二週間も空けてしまい申し訳ありません。仕事で屈強な人たちに追いかけ回されていました(隙自語)
感想どんどんお待ちしております!人間性が無くならないために……
━━闇霊 トゲの騎士カーク に侵入されました!━━
なるほど。やはりあの美しくも健気な娘に魅了されたのは私だけではないようだ。罪人も善人も関係が無い、煌びやかな人間性の前には全てが意味を成さない。
美しいものを美しいと思うのは人間ならば同じこと。ならば、目の前に立ち塞がるこの悪名高いトゲの騎士もまた私と同じである。あれだけ外の世界で恐れられ、数えきれない罪を重ねてきた男も同胞とは。それは良い、きっと数えきれないほどの不死を殺し人間性を集めてきたのだろう。
だが悲しいかな。私達は同胞ではあるが仲間ではない。ただ目的が同じであるだけの他人。ならば私は殺すだろう。ただ人間性のためだけに。それで良い。
トゲの騎士の剣が宙を斬る。最早正気であるだけの人間など、亡者と何も変わらなかった。
トゲの騎士が、また剣を振るう。その動きも、記憶の中にある。あっさりと黄金の残光でパリィすれば、彼の胴は斧槍によって穿たれた。
悔しそうな目がバイザー越しに合う。恨め。恨むが良い。貴様を殺した私を恨み、そして弱い自分を恨みながら朽ちて行け。
デーモン遺跡とでも形容すれば良いか。先程の溶岩溜まり跡とは異なり、ここは朽ちかけた建物が点在している。そしてそこに住まうはデーモン達。彼らはある種のコミュニティを築き、ここを守っているのだ。
その様に違いはない。ただ人であるか否か。
尽くデーモンを屠り、私は濃霧を潜る。現れるのは古のデーモン。デーモンの炎司祭。
奴は侵入者である私を見ると、何やら低く唸ってこちらへと滲み寄ってくる。その風格は不死院のデーモンやはぐれデーモンとは異なる……なんというか貫禄があった。
混沌で燃え盛る身体に呪術は通用しないだろう。混沌こそ、彼の命の灯火である故に。
斧槍を構え、私も前進する。何も恐れる事は無い。所詮目の前のデーモンですら通過点に過ぎないのだから。だからこそより強い
「
呪文のように呟く。その言葉は後の世まで続く覚悟そのもの。そして相手にとって呪いそのもの。
私の
炎司祭は大きな杖を構え、人には唸りのようにしか聞こえぬ詠唱をし出す。それが無くとも、その動作が魔術の行使であるということは溢れる理力の波動より理解できた。
強いのだろう。今までその魔術で数ある勇猛な者達を屠ったのだろう。修練を積み、技を練り、そうして編み出し継承されていったのだろう。
だからこそ、私には通用しない。その攻撃ははぐれデーモンと同じもの。学び、そして生き残る不死に同じ攻撃は通用しない。
魔術が発動する直前に全力で走り込み、デーモンの背後へと回る。刹那、デーモンの前方が爆ぜる。それは呪術にも似て、しかし非なる技。炎のように見えてしかし熱さはない。
まさしく原初の炎の魔術。混沌が生まれるよりもずっと前、かつてイザリスにあった業。
だが、それがなんだというのか。斧槍はその歴史すらも破壊していく。振り被る斧槍が奴の片脚の腱を抉り、その苦痛に膝をつく。
「デーモンは滅びる運命よ」
すかさず膝に飛び乗り首元を突き刺す。すると炎司祭が痛みで暴れた。どうやらいくら黒騎士の斧槍でも分厚い皮膚を血管ごと切り裂くことはできなかったようだ。
私は一度デーモンから降り、
怒り狂うように炎司祭が杖を振るう。最早杖としてではなく大槌として振るわれるそれは、掠めるだけで人の身体など容易く轢き潰すだろう。
だが、当たらなければ良いだけ。私の強みはその軽快な機動力である故に。
強化された脚力で跳躍し、横に薙ぎ払われる杖を回避する。続け様に振り下ろされる杖は、しかし鈍重だ。十分に引きつけローリングで横へと回避すれば、地面を揺さぶる杖は何も殺せない。
「慢心したわね、人間如きと」
跳躍し、振り下ろされた腕へと乗る。乗って、両手の曲剣を無造作に振るいながら前進する。
流石のデーモンもこれには面食らったのだろう、醜い顔を驚愕の色に染めている。
