暗い魂の乙女   作:Ciels

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ロードラン/Into the Lordran
不死院、オスカー


 人とは、なんと愚かで醜い生き物だろうか。

 

 自らが制御出来ぬ、預かり知らぬ事に目を背け。人は須く安寧を求める。自らの平穏と引き換えに沢山の血と悲しみを齎しながら。自らが無知であり無力である事を理解しようとはせず、ただひたすらに堕落した進化を求める。そんな安らぎなど犬にくれてしまえば良いのに。

 

 陰る火に、人は何もしない。ただぼんやりとその陰りに対する焦りを滲ませるだけ。そうして彼らが選んだのは犠牲。不死と呼ばれる……死なぬ呪いを掛けられた哀れな者達を、かの地へと送る行為。

 人は言う。君は選ばれたのだと。人は言う。不死の使命を果たすのだと。けれど違う。本当は、不死を忌み嫌っているだけなのだ。ただ人とは違う業を背負いし者達を、追いやっただけなのだ。

 

 だから私もまた、こうして追いやられた。神々の地ロードラン、その北にある不死院……と言う名の流刑地に。世界が終わるまで、私はこの不死院の牢獄で待ち続けるのだろうか。何も果たせず、何も出来ず。ただぼんやりと座り込み。

 あぁ、やはり人とは愚かな生き物だ。何が使命だ、何が火を継ぐだ。そう言って貴様らは私から何もかもを奪ったのだ。気味が悪いからと、気持ちが悪いからと。そんな理由で。

 

 だがそんな怒れる感情も、最早どうでも良い。どの道私はここから出られず。数えるのも途方に暮れる程の長い年月はそんな気力すらも湧かせない。

 

 私は不死だ。死なず、ただ亡者になるのを待つだけの、哀れな落とし子なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 考える事を放棄するのは、想像以上に厳しいものだった。一人牢に閉じ込められ、何もする事が出来ぬ私はただ眠るようにぼんやりとしてはいたのだが。それでもどう言う訳か外の不死達のように自我を失う事だけは出来なかった。発狂すらも出来ぬ。ただひたすら、明確な意識だけを持って私は佇んでいるのだ。

 自分でも良く分からないが。柵越しに見える不死達のように、我を失いただ彷徨う事のなんと羨ましい事か。ソウルを求め、ただ蠢く事のなんと美しい事か。

 私は不死としても失敗作なのか。人としての失敗作である不死、そして不死としても不完全であるとは、余程神は私の事が嫌いなのだろう。ただの聖職者であるこの私を嫌うとは。かつての信仰を返してほしいものだ。

 

 数年。いや数十年か。もしかすれば数百年かもしれぬ。最早時間など覚えておらぬ。ただ私はずっと、牢に閉じ込められ終わりを待っているのだから。

 しかし眠る事も許されぬとは、なんとも言葉に出来ぬ苛立ちがある。せめて眠れれば時間などあっという間に過ぎるのに。夢を見れば、例え偽りでも幸せになれるかもしれぬのに。

 

 天井の柵から覗く太陽に手を伸ばす。

 

 あぁ、火は陰り、いつか訪れる闇の世界。そんなものどうでも良い。ただ私は、いつかもう一度あの太陽の陽を浴びたいだけ。優しく、暖かい陽に……

 

 

 

 

 

 

 死体が落ちて来た。

 

 

 それは青天の霹靂。久しく忘れていた驚きの感情を持ち、上を見上げれば誰かが天井の柵を開けてこちらを覗いている。騎士のようだった。それも生まれの良さそうな……兜のせいで顔は見えぬが、それでも瞳はこちらを向いている。

 死体と騎士を交互に見れば、騎士は何も言わずに立ち去る。待ってくれと、縋るように声を出そうにも、ソウルが枯れ果てここに来て声を出すなどしていなかった私の喉は呻き声程度しか上げられぬ。

 

 去ってしまった騎士のいた、天井を見てしばし放心していた。また、私は一人ぼっち孤独になってしまった。懐かしい絶望が、私のソウルを満たしかける。

 

