暗い魂の乙女   作:Ciels

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火継ぎの祭祀場、顔合わせ

 

 

 

 火を継ぐとは、即ち生贄となることだ。

 

 自らの(ソウル)と、存在を薪に焚べて炎を燃やし。歪な世界の理をさらに歪めていく。

 

 偽りの太陽に騙されながら、暗月の神に嘲笑われながら、人は、神は、その身を薪とした。

 

 愚かなことだと思うだろうか。

 

 哀れなことだと思うだろうか。

 

 或いは、勇敢だと思うだろうか。

 

 

 神々は知っていたのだろうか。

 

 王達は、知っていたのだろうか。

 

 人の真実を。

 

 故に、彼らは去ったのだろうか。

 

 いつか人が、人に眠る人間性が、こうなることを思い描いて。

 

 人の真実を知った上で。彼らはそれを封じようとしたのだろうか。

 

 そしてその事実すら、闇は全て受け入れるのだと知っていながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いの記憶とは、早々に潰えるものではない。

 長い時を戦いに費やし、それが愚かであると理解していてもその高揚と意志のぶつかり合いから逃れられないのであれば。

 ましてや、進化していく人であるならば。

 私という戦士は、戦いによって際限なく成長していくだろう。

 相手の(ソウル)を、そして遺志を受け継いで。

 

「しかし絞りカスみたいな(ソウル)だな」

 

 斬り伏せた亡者を一瞥して、私は呟いた。

 終わりの近付く世界において、最早(ソウル)を蓄えているものは数少ないのかもしれない。或いは、単にこの地の者達の(ソウル)が弱々しいだけか。

 どちらにせよ、最早(ソウル)を介して強化をする必要がない私には関係が無いが、通貨としても扱える(ソウル)が無いと買い物すらもできやしない。

 もっとも、この終末の世界に商いをしている者などいるのだろうか。

 

「……いるだろうな」

 

 どこの世であっても欲に目が眩む者がいる。こちらとしても欲しい物が手に入ればそれで良い。

 

 審判者を斃し、先へと進む。

 墓地は相変わらず続いているが、先ほどの打ち捨てられた場所とは異なりここはまだ誰かがいた形跡がある。

 だがそれよりも、一番目に映るのは巨大なドームのような建物だ。

 そしてそれが何であるかなど、探究者たる私にはわかってしまうもので。

 

 

 

火継ぎの祭祀場

 

 

 立派な祭祀場を見上げる。

 火の信奉者共が建てたであろうこの建物は、私が知るよりも随分と朽ちていた。

 かつてとある国の建国に立ち会った際に、視察に来たことがある。

 古い闇姫が火継ぎも何も無いのだが、そういう役割だったから仕方がない。この時代にまで生き残っているロードランの古株はもう私くらいしかいないのだから。

 

 ただ、中からは篝火が齎す僅かな暖かさが漂ってくる。きっと、まだどこかの不死が彷徨っているのだろう。

 

「貴様のような不死が、な」

 

 ふと、ボロ布を纏った男が私の前に立ち塞がる。

 腰に刀を差した、初老の男だった。不死であることは(ソウル)から察せられた。

 男は一貫して無口で、こちらに一礼をすると刀の柄に手を掛ける。

 礼には礼を。ならばこそ、私も一礼を返す。

 

 男はジリジリとこちらに躙り寄って、機を伺っている。

 あれは居合の構えだ。元は同じく刀使い、それくらいはわかる。

 

「やってみせろ。私からは手を出さん」

 

 興味はない。

 力量はもう測れた。刃を向けるというのであればこちらもやり返すだけなのだから。

 

 構えることもしない。

 ただ当たり前のように棒立ちで、剣を抜かずに刀使いに正対する。

 だが、男は中々抜刀できないでいる。理由は単純。私に隙が無いからだ。

 軟弱とは思わない。事実、相手の力量を見誤れば死ぬのは己なのだから。如何に不死とて、容易く死んではならぬ。

 

 とうとう痺れを切らした男が抜刀し、斬りかかる。

 中々の速度だった。今時の不死にしては中々やるとは思う。

 

 だが、それだけだ。

 

「遅い。欠伸が出る」

 

