レストラン「怪獣」へようこそ   作:青色好き

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身近な生き物である、植物の怪獣達です。

次回は2021年3月12日12時00分に投稿予定です。


レストラン「怪獣」へようこそ 10 植物

 私達の身の回りには植物が生えています。茶色い地面の中から、灰色の石の隙間から、川や海の底から、植物は生えています。新緑の葉を生命の輝きと言わんばかりに生やし、色とりどりの花を周囲の景色を美しくするかの如く咲かし、我々多くの生物が生きるために必要な酸素を和泉から湧き出る水のように合成する。

 

 普段の生活で目にする機会が非常に多いため、あって当たり前と思う人が多いでしょう。しかし、前述の通り生物が生きる上で必要な酸素を合成しているため、非常に大切な存在だ。

 植物の重要性は酸素の合成だけではありません。植物が出す香りは化粧に使われ、花の蜜をミツバチが下降して蜂蜜が作られ、インテリアとして部屋の雰囲気を創り出すなど、植物の使われ方は多様です。

 

 あなた達が普段から目にしている植物はとても大切な存在なのです。

 

 ですが、それは「怪獣」達にとっても同じです。

 

 怪獣にとっても、植物は大切な存在です。

 

 植物の中には、「植物怪獣」がいるのです。

 

 そんな植物怪獣達が怪獣墓場でどんな生活をしているのか。

 

 少し見ていきましょう。

 

 

 

 

 植物が一切存在せず、岩しかないと言われる怪獣墓場。しかし、ここ近年は怪獣墓場で植物が育てられていることから、少しずつ緑豊かになっている。そんな怪獣墓場で目を引くようなものがある。

 

 それはレストラン「怪獣」。

 

 店を構成している美しい木材は心を和らぎ、店の灯りは心に落ち着きを与えている。店の中のインテリアは芸術と評して良い程の美しさを醸し出している。壁やテーブルの上には綺麗な植物が瓶やガラス製のボトルの中に入れられた状態で置かれている。その容器には花の絵や風景をあしらった絵が描かれており、店の雰囲気を心地良くしてくれるのに一役買っている。

 

 現在も美しいレストランに来客、ならぬ来怪獣は今のところいない。客がいないレストランで、客ではない怪獣はいた。その怪獣は口の辺りに黄色い花があり、体の下からは青い触手のような根を持つ怪獣だった。

 

「今日はすいてるなぁ……。でも仕事が少なくて済みそうだなぁ」

 

 その怪獣の名はホオリンガ。かつて緑豊かな村に現れた植物の怪獣だ。いずれは山となる怪獣だが、怪獣墓場にいる現在では魂の状態なので山にならずに済んでいる。

 現在は怪獣墓場で働いており、少しずつであるが仕事に慣れてきている。料理長であるエビゾールや他の店員達の丁寧な指導の賜物だ。今後も仕事を続けられると自信を持って言えるだろう。

 今日はもしかして客が来ないのかなぁ、と思っていたのだがさすがにその考えはすぐに間違いであると気付くことになった。ドアが開いてベルが鳴ったのだ。

 

「すいません。あ、今日は一番乗りなのか?」

 

 美しく鳴り始めたベルにやや遅れてその言葉がホオリンガの耳に届いた。やって来た怪獣は木の幹のように太い胴体を持ち、頭の辺りから鞭のような触手を動かしている怪獣だった。ホオリンガはその怪獣に見覚えがあった。

 

「あ、サタンローズさん!」

 

 かつてBF団に操られてジャイアントロボと戦った怪獣である。ホオリンガもそうなのだが、サタンローズには足がある。その足を使って歩くことが出来るのだ。サタンローズはホオリンガを見ると嬉しい感じで歩を速めてホオリンガに近付いた。

 

「ホオリンガさん、仕事は慣れたの? 見た感じだと大分慣れて来てる感じだけど」

 

「はい! 皆さんの丁寧な指導で前より上手くなりました~!」

 

「おお、すごいじゃないか! その内トップになれたりして」

 

「いや~、なれたら嬉しいですけどまだまだですよ~!」

 

 二体は仲睦まじく、まるで仲が良い幼馴染同士のように会話を始めた。この二体は性格面で気が合い、度々会話しているのだ。一先ずサタンローズは近くのカウンター席に座った。席には綺麗な花が飾られており、店の灯りにで彩られ更に美しさが増していた。

 