 ふと。騎士が落としたであろう死体を見る。ソウルとは便利なもので、物質をソウル化し自身の中にしまっておけるのだが……何やらこの死体の枯れた身体の中に、ソウルがある。それは物質。私は死体に手を翳すと、そのソウルをもぎ取る。

 これは不死どころか、この世界の生き物であれば大概ができる業である。

 

「あ……あ……」

 

 掠れた声で驚いて見せれば、奪い取ったソウルを具現化させた。鍵だ。見紛う事なき、この牢の鍵が手に現れたのだ。

 久しく失われていた希望が蘇る。あぁ、やはり神は私を見捨ててはいなかったのだろうか。偉大なる薪の王グウィンに感謝しつつ、私は震える手で牢の鍵を開ける。ガチャリと、鍵は正常に作動し、解錠された。

 恐る恐る、扉を開ければ。そこは薄暗い廊下。だが私にとっては何よりも輝いて見える外の世界。

 あぁ、あぁ。これこそ、自由への一歩。神に対する信仰は腐り掛け、おまけにその内容も殆ど忘れてしまったがそれでも良い。今は神に感謝したい気分だった。

 

 石のように重い身体を意気揚々と動かし牢の外へと出る。まるで釈放された罪人が如く、私は外の世界への希望を持ちながら歩けば、それはいた。

 

「ウゥ……」

 

 亡者。ソウルが枯れ果てた不死の成れの果て。いつか来るべき私の姿。

 まるで全身が干上がってしまったような、そんな悍しい姿に、いつも牢屋越しに見ていたはずの私は足を止めてしまう。見た目は私とさほど変わらない。ここに送られた際に一度殺された私も、今では彼らのように化け物じみた見た目なのだから。それでもやはり、これは……悍しい。

 目は虚で、何も考えず、ひたすらに渇きを満たすようにソウルを求める様はゾンビ。故に彼は、近寄った私を見て一目散に駆け寄って来た。

 

 私を殺してソウルを奪うために。

 

 逃げ出した。今は武器も無い。彼らに痛覚はあろうとも、理性は無い。故に躊躇なく殺しにくるし、鈍った思考では痛みも感じ辛いだろうから殴った所でどうにもならない。

 必死に駆け、たどり着いたのは中庭だろうか。大きな扉が行く手に聳える。

 

 だがそれよりも目についたのは……

 

 燃え滓に刺さる焼かれた剣。私はこれを知っている。

 

 篝火。不死の憩い。それはある種、呪いなのかもしれない。

 突き刺さった剣に手を翳せば、魔術や奇跡とも異なった力が剣に宿る。そして、発火。優しく燃えるその薪は、篝火として十分な機能を持っていた。

 先程の亡者はもう追ってはこない。私は冷えた心を暖めるように篝火の傍に座り込む。

 

━━Bonfire Lit━━

 

 優しい篝火が私の醜い顔を照らす。服も心も荒んだ私に唯一残された安らぎ。不死となってから、どうしてか篝火の火がこんなにも暖かみを齎す。久しいものだ。

 

 ともあれ、私は更なる自由を目指す。聖職者が不死の呪いをどうこうする前に自由を目指すなど、とんだ不届き者だがどうでも良い。元より素行は悪い方だった。聖職者になったのも成り行きだから仕方ない。

 不死の呪い故かあまり記憶も定かでないが、親は早くに死に私は孤児院へと引き取られ、そこで無理矢理聖職者にされたのだから本当に私がやりたかったことでは無いのだ。皆とのお祈りも、祈りながら夕飯の事を気にかけていた。不死となり空腹すらも抱かない今となっては懐かしい感情だ。

 

 休憩も早々に、私は目前の大扉に手を掛ける。重く、老朽化のせいか所々ぎこちないが開けられるようだ。声にならぬ声を出し、必死にそれを押せば人が一人通れる程度の隙間が空いた。私は細身の身体を捻じ込み、扉を抜ける。

 

