暗い魂の乙女   作:Ciels

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大変お待たせしました。なお本日一話目の前に序章を追加する予定です。
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巨人墓地、墓王

 

 光さえも届かない。見えるものといえば、聖職者一行がおいて行ったであろう七色石が色とりどりに輝いているのみ。ただ、それだけ。あとはただ暗く、深淵の穴かそれ以上の闇が広がっているだけだ。

 

 三人羽織を倒し、地下墓地から巨人墓場と呼ばれる深部へと到達したのは良かった。だが、ここはあまりにも暗すぎる。松明でもあれば少しはマシなのだろうが、生憎火を灯す松の木も無ければ篝火すらもない。

 

 そもそも、ここで火を起こして光源を確保するのが最善かも分からない。何せ、暗闇で光るものなど敵からすれば良い的だからだ。

 地下墓地にあれだけのスケルトンと屍術師が待ち受けていた以上、この巨人墓場にも敵はいると思っておくべきだろう。先制されて攻撃されるのは防御力に欠ける私にとっては死活問題だ。

 

 だが背に腹は変えられない。何も見えなければ、私は闇雲に斧槍を振るう羽目になるだろう。仕方なく、私は結晶の錫杖を取り出してウーラシールの魔術である照らす光を脳裏で唱える。

 すると、ウーラシール市街でもそうであったように私の頭上に光が灯る。それは深淵に近くもあり遠くもある死の闇を遠去ける温もりでもあるのだ。

 

 さて、いくら頭上が照らされ目の前が幾分か明るくなったとはいえ数歩先は相変わらず闇に包まれて落下死の危険もあるとなれば迂闊な事はできない。ゆっくりと一歩一歩、罠も警戒しながら進んでいく。

 

 そうすれば、敵は突然現れた。

 

 それは、確かにスケルトンであった。何か冒涜的な術で骨のみが動き、手には生前獲物であった大刀を握るスケルトンだ。だがそのサイズがおかしい。やたらと大きいのだ。人間の二倍近くもあるその巨体スケルトンは、まるで暗闇などありはしないと言わんばかりに迫り来る。

 

 その巨体は大振りの一撃で、ただでさえ足場の悪い地帯での戦闘がやり辛い。だが最も恐ろしいのは、骨の足から繰り出される蹴りだ。骨の体重が乗った蹴りは盾で受ければ容易に防御を崩され、仮にまともに喰らえばその勢いで底の見えぬ地下に真っ逆さまだ。

 これだけ大きければクラブでは骨を崩せない。私は仕方なく斧槍で対処してみせる。

 動き自体は巨体故に小型スケルトンほど機敏ではないため、その隙を突いて攻撃できる。そうして倒した巨体のスケルトンは復活しなかった。屍術師といえども流石にこれ程の巨体を動かせる理力や技量はないだろう。

 

 巨人墓地の名は伊達ではない。進めば進むほどに巨体スケルトンの数は増し、エスト瓶の数が減っていく。やはり閉所は嫌いだ。

 おまけにここは遺跡としての構造も一部持ち合わせており、所々に人工物があって何かしらのアイテムがあるせいで無視する事もできない。不死として、落ちているものは拾わなければならないという習性でもあるのだろうか。思えばロードランに来てから収集癖が付いたようにも感じる。

 

 そのうちの一つ、開けた遺跡の跡は最悪だった。大きな聖職の種火という、ある種魂が眠る場所にふさわしいものを手に入れたかと思えば大人数の巨体スケルトンに囲まれた。全力のダッシュで強行突破しなければ今頃あの巨体に轢き潰されていただろう。

 

 散々な思いをし、滑り台のようになっている大棺の蓋を滑れば、ようやく篝火を見つけた。しばしの休息とエストの補充をすれば、私はまた歩みを進める。本当にあの聖職者一行はここに来れたのだろうか?私は運よく篝火を見つけられたが、下手をすれば一生迷う事になるに違いない。