「今日はこれを頼みます」

 

「はい、レモンティーですね。少々お待ちください!」

 

 サタンローズの注文を受けてホオリンガは元気そうに店の中のキッチンに入っていった。植物怪獣ではあるものの、果実は好みなのでよく注文している。オレンジやキウイといったものも好きで、此処に来る度に違う注文している。

 

「はい、レモンティーです!」

 

「ありがとう」

 

 注文したレモンティーが届き、サタンローズはごくりと飲んだ。美味い。此処の店の料理は本当にどれも美味い。常連客が多いわけだ。サタンローズはふと心の中でそう思った。

 すると、店のドアが開いた音が店内で響いた。誰が来たんだろうと思い、振り向くとそこにはビオランテとプランドンだった。彼らもサタンローズとホオリンガ同様植物怪獣である。

 

「あらサタンローズさん、久しいわね!」

 

「あ、ビオランテさん。今日はプランドンと一緒に来たんですか?」

 

「ああ、そうだ。たまたま出会ったからなんだけどね」

 

 ビオランテ曰く、本来は一体だけで店に行く予定だったのだが途中でレストランに行こうとしていたプランドンと遭遇し、一緒に行く事にしたのだ。

 

「そうなんですか。何だかカップルみたいに見えますよ」

 

「も~、よしてよ!」

 

「そう見えるもんなのか?」

 

 サタンローズはビオランテとプランドンが一緒にいる光景を見ていると何となくカップルに見えるようになった。怪獣からすると、ビオランテとプランドンは美形の方なのでお似合いな二体組とよく言われているのだ。

 

「まぁいいわ……。 ホオリンガちゃん、いつものをお願い」

 

「あ、なら俺っちは抹茶アイスをお願いします~」

 

「はい、分かりました! 少々お待ちください!」

 

 ビオランテとプランドンは注文を終えると、近くにある小さなテーブル席に座った。ビオランテは根を地面に付いているので座りにくい体型のように見えるが、触手を使って体を持ち上げる事で椅子に座ることが出来るのだ。こんな芸当が出来るあたりさすがは『怪獣』と言ったところだろう。

 

「最近花粉症にかかる怪獣がチラホラいるんだよ…… 誰が花粉を出してるんだろうな?」

 

「え? そうなんですか? 初耳ですよ?」

 

「あら、サタンローズちゃん、知らなかったの? 最近怪獣墓場でちょっとした問題になってるのよ」

 

「そうなんですか……」

 

 怪獣も花粉症になるのか、と内心サタンローズは思ったが、人間も花粉症になるんだからあながちかかるものなのかと思った。

 

「誰が花粉を撒いているのか気になるわね。さすがにホオリンガちゃんではないでしょうし」

 

「私は撒いてませんよ~ あ、いつも注文している焼きそばと抹茶アイスです!」

 

 ちょうどやって来たホオリンガは自身の仕業ではない事を伝え、二体が頼んだ料理を運んできた。ビオランテがいつも注文しているのは焼きそばだ。大きな口で食べるので迫力があるのだ。触手も食べるので尚更だ。

 

「あと花粉を出す怪獣と言えば…… ギジェラやラフレイアがいるけど…… あ、ばびらんも出すな……」

 

「あ、私も花粉を出しますけど違いますよ」

 

「分かってるわよ。サタンローズちゃんはそんなことしないわよね。じゃあ誰が花粉を出してるのかしら?」

 

 三体は考えるものの、一向に分からない。同じ怪獣墓場で暮らす者を疑うのは気が進まないが、現在進行形で問題になっているので考えを放棄するわけにはいかないのだ。

 ここで、ある一つの可能性が浮かび上がった。

 

「もしかして誰かが育ててる鼻から出た花粉が原因なのか?」

 

「有り得るわねぇ……」

 

 サタンローズの言う通り、最近ガーデニングが怪獣墓場で増えてきている。それ故に花粉を出す植物が増えていてもおかしくはない。つまりガーデニングの増加によって植物が出す花粉が増えているのではないのかということだ。一応可能性としては十分に考えられる。

 

「そういえばサタンローズ、お前確か植物を育ててたよな?」

 

「あ…… うん。ネスギラスとかさっき言ってたばびらんとかを花畑で育ててるけど、最近は花粉が飛び散らないようにハウスの中で育ててるよ」

 

「そういえばギジェラもハウスで花を育て始めたと言ってたな」

 