 そこは、室内。大広間。きっと昔はここで何か儀式でもしていたのだろう。そう言えばここに連れられて来た時に、司教から何か宣告された覚えがある。ここはそういう場所なのだろう。どうでも良い。

 

 入るということは、次に為すべきは出るという事。部屋の反対側にはまた大扉。私は少し辟易しながらも扉を目指す。早く自由になりたくて、耳に入っていたはずの何かの呻き声など聞こえず。

 

 目の前に、唐突な暴力が降ってきた。

 

 それはデーモン。人ならざる……そもそもこれは動物ですらなく。ただひたすらに暴力を与えるもの。

 背丈は何倍も大きく、手には家の大黒柱よりも大きく太い槌が握られていて。

 

 私は何も出来ずにそれに引き潰された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不死とはまったく、不便である。死なず、しかし痛みはしっかりと感じるのだから。あの大槌に潰された痛みを思い出し、私は篝火の傍で震えた。

 あのデーモンはここの番人らしい。外に出ようとする不死を尽く粉砕するための暴力装置。自由を前に現れた理不尽は、私の心を潰しにかかる。

 

 だが、諦められぬ。あんなデーモンがいた所で、自由に対する私の心など止められるはずもない。楽天的で身勝手なのが私の取り柄だ。誰も私を止めることなどできるものかよ。

 休憩を終え、私は扉に蔓延る濃霧を抜ける。デーモンは待ち構えている。私を外に出すまいと、殺そうとして。信じられるものは己の拳のみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 むり。無理だよあんなの。どうしろっていうのさ。もう数十回殺された。大槌でミンチにされ、薙ぎ払われて真っ二つにされ、最終的に遊び出したデーモンに拳で粉砕された。今も濃霧の奥では大槌で肩を叩いて奴は私を待っている。

 私の貧弱な拳は効いていない。当たり前だ、殴る度に岩を殴っている感覚なのだ、そんな皮膚を貫くなんて無理に決まっている。どうすれば良いのだ。

 

 そう言えば。戦いに夢中になっていたからあまり気にしてはいなかったが、よく考えれば横の影に小さな通路があった。デーモンは大扉を守っているようだから、きっとあそこは抜け道では無いのかもしれないが……それでも何も無いよりマシだ。武器くらいはあるかもしれない。

 

 何度目かも分からぬ。しかしそれでも不思議と心は折れなかった。正面がダメならば、裏から。私は闘志を再び篝火で燃えさせると、濃霧へと入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 背後で大槌が地面を叩いた。あと数秒遅ければ、また私は挽肉にされていたに違いない。だが私はやり遂げた!あのデーモンを躱し、横の通路へと滑り込んでみせたのだ!

 大槌が地面を打ち付けた衝撃で通路の柵が降りる……あの巨体では追ってこられないだろうし何より柵が邪魔だ。あのデーモンは施設を壊す事を良しとしないらしく、悔しそうに柵越しに私を睨んでいる。そんな彼に、私は馬鹿にしたようなジェスチャーを贈った。ざまあみなさいなデーモンが。

 

 ともあれ、このままでは何もできないので先へ進む。都合良く篝火があったのでそこで一息ついてから。どうやら不死は死ぬと最後に休憩した篝火で生き返るらしいから、しばらくあいつと戦わなくて済みそうだ。

 

 また通路があったのでそこへ進むと、通路の奥に亡者が見えた。何をしているのか、私に何かを向けて……あれは、弓?

 

 スパァン! と、私の腕が射抜かれる。あの亡者が放った矢だ!