 

 彼らの生存が危ぶまれる。そんな中、奴はまたいた。

 

「おお! 誰かと思ったらハニー!」

 

 鉄板のパッチ。先程私を罠に嵌めようとした盗賊紛いのハゲ頭だ。相変わらず嫌なニヤケ面で私を舐め回すように見る。私はそのまま挨拶もせずに無視して進もうとしたが。

 

「お、おい! 無視はねぇだろ! な?」

 

 焦ったように笑うパッチが道を塞ぐ。イラつきながらも私は足を止めてため息混じりに尋ねる。

 

「今度はどんな罠を仕掛けたのよ」

 

「人聞き悪いなハニー。あんた聖職者探してただろ?そいつらがよ、下にいるんだよ」

 

 パッチが側の崖を指差す。そこにはご丁寧に七色石が置かれていて下が覗き込みやすくなっていた。

 明らかに怪しい。だが、もしこいつの言う事が本当ならばあの聖女御一行はあの真下にいる事になる。背に腹は変えられないか。癪だが。

 

 私はニコニコ笑うパッチを警戒しながら穴を覗きに行く。少し覗けば、崖下数メートルに七色石の光が見えた。あまり高くはないようだ、仮に落ちても落下死はしないだろう。だが姿は見えない。あるのは(ソウル)化したアイテムだけ。

 

 そうして、戻ろうとして。

 

 

 振り返ればパッチが今にも蹴りを私にかまそうとしていた。

 

 

「おっと!」

 

 鋭い前蹴りが私の腹に突き刺さる。体勢を崩された私はそのまま崖から身を投げ出されたのだ。

 唐突な浮遊感にぞわりと身震いする暇もなく、空中でくるりと回転すれば足から着地……というか落下した。かなり足が痛いが、死ぬほどではない。それよりもだ。

 

 私は顔を真っ赤しにして落ちた崖を見上げながら叫ぶ。

 

「パァアアアアッチッ!」

 

 見上げれば七色石の光を頭で反射させたパッチが笑っていた。

 

「へっへっへ、悪く思うなよ! あんたの死体から剥いだお宝、精々高く売ってやるからよ! ウヒャヒャヒャヒャ!」

 

 殺す。あの笑みが出せなくなるほど惨たらしく殺してやる。そう決意しながら、去っていくパッチを見送る。きっと私の死体を漁るために遠くに行かないはずだ。今から行けば間に合うはずだ。

 きっと聖女がいるというのも嘘だろう。落ちているアイテムだけ拾って去るとするか……ゴミクズなんて置きやがってあのハゲ。

 

 一先ず照らす光で周囲を照らし、探索する。あいつが来られると言うことはどこかに道があるはずだ。

 

「あなたは……」

 

 

 と。曲がり角のすぐそばに、真っ白な装束を着た女が岩場に座っていた。私は一瞬驚いてしまったが、よく見ればそれはあの聖女だった。あいつの言う通り、聖女様は本当に下にいたのだ。だがおかしな事にお供の騎士共は見当たらない。おまけに彼女も祭祀場で見た時のような強気な表情をしていなかった。

 まるで捨てられた子犬のような、そんな顔。

 

「あら。こんな所にいたのね、ソルロンドの聖女様」

 

 私は周囲を警戒した後、彼女の隣に座る。フードのせいで見えなかったが、中々美しい顔立ちをしている。儚く美しい様は確かに聖女だろう。正直好みだ。

 

「……亡者ではないのですね。よかった……」

 

「こんな美少女が亡者に見えるかしら?まぁいいけど。お供の騎士はどうしたのよ」

 

 そう尋ねれば、彼女は俯いてしまった。どうやら彼らは残念な結末を迎えたようだ。

 

「彼らは……亡者になってしまいました」

 

 ガチャリと遠くから鎧が擦れ合う音が響く。なるほど、奴らが邪魔をしているせいで彼女も戻れないのだ。いや、自分に着いてきてくれた者達を置いていくことなどできないといったところか。泣かせてくれる。

