

組合の2階から上は宿屋になっていて、冒険者はそこで寝泊りをする。気を失っている彼女を宿屋の部屋を借りて寝かせていた。シャリーさんは「ツケでいいわよん」と言ってくれた。

「ん…ここは…」

彼女が目を覚ます。横の椅子に俺は座っていて、彼女はまだぼんやりとしている。

「目が覚めたみたいだな」

俺の声を聞くやいなや、彼女は起き上がり俺の方を見て身構える。その目付けはまるで警戒した目付きのライオンのようだった。…まぁライオンを写真以外で見た事ないんだけど。

「…どういう状況か、お話を聞きたいのですが…」

彼女はその状態から体勢を変えない。余程警戒しているのだろう。

「約2時間前、森に薬草採取に出てた俺はお前に会った。それは覚えてる?」

「…ええ、それで私は貴方をジャイアントボアの攻撃から庇った。そこで意識が途絶えている。その先が聞きたいのです」

「分かった。それと、最初に言っておくが、誰にも貴方がエルフだと言うことはバレてない。そこのローブを被せて運んだからな。そこは安心してほしい」

部屋の椅子にローブは掛けている。彼女はその話を聞いて少し安心した様子だった。

「そしてここに来るまでの経緯だが…ここからの話は誰にも話さないと誓って欲しい」

「…わかりました。貴方が私の事を隠してくれている以上、誰にも話しません」

「…よし、実はな…」

重々しい雰囲気で俺は話し始める。彼女にスキルの名前と詳細は伏せるが、【転生継承】についてだ。

「…俺は回復術士なんだ」

「…え?」

これは賭けだ。この世界で回復術士が居るのか居ないのか、希少なのか希少ではないのか。何も分からないうちから名乗ってしまうのはかなりリスキーな行為だ。

どうだ…反応は…!

「…成程、回復魔法のユニークスキルという訳ですか…」

警戒していた彼女は姿勢を変え、寝ていたベッドに腰掛けた。

「…そうだ」

ユニークスキル!成程…てことは希少も希少、超希少なのね!あっぶねー!そこら辺でポンポンやってたら拉致られてたかもしれんな…。

「ですが、回復のユニークスキルなんて聞いた事がありません。調合師と言うポーションを片手間に作れて性能も上げることが出来るユニークスキルは知っているのですが…」

「…俺は遠い東の国から来たんだ。ここでは俺の噂も流れてないさ」

ポーション作れるってだけで凄そうだなこの世界は…まぁいい。とりあえず説明にはなっただろう。

「証拠は何よりも、君の瀕死の傷を完全に治しただろ?それで信じて貰えないだろうか」

「…そうですね。分かりました。信じます。この度は命を救って頂きありがとうございます」

「いや!ちょっと待って!」

「…?」

それはおかしいだろ!勝手に割り込んだのは俺で、邪魔したのも俺!そんで最後は相手の攻撃から庇ってもらって死にかけたんだぞ!?もっと罵詈雑言が飛んできてもおかしくない!

「…ええと、俺は貴方に助けられた。だから助け返した。それだけだ」

「何で少しカタコトなんですか…いえ。ですが命を救って頂いた事は事実。そしてあの時、ボアに囲まれていて重症を負っていた事も事実です」

んー、誠実!とても誠実で真っ直ぐな人だなぁ。かなり好感持てちゃうね!しかもめっちゃ可愛いし!いいね!

「…こちらこそ、助けてくれてありがとう。もし良ければ、名前を聞かせてくれるかな?」

その時、彼女は心底驚いた顔をした。

「え、あの。私の事をご存知ないのですか…?」

「え?知らないけど…」

少しの沈黙。そして彼女はローブが掛かっている椅子まで歩いていき、ローブの中にある紙のような物を取り出し、俺に見せた。

「これです!見た事ないんですか?」

「あー、街中にいっぱい貼ってあるよね。猫のチラシの横とかに貼るって温度差どうしてんのかと…ん?あれ?」

そのポスターをよく見ると、そこには彼女にそっくりの女性が描かれていた。…というか、瓜二つ。

「…あのー、つかぬ事をお尋ねしますが…」

冷や汗をかきながら彼女に尋ねる。

「なんですか…急に敬語になって…」

生唾を飲み込み、彼女に真相を聞く。

「貴方が…この壁紙の…?」

「…はい…」

…こういう転生物もあった気がする!

