暗い魂の乙女   作:Ciels

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投稿遅れて本当に申し訳ありません。
リコリコに人生を狂わされました。
今後、隔週で投稿する可能性がありますが、しっかりとこちらも完結させます。


祭祀場、超越者

 

 まるで御伽話の世界。

 雲の上、そのまた上。けれど異常に切り立っただけの断崖は、人が住むには適していない。

 遠くを見遣れば飛竜がこれでもかと飛んでいるではないか。数えるのが嫌になるほどの数……流石の私もあれだけの数は対処しきれない。

 

 

護り竜の巣

 

 

「さっきの護り竜はここから来たのか……アン・ディールめ、何を研究していたのだ?」

 

 私にくっつくように寄り添うルカティエルが疑問を呈する。それを知っても彼女には得が無いだろう。むしろ、白竜の研究の流れを汲んだものだ、狂気が蓄積してしまう。

 彼女の手を取り先へと進む。あまり深く考えさせない方が良い。君は私の事だけを考えていてくれ。

 

 まさか、まさかの緑衣の巡礼。

 篝火を見つけて小休止し、先へと進もうとしていたら見知った人影があるではないか。

 いつものように儚げに遠くを見詰める彼女は、私達の存在に気がつくと軽い会釈をした後にまた元の動作へと戻る。

 

 いや、違う。この子はいつも見ている緑衣の巡礼じゃない。僅かに(ソウル)の色が強い。そういえばドラングレイグの手前で出会った時もそうだった。

 

「君は、本物か」

 

 そう尋ねれば、彼女は頷く。そしていつものように鳥が囀るような声で語るのだ。

 

「呪いを纏う方。因果を乗り越える力を持った不死を、私はここで待ち続けていました。……私を解き放ってくれる方を」

 

 因果に囚われているのは、彼女もまた同じ。不死という存在に囚われ、死ねず、朽ちることもない。まるで、竜。されど完全ではない。きっと彼女は失敗作なのだろう。

 もう、分かる。彼女は不死の因果を乗り越えようとしたアン・ディールの研究の成果なのだ。

 

「呪いを纏う方。我が分身によってこの地に導かれたお方」

 

 緑衣の巡礼が遠く、微かに見える建造物を指差す。城のようにも見えるその場所は、およそ人智の及ぶ場所では無いのかもしれない。

 

「古より在りし竜は、世界を傍観し続けています」

 

「古竜が? ふむ……」

 

 果たしてそれは本物か。或いはアン・ディールの狂気の産物か。私の知る限り、古竜などとうに狩られている。それを逃れたのはごく一部。古い文献にある闇喰らいなど、その程度だ。

 緑衣の巡礼は考える私に何かを手渡す。それは、古びた羽根。これは……

 

 懐かしい。それを、私は知っている。最早色素は薄れ何の羽なのかすら分からぬ。けれど、そこに宿る想いは。

 

 嗚呼、君は、そうか。

 

 震える手で、それを受け取る。私はそれを胸に抱くと瞳を閉じた。

 流れる(ソウル)を、想いを、感じる。火継ぎの祭祀場。大昔あそこに居た、大鴉の羽根から。

 それは戻らぬ追憶の中にあって、けれど初めての感情を抱かせてくれた少女の温もり。大好きで、闇の王へと至る決意を決めた根源。私が私で在る理由。

 

 

 ━━リリィ。ずっと、待っていますから。

 

 

「っ……」

 

 思わず膝をついてしまった。ようやく流せるようになった涙が頬を伝う。

 

「リリィ、どうしたのだ……?」

 

「いや、いや……なんでもないの。ただ、嬉しかっただけなの。嗚呼、嗚呼、ごめんね、ごめんね、アナスタシア。ずっと待っててくれたのね。ごめん、ごめん……」

 

 緑衣の巡礼は泣き崩れる私を見下ろしながら呟く。

 

「……嘗て、私が幼子であった頃に戴いたものです。やはり、貴女に縁があったのですね」

 

 ただ頷く。これは私だけの追憶。本当だったらルカティエルには見せられぬもの。

 けれど私は弱いのだ。こんな、こんな想いを受けて凛々しくあれるほど私は出来ていない。私だって泣くんだから。

 

「……争ってはいけません。竜は貴女を受け入れるでしょう」

 

