続ける予定は多分あります。
鍛えられた肉体に、それらに付く傷の数々。
ただの一般人が見たならば、一瞬で気絶する程に強い覇気を宿したその男は、世に蔓延る凶悪な新世界の海賊たちの中でも、知らぬものはいない程に有名だ。
彼の名前はディック。ディック海賊団の船長で、懸賞金は10億5000万ベリー。
そんな彼は今、それなりに長かった人生の中でも一、二を争う程に動揺していた。
だがそれは仕方ないのかもしれない。
それは何故か? 彼が今いる場所は慣れ親しんだ海賊船の中ではなく、見知らぬ場所にいたからだ。
周囲に建ち並ぶ高層ビルの数々。走る自動車やバイク。そして今、自分に(自分が知るものよりも小さいが)銃を突き付けている二人の男。
勿論であるが、海軍によって懸賞金が10億を超えた男の強さは凄まじく、銃を突き付けられている現状でもこの二人を殺すことは、とても容易である。
しかし、それでもディックがそれをする素振りはない。それはディックが動揺しているからでもあるのだが、そんなことよりも彼の心の中には、喜びがあった。
(まさか、まさか――!)
信じられない、有り得ない。そんなことを考えるが、しかしそれでもディックの目に映る懐かしい光景が、それを否定する。
そう、彼は現代日本で死んだ元オタクが転生した、
気付いたらワンピースの世界へと転生してしまった彼が、憧れと共に海賊となり、順風満帆に海賊ライフお楽しんでいたのだが、目を覚ますとこんな状況に。
長年思い描いていた、故郷への帰還。それが叶ったことにディックは取り敢えず喜んだ。
しかし、喜び過ぎて雄叫びを上げてしまったのがいけなかった。
すぐに警察が集まり、そこから出てきたエージェントっぽい男二人が銃を取り出し、そして現状へと至る。
さて、どうしたものかと考える。
新世界の海賊たちは皆が化け物であり、食べた者に不思議な力を与える悪魔の実の能力者であることが多い。
それはディックも当てはまり、ある海賊団を襲ったときに奪った積荷の中にあった、
違う世界で果たして能力を使えるのかという疑問があるし、使ったら確実に騒ぎが起こるため使う選択肢はない。
他に取れる選択肢は、諜報機関CP9が使う技である、六式を使った攻撃か。もしくは覇気を纏った攻撃か。
しかしその二つの攻撃手段は、能力を使った攻撃程ではないにしても、殺傷能力は十二分にある。覇気に至っては非能力者の主な攻撃手段でもあるわけで、その力は計り知れない。
(別に、無理に戦わなくても良いんだけど⋯⋯)
そう、別に戦わなくても良いのだ。銃を向けられているからこそ、戦うという選択肢が強いだけで、まだ他にも取れる手段はあるだろう。
しかし、自分は彼らからすれば突然現れた、凶悪な顔付きの怪しげな男だ。傍から見れば犯罪者の匂いがプンプンするし、実際に懸賞金を
そんな男の話を素直に聞くだろうか? 大多数の人は聞かないだろうし、聞いたとしてもやはり、疑いは必ず掛けられる。
ましてやそれが、別の世界から来ました、などとほざいたのならば、いよいよ頭を疑われるだろう。
「お前は何者だ? 通行人の証言では、急に煙と共に現れたとあるが⋯⋯」
銃を突き付けている男の一人が、深く響く声でそう言う。
その顔色は、僅かな疲れと、困惑。男もわけが分からないのだろう。
「俺たちは公安0課⋯⋯任務中における殺傷権限が存在してる。なるべく殺りたくはないが、な」
(公安0課⋯⋯? 公安は公安警察のことか⋯⋯? ダメだな、記憶が曖昧だ)
聞きなれない言葉に、ディックは昔の――自分が日本で暮らしていた頃の記憶を頭の中で引っ張り出そうとするが、上手くいかない。
だがそれは必然だ。何せこの世界は――ディックの思う、日本とは違うのだから。
この世界もまた、ワンピースの世界のように、物語の中。
物語の名前は、緋弾のアリア。
銃刀法改正により個人の帯銃が許可された日本。
そして、それらにより激化する犯罪を取り締まるために生まれた武装探偵――通称武偵。
その物語に登場する組織の一つが、公安0課なのだ。
「⋯⋯俺も分からない。気が付いたらここにいた」
取り敢えず、戦いにならないならばと思い、話に乗ることにした。
「⋯⋯そうか。なら詳しく話をして貰うために、ちょっとご同行してくれるか? 抵抗はするなよ?」
「分かった」
そんな流れで警察署に連行されたディック。落ち着いて話をできそうなのがここしかないと言われ、取調室へと案内されたのだが⋯⋯。
(キツネ耳⋯⋯!?)
そう、そこにいたのはキツネ耳をした女の子だったのだ。
十四~十五歳程に見える幼い外見に、その身を包み込む巫女服。さらには頭に二つのキツネ耳と、お尻の方に一本のもふもふな尻尾がある。
「おう、お前が問題の子か!」
その少女は、とても可愛らしいアニメ声で、男のような口調でディックにそう言い放つ。
「問題⋯⋯?」
「ああ、そうだ。突然現れたというから
そこで一息つくと、
「お前、この世界の住人じゃないだろ?」
衝撃的なことを問いだした。