 瞬きする間もなく、男はいつの間にか私という白百合を背にしていた。決して彼がこちらに背を向けたのではない。

 ロングソードを納刀すると、男が身体から血を噴き出して倒れ込む。

 簡単な話だ。私の方がより速く居合をしたに過ぎないのだ。

 

「ロングソードは居合がし辛いな」

 

 それだけ文句を垂れると男は(ソウル)へと霧散していく。遺されたのは(ソウル)と彼が手にしていた打刀だけ。

 戦利品として打刀を拾い上げると、鞘から少しだけ刃を覗かせて状態を見る。そこそこだが、逸品とは言い難い。

 

「贋作か」

 

 刃を納め、(ソウル)へと収納する。

 このご時世でも鍛冶をやっている輩がいれば、鍛えてもらうのも良いかもしれない。

 ともあれ、今は火継ぎの祭祀場の内部へと入る。それ以外にすることもない。

 

 

 

 

 

 

 

「おい」

 

 ふと、本を読んでいた私に白百合の騎士が声をかけた。

 なんだ、と不機嫌を態とらしく露わにして尋ねてみればなんだじゃない、と彼女もまた不機嫌そうだ。

 

「まさかとは思うが、私の会話内容まで逐一お前が演技をして読み上げるのか? お前は声優にでもなるつもりか?」

「いけないか? あと別に声優は目指していない」

「ああ。恥ずかしくて死にそうになる」

「死ねないじゃないか」

「なら、亡者になりそうだ」

「なれないじゃないか」

 

 ギロリと白百合の騎士が私を睨む。それが面白くて、私は溢れる笑みを本で隠す。

 これは私の黒歴史でもあるが、こいつの黒歴史でもあるのだ。普段は無愛想なこいつがこんなにも怒りを露わにしているのが愉快でたまらない。

 

「騎士様。私は、このお話が好きです。狩人様が読み上げるこの物語が、何より好きなのです。けれど、もし騎士様の気分を害するのであれば……残念ですが、私も我儘を言うわけにはいきませんから」

 

 人形ちゃんがちょっとだけシュンとしたような表情でそんな事を言うものだから、私は騎士を睨んだ。

 

「おい貴様。人形ちゃんになんて事を言わせるのだ」

「いや、私は……好きにしろ。人形、すまないね。別に気分は悪くならないさ。……たまには、こうして過去を振り返るのも悪くはないかもしれないからね……お前は許さんが」

 

 クールなまま朗らかな表情をする騎士さま。

 ケラケラと笑いながら私は咳払いをし、また読み聞かせを再開する。

 

 

 

 

 

 

 

 内部へと入れば、そこは薄暗くも篝火の炎といくつかの松明のおかげで視界はしっかりと確保されていた。

 ロードランの頃の祭祀場はもう崩れ去っていたから、こうしてちゃんとした建物があるのはある種の感動を覚える。来たことはあるのだが。

 

 さて、周囲をぐるりと見回せば円形の建物の中央にはポツリと篝火の跡がある。

 最早使われなくなって久しいそれは、けれど他の篝火と異なって中央に螺旋剣が無い。あれでは使い物にならないだろう。

 

 故の、審判者。奴から螺旋剣を奪い取り、殺す事こそ最初の試練。

 新たな火継ぎのための、試練なのだ。

 

 篝火の周囲はまるで劇場のようにぐるりと祭壇が観客席のように立ち並ぶ。

 それは、巨大な玉座。火を継いだ者達のための、玉座。

 

 玉座と聞けば聞こえは良いが、実情は異なる。

 私は、知ってしまっている。その玉座の残酷さを。

 

 まずは、篝火を灯すべきだろう。それが不死たる者の、最初のステップ。

 

 階段を下り、取り出した螺旋剣を手に篝火のもとへと向かう。

 

「……」

 

 不意に、通路の奥から視線を感じた。

 不快な感じはない。敵意でもない。

 

「篝火にようこそ、火の無き灰の方」

 

 暗闇から現れたのは。

 

「……火防女か」

 

 一人の少女。

 黒い儀式的な衣服。白い肌に、金色の美しい髪を後ろで束ね。仮面で瞳を隠した、火防女。

 嗚呼、彼女から温もりを感じる。人間性の温もりを。

 それは彼女が、自らを蝕むほどに人間性を内に宿しているという証拠に他ならぬ。

 