 緑衣の巡礼は、ただ導いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とは言うものの、実家のようにくつろぐ護り竜は私達を見つけると襲ってくるわけで、私達はそれに対処せざるを得なかった。

 どうやら卵を守っているようだが、戦闘の最中何個か卵が割れてしまっている。仕方のない犠牲だ。

 

 だがそれよりもヤバい敵がいる。

 

「くっ……なんたる屈辱……」

 

 衣服だけがほとんど破れ去り、両手で自らの恥部を隠すルカティエル。その光景は下心を煽るものだ。端的に言えばエロい。

 忘却の牢に居た爆発亡者。なぜかここにもいるのだが、なんと今回の亡者はただ爆発するのではない。衣服や装備のみに作用する爆発を起こすのだ。こんなピンポイントな爆発ってある?

 

「あー、オホン。一度篝火で休息すべきだな……それまでほら、これを着なさい、ね?」

 

 今の格好は目に悪い。とりあえずは砂の呪術師の装備一式を渡す。いやこれもこれで際どいのだが。というかこれを渡す時点で私も自分でどうかしてると思う。

 ルカティエルは渋々その服装を受け取れば、少し涙目で着替え出す。その間、私は後ろを向いて彼女の尊厳を守ることにした。内心はワクワクだったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篝火で休息し、再度前進を再開する。ルカティエルの砂の呪術師装備は最高だったとだけ語ろう。それで十分だろう? 私だけの記憶なのだ。

 邪魔な護り竜を薙ぎ払い、爆発亡者達を蹴散らしながら進めば、辿り着いたのは果てしなく長い吊り橋だった。ボロくはないが、竜が飛び交う中こんなものを渡りたくない。襲われれば一貫の終わりだ。

 

「本当にここを渡るのか?」

 

「私だって渡りたくないさ……」

 

 ルカティエルの質問に本音で答える。そりゃそうだ、流石の私も空は飛べない。

 飛び交う護り竜を警戒しながら二人で慎重に吊り橋を渡る。高い所は得意ではないのか、ルカティエルは私に密着してくる。歩き辛いが役得だ、これが本当の吊り橋効果なのだろう。

 

 だが、運の悪い私がそう上手くいくはずもなく。もうすぐ渡り切る、と言う所でどうにも護り竜達が騒がしくなる。

 物凄く悪い予感がして、ルカティエルの手を引いて揺れる吊り橋を足速に渡ろうとするが。

 

「オイオイオイ! 来たぞッ!」

 

 突如護り竜の一匹が怒ったように吊り橋に体当たりしてきたのだ。揺れに揺れる吊り橋のロープをしっかりと握り、何とか落ちないようにするのだが。

 ブチン、と嫌な音が立て続けに響く。見れば、護り竜が体当たりした部分の足場とロープが崩壊しかけていた。ヤバい、それはヤバいぞ。

 

「ど、どうする!?」

 

 焦るルカティエルが聞いてくるが、答えられる余裕が無い。とにかくなんとかしないとと思い、ある事を閃いてウィップとかぎ爪を取り出す。前にギリガンから買ったものだ。

 かぎ爪の後端にウィップの先端を取り付ける。吊り橋が揺れるせいで結び辛い。

 

「ああ切れる! 切れるぞ!」

 

「掴まれッ!」

 

 ウィップを振り被り、先端を投擲する。かぎ爪のついたそれは、重量のおかげですんなりと直線的に進んで行く。同時に、空いた右手でルカティエルを抱き締めた。

 

 吊り橋の壊れた部分を超えて進んだかぎ爪は、うまいこと無事な足場に挟まる。よし、何とかなるかもしれない。

 それと同時にとうとう吊り橋が崩壊していく。真っ二つに千切れ、私達も空中に投げ出される。

 

「うわああああリリィッ!」

 

 叫ぶルカティエルをしっかりと抱き寄せ、ウィップの柄を持つ左手に力を入れる。

 ウィップが伸び切ると、左腕が悲鳴をあげるのも無視してひたすらに耐える。何とかかぎ爪のおかげで落ちるのは回避できた。

 いつの日か、東の地に産まれるであろう忍びの術。その先駆けと言っても良い。

 

 

 

 

