皆さんはもうご覧になったでしょうか?久しぶりにアニメにハマりました。ちさたきのなんと尊いことか。
やはり百合とはとても愛しいものですね。
え? 見ていない? 獣狩りの時間だ……
アン・ディールの館、ルカティエル。最愛の人
結局、黒霧の塔においてナドラの
ほぼ完成に近いはずの彼女の
相も変わらず頭の中で嘆き悲しむだけの彼女に、エレナの堪忍袋が切れてしまいそうだ。
姉妹なんだから仲良くしてくれと脳内の怒れる落とし子を宥めながら、私は一人マデューラへと帰還する。
黒霧の塔は、一応踏破はした。
ひっそりと隠されていた溶鉄デーモンの亜種も倒したし、そこに至るまでに配置されていた兵士や祈祷師なんかも全て滅ぼした。
けれど、最上階だけは足を踏み入れただけだ。
途中複数の狂戦士達がこれでもかと侵入してきたが、一体一体は弱く赤鉄の両刃剣や
だが、一つだけ成し遂げられなかった事がある。それは最上階に鎮座する物に由来する。
きっとそれは、東の国……所謂、葦の国の流れを汲んだ鎧なのだろう。所々にその意匠が見て取れた。
ドラングレイグやロードランにありがちな、打ち捨てられた鎧では無い。まるで過去の栄光を讃えるかのように、それは円形の部屋の中央に飾られていた。
不死の悪癖の一つに蒐集癖、と言うものがある。
使いもしないのに、
物珍しいものは、それだけで蒐集に値する。故に私はその鎧を取ろうとしたのだが。
何か、強い力に拒絶されて手に取るどころか近付く事すらできなかったのだ。
仕方なく私はその鎧を諦めたのだが、ナドラの件とその鎧が黒霧の塔での心残りとなってしまった。
エレナ曰く、何か強い念と捩れを感じるとの事だが、手に入らなければ興味は無い。とりあえずはマデューラへと帰ることになった。
相変わらず、マデューラは寂れている。
打ち捨てられた家々は崩れかけ、いつか中央にぽっかりと空いた大穴へと吸い込まれてしまうとばかりに終わりを待つのみ。
けれど、その寂しさがどうにも好ましい。
元より華やかすぎる場所や物は好きじゃなかったし、何よりもここは黄昏るのに最適だ。
時空は捩れ、夕焼けしか空には映らないけれど。それでも、ここは想いに耽るには丁度良い。
だがここも、最近では人が増えた。
元からいるレニガッツやマフミュラン、心が折れてしまっているソダン、愛しいシャラゴアに緑衣の巡礼。
新たにやって来た老齢の魔術師カリオン、その弟子であったロザベナ、金にうるさいギリガン、鍛冶屋の美しい娘でありもう父を覚えてはいないクロアーナ、そして地図が好きなケイル。
一人、私は断崖で想いに耽る。
ここに、ルカティエルがいれば完璧だった。
一癖も二癖もある住人達と話しながら、彼女は私の横にいてくれた。
彼女は無事であろうか。
洗練された戦いの痕跡は各所で見る。けれど未だ出会うには至れない。
もう、限界が近いはずだ。早く三つ目の王冠を手に入れなければならない。
あの白竜の研究にもその一端が書かれていたのだから、ヴァンクラッドが至ろうとし挫けた道も嘘では無いのだ。
ふと、地べたに座り考える私の背後に緑衣の巡礼がやって来た。
相変わらず主張の薄い娘だ、ただ私の背後に立ち尽くすだけで表情も変えずにいる。
「なんだい?」
このまま無視するのも白百合としてどうなのだと自問し、振り返らず私は尋ねた。
「……お伝えしたいことが、あります」
相変わらずしっとりと、聞こえるか否かの声量でそう言う彼女は、しかしいつもとは少し様子が異なった。
普段なら、もっと彼女の声には熱がない。けれど今はどうだろう。
今の彼女の声は、言い淀んで、悩んで、ようやく声をかけたかのような。そんなものだった。
思わず振り返れば無表情ではあるが、どこか影のある表情である。
「いつになく……いや、何でも無い。要件は何かね?」
「貴女の……恋人である不死についてです」
それがルカティエルの事を指しているという事は瞬時に分かった。
どうにも嫌な予感がする。こんな長く生きただけの不死ではあるが、勘というものは案外馬鹿にできないものだ。
「続けろ」
「……彼女は、貴女と別れてから幾度も死にました。しかしまだ、心は折れていなかった。先程までは、ですが」
背筋が凍る。不死とは、心の強さがものを言う。
亡者化への道とは正しく心が折れる事。死ねば死ぬほど、人とは挫ける。私で無い限り。