 だが。

 それ以上に彼女の魅力が凄まじい。

 ぴったりとした衣服は彼女のボディラインを余す事なく視覚的に訴えており、目線がどうにも上下する。

 それに黒と白はとても芸術的な色合いで、見ていて飽きないしシンプルだ。デザインした者こそ王と讃えたいくらいには完成されている。

 

「はい。私は篝火を保ち、貴女に仕える者です」

 

 何千年と経っても自分は偽れぬ。

 仕えると聞いて邪な考えも出てくるものだ。

 だが、次に放った彼女の言葉で私の邪念は全て消え去る。

 

「玉座を捨てた王達を探し、取り戻す。そのために私をお使いください」

「……取り戻す、か。まるでロードランの再現だな」

 

 今度は一体どんな王達を殺せば良いのやら。

 ロードランでもドラングレイグでも、玉座へ至るには強者の(ソウル)、或いは王から分け与えられた(ソウル)を必要とした。

 厳密にはそれらはただの過程でしかない。玉座へ至るための門の鍵のようなものだ。

 

 これが、新しい使命。

 昔の私ならば、興味がない、知らんと言っていたに違いない。

 それでも否定せず彼女に従おうとするのは、きっと呪い。私を目覚めさせた奴が、私に刻んだ呪詛。

 

「灰の方」

 

 火防女は、私の問いには答えずに少しだけ語気を強めたような気がした。

 

「篝火に、螺旋の剣をお示しください。それは灰の証。貴女を、王達の故郷に導くでしょう」

「……そうか。フ、フフフ、私が眠っている間に、とうとう薪すら燃やせなくなったか、この世界は。フフフ……」

 

 理解した。

 最初は、私の髪色を見て灰だと言っているのかと思ったが。

 

 火の無い灰。

 それは、不死の新たな形態と言えよう。

 死ねぬ不死。けれど、とうとうそんな人の闇すらも封じ込められぬ火のせいで、世界は本当に終わりかけている。

 火の無い灰は、ただの不死と違って運命、宿命、使命を背負う者。灰は使命を終えたのならば、土に還るのみ。

 嗚呼。そうか。私は、火の無い灰として使命を与えられたのか。

 

 ならば、今度こそ死ねるのだろうか。

 使命を終えた後に。正しく。当たり前のように。

 人として。

 

「そして向かうでしょう。王達の故郷、ロスリックに」

「ロスリック……」

 

 ロスリック。それは、最古の火継ぎを再現しようとする王国の名だ。

 最古の火継ぎ。それは、かつてロードランにて私ととある騎士が互いに手を取り、そして憎しみ合ったあの戦い。

 色々あった。私が建国に立ち会ったとある国とは、ロスリックの事だ。

 

「君、名はなんという」

 

 ふと、私は彼女に尋ねる。

 名は重要だ。そして私の願いがしっかりと聞き入れられているのであれば、彼女にもまた名があるはずだ。

 

「……私は、火防女です」

「……そうか。わかった」

 

 けれど彼女に名などなく。

 人とは、やはり信用できるものではないのだと諦観させられる。そして同様に、ロスリックの役人や神官どもに対する静かな怒りが込み上げてくる。

 

 私は螺旋剣を乱暴に篝火跡へと突き刺せば、火を灯す。

 

 

 

━━Bonfire Lit━━

 

 

 暖かな、けれど最早慣れてしまった火。

 昔のように猛々しくはない。目を離せば尽きてしまいそうな、そんな火。

 それは螺旋剣を伝って私に登ってくる。

 

 熱くなどない。

 ただ、懐かしい匂いと温もりだけが私の(ソウル)を包み込んだ。

 

 

 

EMBER RESTORED

 

 

 薪の王。

 今の私は、王を継ぐ新たな不死。

 故に炎は私を歓迎するだろう。

 いつか見えた闇姫でさえも。否、闇姫だからこそ、奴は私を歓迎するのだろうか。

 

 内に宿った炎が消えていく。

 だが内側に残る薪が、炎が燻る事を示していた。

 

 

 

 

「ああ、君が火の無き灰、王の探索者だね」

 

 それは、まるで亡者のような見た目だった。

 力はほとんど感じられぬ。けれど秘めた(ソウル)は確かに彼が王であると私に示している。

 

「貴公、薪の王か」

 