 

「いったッ! ちょっと痛……」

 

 叫ぶ私にあの亡者がもう一撃矢を放つ。

 

「だから痛いってッ!」

 

 今度は右脚に矢が刺さる。激昂する私を嘲笑うかのように、あの亡者はまた矢を放つ。堪らず私は物陰に隠れた。なんだあのクソ野郎は。

 一先ず突き刺さった矢を抜く。痛いが、何故か行動に支障は無いようだ……これも不死の特権なのだろうか。普通の人間ならば足を射抜かれれば歩くことすらもままならないだろうに。

 

 だがどうでも良い、今の私はあの亡者に対する怒りで一杯だった。こちらも早く武器を見つけ、あの鷹の目を気取る亡者に一泡吹かせてやりたい……と、その時。良いものを見つけた。捨てられた死体が何かのソウルを抱いている。それは盾。双頭の鳥が描かれた木盾だ。

 しめた。これならば射抜かれずに済む。所詮木盾だから当てにしすぎるのは良く無いが、無いよりマシ。私は盾を物質化し、握り部分を左手に嵌める。そして勢い良く走る。

 

 亡者はまた来たなこの馬鹿、と言わんばかりに矢を放つがそれがどうした。私の盾が矢を防ぐ。まぁ、弾けずに深々と矢が刺さって貫通しているせいで左腕も無事では無いが……

 

 運よく、武器も落ちていた。メイス、聖職者がよく用いる槌だ。

 

「オラァ!」

 

 怒号をあげて亡者へと迫り、メイスを頭目掛けて振り下ろす。唖然とした亡者は、表情を変える事なく頭をカチ割られその場に崩れた。雑魚が。近寄られれば何もできないだろう。

 亡者のソウルを吸収すると、彼が持っていた何かも自ずと私のものになる。どうやらタリスマンのようだった。

 タリスマンとは、神の奇跡をなすための触媒だ。我々聖職者はこの触媒を基に神の奇跡を読み上げ、再現する。それは回復だったり何だったりと色々あるが……一先ず、唯一覚えている「回復」という奇跡を行う。

 一言一句間違わずにそれを頭の中で読み上げれば、私の身体を光が覆い全身の傷を癒した。覚えてて良かった回復。

 

 さて、頼もしい武器も手に入れ先へ進むと、そこは二階部分。先程の中庭も良く見える。三階へと続く階段と、二階にもまた扉があるが……扉を開ければ中庭に繋がっているだけ。仕方なく階段を登れば、三階から鉄球が降ってくる。ふざけるな。

 

 

 

 

 

 

 

 その騎士は、死に瀕していた。不死となり、使命を果たさんとすべくこの地にやって来たは良いが、まさかこんな序盤も序盤、最序盤の亡者共に苦戦を強いられるとは。

 着込んだ上質な鎧は容易く射抜かれ、亡者が振るう剣は彼の肉を斬り裂いた。一人一人は大したこともないが、それに囲まれればいかに歴戦の勇士とて無傷では済まないのが常だ。

 

 何とか逃れた先で、彼は倒れ込み息も絶え絶えといった様子でただひたすら死を待つ。不死人とは死なず、しかし死ねば死ぬ度に亡者へと近づいていく。そしてその度合いは、自らのソウルを感じればわかるものだ。

 きっと此度死ねば、彼もまた亡者と成り果てるに違いない。

 

「こんな……所で、使命も果たせず死ぬとは……」

 

 あるのは後悔と、懺悔の念。若い騎士はここで死ぬのだと死神も微笑む。何も出来ず、何も残せず。ただたまたま見つけた何かを持っている不死の死体も開けた柵から落とし。

 

 

 

 だから彼、騎士オスカーにしてみればこの出会いは正しく奇跡。壁を打ち砕いた鉄球と共にやってきた不死は、その痛みに悶えて地面を転がると彼に気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うごぉおおお……!」

 

 聖職者にあんなアスレチックな鉄球避けれるわけない。まるで大きな転がる雪だるまに巻き込まれたように私は鉄球に轢かれ、回転に巻き込まれて背後の壁をぶち破った。回復してなければ死んでいたに違いない。死ぬほど痛いが……むしろこれで死なないのか。

 しばらくその場にのたうち回り、痛みもそこそこに立ち上がれば視線に気が付く。亡者か。

 

 メイスを振り上げその視線ごと粉砕しようとして、ようやく私はその姿を見た。

 

 それは、私に希望を齎らした騎士だった。どういう訳か傷付き、今にも死んでしまいそうな騎士が、息を切らして私を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 殺されるかと思った。メイスを振り上げた亡者は、しかしハッとしたように彼を見つめると手を下ろす。そしてじっくりとオスカーを眺めた。