「彼女はどこだ」
低い声色でそう尋ねれば、緑衣の巡礼は虚ろの影の森の方面を指差す。
黄昏ている暇など無かったのだ。彼女は今、自らと戦っている。
もう二度と失いたくはない。大切な人を手放したくはない。だから、走る。
━━貴女に、炎の寄る辺がありますように。
道中の傭兵亡者共を蹂躙する。
迫り来れば闇朧で斬り裂き、離れていれば魔術と呪術で消し飛ばし。
邪魔でしかない。私の道を塞ぐ者は誰であろうと排除する。
━━ 私には……どうしても、どうすることもできません。
扉を護る一つ目の怪物を、グラン・ランスで貫きながら走り抜ける。
重さなど気にならない。呻き声を上げながら壁まで叩きつけられた怪物から槍を引き抜き、空いた片手で闇朧を振るう。
一つ目の頭部が沼に転がろうが、先へ進む。
━━ ……楽しかったよ、リリィ。
王の指輪を提示して、大扉が開くのを待つ。
大層な仕掛けは、しかし苛立ちでしかない。なぜ早く開かない。
何度も、何度も何度も。頭の中で彼女達の声が反復する。
失ってしまった少女達の声が、今でも私を縛っている。
広い庭が憎らしい。ここに彼女の
走り、大きな館へと入ろうとして、私は見てしまった。
ルカティエルが、彼女そっくりの格好の闇霊に斬り捨てられる瞬間を。
ようやく。ようやく見つけた。
自分が愛する人。家族。最愛の兄。
兄は昔から真面目で正義感溢れる騎士であった。
しがない平民であった私達は、とても幸せとは呼べぬ環境で育った。
ミラという国で、平民の扱いはよろしくはない。孤児であったから頼れる人もいない。毎日の食事にも困ったほどだ。
盗みもした。パンを盗むのに命を賭けた事だってある。
兄は、幼い私を食わすために命を賭けていた。
きっと自分も食べたかっただろうに、一つだけしかない小さなパンを丸ごと私にくれたこともあった。
そんな兄が、晴れて騎士となった時のことは人生の中でもトップクラスに幸せな出来事だろう。
多少歳は離れていたから、兄は正統騎士団の服装に身を包み、しゃがんで私と視線を合わせると言ったのだ。
これでお前を幸せにしてやれると。
嬉しかった。けれど、ずっと兄の庇護下にあるというのももどかしかった。恩返しがしたかった。
だから私も騎士となるべく学んだのだ。幸い、兄譲りの剣の腕があったおかげでそこまでの苦労は無かったが。
私が騎士を叙勲した時、兄は喜ばなかった。きっとただ唯一の肉親である私を戦場に送りたく無かったのだろう。
けれど私は、兄に迷惑を掛けまいと沢山殺した。殺して、手柄を立てた。
他の男共に疎まれようが関係が無い。私はただ、兄に認めてもらいたかった。
全てが順調だった。
そんな時、兄が不死となった。私は、私は。何もできなかった。
ミラの国は不死という呪われた存在を容認しない。故に兄は、騎士団を抜け一人旅に出た。
噂でしかない、不死の呪いを解く為に。辛く険しい孤独な旅に。
だから私にも不死の兆候が出始めた時は……絶望もしたが、正直嬉しかった。
兄を一人にしないと思い、ドラングレイグに向かったのだ。
だけど。
死ぬということは、辛すぎた。
何度も死んだのだ。
騎士一人でどうにかなる場所ではない。囲まれ、貫かれ、引き裂かれ、焼かれ。兄の手掛かりはまるでない。
私は、心が折れ掛けていたのだ。
そんな私の前に、あの子が現れた。
不思議な奴だった。女だというのに女好きで。女っ気のない私を好いてくれて。
そして、途轍もなく強い。その強さに嫉妬した事も実はある。
何となしに、私は彼女に尋ねた。どうしてお前はそこまで強いのかと。どうしてお前は心が折れないのだと。
しかしその返答は、呆気なく。
死にまくり、強くならざるを得なかったからだと。そして、ただ人生を楽しみたいから心が折れないのだと。もっと私も素直になるべきだと。
人生を楽しむ。そんな、簡単そうに聞こえて難しい事など、考えた事もなかった。
人生を楽しむ暇など無かった。毎日が試練で、辛く、けれど兄がいたからやって来れた。
お前は亡者になるのが怖くは無いのかとも聞いた。
「心を亡くして亡者になるならば、その瞬間まで楽しめば良い。足掻けば良い。でなくちゃ、つまらないだろう?」
そう言っていた。何ともこいつらしいなと思ったが、羨ましかった。