黄金の出血と暗銀の鋭さ。それはデーモンにも通じるものだ。斬りつけていくだけでデーモンの腕からドバドバと血が流れ出す。
そうして首元へと辿り着けば、私の黄金の残光は首の血管を切り裂き暗銀の残滅は顔面の瞳を穿っていた。強引に残滅を引き抜けば、炎司祭は断末魔のように咆哮し顔面を押さえた。
地面へと転がり受け身を取れば、最早勝敗は決していた。如何にデーモンといえど急所をやられて生きていられはしない。両手の曲剣を払い、血を拭えばデーモンが
倒せない敵などいない。敵が人である限り。人は恐ろしいのだから。それを忘れたものなど、恐るるに足らぬ。
それにしても、このイザリスは広い。アノール・ロンドも相当な広さと高さを持っていたが、こちらはもっと原始的かつ伝統が感じられる作りだ。
地下を掘り出し広げられた都市故に太陽は届かず。しかしそれを補って余りある溶岩。元は無かったのだろう、しかしこの溶岩の幾つかはかつてこの廃都の太陽であったはずだ。それが溢れ、自らを滅ぼすなどと。きっと神々が自らの太陽に焼かれる事もあるに違いない。
道中、開かない大扉があったため大きく迂回する。私の勘が正しければあの大扉の奥はイザリスの中心部に繋がっているはずだ。下手をすれば、大きな溶岩地帯を突っ切らなくてはいけないかもしれない……そうなれば、死ぬ可能性もある。死ぬのは何とも思わないが、また篝火からやり直すのは面倒だ。
しばらく進めば混沌の娘……あの蜘蛛姫様の場所へと通じる昇降機を見つけた。これで大分探索が楽になる。一度休息を取り、あのトゲの騎士が落とした人間性を捧げれば再びイザリスへと戻る。
そうして進めば、やはり溶岩地帯へと辿り着いた。周囲を見渡してみても、道など殆どない。どうやらこの死地を突っ切っていくほか無さそうだが……どうすれば良いか。
ふと、地面が揺れる。何事かと思い武器を構え、周囲を観察する。
「悪趣味ね……デーモンは」
イザリスといえばデーモンというくらいには溢れている。
その時現れたのも、またしてもデーモンであるが。どうにもこのデーモンは特製らしく、みた事もない形をしていた。まるでムカデのような見た目は私の乙女心に寒気を及ぼす。まぁ気持ち悪いのだ。
腕らしきものは肥大化し、そして尾もムカデのよう。まさに百足のデーモン。元は何の生物だったのだろうか。もしかすれば、生まれた時からあの姿だったのか。
少ない足場は不利であることこの上ないが、やる事は変わらない。相手は溶岩をものともしていないようだったが、攻撃手段は近接しか無さそうなのは救いだ。
動きは速いものの、こちらはそれを凌駕している。ならばカウンターで少しずつ攻めていこう。こちらにはデーモン特攻の斧槍がある。
百足のデーモンは大きく腕を振りかぶれば、こちらに伸ばすように叩きつけてくる。それを見切り、横へとステップすればすぐ横に大きな腕が叩きつけられた。あれを防御しようものならば盾ごと叩き潰されるだろう。
叩きつけの隙は大きい。私は斧槍を身体ごと回転させ、腕を切断しにかかる。光る楔石で鍛え上げられた黒騎士の斧槍は、最早神の武器に近い。斧槍の刃よりも何倍も大きな腕は、あっさりと切断された。
「ギョアアアアアアア!!!!!!」
腕を切り落とされて百足のデーモンが悶える。あまりにも暴れるので一度距離を取れば、切り落とした腕さえもまだ生きているかのように暴れていた。タフな野郎だ。だがその腕は、少しすれば
隙を見て私は指輪を拾う。
黒焦げた橙の指輪
生まれながらに溶岩に苛まれる「爛れ」のために
姉である魔女たちが贈った特別な指輪だが、愚かな彼は、それをすぐに落としてしまい、恐ろしい百足のデーモンが生まれたのだ。
どうやらこの指輪は少し前に闘った爛れ続ける者の物であるらしい。やはりあの時聞こえてきた声は、彼自身のものだったのか……あの悍ましい者は、姉の躯を守っていたのだ。健気なものだ。
ということは、目の前で悶えるデーモンは無機物から生まれたのだろうか。命無きものに命を与える……混沌とは、何と冒涜的なのだろう。その結果があの悍ましさか。
だがこれで溶岩を渡る事ができるようだ。多少は熱いだろうが、焼け爛れて死ぬのは回避できる。あとはこの不細工なデーモンを排除するだけだ。
