暗い魂の乙女   作:Ciels

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アノール・ロンド、巨人の鍛冶屋

 

 

 

 ソラール達と別れて客間の通路を抜ければ広い通路にやって来た。どうやらここは神々のサイズにも合うように設計されているようで、左右にある小さな通路を除けばどこもかしこも広い。きっと正面玄関になっている門は、先程私達が開こうとして開けられなかった門だろう。

 ちらりと通路からその広間を除けば、何やら最奥には霧がかかっている。その霧を守るように巨人騎士達が立ちはだかっているのを見るに……なるほど、この城の主がいるようだ。

 

 だが目に見える物だけが全てではない。それは唐突に、視覚外からやってくるものだ。渡りの凍て地にて私達を苦しめた銀騎士の大矢。それがどこからともなく私達に降り注いできたのだ。

 城内にも弓兵を配置する辺り、神々もこの本城の広さにおけるデメリットを理解しているのだろう。これだけ広ければ剣を備えた兵だけでは警備しきれまい。

 

 そんな窮地ではあるが、何やらオスカーには策があるらしく慌てず私に何かの紙切れを渡してきた。

 それは魔術の文言が書かれた紙巻、つまりはスクロールだった。どうして彼がそんな物を持っているのかは知らないが、確かにこれは使えそうだ。

 

 魔術師の杖を触媒にし、私はオスカーから貰ったスクロールの内容を頭の中で唱える。するとどうだろうか、たちまち私の身体は透けて遠目には全く映らないくらいの透明人間になってしまった。

 魔術、見えない体。古い亡国の魔術であるそれは、自らの光を屈折させ消失回避にうっすらと見える程度で姿を隠す。それはヴィンハイムの魔術師達が知らぬ、神秘のような魔術。

 

「よくこんなスクロールを持ってたわね」

 

 そう尋ねればオスカーは少しだけ言い淀んでから答えた。

 

「ああ、まぁ、冒険の賜物さ」

 

 深くは詮索しない。今はまず銀騎士達を葬らなければ。

 

 

 如何に神族の兵士と言えども見えない相手というのは非常にやり辛いものがあるようだ。

 大弓を携えて今か今かと待ち構える彼らの背後から、私の斧槍が胴を貫いた。それを数回繰り返せば……なんて事は無い、大弓銀騎士達は須く聖職者の不死に惨殺されたのだ。これは良い、戦略にも幅が出る。あまり魔術が得意ではないオスカーの代わりに有効活用してやろう。

 

 そうして、一先ず私達は濃霧へと向かわずに寄り道をする。もしかすればこの先にあの裏切り者がいるかもしれないだろう?

 だが実際居たのは巨人だった。それも鍛冶屋。最初こそセンの古城と同じように敵かとも思ったが、私達を見た巨人は拙い言葉で手を止める事なく話しかけてきた。

 

「あんたら、誰? 武器、鍛えるのか?」

 

 カンカンと、力強いアンドレイとは異なる繊細な手付き。どうやら私達をここの兵か何かと勘違いしているのだろうか。

 

 巨人の鍛冶屋は確かに腕が良いらしい。きっとあのアンドレイよりも、鍛冶屋としての腕は勝るのだろう。試しに斧槍とオスカーのアストラの直剣を預けてみれば、アンドレイよりも素早く彼は武器を強化してみせた。どうやら黒騎士の斧槍に見覚えがあるらしく、一口二口何か懐かしさを口ずさめば、彼は黙々と作業をする。

 鍛冶の音は嫌いではない。静寂の中に広がる金槌の音。それは森の中の風の音のように心地が良い。案外私は鍛治なんか向いているんじゃなかろうか。

 

 しばらく私とオスカーは巨人の鍛冶屋のそばで強化を待つ。今はオスカーのクレイモアを強化してもらっている所だ。

 オスカーは不死となっても眠る事ができるようで、まるでジークマイヤーのように船を漕いでいる。なんで私は眠れないのか不思議だが、眠らなくても疲れは溜まらず頭も鈍らないのだから、それで良いではないか。