 生きた心地はしなかったが、何とか崩れた橋をよじ登り生還。ルカティエルは隣でぜーぜーと息を荒げている。大丈夫だろうか。

 とりあえず近場に篝火を見つけたので火を灯す。暖かい、死の灯り。

 

━━Bonfire Lit━━

 

 が、その瞬間篝火がより一層爆ぜる。もうこの感覚は何か分かる。あの醜い人の成れの果てがやってきたのだ。

 吹き飛ばされながら宙返りし、闇朧を地面に突き刺し衝撃を吸収する。ルカティエルが巻き込まれなくて良かった。

 

 ━━亡者よ。この捻じ曲げられた世界で足掻き続ける者よ。

 

 正体は知っている。人の因果を超越し竜に拘った哀れな老人。原罪を探求する者。

 

 ━━人は安寧の中で、生かされている。そして偽りの檻を信じ、愛おしむ。たとえ全てが嘘であろうとも。

 

「それの、何が悪い? 人は夢を見るだろう。それもすべて嘘だったと、現実でないと否定するのか? それは違うぞ」

 

 夢を抱き、先へ進める。光を齎せる。悔しいが、あの薪の王はそうやって世界に光を齎した。

 私は、一人の戦士として奴を尊敬している。あの鬱屈とした世界で、奴は最後まで自分を押し通した。愛した私を殺してまで、火の時代を信じ続けた。それは否定すべきことじゃない。

 

 ━━そうだ。それは悪ではないのだ。それは例えようもなく優しく、甘やかな世界。……亡者よ、それでもなお、軛を解き放ち、偽りを打ち破ることを望むか。

 

「待て、待て。私は貴様の後継者になるつもりはない」

 

 ━━いずれ、お前も同じ考えに至る。このアン・ディールと同じように。

 

 少しだけ歪んだ顔に翳りが見えた。ようやく名乗った原罪の探求者は、まだ語る。

 

 ━━かつて因果に挑み、果たされず。ただ答えを待つ者。玉座を求めよ。光も、そして闇も、その果てに……

 言うだけ言って消えていくアン・ディール。私はただそれを眺めていた。

 いつか、長く生きた先。奴と同じことを考える日が来るのだろうか。世捨て人のようにただ答えを待つだけのなれ果てに。

 

「リリィ」

 

 不意に、ルカティエルが私の背中を抱く。

 

「私がいる限り、そうはさせんさ」

「……ルカティエル。ありがとう」

 

 そうだ。私にはまだやり直すチャンスがある。ルカティエルという希望がある。それを絶やさぬよう、私は戦っている。

 その戦いの先、私が狂わずにいられるのかは分からぬが。だが彼女と共に歩む未来を信じて生きるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

祭祀場

 

 そこは、そう呼ばれていた。

 何の為に作られたのかはもう分かる。ここは古竜を崇め奉るための場。

 ほうら、そこにも。そしてそこにも。沢山居るじゃないか、古竜を信奉する者達が。

 

 青銅製の鎧を着た大きな古騎士を筆頭に、沢山の古竜への道を歩む信奉者達が私たちを待ち受ける。その姿は金に光る竜の鎧のようで、超越者エディラと同じものだ。

 ここがそうなのか。この時代、そしてこの場における古竜の追憶。

 

「彼女に指一本でも触れてみろ、貴様ら全員首を斬り落とすぞ」

 

 こちらを見て動かない信奉者達に向け言い放つ。正直、あのレベルの者達が一斉に襲いかかってきたら私でもキツいだろう。だが死んでもルカティエルは護る。

 けれどどうやら、信奉者達は戦う気はないようだ。古騎士だけがこちらへと歩を進ませる。

 信奉者達は何も言わず、ただ丁寧に一礼をしているだけだ。ああ、つまりあれと戦えと?