「う~ん、ハウスで育ててる怪獣も最近増えてるのね…… となると一体原因は……」

 

 ガーデニングでもないとなると少し行き詰り始める。もしや花粉が怪獣墓場に流れ着いていると考え始めた頃、レストランのドアが開いた。誰が来たんだろうと顔を向けると、そこには客に応対しようとするホオリンガと――

 

「すまんが…… グス、ティッシュは…… グス、ないかのう……」

 

 目から涙を流し、鼻水を垂らしているキダマーだった。

 

 キダマーの体から黄色い粉のような物が噴出しており、応対しようとしたホオリンガは見た瞬間「うわっ……」と言いたげな顔をし、触手で口を覆った。キダマーから出ている黄色い粉はこの場にいる怪獣が見た瞬間に正体が分かった。

 

 

 

「……あんたが犯人かい!」

 

 

 そんな声がレストラン内を木霊した。

 

 

 

 

 

 

「いやー、すまんのう。自分で出す花粉で花粉症になってたんじゃ」

 

「なんか間抜けに見えますよ、キダマーさん……」

 

「トリフィドにも同じことを言われたわい!」

 

 サタンローズ達が座る席のすぐ隣の席に座っているキダマーは笑っているような顔で話していた。自分の花粉で花粉症になったことは半ば笑い話のようになっていた。

 

「ビッグアイの奴が儂に近付いたとたんくしゃみをよくしていたが、やっぱり儂が出す花粉が原因だったか~」

 

「哀れ……」

 

 プランドンの一言に花粉症になったであろうビッグアイが何処となく哀れに思い始めた。無理も無い話であるが。

 

「じゃあ今頃ビッグアイは医者に行っているのかしら……」

 

「多分そうだと思うよ。今頃ベロンの所に行ってると思う」

 

「今日もベロンの医者はやってるし、行けば会えたりしてね」

 

 会話に出ているベロンは怪獣墓場では医者をやっているのだ。いろんな病気が治るということもあり怪獣達の間では有名なのだ。風邪を引いたソドムや熱がでてしまったネズバートンもベロンの医者に行った事で治ったのだ。そんなことから怪獣達の間でベロンのことが知れ渡ったのだ。最近は診療所を建てようとしているらしい。

 

「診療所ねぇ…… それは良さそうだわ。医者らしいわ」

 

「しかしどうやって作るのかのう? 此処と同じく木で作るのかのう?」

 

「……さぁ?」

 

 診療所をどうやって作るのか疑問に思っていたところ、プランドンがある事に気付いた。

 

「そういえばキダマーって木の怪獣だろ? だったらキダマーの木で作ればどうだ? 確か杉の木を栽培してたでしょ?」

 

「ん? あぁ、栽培してるが? 一応欲しいならくれても良いが、金がかかるぞ? 建物を作る程の量なら尚更じゃ」

 

「あ~、確かに……」

 

 プランドンの疑問、それはキダマーが栽培している杉の木である。彼の杉の木は良質であるため度々インテリアの材料として切り出される時がある。勿論建物の材料として使われてもおかしくないのである。

 

「どうやって作るのかしら? 鉄とかコンクリートかしらね?」

 

「だとしたらどうやって作るんだ? それとも調達か? 俺っちには想像がつかん」

 

「私も分かりませんね…… 怪獣墓場は岩位しかないですし……」

 

 木を材料とするならば相当な金額になるのでこれは無いだろうと考えられた。そして次に考えられたのは一般的な建物の材料であるコンクリートや鉄などだが、怪獣墓場は岩くらいしか無いためそれも考えにくかった。

 

「わっからないわねぇ。まぁ、どんな風に作られるかしばらく様子見ね」

 

「うむ。そうじゃのう。どんなデザインなのか気になるのぅ……」

 

「そうだなぁ…… そういえば気になってる事があるんだけどさ……」

 

「「「?」」」

 

 プランドンが気になっていることがあるという事で、皆の視線がプランドンに集中した。

 

「俺達って植物の怪獣だろ? 植物と言えば光合成を思い浮かべるんだけどさ……」

 

「あ、光合成ってあれでしょ? 光でエネルギーを作ったり酸素を出す事ですよね?」

 

 光合成とは、光エネルギーと水と二酸化炭素を使って炭水化物を作る化学反応である。この反応で酸素も作られるのだが、地球における酸素の供給源にもなっているのである。植物が地球の環境を支える上で非常に重要な反応なのだ。