 

 

 その時だった。不意に鍛冶屋の開いた大扉から誰かがやって来る。

 

「頼もう! 頼も〜う!」

 

 老人のようで若人のような、なんとも言えぬ声色が響いた。咄嗟に私とオスカーは手持ちの武器を構えて声の主を見据える。

 

「うん? なんだ、今日は先客が居たか」

 

 それは、銀騎士。アノール・ロンドに来てから何度も目にしている銀騎士の鎧に、しかし担ぐ獲物は銀騎士のスマートな鎧に不釣り合いな程に大きな大槌。それは銀騎士の武器と言うよりも、むしろ黒騎士の意匠を深く感じる。

 初めて銀騎士が喋る所を見た。武具を構える私達を見ても敵対する様子を見せないその銀騎士は、一直線に作業をする巨人の鍛冶屋の下へと向かう。

 

「あんた、また来た」

 

 巨人鍛冶屋がそう言うと、銀騎士は獲物の大槌を肩から下ろす。

 

「うむ。良い楔石が手に入ってな、折角なんで凱旋がてら鍛えて貰おうと思ったのよ」

 

 何やら私達そっちのけで話が進んでいく。

 

「今、私達が武器を鍛えてもらっているのだけれど」

 

 銀騎士相手にも私は割って入る。話が通じればそれで良し、通じなければ斧槍を通す。銀騎士はうん?と言って私をまじまじと見詰めれば、先程の豪快な口調とは打って変わって静かに語る。

 

「……貴公、不死か」

 

 静けさとは、不吉の前触れでもある。しんと静まり語りかけるその銀騎士から溢れる威圧感は、前に対峙した黒騎士を遥かに超えている。

 武器すら構えず、ただ話すだけでここまで威圧するなど並みの者が出来るはずも無い。こっちから話しかけておいて、私は黙り込んでしまった。じっとただ、バイザーから僅かに見える赤い瞳と視線を交わす。

 

「……だったら何だと言うのだ」

 

 そんな私と銀騎士の間に、オスカーが入り込む。正直言えば助かったし、この時のオスカーはいつもよりもかっこよく思えた。この上級騎士様はやる時はとことんやる。

 銀騎士とオスカーはしばらく睨み合う。睨み合うと言うのは、こちらの一方的な思い込みかもしれない。だって相手は神族で、私達は人間なのだから。一々下々の者相手に無駄な敵意を向けるほど、神は暇ではない。

 

「……ふむ、貴公。良い薪だ」

 

「なに?」

 

 不意に銀騎士がそんな事を言った。

 

「大王の器足り得る、良い瞳をしている。それに若い。良い騎士なのだろうな、貴公は。信ずる主人とともに死ねる程、潔い」

 

 それはオスカーに対する賞賛だった。そして自らに対する皮肉でもあるのだろうか。

 

「そして貴公もまた、実に人らしい。良い人間性だ。灰とは、そのようなものなのだろうな」

 

 彼の視線が私を捉えた。言っている意味は分からないが、どうやら褒めてもらえているらしい。

 

「あいや、すまんかった。どうも私はせっかちでな。ちょいとばかり熱が入ると周りが見えなくなるものよ」

 

 先程までの威圧感が消え、銀騎士は頭を下げる。喋るというだけでも珍しいのに、どうやらこの銀騎士は礼儀というものを分かっているらしい。彼は当初の豪快さを取り戻せばバンバンとオスカーの肩を叩き笑った。

 

「うむ、うむ! 若い騎士は大切にせねばならんからの!どれ、私はしばしここで待つことにしよう。ああいや、皆までいうな、これでも異端と呼ばれた銀騎士。生温い他の銀騎士とは異なりどこでも寝られる戦士よ」

 

「え?」

 

 私達の言葉が重なる。一方的に会話を進めた銀騎士は、部屋の角っこに腰を据えるとそのまま居眠りし出した。なんだ、ジークマイヤーと話しているのか私は。

 静かな鍛冶場に豪快ないびきが重なる。はぁ、と溜息を吐く巨人鍛冶屋はクレイモアの強化を終えるとオスカーにそれを手渡して言った。

 