 

「私は遠いエルフの国から来ました。エリルと言います。エリル・ラ・キングフォルト」

「なんか敵の守護霊の名前みたいだな」

「え?守護霊?」

「いや、何でもないです」

彼女…エリルさんの話を要約するとこうだ。エリルさんはエルフの国のお姫様で、2ヶ月前、エリルさんが住んでいたエルフの国で大規模な反対運動が行われた。理由は簡単で、エルフは長年外界への出入りを禁止していた。つまり鎖国状態だったそうだ。若いエルフ達は外の世界に憧れていて、反対運動をしたと。しかし問題はここからで、いきなり物騒になるが何者かが便乗して王を殺害したらしい。

「最初は反対運動の首謀者のうちの誰かがやったと言われていましたが、王の殺害が不可能である可能性が高いという結論になり、その時近くに居たはずの私に矛先が向きました」

「成程、それでお姫様は国から逃げてきた訳か。反対運動をしていない国民は怒り狂うだろうな。反対運動の黒幕で王を殺した悪魔のような姫を。それでこの惨状か」

「信じてください!私はやってません!」

「ああ、信じるよ」

「信じてくださ…え?」

「だから、信じるって」

正直な話、鎖国状態にして国民の反感を買ってもなお話し合いをしなかった王も悪い気がするし、俺を助けてくれたこの人がやってないと言うんだ。やってないんだろうなってなるだろ。

「…ありがとうございます…信じて頂いて…」

「全然いいよ。それより、これからどうするんだ?その事知らなかった俺はエリルさんを冒険者…賞金首を捕まえようとしてる連中の巣窟に連れてきてる訳だけど…」

「そうですね…夜中にこっそり抜け出すとかは…」

エリルさんが考えている。まだ妙案は思いついて居ないようだ。俺は多分この時ニヤニヤしてたと思う。気持ち悪い程。

「俺にいい考えがあるんだ」

「…?」

「ちょっと後ろを振り向いて貰ってて良いかな」

「わかりました」

恐らく"もう使えるはず"だ。瞳を閉じ、ゆっくりと深呼吸をして、あの言葉を小さな声で呟いた。

「エリルさん」

「なんですか?」

「…ちょっとくすぐったいぞ」

「え?」

 

宿屋の階段を降りるとすぐ側にはカウンター兼受付がある。俺は堂々と酒場のフロアへと降りた。

「あらぁショウ君。さっきは大丈夫だったぁ?心配してたのよ?」

「はは、シャリーさん。大丈夫ですよ。今は"彼"も落ち着いてるみたいですし」

「そう、それは良かったわぁ。それで、出掛けてくるの?」

「はい。薬草採取の途中でしたので」

「そう、いってらっしゃい。気をつけてね」

「はは、ありがとうございます。いってきます」

行ってくる直前に抱きしめられそうになったが、既で避けて気付かない振りをした。

 

街からかなり離れた場所。先程の森の中に俺はいた。勿論、組合を出る時にエリルさんは傍には居なかった。そう、「傍にはいなかった」のだ。

「ここら辺で良いかな。よいしょ…っと」

空気中に手をかざす。深呼吸をする。

「《展開》」

すると何も無い空間から突如としてエリルさんが飛び出した。エリルさんは眠っているようだ。

「エリルさん、エリルさん。」

「ん…んー…」

「お、起きた起きた」

寝ぼけ眼を擦りながら、エリルさんが目を覚ます。この人の寝起きを早くも二回も目撃してしまっている。俺、役得だなぁ。

「! え!あれ!?外…?」

「そうだよ。さっき居た森だよ」

「…えっと、もしかしてワープですか…?」

「いーや、ただ運んできただけ」

「私を担いでですか?どうしてまた…」

エリルさんは困惑している。それもそうだ。いきなりこんな所に居るんだもん。恐ろしく速い収納。俺でなきゃ見逃しちゃうねって感じっすわ。

「…エリルさんには話しても良いかな」

俺はかなり渋るようにして言う。いや、実はめちゃくちゃ言いたかった。話したかった。めっちゃ自慢したかった。

「はい…なんですか?」

俺は今、満を持して言う。この力の正体を…。

「これはユニークスキル《収納魔法》の力だ」




第三話です。ゆっくり投稿していくかもしれません。
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