痛みを制御したのか、デーモンは私を睨み構える。だが最大の攻撃手段を失った百足のデーモンは最早デクの棒だ。知能は高くはない、失った腕で攻撃しようともしてくるほどだ。
生命力は高いが、それだけ。デーモンなど、手段があれば何ら恐ろしいものでは無かった。私の斧槍はあっさりとデーモンを切り刻む。そうすれば無機物のデーモンは死に絶えた。
一度、祭祀場に戻ろう。ここの溶岩は目に悪い。目の痛みを癒すには少女でなければ。いつからこんなに少女好きになったのかは自分でも分からないが、そんなものはどうでも良い。私の人間性が少女を求めているのだ。
祭祀場に戻ると、私は一直線にアナスタシアに会いに行く。やはり彼女は私の闇を照らす一筋の太陽光。煤まみれの肌と服は、だが篝火の煤を愛する不死人の私にとっては実家のような安心感があるのだ。実家なんて無いが。
しばらく柵越しに彼女の手を自分の頬に擦り付け、彼女の柔和な感触を楽しむ。
「……そんなに、良いものですか?」
不思議そうに、そして恥ずかしそうに尋ねる彼女に私は言う。
「最高ね」
そう答えれば、彼女はもう片方の手で私の手を取る。互いの手と手が触れ合えば、言葉にせずとも気持ちが通じるものだ。私と彼女の心は一つ。それを言葉にはしない。
ああ、良いものだ。不死となり、人間性が擦り切れる程の戦いと死。幸い私はあまり死なないで済んでいるが、それでもこの不毛な戦いは……心が死んでいく。
太陽。俺の太陽。
俺はずっと、信じてきた。俺だけの太陽を。
あの国で、騎士として生き、そして不死となり。それでも絶望しなかったのは、不死となればこのロードランに足を踏み入れられるという希望があったからだ。
この地には、俺の太陽が生まれた故郷がある。だからどれだけ先が見えない戦いでさえも、俺は死にながら耐えてきた。いつかきっと、太陽が俺を見てくれるのだと信じて。
だが、結果はどうだ。
どこにも太陽などありはしない。あるのは神の欺瞞と誇張。どれもこれも偽りの記憶。
俺が求めた、戦士達の神などどこにもいやしない。それどころか神々でさえもその記録を残していない。
いつか故郷の連中が俺を笑った。ありもしないものに縋る愚か者だと。目が見えない哀れな騎士だと。
その通りなのだろうか。全部、嘘だったのだろうか。仲間を募り、太陽を崇め、しかし何もなし得ないのだろうか。だとしたら、俺は俺だけじゃなく仲間すらも騙していたのだろうか。
俺は、なんて哀れで愚かなのだろうか。
俺は。俺は。
ああ、まるで太陽のような生き物がこちらへやってくる。
光はする。だが太陽なんてもんじゃない。悍ましい、太陽に擬態する悪。
だが、俺にはお似合いかもしれない。愚かな俺に最後に残されたもの。それが、あの虫か。
笑いたければ笑ってくれても構わない。
俺は、愚かなんだから。
虫達が俺を囲む。光り輝くその虫は、まるで太陽のよう。そうだ、これが俺の太陽。俺が、太陽になれる……
兜越しに、顔を殴られる。華奢な腕から繰り出されたとは思えないほどの剛力だった。俺は吹き飛び、脳を揺さぶられながらもその場にへたり込めば俺を殴った奴を見る。
そいつは、背丈に見合わない大きな斧槍で太陽を模した虫を一つ残らず切り裂いていた。俺が見つけた太陽……それを潰され、俺は睨んでしまった。睨んで、しかしそれよりももっと鋭い瞳が俺を睨んでいたのだ。
その白百合のように白い少女は、俺へと歩み寄れば俺の胸を蹴り飛ばした。
「オスカーが面倒みてもらったから少しは感謝してたんだけどね」
怒りの篭った声で彼女は言う。まるで裏切り者に対する声色だった。
「これが太陽だと、あんたは本当にそう思っているのかしら? だとしたらあんたは本当に愚か者よ」
若い同郷の後輩が会えと言っていた少女は、どこまでも突っ走っていて尖っている。だがその尖り方は不死人においては珍しく人間的だった。
多くの不死人は、己の私利私欲と生存欲求のためだけに行動をする。理念、思想は二の次だ。だがその中でも彼女は自らを失わない。