「終わった。俺、仕事できたから。ばいばい」

 

 言い終わり、巨人鍛冶屋が銀騎士の獲物を握る。まるで鉄塊のようなそれに、私の斧槍と同じく光る楔石を重ねて加熱させた。

 なんだかよく分からないが、どうやら話せる銀騎士もいるようだ。疲れるから積極的に話したくはないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 手に入れた時の斧槍も、それはそれは強力な武器だった。一度振るえば不死はもちろん大抵の相手を薙ぎ払える重量。そして生半可な盾などそれごと切り捨てられる鋭さ。

 ああ、私の選択は間違っていなかった。何度も死んだが黒騎士から奪った斧槍は、今では光る特別な楔石に強化され神の武器に近づいていた。

 濃霧を守る巨人騎士でさえも敵ではない。流石に大楯は斬り伏せられないが、鎧すらも貫く一撃は容易に魂を狩り取る。あっという間に私達が巨人の兵士を屠れば、濃霧はあっさりと目の前にあった。

 濃霧に手をかけるオスカーが言う。

 

「神の都アノール・ロンド。そこを守るは神か、それとも……」

 

「御託はいいわ。さっさと行きましょう」

 

「風情が無いなぁ君は」

 

 こんな物騒な場所で風情も何もない。楽しむのは景色だけで十分だ。

 そんな、しかし実際はきっと緊張を隠すためのやり取りをしてから濃霧に挑む。だがその直前、不意にパンツのポケットが震えた。はて、ポケットに何か入れていただろうか。小物は総じて(ソウル)に収納しているはずだが。

 

 手をポケットに入れてみれば、確かに何かがある。それは球体。取り出せば、何とも気味の悪い……真っ黒で瞳のあるオーブだった。

 うわっ、と気味悪がるもすぐにそのオーブの(ソウル)を読み取り意図を理解する。自分の瞳の奥に暗い炎が宿った。

 

「どうしたんだい?」

 

 突然ポケットに手を突っ込んで立ち止まる私を見て不思議がるオスカーに、なんでもないとだけ告げてから、そのオーブを(ソウル)へとしまう。

 なるほど。どうやら目的のものもここにいるようだ。それは良い、早くここの主を倒して奴も殺しに行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人とは恐ろしいものだ。

 

 自らの内に潜むものに目を背け続け、しかしいざそれが発現すれば神にすら手が負えなくなる。それをどうにかできるのは、同じ人間だけとは何と面倒な事か。

 闇とは、全ての生命への冒涜に他ならない。遍く光を覆い醜く変質させる闇とは、まさに猛毒よ。神すらも喰らうであろう闇を押さえ込むため自らを薪として捧げた彼の主は、やはり正しいのだろう。

 

 階下に目をやれば、配下の処刑人はいつものように大槌を撫でていた。

 神族ではなく、しかし人間ですらないその処刑人は残酷だ。姿を全て覆い隠すその黄金の鎧は大きく、そして醜く。圧倒的な力でもって大槌を振るい敵対者をすり潰す。奴はそれを楽しんでいるようだ。

 

 正直、彼はその処刑人を好んではいない。それでもこうしてこの王座を守護する者として協力しているのは、単に処刑人の忠誠心が極めて高いからだ。

 神でも無いのに神族よりも神に殉じるその精神は、彼からしてみても目を見張るものがある。例え彼らが守るものが偽りだと知っても、きっとあの処刑人は躊躇わないだろう。

 神の嘘のために、ひたすら戦い続けるだろう。そんな事、己が出来るだろうか。既に王は去り、しかし聖堂を守るために試練となるも忠誠は揺らぎ。

 

 処刑人を、少しばかり羨ましくも思う。

 

 本当に崇拝するべき上司は、もういない。彼が憧れ、共に戦った本当の戦士は、その父グウィン王により追放された。ありもしない罪のために、しかし不満を述べることもなく。

 