 私は素っ気なく返事をすれば、彼女に問う。

 

「それで? あんたはどうしたいのよ」

 

 問えば彼女は相変わらず辛気臭い顔で答えた。

 

「私には……どうしても、どうすることもできません」

 

「見知った家臣だから? お優しいのね。そうして何もできずにあんたも亡者になるまでこの穴蔵で待つのかしら。何もしない神様が何とかしてくれるように祈って」

 

 少し、大人気なかったと思う。でもそういうものだろう。運命を切り拓くのはいつだって自分の力だ。人間にすら負けるような神に何かできるはずもない。大王グウィンだって、陰る火をどうにもできないから自らを薪にしたんだから。

 

 だが聖女様は何も言わなかった。ただ悲しそうに自分の無力を嘆いているだけだ。女の子の悲しそうな顔は見ているだけで心が痛くなる。

 だが、それでも。彼女は下さなくてはならない。残酷な運命を切り拓くために。そのためならば力を貸そう。そのために来たと言っても過言ではないのだから。

 

「私は……私は……」

 

 悩み、手を組んで縋る彼女は聖女などではない。ただ一人の哀れな少女だ。結局、どんな役職を与えられてもそれは変わらない。世間知らずで心折れた少女。きっとあのペトルスはそれを見越していた。最初から彼女の忠臣などではなかったのだ。だから裏切る。見捨てる。

 

 溜息を吐き捨て、私は立ち上がる。その手に斧槍と結晶の錫杖を握って。

 

「手を貸してあげましょう。元聖職者のよしみとしてね、貴女ができないことをやってあげる」

 

 もう分かっているのだろう?騎士達を救う手立てなど、一つしかない。(ソウル)を奪い、亡者にすらなれぬよう殺すしかないのだ。それが不死に対する救済なのだから。

 騎士達の下へ向かう私の背中を聖女は目で追う。何も言わず、何も出来ず。彼女はただ、見ていることしかできないのだ。

 

 

 暗闇の中で、亡者と化した騎士は私を目にすると一目散に向かってくる。それほどまでに(ソウル)に飢えている。亡者とは、不死の馴れ果てとはそんなものだ。

 

 左手の結晶の錫杖を構え、闇術を放つ。闇の飛沫、あのウーラシールで手に入れた冒涜的な魔術だ。

 

 撃ち出された複数の闇の玉は、先頭にいたメイス持ちの上半身を消し飛ばす。そんな力量だから亡者に成り果てる。聖女を守れないんだ。

 運良く闇の飛沫から逃れた槍持ちは、そのまま突っ込んできてその手の三日月斧で突こうとしたが、最早そんな攻撃児戯に等しい。斧槍で槍の穂先を押さえれば、そのまま足で槍の柄を半ばから踏み折った。木製なのだ、長ければ長いほどに脆く、折れやすくなるのは斧槍や槍の宿命。故に金属の黒騎士の斧槍は良い。折れる事など早々無いのだ。

 

 そのまま無防備な胴を斧槍で貫く。貫いて、地面に押し倒す。そして一気に上半身を穿った斧槍で縦に両断した。

 

 (ソウル)へと霧散した騎士達は、形見すらも残さない。ただ私の糧となっただけ。虚しいものだ、何もできずに去ると言うのは。

 

 

 

 

「……二人の亡者を鎮めてくれたのですね」

 

 血塗れの斧槍を見た聖女は、察するとそう言った。その声は感謝よりも悲しみの度合いが強い。だが仕方が無いだろう。親しき者達が亡者になってしまったなどと。

 

「私たちの不始末で貴女に御迷惑をおかけしました。あの二人……ニコとヴィンスも、きっと貴女に感謝しているはずです。ありがとうございました」

 

 どうだろう。あれだけ惨たらしく殺したのだから、恨まれているんじゃ無いだろうか。

 自虐するように考えていると、聖女はその懐から何かを取り出す。それはスクロールに似た、奇跡が示された書物だった。

 