彼女はどこまでも人間らしい。人間であることに固執している。気付こうが気付くまいが、彼女はそういう人間だった。
「俺は……愚かだ。ありもしない偽りの太陽を追っかけて……だが……結果はこの様さ」
「慰めて欲しいわけ? そういうのは女の子相手にするって決めてるの。……こう言うとヤワな男みたいで嫌ね……」
少女は顔を歪めて何か呟くが、すぐに冷酷さを取り戻せば言う。
「神なんて、所詮虚栄心が生んだ歪な生命でしか無いわ。奴らには人間のような泥臭くて意地汚くて、それでも貪欲な心が無い」
自己紹介にも聞こえた。だが彼女の言う通りだ。伝承にある神々は、いつだって輝かしい。綺麗すぎる。だからこそ、人は持たざるものを欲しがるのだ。神に縋るのだ。
自分にはなり得ないから。だからきっと、俺も縋った。あんな風に、誰かの太陽になれるくらい大きくなりたくて。だが俺は……
「名もなき戦神。まぁあんたみたいに単純な男が憧れる理由は分かるけれどね」
呆れるように彼女は言う。
「……知っているのか? だが、何故……あのお方の記録はアノール・ロンド追放と同時に……」
「神々は消したようね。でもね、あの勤勉な白竜はそうじゃなかった」
そうして彼女が語ったのは、あの白竜シースの書庫で見た記録の数々だった。まるで物語を聞かされているような気分だった。
知られざる戦いの数々。俺も知り得ない事だらけだ。中でも、彼女が最後に言った言葉は俺の中の何かを決定付けた。
「太陽の長子は、竜狩りをしていたと同時にとある竜の盟友でもあったとされている。まぁ、流石にシースは竜であっても竜嫌いだし長子との記録は無いけれどね」
だから、と。彼女は言う。
「もし、あんたにその気があるのなら。竜を目指しなさい。そこに答えがあるかもしれないわ」
「竜を……目指す……」
「人は竜に昇華できる。私はあの書庫で、それを目にした。ま、私はごめんだけれどね。人は人のままが一番良いわ」
「そうすれば……俺は太陽を見つけられるだろうか?」
そう縋るように尋ねれば、彼女は笑う。
「さぁ? でも、そうやってウジウジしているよりはいいんじゃない?あんたらしく、ガムシャラに竜を目指してた方がオスカーも喜ぶわよ。ま、竜になって私の前に立ち塞がったら殺すけどね」
こいつみたいに、と彼女は死してなお輝く虫……光虫を斧槍に突き刺して示した。
俺らしく。俺の太陽に近づくために。竜となるために。なんだ、簡単な事じゃないか。なぜ俺は、こんなにも女々しく嘆いていたのだろう。愚かなのは何も悪い事じゃ無いのに。愚かにも、しかし執念深く生きてきたじゃないか。なら、もっと執念深く生きてやるだけなのだ。
何か、胸に広がる暗雲が晴れた気がした。救われた気がした。
「貴公。太陽のような女だな」
俺は立ち上がり、一人笑う。
「私は太陽にはならない。なるつもりもない。でも、あんたは、あんた達は違う」
そう言えば、彼女は俺に背を向けた。どうやらこの先の混沌へと向かうらしい。と言うことは、彼女は開かずの大扉からやってきたのだろうか。
光に照らされずとも、彼女は輝いていた。
去る彼女に、俺は声をかける。
「貴公! 貴公に太陽あれ!」
彼女は立ち止まれば、振り返ることはせず、言うのだ。
「私に太陽は似合わない! 私にあるのは百合の花だけよ! 太陽は、あんた達にこそふさわしいわ!」
俺たちこそ、太陽が相応しい。そうだ、そうなのだ。だから俺は、竜を目指す。神の敵であろうとも、それが目指すべき道ならば。俺は心折れぬ。俺は、前へと進める。
まるで導きのような彼女は、最早見えない。俺はしばらく彼女の後ろ姿を眺めていたが。やる事を明確にし、ある場所へと向かうことにした。
噂に聞く、古竜がいる湖へと。それはここから近いらしい。とある太陽の戦士が言っていた。敵でもなく、しかし無口な古竜がいるのだと。まずはその古竜に出会い、竜へと至る道を見つけよう。
「ウワッハッハッハ! やはり人間は捨てたもんじゃないな!」
先程までの嘆きはどこへやら。俺の心はいつになく晴れていた。
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