突然だが六式というものはとても強い。
覇気などがあるからあまり存在感がないかもしれないが、それでも諜報機関や海軍中将、海賊などが使うぐらいには強い。
六式はその名の通り六つ存在するのだが、応用などを除けばその中に存在する攻撃技というのは二つしかない。
指で突き刺す攻撃である
これらを応用した技の中にも様々な攻撃手段があるし、ディックの食べた悪魔の実の能力を組み合わせたオリジナル技もある。
ともかく、六式というものはとても素晴らしい体術だ。
「ぐ――が、っは」
つまり、ディックが実力確認のための模擬戦にて六式を使用し、相手を圧倒してしまっても⋯⋯仕方ないのだ。
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ピピ―ツ と終了を告げる笛の音が鳴る。
それを聞いて警戒を解いたディックだったが、直後に白火により詰問されたのは言うまでもない。
「お前が強いのは分かっちゃいたが、ここまでかよ!?」
そうディックへと話す彼女はまるで、新しい玩具を買ってもらった子供のようであった。
「お前が蹴ったと思ったら何故か相手が斬られてるし、それで呆然としてたら指で鳩尾を突いてたし。⋯⋯あれも向こうの世界の技か?」
「ああ、そうだな。あれは六式といって、あっちの世界の諜報機関員が使っている技だ」
「へぇ。⋯⋯ん? お前って海賊だったんだろ? なんで諜報機関員の技なんて知ってるんだよ」
「新世界⋯⋯俺が旅をしていた海じゃ、これを使う奴は多かったからな。何度か戦闘する内に覚えていったんだ」
「それはそれは⋯⋯すごいな」
ディックは何てこともない風に話すが、実際に六式を見様見真似でやろうとするのは、確実に無理だ。
⋯⋯だが、ディックはゾオンの能力者である。さらに言えばレア中のレア、幻獣種である。
ゾオンの能力者は他の系統の能力者と違い、純粋な肉体ステータスが強化される傾向にある。そして六式はゾオンと相性が良い。
何が言いたいかと言えば、ディックは六式という存在を知る前に、それらに似た技を使っていたのだ。
そして六式を知り「何それ格好いい」とオタク魂が響き、とにかく練習をやりまくった結果覚えたものであり、正確に言えばディックが覚えているものは六式ではなく、六式モドキである。
「⋯⋯お前の戦闘能力なら問題はないな」
「ん? 何がだ」
「お前のやる、初仕事だ」
「⋯⋯随分と早いな」
「元々が俺と、今そこで寝そべってる奴の仕事だったんだがな⋯⋯あいつより強いんだ。上も文句は言わないだろ」
「おいおい」
そう言いながら二人は、先程ディックの攻撃で気絶した男を医務室(とは名ばかりの休憩所)のベッドに置いていき、警察署の正面玄関へと移動する。
「そう言えば俺、何をやるんだ」
直前に渡された服に着替えながらそうディックが尋ねると、
「んー、国際テロ組織への強襲?」
「何で疑問形なんだよ⋯⋯ってか、テロ組織?」
「おう、名前は何だったか⋯⋯」
少し考える動作をした後に、白火は思い出したように
「Nだ」
その名を、口にした。