 

「確か植物の中にある葉緑体が行っているんですよね? 有名な話ですが」

 

「そうそう、植物なら誰でも持っているだろ。その葉緑体を。それで、光合成をしている」

 

「ええ、そうね。それがどうかしたのかしら?」

 

「実はな……」

 

 何か言いたそうなプランドンは周りを一瞬だけ見た。皆が自分を見ている。やはり皆が気にしているのであろう。

 

「俺達って光合成してるのかな~…… って思うんだよ」

 

「「「「…… あ~……」」」」

 

 彼が言おうとしていた事を薄ら察してはいたが、やはり案の定だった。

 彼らは植物なので光合成をしているはずだが、植物であると同時に『怪獣』でもあるのだ。普通の植物ではないのだ。

 

「でも普通に光合成をしてると思いますよ。だって地球にある木だって何10mもの大きさで、私達と大して変わりませんし」

 

「そりゃそうだけどさ…… 俺達は怪獣だぞ? 普通の生き物とはわけが違うんだ。体のつくりだってそうだ。もしかしたら俺達が生きるために必要なエネルギーを作っているのは光合成とは違う化学反応のおかげかもしれない。いや、もしかしたら仮に光合成をしているとしても、光合成をしている葉緑体が普通の植物のそれとは違うのかもしれんし……」

 

「あぁ…… 成程」

 

 彼の言う通り、自分達は怪獣である。プランドンの言う通り普通の植物と違った化学反応でエネルギーを作り出している可能性もあるのだ。もしかしたら光合成を全くしていないという可能性も有り得る。

 

「それもそうですけど…… やっぱり光合成してるんじゃないですか? だって以前モチロンさんから葉緑体が元気に動いてる~ と言われた事がありますし」

 

「え、そうなの? ホオリンガちゃん」

 

「モチロンがそんな事を言っとったのか……」

 

 彼らが言うモチロンというのは臼のような見た目をしていて餅が好物の怪獣である。彼の視力は怪獣達の中でも一際高く、5万km先にある餅を見つけられると言われているのだ。それだけの視力故なのか彼女の葉緑体を見つけることが出来たのだ。

 

「う~む、じゃあ普通に光合成してるのかな?」

 

「そういうことで良いんじゃないですか? プランドンさん」

 

「う~ん…… まぁ、そういうことにしとくかな……」

 

「そういうことにしときましょ! プランドンちゃん!」

 

 とりあえずプランドンは周りの雰囲気から光合成をしていると納得する事にした。周辺の怪獣からすると、一応納得するプランドンと納得させようと促しているビオランテの光景は何処となくカップルのようにも見えた。

 

「あ、あと気になる事があるんだけど」

 

「ん、なんじゃ?」

 

「以前ぺギラと話してた時のことなんだけさ……」

 

 そう言うとプランドンは当時ペギラと話していた時の事を語り出した。

 

 

 

 

 

 大分前、たまたま会ったペギラと会話していた。ペギラはかつて地球に住んでいた時の事を語っていたのだ。

 

「地球に居た頃はマグマ大使とかウルトラマンとかまだ来てなかった時代だったから暴れ放題だったんだよ」

 

「へぇ、俺なんかグリッドマンがいたからすぐ退治されちゃったけどな。ペギラがいた時代って良かったんだなぁ」

 

「そうと言えばそうなんだけど……」

 

「ん? どうしたんだ?」

 

「実は人間に痛い目に遭わされたんだよ」

 

「えぇ!?」

 

 ペギラの発言にプランドンは信じられないような顔をした。何故ならペギラにはある“強力な技”を持っているからだ。

 

「ペギラって強いんじゃないのか? だって口から冷凍ガスみたいなものを吐くだろ? それを使えば普通に人間を追っ払えるだろ?」

 

 プランドンの言う通り、ペギラには口から冷凍光線を吐くのだ。-130度という低温とそれと同時に無重力状態が発生するのだ。これ程強力な技なら人間を簡単に蹴散らせるはず。プランドンは人間がペギラ相手に優位に戦った事がにわかに信じられなかったのだ。

 

「ペギミンHっていう苔が苦手なんだよ。いや、そのペギミンHから取れる物質が苦手なんだよ。あ~、それが人間側に知られてしまって……」

 

「そうなのか?」

 