「これは彼らの形見です。私などより貴女が持っているべきでしょう」

 

 差し出されたそれを、私はそっと手で突き返した。

 

「奇跡には頼らないわ。神を信じていないもの」

 

 そう告げれば彼女は少し寂しそうに、しかし儚く微笑んでみせる。

 

「では、後程でよろしければ……不死の秘儀を、貴女に御教えいたします」

 

「あら、いいのかしら。それを求めて貴女達は来たんでしょう? そんなものを、余所者かつ不信者の私に」

 

 彼女は優しく頷く。最早白教の教義など、彼女には関係が無かった。それを信じた故に大切な者が死んだのだから。私なら神に殴り込む。

 だが私もできる事ならば知りたい。如何に白教が求めていたと言えども、秘儀である注ぎ火に興味があった。戦力が増えるに越したことは無い。

 

 ……何より、美しい少女の申し出を断るなどと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨人墓地とはいうが、この場所に眠るのは本当にそれだけだろうか。

 スケルトンや巨大スケルトン、そして大きな犬の骨までもが襲い来る暗き地の底。その暗がりは死者が眠るに適するだろうが。しかし異様なまでの殺意と殺気は如何なものだろう。もしやこの地に踏み入れた生者である私を拒んでいるのだろうか。だとしても立ち止まる理由はないが。邪魔するならばもう一度死んでもらうまでだ。

 だが黒騎士までいる事には驚いた。貴公らは大王の火継ぎを追ったのであろうに。最初の火の炉から離れてこんな場所にいていいのか。

 

 さて、そんな事はどうでもいいのだ。問題は目の前で冷や汗を流すハゲ頭にどんな処遇を与えるかだ。

 

「落ち着いて話を聞いてくれ。お、俺が悪かった、悪気はなかったんだ」

 

 私の周りに浮かぶ追尾するソウルの結晶塊をチラチラと見ながら徹底的に謝ろうとするパッチ。ここまで手のひらを返されると呆れることしかできない。

 

「ただ、ちょっと魔がさしたっていうか……な? よくあるだろ? 許してくれよ」

 

 よくないし許しもしない。私は無言で斧槍の切先をパッチの眼前に突き付ける。彼は涙目で首を横に振り続けると必死に抗議した。

 

「同じ不死の追われ者の俺とあんたの仲じゃねぇか! なっ!?」

 

「許さない」

 

 無慈悲に宣言する。ここで殺して(ソウル)を根こそぎ奪わなければ、きっと私は未来でもこいつに同じ事をされるに違いない。

 パッチは相変わらず待て待てと私を宥めようと必死に口を走らせる。すると手に見慣れた人間性を握り私に差し出してきた。

 

「そ、そんな、冗談は顔だけにしようぜ。あんただってまだ生きてるし俺だって謝ってるじゃないか、な? これはお詫びの印だ! 俺とあんたの仲じゃねぇか!」

 

 あまりにも必死なその様子は、こちらの殺意を幾分か冷ますことにはなったようだ。全身全霊の溜息が溢れる。まったく、なんでこんな事になったやら。

 私は斧槍を下ろすとパッチの手から人間性を奪い取る。どうやらこの人間性は双子のようだ。まぁ詫びとしては当然だ。もっと欲しいくらい。

 

「次は無いわよ」

 

「へ、へへ……そりゃもう、当然だよハニー」

 

 だからハニーはやめろ。

 

 

 

 

 

 巨人墓地を進めば、多少は明るくなる場所へと出る。ここには死者もいない。この明るさは眠りを妨げるだろうし、何よりも崖のようになっている一本道だからそんな事もできないだろうから。

 だがよりにもよって侵入者とは。墓荒らしから主を守る聖騎士のつもりだろうか。甲斐甲斐しいものだ。

 

 

━━闇霊 聖騎士リロイ に侵入されました!━━

 