 

「決闘場を思い出すな……」

 

 古いウーラシールにあった、不死達の憩いの場。あそこに居る者は大体戦う前に一礼をしていたものだ。稀にマナーのなっていない奴がいるので修正してやったのだが。

 ここにもあるのだろうか、不死達の戦いの場が。あるならば試してみたいものだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああどうもどうも、警備お疲れ。どうだい、私の嫁は綺麗だろう?」

「リリィ、やめないか……恥ずかしいだろう」

「照れてる君も美しいよ」

 

 一礼する信奉者の前でルカティエルを自慢する。道中の古騎士やよく分からない星占いの魔術師は弱過ぎて敵にならない。

 喋らないのを良いことに、私とルカティエルは彼ら信奉者に見せつけるようにイチャつく。何を見せられているんだ……という視線を無視して。時折目を輝かせている者もいるから、きっと百合好きなのだろう。

 

 さて、愛の自慢も程々に先へと進む。ここは楔石の原盤も落ちていたし、何ならよく分からない……多分古竜のタマゴの化石もあった。素材も豊富だ。

 長く広い階段に辿り着く。ズラッと信奉者達が並んでいるが、どうにも古騎士は見当たらない。

 

「最後の試練は信奉者達か、なるほど。強い相手に飢えていたんだ、丁度良い」

 

 闇朧を抜き、私はルカティエルより前に躍り出る。すると、一人の信奉者が階段の中央を降ってくる。

 その(ソウル)の輝きに、見覚えがあった。あれは前に眠り竜との戦いの際に加勢してくれた……

 

「エディラ。やはり貴公もいたか」

 

 両手に大剣を担ぐその姿は、きっと誉ある英雄だったのだろう。時代と時は違えど分かる。

 

「久方ぶりよの、白百合。あの時よりもよほど強くなっている」

 

 嗄れた老人の声。けれど、その声には力が漲っている。老いて不死となり、けれど強い。経験と実力が伴った不死ほど厄介な相手はいないのだ。

 それは、私も同じ事だが。

 

 エディラはこちらに一礼を向けると大剣の切っ先をこちらに向ける。

 

「一眼見た時から、お主がここまで来ると分かっておったわ」

「良い観察眼だ。私も共に竜を屠った時から貴公を殺したくてうずうずしていたよ」

 

 大剣二刀流の火力は凄まじい。いくら生命力を強化しているとはいえ、一撃でも貰えば致命傷だ。

 しかしそれは相手も同じ事。技量は私に分がある。故にお互い、一撃必殺。ならば居合いの方が良いと、闇朧を鞘に納める。

 

 じりじりと、お互いに寄る。難しい間合いだ。階段の上下に陣取るとなれば、どちらも不利でどちらも有利。一長一短。

 ルカティエルに恥ずかしい姿を見せるわけにはいかない。私が死ねば、こいつらは彼女を襲う。それだけは、避けねばならん。

 

 キルレンジに、互いが入る。抜刀すれば殺し切れる距離。けれどこの場合、先に動いた方が負ける。達人同士の戦いとは、痺れを切らした方の負け。

 永遠とも思える時間が流れる。きっと数秒にも満たないはずなのに。

 その間、ずっと頭の中で戦いの行末を計算し反芻する。見るのは勝てる未来だけ。勝利した先だけを見据える。

 

「ッ!」

 

 エディラが動く。痺れを切らしたのではない、私を殺せると踏んで攻撃してくる。

 大振りの片手振り。それに合わせ、抜刀する。

 

「シッ!」

 

 大剣を完全に弾く。まるで水に流されたが如く、エディラの大剣は流れていく。

 が、その流れに乗って奴は回転し出す。この動きは突きだ。

 

「ふんっ!」

 

 回転突きを繰り出すエディラの大剣を踏みつける。私の得意とする技だ。

 そのままカウンターとして、大剣を踏みつけながら回りエディラの首を闇朧で穿ちに掛かる、が。

 ガンっと、彼のもう片方の大剣がそれを阻んだ。思わず舌打ちしてしまう。読まれていたようだ。

 バックステップで後方へと下がり、体勢を取り直そうとしてエディラが左手を聖鈴に変えた。あれは前にも見た。

 

 雷の槍が飛んで来る。それを、私は闇朧で受け止めて跳躍し回転する。

 

「オラァッ!」

 

 雷返し。私が完成させ、あの薪の王が洗練した技の一つ。

 

「見切っておるぞ」

 

 だが、エディラは返された雷を同じように大剣で受け止める。

 正直顔を顰めずにはいられなかった。だが相手も同じ不死。ならば一度見た技は通用しない。それは私が一番知っている事だろう。

 

 ならば、試すしかない。あのムカつく上級騎士にできて私にできないはずがないのだから。

 