最初は単なるままごとでしか無かった付き合いも、気が付けば私は本気になっていて。
嗚呼、ごめんなさい兄様。私は、貴方以上に大切な人ができてしまいました。貴方がいないのに私は今幸せなのです、と。
けれど、幸せがあれば悲劇もある。
明確に亡者化が進んでいるのだと理解できたのは、あの大蜘蛛に攫われた時だった。
あの大蜘蛛は、私の中の
亡者になってしまったら、大切な彼女にも襲い掛かると考えただけで恐ろしかった。
だから、だから私は、一人進んだ。これしかないのだと自らに言い聞かせ。
途中で出会ったバンホルト殿にも秘密にしてほしいと懇願して。
リリィ。私は、お前を愛しているんだ。
だから、さようなら。私の初恋。愛しい人。
もう、何も出来ない。剣を振るう事も。
兄は、人斬りの亡者と化してしまったのだから。
全てを受け入れ、絶望し、兄に斬られて。
今ならわかる。次に死んだら、私は亡者になるのだと。これが、真に心が折れる事だと。
最期に、あの可愛くとも不器用な美しい顔を見たかったと。
「う、ああぁあああああああッ!!!!!!」
獣のような、けれど華奢な叫び声が響く。
その声が誰のものかなんて、考えるまでも無かった。
「リ、リィ」
倒れ、しかしまだ死ねぬ私は呟く。
怒りと絶望。そんな顔で彼女は私を見た。
叫んだ。
叫んで、倒れるルカティエルを飛び越え、彼女にとどめを刺そうとする闇霊を蹴飛ばした。
どうして。どうして。
どうして大切な彼女が、こんな目に遭う?
どうして誰も幸せになれない?
私達はただ、幸せになりたいだけなのに。
闇霊が体勢を立て直して剣を振るう。
全てが見覚えのある動きだった。闇霊が誰かなど、考えるまでもなく分かる。
ルカティエルの兄。ミラのアズラティエル。妹の幸せを願うはずの彼は既に、亡者と化していた。
闇朧で斬撃を弾く。
何度も何度も弾き、最後にパリィしてやれば彼女の兄は容易に体勢を崩した。
怒りに任せてそのまま斬り捨てようとして、手が止まる。
彼女の兄を、殺すのか? いつものように魂を奪うのか?
そんなこと、私がして良いのか?
脳内のエレナが警鐘を鳴らす。しかし、時既に遅し。
その隙を突かれた。咄嗟に彼は剣を振るったのだ。
彼女を護る以上、動くわけにはいかない。私は左腕でその剣を防護する。
血が噴き出るも、切断はされていない。しかしエスト瓶で回復している暇はなかった。
続け様に突きが迫る。何とかそれを闇朧でいなしたが、完璧ではなかった。
左肩に彼の剣が突き刺さり、酷く痛む。
「こ、の」
彼の腕を掴んで引き寄せる。驚きも何もない眼光。仮面越しの瞳は、酷く澱んでいた。
何もできず、私はそのまま腹を蹴られて引き剥がされる。
迫る斬撃。いくら生命を強化していようとも、あれを食らえば死ぬ。
私は良い。死んでも、折れる心など無い。けれど私が死んでしまったら、今度こそルカティエルは殺されるだろう。
そして、今のルカティエルは。もう持ち直すほどの心を持っていない。死ねば、もう終わりだった。
短剣が、アズラティエルの剣を弾く。
見事なパリィだった。けれどそれは、私が行ったものではなく。
血塗れになり、息も絶え絶えなルカティエルが、私の前に立ち塞がりやった事。
「兄様」
剣を弾かれ体勢を崩された兄は、そのままルカティエルの大剣に突き刺される。
心臓を穿たれ、死に行く。
そんな彼を、ルカティエルは抱き締めた。そして囁いた。
「兄様。嗚呼、兄様。正しく、死んでくださいな」
ルカティエルの
それは、延命。僅かばかりの延命は、しかし確かに妹の命を繋いだ。
兄の身体が霧散していく。死の間際、兄は妹の身体を抱き締めた。
「強く、なったな」
亡者になっても最期まで。兄は確かに、妹を想った。
真実は分からぬ。けれど、それで良かった。
「ルカティエル……」
白百合の戦士が、今にも泣き出してしまいそうな顔と声色で彼女を呼んだ。
未だ血塗れのルカティエルは振り返ると、その白百合の胸にもたれる。咄嗟に白百合は彼女を抱き締めた。
「リリィ、すまない」
「喋らないで、まだ死んでないじゃない! 謝らないでよッ!」
エスト瓶を取り出す白百合に、ルカティエルは喋りかける。
「もう、長くは無いみたいなんだ」
「聞きたくないッ! 聞きたくないよそんな言葉! ねぇ飲んでよ! お願いだからッ! 独りにしないでよッ! ああッ! ねぇ!」
