「⋯⋯!!」
その言葉を聞いた瞬間にディックが思ったことは、単純な驚き。そして喜び、だ。
自分の状況を説明するという手間も省けるし、自分がこの世界に来た理由も分かるかもしれない。
だからこそディックは驚き、喜ぶ。⋯⋯まぁ、あまり表情には出さなかったが。
「どうして、それが⋯⋯?」
そして尋ねる。何故その答えに辿り着いたのか、と。
「ん、まぁな。俺はこれでも数百年は生きてる。だからこそ、お前みたいなこの世界以外の住人は何度か会っている。そのときに見た雰囲気と似てるんだよ、お前」
「ってか、お前ヤバすぎないか? これでも俺、0課の中でもそれなりに強い筈だが⋯⋯お前の実力が分からねぇ」
そう話すキツネ耳美少女の顔は、困惑の色が強い。
因みにキツネ耳美少女の実力は、公安0課の八式――即ち八番目に強いわけだが、そんな彼女でもディックの実力が読めない。
いや、正確に言えば読めるっちゃ読める。だがそれは誰にでも分かるような、見え透いた実力であった。
「⋯⋯確かに、俺はこの世界の住人じゃない」
取り敢えず実力に関する質問を無視したディックは、この世界の住人ではないことをキツネ耳美少女にカミングアウトする。
「そうかそうか⋯⋯因みにだが、お前のいた世界はどんなものだった!?」
そう聞くキツネ耳美少女は、未知の話に興味津々っ! という感じの、傍から見ればただの無邪気な子供のようであった。
だからディックは彼女に、自分の世界を話してみようと思ったのだ。
「俺がいたのは、海賊が多い世界だったな――」
勿論ディックが話すのは、ディックがディックになった世界の話だけであり、それよりも昔――日本にいた頃の、単なるオタクだったときの話はしない。
この頃の話なんて対して面白くもないし、あの記憶も蘇る。ディックの心を未だ蝕むそれを。
だから話さない。これを話すのは、とても大切な人だけだから。
■
「――お前、これからどうする?」
自分の世界の話をし、心なしか少しだけ仲良くなれた(ような気がする)ディックとキツネ耳美少女――名前を
「これから、どうする⋯⋯?」
「お前は前の世界じゃ海賊のようだったが、今は無職だ。この世界も何もしない者には厳しい」
そう言われて、気付く。確かに自分は無職だということに。
例えディックがどれ程に強かろうとも、職が無ければ飢えて死ぬ。それは自然の摂理であり、当然のことだ。
「⋯⋯賞金稼ぎ、とか?」
「今の世の中じゃ、賞金稼ぎは溢れてる。フリーの賞金稼ぎになったところで、高が知れてるな」
白火が説明するには、今の日本ではただのチンピラでも銃を持っていることが珍しくないという。
だからこそ犯罪も激化するし、それに対応するものたちもまた、強いし多い。
「それじゃあ、どうすればいいんだ?」
「お前にはウチに入って貰おうと思っている」
「ウチ⋯⋯?」
「そう、俺たち公安0課にな」
そのことに少し、いやかなり驚いたディック。その顔は面白いことになっている。
「ま、ウチは元から殉職率が高くてな⋯⋯お前みたいな戦力は大歓迎なんだよ」
「成程⋯⋯そういうことなら」
そんなこんなでディックは、公安0課へと就職したのだった。