 

 聖騎士リロイ。白教において、その名を知らぬ者などいない。

 はるか昔、最初に白教において不死となった存在であり、黄金の鎧に身を包み祝福された盾と闇を祓う槌を持って彼は初めて使命のためにロードランへと向かったという。その後の消息など分からぬというが。まさかこんな地で使命をすっぽかし闇霊になっているとは。哀れなものだ。

 

 だが、聖騎士か。なればたんまりと(ソウル)を持っているに違いない。私も白教の聖職者の端くれ、ならば後輩の良き糧となってもらおうか。

 

 

 聖騎士は現れると、最早赤く染まった黄金の鎧を揺さぶりこちらへと疾走してくる。手には大きな槌、そして盾。どちらも祝福されているのだろうから、使用者の傷を癒すはずだ。長期戦は不利であるし、何より致命傷以外は鎧に弾かれてしまうだろう。

 

 ならばこの地を利用しよう。

 

 手始めに結晶の錫杖で追尾するソウルの結晶塊を展開する。私の周囲に五つの結晶塊が浮遊しだし、それは合図とともに一直線にリロイへと向かう。

 彼は鈍重ながらもそれを盾と軌道で躱せば私を肉塊にすべく槌を振り上げた。見慣れたものだ、あのくらいの動きなど。

 

 残念ながら私は生き抜く事に意地汚い。手段は選ばぬ。オスカーのような若造ではないのだから。

 

 槌を黄金の残光で弾く。多少無理があるのか、流石の私でもその衝撃で腕が痺れる。だが不可能ではなかった。そして仰反るリロイに向け斧槍を突き立てた。やはり鎧の祝福のせいか、貫くまでには至らない。

 それでもかなりのダメージはあったようで、リロイはたまらず距離を取り出す。それをゆっくりと歩いて追う。

 

 槌の代わりに彼が取り出すはタリスマン。聖職者であれば、彼が次にするであろう行動がよく分かる。奇跡の文言を詠唱しているであろう彼の周りに奇跡の言霊による陣が現れた。

 

 大回復。それは白教の上位の聖職者が扱える極々稀な奇跡である。膨大すぎる物語はしかし、それ故記憶する者も少ないが人の身に余るほどの癒しを得るだろう。

 

 そうはさせないが。

 

 回復中のリロイの側面へダッシュする。驚いた様子の彼は私を見ていることしかできないが、きっと彼は思ったのだろう。奇跡が終えるまでは私の斧槍に切り捨てられる事などないと。甘い、全てが綺麗事過ぎる。きっと彼は、今まであまり対人戦闘を行ってこなかったのだろう。あったとしても圧倒的な膂力でねじ伏せていたのだろう。

 

 私は彼の横っ腹を蹴る。鎧を着込んだ男は重いが、(ソウル)で強化されていれば何ら問題は無い。

 するとどうだろう。急に蹴られてバランスを崩したリロイは、私とは反対側の崖下へと足を滑らせて落ちていくではないか。これぞ対人落下術。かの玄人はそれを高山と呼んだ。

 

 崖下を見下ろせば、最早彼の姿は見えなくなっていた。代わりに膨大な(ソウル)が私へと流れ込む。墓王の守護者は自身の重みと過信によって死んだのだ。

 

 

━━Invader Banished━━

 

 

 今更伝説がどうのと思うような立場でもない。弱い奴は亡者となる。それだけなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 悍しい。

 

 この光景のなんと悍しい事か。

 

 

 墓王の墓前なのだろう。それを守るは三人羽織の軍勢。だがそんなものどうという事は無い。一度戦った相手に遅れを取るほど弱くは無いつもりだ。故に彼らは一人残らず駆逐される。

 