 その御方が去った日、彼は竜に乗って飛び去ろうとする戦士を止めようとした。竜に手をかけ、必死に懇願したのだ。それでも、その戦士は止まらなかった。

 

 ━━なすべき事を、なすのだ。

 

 ただ、それだけ述べて。その一言で彼を無理矢理納得させ。

 だからこうして、彼もなすべき事をなすだけだと、自らに言い聞かせる。今日もまた、珍しい不死達が薪になろうとやって来ているようだ。哀れだ。偽りを延命させるためだけの捨て駒だと言うのに。全てはあの末男の欲の先だというのに。

 

 だが、それでも。

 

 なすべき事のために、彼は槍を握る。

 

 獅子を象った鎧の下から、不死の男女を見詰め。

 

 竜狩りオーンスタインは、ただ目を背け立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 竜狩りオーンスタイン。それは古く、グウィン王に仕えた騎士の中でも最も優秀だとされている四騎士の一柱。神と古竜との戦いで、手にする槍と与えられた雷を用い竜を屠ったと言われる伝説。

 その神に最も近いであろう存在は、太っちょの処刑人スモウの横へと降り立つと私達に槍の鋒を向けた。

 

 とうとうデーモンとの相手から神を相手にすることになるとは。聖職者としてこれほど背信的な行為は無いだろう。我々の役割とは神々に仕え、その物語を民に伝える事なのに。きっと外の司祭達が見たら発狂するに違いない。

 

 だがそれが何の問題だ。立ち塞がるのであれば殺すだけだ。私はもう聖職者では無いし、そもそも信心深い方でも無い。神に信仰を捧げていないせいで扱える奇跡は回復だけだし、そもそもその僅かな信仰も奇跡という信仰の効果に対するものだ。だから私は、神なんて多少強い相手くらいにしか思っていない。

 問題は、その神々が須く強敵だと言う事だろうが。

 

 竜狩りは一直線に、物理法則を無視したかのようにこちらへ突っ込んでくる。長方形の大聖堂の端から端、百歩はあるだろう距離を一瞬で詰めた竜狩りは、真っ先にオスカーへと槍を突き刺す。

 

「くっ!」

 

 それを間一髪回避すると、オスカーと私は分断された。

 

「君はあの処刑人を!」

 

 幸い竜狩りはオスカーを相手する気満々で、のっそのっそと歩いて来る太っちょの処刑人も私に向かっている。二対二と思いきや、一対一の戦闘になるとは。しかも神族相手に。

 分厚い装甲を持ちそうな処刑人は、少し離れた位置から大きなハンマーを床に打ち付ければそのまま突っ込んできた。あれに轢かれたら私の体力では持たないだろう。故にぶつかる直前、私は横へとローリングしその轢殺から逃れる。

 

 大聖堂の綺麗で荘厳な柱すらも砕くその姿は、猛牛だ。自身の攻撃が回避され、しかし隙なく振り返りながら振るうハンマーは即死級の威力だ。互いに長い獲物同士、リーチによる優位性は無い。だが速度では私に大きく分がある。

 ハンマーを空振らせて、即座に斧槍の縦切りを叩き込む。硬い鎧は、しかしデーモンを相手にするために作られた斧槍により傷つけられた。

 

「……!」

 

 これには処刑人も驚いたらしい。警戒するように、じわりじわりとこちらへ詰め寄る処刑人は、見た目とは裏腹に頭が良いらしい。

 

 だがそんな事どうでも良い。早く殺し、私は見つけた手掛かりを手繰りたくて仕方ないのだ。

 ちらりとオスカーを見れば、素早い槍捌きに苦戦はしているものの実力は拮抗していた。防げない一撃は確実に盾で受け、攻撃の合間を縫ってクレイモアを叩き込んでいる。恐ろしい優男だ、四騎士相手にも屈せず戦い続けるとは。

 

 スモウの大振りの中段振りをバックステップで回避する。私はといえば、ただ反撃するのではなく相手の攻撃を見極めていた。

 ロードランでの戦いの経験で、分かった事がある。デーモンにせよ神族にせよ、得意な振り方、技というものはあるものだ。そしてその攻撃とは今まで実戦で通じ、自らの糧となっている。相手を屠る自信となっている。ならばそれを用いて戦うのは必然。