 エディラが返した雷を、私はまた闇朧で受け止めて少し跳躍した。かなり際どいタイミングだ、あと少し早くても、或いは遅くても失敗するだろう。

 どうだ、薪の王よ。今度会ったら絶対に負けんぞ。

 

「ふんっ!」

 

 一度だけ回転して方向を決めてやれば、雷はエディラに帰る。さしもの彼も予想していなかったようで、迫る雷を防御できずにまともに喰らう。

 

「ぬぅッ!?」

 

 隙は、晒してはならない。達人の間では。

 

 瞬時に迫る私は上段斬りをかちこむ。間一髪の所でエディラは私の攻撃を防ぐが。

 甘い。全てが甘い。ロードラン、そしてドラングレイグ。それらを制した私に敵は無し。

 強引にエディラの大剣を押し上げ、そのままガラ空きの胴を斬り捨てる。血が噴き出て、返り血を浴びるもそれも良し。私は敵を殺すだけ。

 

I’m invincible(私は無敵故),I’m unavoidable(逃げる事は叶わぬ),I’m undebatable.(その余地すらない)

 

「見事、なり」

 

 倒れ、霧散するエディラ。戦いを見ていた信奉者達は畏れと敬いに震えた。

 きっと彼は一番の手練だったのだろう。故にそれを破られ、悟った。まだ見ぬ果てがあるのだと。彼らはこの先もっと強くなれると。古竜へと至れると。

 

「ふぅ、カッコ悪いところ見せられんからな」

 

 血振りし、納刀すればルカティエルにウィンクする。今の私めちゃくちゃかっこいいんじゃないか?

 

「お前のかっこよさは十分知っているさ」

 

 やはり私の嫁は出来過ぎているな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その古竜を見た時、私は鼻で笑ってしまった。

 見てくれだけはしっかりとしているが、何も分かっていない。生きた古竜を目の当たりにし、そして戦った私にとってそれはハリボテも良い所で。

 あの狂気の果てに、こんなものしか生み出せなかったのかと笑う。だがまぁ、緑衣の巡礼を産み出してくれた事には感謝しよう。美しいものはただそれだけで良いのだから。

 

 ━━淀みが動き始めた……また移り行くのか……

 

 古竜の思念が私達に語りかける。諦観のような語り草。きっとこの古竜もどきは、長く生きた果てに希望を見出せないのだろう。

 狂気と闇を生み出したのが人間ならば、それを取り払うもまた人間。すべて人のダークソウルが起こした事象。奴からすればそれは不毛以外の何者でもない輪廻。

 

「おい、竜の偽物。緑衣の巡礼からここに来るように言われた。争うなとも。次はどこへ向かえば良い?」

 

 上から尋ねれば、古竜の単眼がこちらを向く。単眼の黒竜……奴らが信奉していたのはカラミットか? すまないな、あれは私が殺してしまった。

 

 ━━白百合よ、困難に立ち向かう者よ。逃れ得ようはずもない。求めようとすることが生の定めなら……

 

「御託は良い、飽き飽きだ。さっき散々原罪の探求者とそういう話はした」

 

 ━━……少しは話を聞け。霧の中に答えを求めるならば……

 

 古竜の瞳が光る。そして現れるのは、何かの核。灰色の、まるで火が燻んだ後のような、核だ。

 それを手にすれば、竜は言う。

 

 ━━もう一度、あの男のもとへ行け、白百合。

 

「あの男?」

 

 ━━鎧の男。東より来て、消えた男。貴様の糧となるはずだ。

 

 心当たりがある。黒霧の塔の最上階、そこに飾られていた鎧。調べても何も無かったが……この核はもしや。

 

 ━━力を手に入れたならば、巨人を探せ。朽ち果て、最早追憶にしか残らぬ者達を。

 

 灰の霧の核を(ソウル)へと格納する。私はその場で古竜に背を向け、ルカティエルの手を取った。

 この古竜はもう役割を終えたのだ。私という見届け人に助言をし。彼は朽ちることはなくずっとここにいる。或いは、見初められると良いな。古く神でありながら、竜を友とした戦神に。

 

 ともかく、次に向かうべき場所が決まった。あの鎧の場所。私の成長に繋がるらしい。

 

 




次回、ダクソ2で一番熱いBGMのボス戦
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