「うん、それで2回も追い払われてしまったんだ。ハァ……」

 

「……そりゃ災難だな……」

 

「災難どころの話じゃないよ……」

 

 そんな会話がかつてあったのだ。その時のペギラはかなり残念そうな表情をしていた。弱点を突かれたせいで二回も追い払われたのだ。無理も無い。

 

 

 

 

 

「ということがあったんだ」

 

「へぇ~…… あのペギラさんがそんな目に遭っていたなんて……」

 

「災難でもあり不幸じゃな……」

 

 この場にいる皆は地球に居た頃のペギラに同情した。それを示すかのように皆はうんうん、と頷いている。

 

「それで、気になる事ってなんですか? プランドンさん」

 

「あぁ、苔と聞いて何となく思ったんだけどさ、苔の怪獣っていたかなぁって……」

 

「「「「……あぁ~……」」」」

 

「あとシダ植物の怪獣っていたかなぁって。シダって何となく苔に似てるし」

 

 プランドンの言いたい事は分かった。ペギミンHと言う苔から連想して、苔の怪獣はいるのだろうか、という事である。更にそこから連想してシダの怪獣はいるのだろうか、という事も気になっているのだ。

 

「苔の怪獣とシダの怪獣…… う~ん、聞いた事無いわねぇ……」

 

「そもそも苔とシダってどんな植物何ですか?」

 

「え~と…… 植物の怪獣ですけどよく分かりませんね」

 

「確か…… この本に書いてあったはずじゃ」

 

 キダマーはそう言うと、懐から植物の本を出した。その本の表紙を見たところ、植物に関する概論が書かれているようだ。

 

「苔もシダ植物も種子ではなく胞子で子孫を増やす植物じゃ。じゃがシダは根・茎・葉があるのに苔はそれらが無いのじゃ」

 

「それが苔とシダの違いですね。シダが植物の一般的なイメージに近いですね」

 

 キダマーの苔とシダの解説にサタンローズは簡素な感想を述べた。周りの皆は少し感心しているような表情を浮かべていた。キダマーの解説が細かく分かりやすいおかげだからだ。とは言うものの、本を読んでいるため詳しく解説出来たのだが。

 

「儂も考えたのじゃが…… 苔とシダの怪獣はいないのぅ……。 他の世界や宇宙ならいるかもしれんが」

 

「私も思い付きませんね……」

 

「じゃあ、苔やシダの怪獣はいないってことでしょうか?」

 

「多分……」

 

「あ~ 色んな怪獣と言えどもこればっかりは今のところいないのかねぇ……」

 

 苔とシダの怪獣が今のところいないことが分かると、一同は少しばかし寂しい気分となる。すると、そこで扉の鈴が鳴った。誰かが店に入ってきたのだ。振り向くとそこには見知った怪獣が2体いた。

 

「あれ? 皆お揃いなのか?」

 

 この2体、スピンコブラーとマッドサタンがレストランに入ってきたのだ。

 

「あれ? スピンコブラーさん、今日はザリガニンドさんと一緒じゃないんですか? 珍しいですね」

 

「あいつは今日バルザスの所に行ってるんだよ。最近色んな怪獣の所に遊びに行く事が多くなったんだよね~」

 

 スピンコブラーは基本的にザリガニンドと一緒に行動する事が多い。怪獣墓場に来る前はザリガニンドとは親分子分の関係で、スピンコブラーが親分だった。それは怪獣墓場に住んでいる現在でも変わっていない。かつて2体共同でスペクトルマンと戦った経歴があるのだ。それ程この2体は深い繋がりを持っているのだ。

 

「実は今日、一人になって暇だったからたまたま会ったマッドサタンと一緒にレストランに来たってワケ」

 

「あぁ、そうだったんですか」

 

「イヤー、今日ワタクシも暇だったのでスピンコブラーさんのオトモとして参りマシタ」

 

「あれ、そういえばマッドサタンさんは確かマッドフラワーを育てているのに夢中じゃありませんでしたっけ?」

 

 話を聞くとマッドサタンも今日は暇という事もあり一緒にレストランに来たのだ。しかし、マッドサタンは現在マッドフラワーを育てているのに忙しいと以前聞いた事があるのだ。目を離す隙が無さそうなので気になったのだ。

 

「ア、それはですね、今日はツタバラーさんにやらせています。カレは最近植物を育てるのにキョウミを持ってましてね。この際タノンデみたんです」

 