 大きな玉座にちょこんと座り、王冠を被る彼はただ頷いた。

 

「クールラントのルドレスだ。信じられないかもしれないが……かつて火を継いだ、薪の王さ」

 

 自嘲気味に笑い、そう述べるルドレスは、けれど言葉とは裏腹に薪の王であることはしっかりと述べている。

 きっと、そのこと自体に誇りを持っているのだろう。ちっぽけな自分という存在が、王を戴いた。確かにそれは、人であるならば誇るべきことだ。良かれ悪しかれ。

 

「信じよう。確かに貴公は薪の王だ」

「私の身体は燻っているから、わかるだろう。それとも、君だから分かるのかもしれないね。古い闇姫」

 

 出た。やはりこの時代まで残っているか……そりゃロスリックの建国にも携わったり世界を放浪していれば私の話が少しは残っているだろう。

 おかしいな、自分で名乗ったことは無いんだが。

 

「リリィで良い。むしろ闇姫と呼ばないでくれ。虫唾が走る」

「……苦労しているようだね。君の意見を尊重しよう」

 

 その同情が、どうにも彼が良き王であると伝えてくる。だが善性がどうであれ、王とはまともなものには務まらぬ。

 で、あればきっと彼もまた碌でも無い偉業があるのだろう。

 

「貴公は逃げぬのか。他の王達は目覚めて真っ先に故郷へと戻ったと聞いたが」

 

 親指で篝火のそばに佇む火防女を指差す。

 ルドレス以外の王達がどうなったのかは聞いている。燃え尽きず、蘇った王達は彼を除いて故郷へと戻ったらしい。

 

「心配は無用だ。私は王、そしてここは私の玉座なのだから」

 

 誇るように、彼は言う。やはり彼はどれだけ矮小でも王なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「……ほう、貴女様は……」

 

 不意に。

 祭祀場の通路で商いをしている老婆が私を見て言った。

 フードを深々と被っているために詳細な顔は分からぬが、(ソウル)を覗けば誰かはすぐに分かった。多少偽ってはいるが、間違いない。

 

「貴公……祭儀長の任はどうした」

「イッヒッヒ……勘違いですじゃ、灰の御方。婆めはただの侍女、商いをしているだけですじゃ。貴女様の使命のために色々と用立てますじゃ……」

「……深くは聞かぬ。必要とあればまた、御婦人」

 

 薄気味悪い笑いを浮かべる侍女。

 彼女は色々と物品を売っているようだからまた後で商売しよう。

 

 それよりも、今は通路の奥から聞こえてくる鍛治の音が気になった。

 小気味の良い金属と金属が打ち合う音。私の知る限り、これは鍛治仕事の音だ。ここならば火に欠く事はないだろうから丁度良い。

 音が近付いてくると、鍛治仕事をしている者の姿が見えてくる。

 

 鍛え上げられた身体。

 白髪に、白い髭。

 

「……アンドレイ」

 

 一瞬、見間違いかとも思った。けれど鍛冶屋は、確かにかつてロードランにて世話になったアストラのアンドレイだ。

 

 時が止まる。

 

 全てが静止する。

 

 音も、光も、全てが等しく止まり果てる。

 

 

「懐かしいだろう。僕も、そして君も。彼には世話になった」

 

 

 コツ、コツ。

 私を追い越すように、上級騎士が前に出る。

 彼はアンドレイの近くで鍛冶屋を見下ろすと、何か物思いに耽るように言う。

 

「稀に見る善人だった。きっと彼がいなければ、僕も君も、センの古城すら超えられなかったはずだ」

「一々出てきて思い出話か、薪の王よ。私に使命を与えて何のつもりだ」

 

 彼の言葉を無視して一方的にこちらの質問を投げかける。

 彼はこちらをゆっくりと振り返り、ただ言う。

 

「不死とは使命があればこその不死だ。使命なき不死は亡者となんら変わりない」

「使命とは自ら得るものだ。与えられるものではない。だから人は人でいられる」

 

 上級騎士……否、薪の王は兜のスリットから覗く瞳をこちらに向ける。

 

「君は人である事に拘る。かつて闇を求め、火を消そうとしたのにも関わらず。君は闇にも還らずただ彷徨ってばかりだ」

「それの何がいけない。貴様のように盲信もしていなければ甘えてもいない」

 