膝から崩れ落ちる。最早立つことすらもままならない。
抱き抱えられながら、ルカティエルは少女の顔を眺めた。大好きな顔が哀しみに歪んでしまっている。こんな顔もできたのだなと、不意に笑んでしまった。
「私も、お前が、君が大好き」
「だったら、飲んで……お願いだから……ねぇ……」
「仮に生きながらえても、もう長く無いんだ。私がよく分かる」
まだエスト瓶を口に押し付けようとする白百合に語った。
すると、
「
不意に白百合が呟く。これは、強敵と相対した時に口にする言葉。曰く、呪詛。
すると突然、白百合はエスト瓶を飲み出す。ガブガブと酒でも飲むかのように一気に。
「なにを」
ルカティエルが尋ねるのと白百合がエストを飲み干したのは同時だった。
刹那、彼女は膝枕に頭を預けていたルカティエルに接吻した。そして口の中のエストを流し込んでみせた。
「んぐッ!? ん、んー!」
ルカティエルが抵抗しようにも、膂力で勝る白百合には無力。おまけに舌まで絡ませてくるから心地良くて受け入れてしまった。
結果として、長い接吻の果てにエストを飲み干したルカティエルの傷が癒やされる。これには白百合の脳に潜む落とし子達もヒューッ! と口を鳴らした。
ぷはっと、口を離すや否や深呼吸する。如何に不死とて呼吸は必要だ。
「お、お前……大胆過ぎるぞ……!」
「命を粗末にするなって言ったのは貴女じゃない! 嫌よそんなの! お願いだから……ねぇルカティエル。私を置いていかないで。こんな、こんな悲しい結末で、終わりにしないで」
涙が、ルカティエルの頬に落ちた。それは白百合から溢れた蜜のようで。
不死は泣く事などないと散々言っていた奴が、これでもかというくらい泣いていた。その顔が、とっても綺麗だった。
そんな白百合が愛しくて。思わず手を伸ばして彼女を引き寄せて口付けする。
「愛しているよ、リリィ。そして、すまない。君を、一人にはしない。少なくとも今はだが」
亡者になることは避けられない。けれど今ではないのだと、彼女は悟る。
さて、と言ってルカティエルが立ち上がると未だ床に座り込み涙を流す白百合に手を伸ばす。
「泣き虫のお姫様、ミラの正統騎士であるこのルカティエルで良ければお相手しましょう」
無駄にかっこよく、格好を決めて言えば、白百合はその手を取った。そして勢い良く引き寄せて抱き締めた。
「お、おい!」
「勝手にいなくなるなんて、許さないから」
「……わかったよ。できる限り一緒にいてやるさ」
もう一度、熱烈にキスをする。柄にもなく恥ずかしそうに顔を赤める白百合が愛おしい。
口調もいつものように男勝りではない。見た目相応の言葉遣いは、見ていて面白い。
人生を楽しむと言った意味が、ようやく分かった。
「これが、百合なのですね」
白い涙を流す人形が、目元をこすりながら語らう。
私はウンウンと涙交じりに頷けば、本を閉じてそれを抱き締めた。
「尊いだろう? 貴いだろう? 私はね、だからこそ百合が大好きなんだ。命を賭けて守りたいくらいにはね」
遠い日の想い出を噛み締め、そんな事を言う。恥ずかしい過去でもあったドラングレイグだが、輝かしさにも溢れていた。
全力だった。常に明日を生きようとした。だから、楽しかった。最早戦いしか楽しめなかった私が、心の底から輝いた瞬間。
この先の物語は、困難が多いが。それでも、私の大切な百合の話。ずっと忘れない私だけの追憶。
「それで、そのあとはルカティエル様以外とは愛し合わなかったのですか?」
「それとこれは別。ちなみにこの後リーシュが愛の突撃をしてきてルカティエルにめちゃくちゃ怒られた」
修羅場のような物語も、追憶の中。
と、言うわけでオリチャー発動。
ルカティエル生存ルート。今は。
百合とはこれで良いのです。リコリコの最終回も素晴らしかった。ずっと彼女達を見守る仕事がしたい。
短編でリコリコ書くかもしれないくらいにはハマってます。あと千束とたきなの拳銃を再現しようと材料を集めてます。
百合ばかりの番外編を
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見たい。百合こそ人類の宝、ダークソウル
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いやぁそうでもないっすよ