 だが、赤子とは。骨の赤子とは、どういう事だ。そんな無垢な者達までもを守護者としているのか、墓王は。

 恐ろしいものを見た。まるで母を求めるように、骨になった赤子が私へと群がろうとする。浅い湖の底から無限に現れるその様は、正に悪夢だ。

 しかし何故だろうか。こんなに悍しい光景であるというのに、その魂はもっと清らかで、そして見知ったものであるような気もする。それは人間性に近い。

 脳を様々なものが巡る。人生経験、書庫で得た知識、そして脳を這い回る小さき何か。そして導き出されるのは、彼ら赤子が今産まれたのだという結論。

 

 魂は死んで巡り、そして生き返る。それが事実だとするのならば、彼らは生まれ変わった人間性。それは正しく、美しいはずなのだ。

 

 だが斬らねばなるまい。そうしなければ先へ進めない。悲しい事だが、そうするしかない。

 

 

 心を鬼にして生まれ出た者達を狩る。

 

 そして、ようやく私は辿り着いた。

 

 

 最初の死者。墓王ニト。

 

 まるで蠢く骨の集合体のようなそれは、見た目は断じて神ではない。

 

 しかし感じるものは死者への敬いと、それを侵す私への憤怒。

 

 女性だとは思いもしなかった。否、そう感じているだけかもしれないが。少なくとも、目の前で剣を握るそれを男とは思えない。

 

 迫る配下のスケルトンを神聖のクラブで討ち滅ぼし、墓王との一騎討ちに臨む。

 打ち出されるは墓王の剣舞。地面に突き刺された墓王の剣は地中を這い、私を真下から貫かんと迫るのだ。それを直感で回避し、緊迫する。

 

 斧槍は通る。墓王の身体の骨を打ち砕き、その度に溢れる濃厚な死を感じる。

 

 死とは熱である。寒さであれば物は永遠に凍りつき、その形を保たせる。だが熱であればその逆。人は老い、そして死ぬ。彼、又は彼女が操る死というのは、暖かな温もり。死の温もり。それは呪術にも通じるものだ。

 

 墓王が叫ぶ。すると彼女は丸まり、その身体は震えた。何かの予兆であることは想像できる。

 

 

 刹那、溢れる死の波動。間一髪私は草紋の盾でそれを防ぐ。

 だが所詮、草紋の盾では全てを防ぎ切る事はできない。所々身体を暗い炎で焼かれた私は岩陰に身を潜めてエスト瓶を取り出した。

 まるで老化してしまったように、炎を受けた箇所が損傷していた。あれは闇術とはまた異なった技術体系だが、奇跡とも異なる。正しく死の奇跡。

 

 エスト瓶をごくごくと飲めばその傷も癒える。あの波動をもろに受けてしまえば死は免れない。

 

 その時、地面が揺れた。剣舞が来る!

 

 駆け出したと同時に岩陰が剣舞に貫かれた。危機一髪の私はまた墓王へと迫る。

 墓王が突きの構えをする。あれで貫かれたらならばひとたまりも無いだろう。私は地面を擦るようにスライディングし、突きを回避すればそのまま差し出された墓王の腕へと飛び乗った。

 

 刹那、私の斧槍が墓王の頭蓋を斬り伏せる。

 

 肩を蹴って飛び去った私が着地すれば、墓王の身体は大きく崩れ去っていく。わかりやすい所に顔があってよかった。ほとんど虚をついた誉なき勝ち方だが、勝ちは勝ちだ。それで良い。

 

 

━━Victory Achieved━━

 

 

 リロイとは比べ物にならぬ莫大な(ソウル)と共に、分け与えられた王の(ソウル)を手にする。これでまた一つ、薪が手に入った。残るは深淵に堕ちた公王とイザリスの魔女のみ。ようやく半分か。

 

 

 だが、その前に一つ問いたださなければなるまい。

 




墓王の設定は完全に妄想です。食材ってあったかいと腐るの早いしそういう事じゃね、的な妄想です。

百合ばかりの番外編を

  • 見たい。百合こそ人類の宝、ダークソウル
  • いやぁそうでもないっすよ
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