 きっぱりと拒絶する。

 目の前にいる薪の王は、誰かが道を示さなければ先へと進めなかった。

 だがそれは、決して弱さでは無いのだが。でも気に入らない。だから、決別する。

 

「世捨て人のようになっていた君が言うと説得力がある。さぁ、久しぶりの再会だ」

 

 そう言うと、薪の王は姿を消す。

 次の瞬間、世界がまた動き出す。小気味良い鍛治仕事の音が響き、しかしすぐに止まる。

 アンドレイが、こちらに気づいて手を止めたのだ。

 

「おう、すまねぇな。気が付かなかった……あんたは……」

 

 変わり果てた私を見て、けれどどこか面影を感じたのだろう。アンドレイは目をじっと凝らすとすぐに見開いた。

 

「リリィか……!?」

「久しいな、アンドレイ」

 

 そんな変わらない彼を見て、私は微笑む。

 

「おいおい、てっきり亡者になっちまったのかと……! 久しぶりだな! 聞いたぜ、あの坊ちゃんと戦って敗れたって……」

 

 坊ちゃんと聞いて鼻で笑う。

 そうだ、奴は坊ちゃんだ。私に説教できるほどの人間ではない。

 

「昔のことだ。あの頃の私ではない」

「ああ、みたいだが……それにしても、随分と変わっちまったなぁ。美人になっちまいやがって……」

「そうか? そうだろうな、うむ」

 

 昔の知り合いに美人と言われて嬉しく無いわけがない。

 私がフッと笑って自らの美貌を誇ると、彼は思い出したかのように言う。

 

「お互い火の無い灰としてこの時代に蘇るとはな。そうだ、武器を鍛えるならいつでも言いな。昔のように種火さえありゃあ変質だってしてやるぜ」

「懐かしいな。ドラングレイグじゃ変人にやってもらったな……」

 

 火に取り憑かれているマックダフを思い出す。流石に今の時代、彼は生きてはいないだろう。

 だが彼の記憶がしっかり残っているとは思わなかった。

 ……まぁ、彼は純粋な人ではないのだろうから、多少亡者化に耐性があるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ……お前も死に損ないか」

 

 アンドレイにロングソードと打刀を鍛えてもらい、篝火で休息しようとすれば不意に話しかけられた。

 玉座のそばに座り込み、何やら悲観そうな笑みを浮かべてそう言う男は見慣れぬ鎧に身を包み、背中にはバスタードソードを背負っている。

 

「俺もそうさ。火の無い灰、何者にもなれず、死に切ることすらできなかった半端者さ」

 

 こっちが話しても無いのにベラベラと喋る男。話し相手がいないのだろうか。面倒だ。

 篝火に手を翳す。早々に転送してしまった方が良いだろう。

 

「全く笑わせるよな。そんな者たちに、薪の王を探し出し、カビた玉座に連れ戻せなどと。あいつらは皆、火を継いだ英雄様だぜ。俺たちに何かできるものかよ。お前もそう思うだろう? フッフッフ……」

「お前みたいな輩、どこにでもいるものだな」

「は? あ、おい!」

 

 ため息混じりに転送する。

 そういう心折れたアピールは他所でやってほしいものだ。

 篝火によって旅立つ私に何やら声をかける男だったが、私は意に介さずにロスリックへと転送される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王達の故郷が集まるとは、比喩ではなさそうだ。

 転送された場所から外を見て、私はそんな事を考える。

 

 祭祀場から飛び立った先、そこは見知らぬ高壁だった。

 きっとどこかの城の砦か何かだったのだろう。しかしその高壁はまるでロスリックの中に突然現れたかのように聳え立っている。

 少なくとも、建国の際にはこんなものはなかった。

 

 ロスリック王国の特徴として、飛竜を操る竜騎兵の存在がある。

 どこから捕まえてきたのかは分からないが、飛竜を運用する上で、この高壁は邪魔にしかならないだろう。

 それが意味しているのは、世界が、このロスリックに集まってきているということだ。

 

 正確には、薪の王達の故郷を除いたものが消え去り、故郷だけが流れ着いている……まるで海のように。

 

 

ロスリックの高壁

 

 

ダークソウル3のリリィは

  • 暗い方が良い
  • 暗くても多少明るい方が良い
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