 どうやら彼、または彼女は亡者では無いようだ。理性があり、姿こそしわくちゃババァを更に不健康にしたような形だがそれでも完全に終っちゃいない。

 

「おお、君は……亡者じゃないんだな……良かった」

 

 オスカーはその不死に、声をかける。よく通る、聞くだけで好青年と分かる声。その声を聞くと不死は一瞬怯えたように下がる。亡者しかいない不死院で、こんなに装備を固めた者がいれば驚きもするだろう。

 

「私はもうダメだ……もうすぐ死ぬ。死ねばもう正気を保てない。だから君に願いがある」

 

 何を思ったのか。だがその騎士は死ぬだけでは終われないのだろう。

 

「同じ不死の身だ……観念して聞いてくれよ」

 

 その不死はじっと聞いている。懐から何かを取り出して。

 

「恥ずかしい話だが……願いは、私の使命だ……それを、見ず知らずの君に託したい」

 

 その間も不死は何かをしていた。聞いてはいるのだろう、顔はこちらを向いている。

 

「私の家に、伝わっている……不死とは、使命の印である……」

 

 一瞬不死が何かを考えるように上を向く。

 

「その印、現れし者は……不死院から古い王たちの地に至り……」

 

 何かを思い出したのか、俯く。まるで祈るように。

 

「目覚ましの鐘を鳴らし……不死の使命を知れ……聞いてるかい?」

 

 思わず問いかけると、不死は頷いた。そしてまた俯く。

 

「……よく聞いてくれた……これで、希望を持って、死ねるよ……」

 

 これで自らの使命は託せた。心残りは、無いと言えば嘘になるが。

 

「ああ、それと……これも君に託しておくよ」

 

 そう言ってオスカーは瓶を取り出す。不思議な、何か橙の液体が入ったそれを、祈る不死に手渡した。

 

「不死の宝……エスト瓶だ……それとこれも」

 

 続いて鍵を手渡す。それはこの先の鍵を開け、不死院を出るためのもの。

 

「じゃあ、もうさよならだ……死んだ後に君を傷つけたく……」

 

 刹那、不死が何かを掲げた。それに見覚えのないオスカーではない。それは確かに、タリスマン。するとオスカーの身体を光が包む。

 奇跡、回復。傷ついた者の身体を癒す神の物語の再現。唖然とするオスカーは、次第に生きる気力が湧いた。先程まで俯いていたのは、彼を治そうと祈りを捧げていたに違いなかった。

 

「君は……聖職者なのか?」

 

 最早傷はない。だが対してボロボロな不死は貰えるものはしっかりと貰うと彼に背を向けて立ち去ろうとする。

 

「待て! 待ってくれ! 僕は君に使命を……」

 

 縋るように言うオスカーに、不死は言う。

 

「自分でやって。私、そういうのに興味無いし」

 

 不死になり、しゃがれて掠れても分かる麗しい声。それでもって彼の願いを否定した。オスカーは立ち上がり、それでも言う。

 

「じゃあせめてエスト瓶は返してくれ!」

 

「嫌」

 

 それだけ告げると彼女は立ち去る。一人残されたオスカーはしばし彼女が居た空虚を見詰めると呟いた。

 

「聖女……いや、盗賊……? なんだ彼女は……」

 

 あまりにも身勝手。否、それは彼の願いを聞かなかっただけに過ぎない。その願いもまた身勝手なものだ。しかしそれ以上に、恩はある。死ぬ定めである彼を救ったのも、彼女なのだ。

 オスカーはしばし考え、悩み、傍に落とした剣と盾を拾い上げる。すると彼女を追う。まるで新しく目的ができたように。

 

 本来それは、あり得ぬ物語。死ぬはずだった者は生き延び、そして使命を継がぬ者は彼の地へと向かい。

 

 暗い魂は動く。

百合ばかりの番外編を

  • 見たい。百合こそ人類の宝、ダークソウル
  • いやぁそうでもないっすよ
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