 

 私は戦士ではない。だからそういう型なんてものは知らないし、今扱っている斧槍だって読み取った黒騎士の(ソウル)から得た使い方と、私の個性を併せた使い方をしている。

 そして人とは、学習する生き物だ。一度見た事を忘れることはあれど、命の掛かった戦いで二度三度見たものを忘れる程愚かではない。

 相手の引き出しを確かめ、必殺の一撃と言わんまでも確実に攻撃する。それが私の戦い方だ。

 

 スモウのハンマーが、またしても私の胴を捉えるために振われる。それは今まさに見た中段振り。

 まるでバレリーナが如く、私は回転しながらしゃがみ込む。すると頭上をハンマーが掠めた。そして回転とは勢い。回転を止めず立ち上がり、そのまま斧槍を薙ぎ払う。

 回避回転薙ぎとでも言えば良いか。それは容易にスモウの片膝を切り裂いた。

 

「……〜!」

 

 たまらずスモウはその場に膝を付く。あれだけの重量がありそうな体だ、弱点は膝に違いなかった。

 回転を止めない私はそのまま斧槍を縦に振るう。重い斧槍の兜割りは、確かに大柄なスモウに届いたようでたまらず彼は尻餅をついた。

 

 致命の一撃。すかさず胴に飛び乗り、素早くスモウの喉元を斧槍で突き刺す。容赦などない。アイアンゴーレムではこの一撃が遅かったせいで手痛い反撃を喰らってしまった。

 だが神族の生命力を侮ってはいけない。確かに斧槍はスモウの喉元を貫いたが、それでも処刑人は暴れて私を遠ざける。

 喉元から出血するスモウはすぐに立ち上がれば、悔しそうにこちらを兜越しに睨んだような気がした。どうやら人間を甘く見ていたらしい。

 

 

 

 オーンスタインはと言えば、相方の処刑人がまさかの一撃を貰った事に驚きを隠せなかった。

 如何に卑下する者とは言え、あの処刑人は最強の狼騎士が抜けた後の四騎士に迎え入れるか否かと審議された程に強力な者だった。それなのに如何に黒騎士の武具を持ち、不死ではあるが人間の小娘如きにこうも容易く弄ばれるとは何たる醜態。

 しかしそれも頷ける。竜狩りが戦うこの特徴のない騎士もまた、想像していたよりも遥かに強い。かつて竜を屠った槍捌きでさえ見切られ盾で受け、そして躱していく。ああ、やはり人間は恐ろしい。闇とは変化の象徴だ。

 

 そしてその隙を逃す程、甘くもない。相手の上級騎士は、竜狩りの一瞬の停止の内に武器を切り替えた。それは直剣だが、祝福が施された上質なもの。そして人間と巨人の鍛冶に鍛えられ、今では銀騎士すらも容易く屠る。

 素早い直剣の振りをオーンスタインは避けきれなかった。鎧を貫く程でも無く、しかし確かに響く連撃にすかさず竜狩りは身を引く。

 

「手加減など、するものではないぞ竜狩りよ」

 

 近付いてくる上級騎士が呟く。だが仕方ないのだ。この戦いに意味を持てない竜狩りでは。犬にでも食わせておけば良い使命や真に仕えるべき主君のいない騎士では、誇りを持てるわけがない。

 

 竜狩りは誉れというものを見失っていた。ああも手傷を負いながら奮闘している処刑人と自分を見比べて、とうとうそんなにも落ちぶれたのかと自覚させられる。

 

 ━━なすべき事を、なすのだ。

 

 迷いとは、呪いのようなものだ。

 

 友達を深淵により失い、敬愛する戦士と使命すらも失った竜狩りは自嘲気味に笑った。

 

 




心折れたオンスタくん

百合ばかりの番外編を

  • 見たい。百合こそ人類の宝、ダークソウル
  • いやぁそうでもないっすよ
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