「ツタバラーさんが植物怪獣を育てるとは…… 上手く育てられるか気になりますね」

 

「なんだか植物の怪獣達が勢ぞろいしてるな。よし、植物であるワイも参加するか!」

 

「ソウですね。ここは皆さんのイドバタカイギに参加します!」

 

 スピンコブラーとマッドサタンは皆の話し合いに参加する気でいる。勿論皆はその事に関して全く文句は無い。しかし、その事を聞いてキダマーは少し気がかりなことがあるような表情をしている。

 

「あれ? キダマーさん、どうしたんですか?」

 

「あ、少し言いにくい事なんじゃけど……」

 

 キダマーが少し迷っているような表情だった。戸惑いながらもある言葉を口にした。

 

「スピンコブラーは昆布の怪獣…… じゃったろ?」

 

「ええ、そうだけど……?」

 

「実は昆布は植物じゃないんじゃ」

 

「……え?」

 

「じゃから、昆布は植物じゃないんじゃ。だから、スピンコブラーは植物の怪獣じゃないということになるんじゃ」

 

「えええええぇぇぇ!?」

 

「植物じゃなくて原生生物、詳しく言うと褐藻の仲間じゃなんじゃ」

 

「あ、そうだったのか……」

 

「自分で知らなかったのね……?」

 

「うん」

 

 ビオランテの問いかけにスピンコブラーはやや小さい声で返事をして頷いた。

 原生生物とは真核生物(細胞の中に、遺伝情報の保存と伝達を行う細胞核を持つ生物)の内、動物でも植物でも菌類でもない生物の総称だ。昆布は原生生物の内、褐藻と呼ばれる生物群の一員なのだ。つまり、厳密にいえば植物ではない。

 昆布の怪獣と思われるスピンコブラーは植物怪獣ではないという事になる。

 

「今まで自分は植物怪獣だと思ってました……」

 

「まぁ、そんな事もあるさ、スピッチ」

 

(スピッチ……?)

 

 プランドンの「スピッチ」という言葉に反応するサタンローズだが、言わないことにしておく。

 

「まぁ、それより皆さん沢山来ましたし、のんびりくつろぎませんか?」

 

「そうね。皆といた方が楽しいわ」

 

「あぁ、そうだな」

 

「ほほほ、何か頼むとしようかのう!」

 

「まぁ、ナニカ食べましょう、スピンコブラーサン!」

 

「ま、そうだな…… 自分の詳細が知れて良かったし……」

 

 多くの怪獣が集まった事から皆でくつろぐことにした。人数、もとい怪獣数が多い方が楽しいのは当然のこと。時間が経てば他の怪獣達も来るだろう。更に賑やかになるのはすぐに分かる。その分楽しくなることも。

 

「今日は長く居る事になりそうですね……」

 

 サタンローズの呟きが皆に聞こえたのか、それは定かではない。

 

 

 

 〇怪獣紹介

 

・不動怪獣 ホオリンガ

 ドラマ「ウルトラマンX」に登場した怪獣。口に花が付いており、背中には殻のような物がある。植物の根のような足や触手を多数持つ。基本的に大人しいが怒ると目が赤くなり、背中と花から大量の花粉を出す。村の伝承では、「村の山になる」になると言われている。

 植物怪獣としては珍しく背中に殻っぽいものを背負ってますね。ホオリンガの登場回は元々クラウドスが登場する予定だったとのこと。

 

・宇宙植物 サタンローズ

 第5話を参照。

 

・バイオ怪獣 ビオランテ

 映画「ゴジラVSビオランテ」に登場した怪獣。人の細胞とバラの細胞とゴジラの細胞を組み合わせて生まれた怪獣。当初はバラの花を咲かした花獣形態だったが、後にワニの顔のような姿を持つ植獣形態へと進化した。口がある触手と溶解液。

 植獣形態が動く姿は圧巻です。「VSビオランテ」の怪獣の描写は素晴らしいです。でも人間パートが凄く暇でした…… 銃撃戦とかいらないから怪獣を見せてくれ! と視聴当時思いました。

 

・植物怪獣 プランドン

 ドラマ「電光超人グリッドマン」に登場した怪獣。バイオ園芸センターのコンピューターワールドに侵入し、バイオシステムのシステムを狂わせて園芸センターで作られたリフランという花に毒の花粉を出すようにした。両腕の葉を振り回して攻撃する。

 グリッドマンでは珍しい植物怪獣です。もうちょっと技らしい技を持ってほしかったです。

 

・超古代植物 ギジェラ

 第5話を参照。

 

・ブルームタイプビースト ラフレイア

 ドラマ「ウルトラマンネクサス」に登場した怪獣。頭に黄色い巨大な花を持つ怪獣。花から出す花粉は付着すると気化して熱を出し、付着物を炭化させる。更に花粉の質量が水素と同等であるため拡散しやすく、可燃性があるため迂闊に攻撃するのは非常に危険である。

 花粉が非常に強いのですが、弱点でもあるんですよね。かなりデカい弱点なのが残念です。

 

・人喰い植物 ばびらん

 第5話を参照。

 

・杉の木巨獣 キダマー

 第5話を参照。

 

・トリフィド

 第5話を参照。

 

・植物怪獣 ビッグアイ

 第4話を参照。

 

・酔っぱらい怪獣 ベロン

 ドラマ「ウルトラマンタロウ」に登場した怪獣。ファイル星人のペット兼ボディーガード。酒を飲むのが好きで、酔っぱらってしまい地球に迷い込んだ。口から吐く炎と瞬間移動が武器。

 酔っぱらって地球に来たというはた迷惑な怪獣です。この作品で彼が医者なのは、漫画「ウルトラ怪獣かっとび!ランド」で医者として登場したからです。

 

・超高熱怪獣 ソドム

 ドラマ「ウルトラマンダイナ」に登場した怪獣。火山の中に生息している怪獣。ソドムが掘る穴にマグマが流れ込んでマグマの圧力が下がる事から噴火を抑えてくれる。口から炎を出すことが出来る。風邪をひいた際は体温が2500度~3000度という高温になった。

 旧約聖書に出てくる都市繋がりでゴモラと共演してくれないかなと今でも思っています。

 

・双頭怪獣 ネズバートン

 第8話を参照。

 

・うす怪獣 モチロン

 ドラマ「ウルトラマンタロウ」に登場した怪獣。餅つきで使われる臼の形をした怪獣。ウサギの餅つきを信じる地球人の心が実体化して誕生した。5万km先の餅を見つけられる程視力が高い。武器は口から吐く火と転がり。

 臼の怪獣とは珍しいです。モチロンでついた餅は美味いのか気になります。

 

・冷凍怪獣 ぺギラ

 ドラマ「ウルトラQ」に登場した怪獣。南極に生息している怪獣。口から-180度の反重力光線を出す。南極の苔から抽出された「ペギミンH」という物質が苦手。その後、ドラマ「レッドマン」・「ウルトラマンメビウス」などで再登場した。

 反重力光線ってウルトラ戦士を相手に使ったら結構強そうです。

 

・海草怪獣 スピンコブラー

 第7話を参照。

 

・サイボーグ植物 マッドサタン

 ドラマ「ジャンボーグA」に登場した怪獣。唯一生き延びたマッドフラワーがマッドゴーネの宇宙船の光線を浴びて怪獣化して誕生した。頭の花から猛毒の花粉を出し、70mまで伸ばせる左腕の触手・フラッシュ攻撃が武器。

 頭の花がなんとなく目に見えるんですよね。皆さんも見えますよね?

 

・植物怪獣 バルザス

 ドラマ「マグマ大使」に登場した怪獣。ゴアが地球の平和を破壊するために送り込んだ植物怪獣。X線で姿を消し、花や木に変装することが出来る。触覚からは猛毒がある有刺花粉を出す。頭部は時限爆弾となっており、バルザスが倒されると起動する。

 花や木に変装できるというのが、植物怪獣っぽいなぁと思います。でもそういう植物怪獣ってあまりいない気がします。

 

・植物怪獣 ツタバラー

 アマチュアプロダクションの自主製作特撮作品「アーマージャック」の2話と3話に登場した怪獣。ナルトンに襲われたところアーマージャックに助けられたが、礼を出し渋ったせいでアーマージャックに倒された。3話ではモアイガンと共にアーマージャックを倒そうとするも、どう倒すかで争いになりモアイガンに倒された。ドラマ「セーラーファイト!(新作Web版)」では胴体が蔦状になって登場した。

 愛嬌のある顔をしている怪獣です。セーラーファイト版のツタバラーは結構細かい設定が追加されたので一見の価値があります。

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